戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第八話・前編

 カツンッ、カツンッ……

 

 今、一所懸命ハシゴを上ってます。

 もう、ノイズがしつこい。下を見れば結構いるのが分かる。まだ見つかってないから大丈夫だと思うけど早く登らないと。見つかったら一巻の終わり。逃げ道が無い。

 

「大丈夫だからね」

 

「……うん」

 

 背負った女の子に声を掛け懸命に腕を伸ばし次の段を掴む。

 あぁ……長い。まだ半分くらいしか登ってない。

 

「1! 2! 1! 2!…………」

 

 何度も手を伸ばして足を上げて何分間も休まず登り続けたことで私は、運が良かったのかノイズに見つかることなく最後の段に手を掛けた。

 

「ぅうん……しょぉお!!」

 

 な、何とか登り切った……。もうヘトヘト、あぁ~体中が痛い。明日は筋肉痛確定だろうな~。

 

「お、おねぇ……ちゃん」

 

「ん~? どうしたの?」

 

 横になって体を休めていたら女の子が私を呼んだ。怖かったんだろうね。まだ声が震えてる。

 

「あ……れ……」

 

「あれ?………………」

 

 女の子が私の後ろを指差したので何かと振り返ったそこには、

 

「「「「「「(^_^;)」」」」」」

 

 ノイズが大量にいた。いや、ノイズには顔無いから(^_^;)なんて顔してないけどね!? でも私にはそんな風に見えたんだよ。

 

「あれぇ~……」

 

 もう嫌だぁ~。

 前を見たらノイズ、横を見てもノイズ、上にもちらほらノイズが……流石に後ろにはいないみたい。

 それじゃあ、後ろには何があるでしょう?

 

 正解は!……何もありませ~ん♪ だって私が今頑張って登ってきたところだもん。行ったら最後30m以上の自由落下が待ってます。

 

 あちゃ~、響ちゃんたち詰んじゃった。

 

 …………現実逃避もこの辺で止めよう。何か虚しくなってきた。

 

 確かに詰んでるけど、そう簡単に諦めるわけにはいかないんだよね。この子を護るって誓ったんだ。

 この子だけでも絶対生かしてみせる。

 

「んっ!……あれ?」

 

 足が動かない! 今までずっと走ったりして休まなかったのと、気を抜いてしまったせいで足が震えだしていた。

 

「……こっちに来て」

 

 女の子は静かに従い、私の後ろに来た。

 

 手で無理矢理体を持ち上げて片膝立ちにする。足が動かないからどうだっていうんだ。まだ手は動かせる。

 

「大丈夫。絶対! お姉ちゃんが護ってみせる」

 

 片手で女の子を抱えてノイズを睨む。

 

“生きるのを諦めるなっ!!!”

 

 昔、私を助けてくれたあの人の声が思い出された。その時ノイズが動く。槍のように姿を変え飛び掛かってきた。

 

 ……そうだ。まだ私にはしたいことがたくさんある。未来ともっと遊びたい。お母さん達ともっと一緒にいたい。踊君にもまだ何も返せてない。それにあの日、あの時、あの場所で私を救ってくれたあの人達にまだ礼を言ってないんだ。

 

「まだ……死ねない!」

 

 地面に手を付いて横に転がった。間一髪、ギリギリのところをノイズが通り過ぎる。すぐに起き上がって他のノイズを見て、

 

「……死んじゃうの?」

 

 抱えた女の子が小さくそう呟いた。こんな子供に死んじゃうなんて言葉を言わせたらダメだ。この子を勇気づけるためにはどうしたらいいんだろう。私に出来ることは……

 

「……生きるのを諦めないで」

 

「え?」

 

「お姉ちゃんが絶対守るから、生きるのを諦めないで!!」

 

 あの人はとても優しくて、とっても力強い歌を歌ってた。私なんかが出来る、だなんて思ってないけど、それでもこの子のために頑張るんだ。

 胸の中が熱くなってきた。何だろう……この感じ。勇気が湧いてくる。

 

「胸の音を聞け。お前の思いを込めて詠えば良い」

 

 誰かの声が遠くから聞こえた。

 胸の音……この熱のことだろうか。私の思い……それはこの子を護りたい。ああ、そうだ。ただこの子を護りたい。それだけなんだ。

 この思いを込めて詠う?

 何も知らないはずなのに心の奥からメロディーが湧き上がってくる。歌が溢れてくる!

 

「-- Balwisyall nescell gungnir tron --」

 

 そう口遊んだ時、

 

「ガア゛ァァアア゛ァア゛ァッ!!!」

 

 私の中を激痛が襲った。

 心臓が貫かれるような痛みが走り悲鳴を上げてしまう。

 

「ア゛ァアァァァァッ!」

 

 真面な言葉も発せず、何とか薄らと目を開け胸元を見ると何かが大量に突き出していた。突き出す何かは次々と私に覆い被さった。ほんの一瞬のことだったけれど、私にとっては何時間も体を抉られているように感じた。

 

 そして最後の一つが私を包んだ時、光が辺りを照らした。

 

「お姉ちゃん!!」

 

 痛みが治まり私はやっと目を開けることができ、貫かれた胸元を見ると……

 

「って、何コレッ!?」

 

「わぁー! お姉ちゃんカッコいい!!」

 

「カッコいいって……」

 

 服装そのものが変わっていた。制服を着ていたはずが、黒を基調にした胸元などがオレンジ色のピッチリしたスキンスーツ(?)みたいなのを着ていて、その上に白の小さなジャケットを羽織るというとても恥ずかしい恰好になっていた。

 さらに両手に半月型の大きなガントレットがあり、頭には角の生えたカチューシャ、靴は……何だろ? やけにごつい膝近くまである白黒のブーツだ。それと背中にも何か背負ってるけど何があるの? ……見えない。

 

 何はともあれやっぱり恥ずかしいよ~。体系がくっきり出過ぎじゃないかな……。

 

 ノイズの一体が動いた。

 咄嗟に女の子を抱えてジャンプ。

 

(あ、動いた!)

 

 動かなかった足が動いて感動したけど、それも一瞬。

 

「うぇええ!?!?」

 

「キャアァァー!」

 

 跳び過ぎだぁ!?

 少し横に跳ぼうとしただけなのに、勢い余ってノイズを跳び越え、床まで跳び出してしまった。そしてそのまま自由落下。

 

「何でぇ~!?」

 

 ドスンッ!!………………

 

「ん?」

 

 あれ? 案外、平気? おお! これなら逃げれるかも。

 

「…………」

 

 そう思ったけどまだ安心できないんだった。さっき自分で下にノイズがいるって言ってたじゃん。結局、また囲まれちゃってるよ!?

 幾体ものノイズが向かってくるのが見えて慌てて地面を蹴った、それも全力で……。

 

 結果私達は10m以上飛び上がりそのままタンクに激突してしまった。

 

「いったぁ~」

 

「だ、大丈夫?」

 

「うん……」

 

 頭から突っ込んだけどカチューシャが盾になってくれたみたい。ペタペタ触ってみると意外と硬く簡単には折れなさそうだ。

 よくわかんないけどこの服も丈夫だ。これなら行ける!

 

 タンクを蹴って何もない場所に!……!?

 

 飛び上がった直後、一体のノイズが私の前に躍り出た。

 

「うわぁあっ!!」

 

「お姉ちゃん!?」

 

 やっば!? 咄嗟に女の子を庇ってノイズを殴っちゃった。炭化しちゃう。痛そうだけど我慢して腕を切れば大丈夫かな……。痛いのヤだな…………。

 

 そしてそれは黒くなった後、砕け散った。

 

「へ?」

 

 間抜けな声を出してしまった。だって砕けたそれは私の腕じゃなく、ノイズの方だったんだもん。

 

「何が起こってるのかわかんないけど、この服って結構有能だ。恥ずかしいだけじゃないんだ!?」

 

「そ、そこなの?」

 

 そこだよ。こんな姿、踊くんに見られたら絶対笑われる。でもこの姿が役に立つなら我慢できそうだ。だから……今は戦おう。

 胸にまた新しい歌が生まれた。そして何処からかメロディーが聞こえる。

私は胸の音に従い歌い始めた。

 

「――――――――――ッ」

 

 その歌を歌うと体の中から力が湧き上がってくる。

 よし。拳を硬く握り締めて近くにいたノイズを殴った。それだけでノイズが砕けていく。

 一体、一体、また一体、近付くノイズを殴って、蹴って灰にしていく。

 

 ……どうしよう。数が多過ぎて、このまんまじゃ終わりそうにない。私の体力の方が先に尽きてしまう。女の子を抱え跳ぶ? ……無理。何処まで飛べるかわからないのにそんな無茶な賭けは出来ない。

 

 やっぱり壁を伝って走り続けるしかないかな。

 

 その時……

 

「-- Imyuteus amenohabakiri tron --」

 

 誰かの歌声が聞こえた。




今日は纏めて二つ投稿。
読んでもらえば、分かると思いますが、態々来週に引き延ばす意味がない話なのでご了承くださいな。
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