戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第肆拾弐話

 俺は今、デパートにいる。

 何故そうなった、だって? 俺が教えて欲しいぞ。いや、俺もどういう経緯でそうなったのかはわかっているんだ。ただな……。

 

「おぉ! 手を繋いでる」

 

「むぅ……」

 

 俺はいるのか?

 

 

 

 事の始まりは今から2時間ほど前に遡る

 

 

 

「踊君! 出掛けるよ!!」

 

 死神業もお休み、学業もお休みという俺がこの学園に来て、いやよく考えてみるとこの世界に来てからか……、初の何もない休日。そんな一日を贅沢にのんびりして過ごそうと思っていたのだがな……。

 何年経っても落ち着かない元気っ娘は部屋に突撃してくると制服を脱ぎ捨てた。

 

「ちょっとは女性としての嗜みも持って欲しいものだ……」

 

 何処へ行こうというんだか……、何の説明もされてないが響が出掛けたいというのなら、俺はそれに付き合うまでだ。

 啜っていたお茶を置いて正座を崩す。

 

『響は何を選らんだ?』

 

『薄い桃色のホルターネックのキャミソールと白のワンピースです』

 

 イアから送られてくるデータを確認して服を選ぶ。

 基は紫が良さそうか、……濃い色よりも白に近いものにしよう。柄は胸元から駆け抜ける熱を運ぶ風の筋、色は黄色から橙へと下に向かって濃く。帯は黒にしようか。

 

「呵々。このような晴れ着をまた着れる日が来るとは……」

 

「踊君、準備できた……って、またスッゴい格好を…………」

 

「そんなに変か?」

 

 俺を見て響は固まった。やはり変なのか? ディバンスの時に変だと言われたらしいからと、自分なりに調整を加えてみたのだが、まだダメか…………。やはり着物がダメなのか?

 

「う、うううんっ!? そんなことないよ! よく似合ってる。…………似過ぎなくらい」

 

「そ、それなら良いが……」

 

 手を危ないくらいぶぉんぶぉんと振っていうもんだから、最後に何を呟いたのか聞き取れなかった。

 聞きたいところだが、戦場にいるのとはまた別の危険があると何かの拍子に欠けた記憶メモリが告げてくるので止めておこう。

 

「それで、何処へいくんだ?」

 

「そうだった! 急がなきゃ!!」

 

「むっ?!」

 

 俺の腕を掴むと颯爽と響は駆け出す。正した衣服が乱れてしまうので止めて欲しいのだが、今更だと諦めた。

 

「おまたせ!!」

 

「お姉様! 遅いです。既に嫁達が言ってしまったではないですか」

 

 顔に張り付いた髪を退けて見たのは、頬を膨らませていかにも怒ってますというオーラを出すラウラ嬢だった。

 

「大丈夫! 踊君がいるから」

 

「おぉ! お義兄ぃ……さ、ま?」

 

 何故、そこで俺?! 全く状況が飲み込めないが、響に説明を求めも要領を得ないだろうから、仕方ない少し加速して整理してみるか。

 

――ムッ!

 

 まず響とラウラ嬢からだ。先程のラウラ嬢の言葉遣いでわかるだろうが、不可思議なことに響はラウラから『お姉様』と呼ばれるようになった。……あぁ、先に言っておこう。『姉貴』か『姉御』だろというツッコみは無駄に命を散らすことになるからするなよ?

 ラウラ曰く日本では尊敬できる女性のことを『お姉様』と呼ぶのだそうだ。しかも『嫁』の妹だから丁度いいだろうとのこと。その場合ラウラの妹にもなるはずなんだが。

 そして誰がそんな嘘を吹き込んだのかという問いに、胸を張ってクラリッサだと答えてしまうものだから誰も嘘だと訂正できなかった。

 継いで俺も『指揮官』から『お義兄様』に呼び名がクラスアップした(したのか?)。ラウラ嬢改め吹き込んだクラリッサ嬢曰く男性なら『お義兄様』なのだそうだ。『お兄様』は断じて違うらしい。どうでも良いな。

 それで最も重要なのは嫁は誰か。……義理の妹の義理の兄(つまり凄く薄い関係)の一夏である。原因はやはりクラリッサ。日本では伴侶にしたい人を『俺の嫁』と称すのだ、という巫山戯た戯れ言で唆したせいで、何とも不憫なことになってしまった。

 話を戻そう。取り敢えず先に言った一人は一夏らしい。そうなると他はあの嬢ちゃん達の誰かで二人きりと言ったところか。そうでなければ響もラウラ嬢も普通に混ざれるだろう。

 なるほど。結論、俺に尾行の片棒を担がせたいらしい。

 

――ふぅ。

 

 こっちに来てから発見した機械な身体の活用法、思考加速を終えて息を吐く。

 

「二人とも。ISは身につけているのか?」

 

「モチロン! お守りだもん」

 

「は、はい! お義兄様(?)。しっかり潜伏モードにしてあります!」

 

 敬礼して答えるのも、疑問系なのも今は見逃すとして、潜伏(ステルス)モードは頂けない。

 

「ハァ、ISを貸してくれ。響もだ」

 

 ふたりのISを借り受け、設定を軽く弄る。弄ると言っても、潜伏モード――所謂、携帯のGISに値するIS同士のネットワークをオフにする機能――を解除し、現在地をアリーナに偽装するだけだ。……なんとまぁ。

 

「戯け。尾行するのにステルスにするバカが何処にいる」

 

「それではすぐシャルロットに気付かれてしまうではありませんか!」

 

 まぁ、確かにシャルロット嬢なら確認を怠りそうにないな。だがそうなると余計に使わない方が良い。

 

「よく考えろ。何も知らない相手なら問題ないが、シャルロット嬢はお前達が専用機持ちだと知っているだろ? 普段から隠さずにいるものが行き成りステルス化して見つからなかったらどう考える」

 

「それは…………、おお! 隠れなければならない場所か状況にいる……、つまり尾行をされている可能性があると!」

 

「そういうことだ。それに一人でもアリーナにいれば他の奴等が隠れていても隠密の訓練と勘違いして警戒は緩くなる可能性がなくもない」

 

 説明を終えたところで二人にISを返し、待っていたモノレールに乗りこむ。

 

「見つけられますよね……?」

 

 そう聞いてきたラウラ嬢は捨てられた子犬のような目をしていて不安げだった。

 あまり乗り気になれなかったが、やる気を出すか。成り行きでもラウラ嬢の義兄になったのだ。なら、妹の願いくらい叶えてやるさ。

 

「任せておけ。すぐに見つけてみせる」

 

 そう言ってラウラの頭を撫でる。

 さて一夏、シャルロット嬢の行動パターンを……、いやこの場合もう一組の居場所を予測したほうが良さそうだ。

 

 

 

「ほ、本当にいました!」

 

「あまり騒ぐな。気付かれるぞ」

 

 目的の人物を見付けて舞い上がるのを諫める。

 

「さっすが踊君、ドンピシャ。箒ちゃん達もマジでいたんだ」

 

「さっき見た時に甲龍やティアーズの反応がなかったからな。いるだろうと思っただけさ。それにこっちの方が捜しやすいしな」

 

 目を丸くする響に答える。

 俺たちがまず見付けたのは怪しい……、とにかく怪しい三人組。言わずもがな箒、セシリア、鈴の三名だ。昼真っ盛りで賑わう街中で看板に隠れるという無理のある行動を取っていた。

 ここら近辺の掲示板などに不気味な三人組として多いに呟かれている程だと言えばどれほどかわかるだろう。……あれが国家代表候補なんだから世も末だ。

 

「おぉ! 手を繋いでる」

 

「むぅ……」

 

 もう俺はいらないだろう。帰ってはいかんかね? 前の三人もそうだが、俺たちも十分目立ち始めている。目立つのは好きではないというのに……。

 俺の気持ちが通じたかのように一夏たちが一つの店に入っていく。少し遅れて前三人も突入した。

 

「水着売り場?」

 

 二人の目的はここだったのか。

 

「あ、そっか。もうすぐ臨海学校なんだ」

 

「臨界学校? 世界の狭間にある学校か……、また凄いところに行くんだな」

 

「ぜったいそれ字が違う!? 臨海! 海を臨むやつだから!? 決して世界じゃないから!」

 

「なんと!? それはつまらぬ……」

 

「ただの学校行事でそんな恐ろしい所に行くわけないから!」

 

 それなら水着も必要になるか。

 三人組に10秒ほど遅れて入店したが、ちょっと面白い気配を感じた。

 

「……ほぅ? この気配。呵々、意外な先客がいたようだ。ラウラ嬢、良かったな。御姉様もいるみたいだぞ」

 

「なんだと!? 御姉様がここに!!」

 

 良かれと思って知らせたはずが、ラウラは戦場の戦士にも引けを取らない洞察で店内をくまなく探し出した。そこまで必至にならんでも。

 ――御姉様。もう一人しか残ってないだろう、一夏と響の関係者で姉としたえそうな人物となれば。

 

「なんだ、お前達も来ていたのか」

 

「こんにちは、織斑教諭、山田教諭。先生方も水着の新調ですか?」

 

 当然この人だ。そうでないと困るがな……。聖遺物観測用のセンサーさえ震わせる程のオーラを放てる人物が世の中そうそういてもたまったものじゃない。

 

「はい。ふふ、聖君達もそうなのですか?」

 

「いえ、俺たちは今のところ違います」

 

「あれ? それじゃあどうして『も』なんですか?」

 

 山田嬢は首を傾げるも、織斑嬢は気付いたようだ。

 

「あそこのカーテンを開けるとわかります」

 

「さ、流石に不味いですよ!? 着替えてる最中だったら……って、織斑先生!?」

 

 躊躇なく俺の指差した個室のカーテンを開け放つ。

 

「何をしているバカ者が」

 

 呆れた様子を隠せない織斑嬢の目の前にいたのは当然、尋ね人の一夏とシャルロット嬢だった。

 んでだ、恥ずかしいのはわかるが山田嬢と響ちょっと五月蝿い。他の客に迷惑だ。それとラウラ嬢は羨ましそうにしない。変なものに毒されてはならんぞ。

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