戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第肆拾捌話

 おお、海が蒼い! 空が青い!

 それでいて真っ白でモクモクした雲やにょきっと突き出す小岩が、ちょっびっとしたアクセントになっていて景色が良い。

 

「やっぱ海は最高だぁーっ!」

 

 海を眺めてわいわい騒ぐ人たちに混じって叫んでしまった。当然山彦は帰ってこない。海だもん。

 まぁ、いいや。スッキリしたところで後ろを振り返る。

 およ? 遅れてきた鈴ちゃんが耳を押さえてしかめっ面していた。いけないなー、せっかく海に来てはしゃげるのにそんな怖い顔しちゃ。

 もしや私の素早さをがくっとさげる気か!? でも残念だったね、私を怯えさせたくばちー姉の般若か未来ののっぺりマスクくらい持ってこないと効かないよ!」

 

「未来って子は誰だか知らないけど、それ本人の前で言ったら泣くわよ」

 

「うぇっへっ!?」

 

 口に出ちゃってた。鬼はいないよね!? 聞いてないよね!?

 

「いないから、そんなにキョロキョロしない」

 

「ほ……」

 

 死んだかと思った。イアちゃんも言ったらダメだよ。

 

『言いませんよ。ファイルに保存するだけです』

 

 ファイルって……いったいどんなファイル? こんなの溜めたって意味なんてないよ?

 

『響さんおd……もしろファイル~。主に響さんの未来さんに関する(失礼な)考えや発言を音声・映像付きでまとめたファイルになってます』

 

 ねぇ、今なんて言った? 恐ろしい言葉が聞こえた気がするんだけど!?

 

『禁則事項です♪』

 

 すぐに消しなさい!!

 

『ヤーです』

 

 ウッガァー!

 

「いきなりどうしたのよ。体調でも悪いんじゃない? 踊でも呼んできた方がいいのかしらね?」

 

『是非!』

 

「……ん?」

 

「わーっ! わーっ! 何でもない。何でも! あぁあっ、一兄だ! セシリアさんとなんか二人で良い雰囲気になってるよ!」

 

「ぬわぁんですって!! いぃいいっちかぁあああっ!」

 

 誤魔化すために、一兄には犠牲になってもらった。ごめんね、一兄。後でちゃんと骨は拾ってあげるからそれで許して。

 砂浜を猛ダッシュする鈴ちゃんを見送り、カッコーンと宙を舞う一兄に黙祷してっと……、よし遊ぼう。

 

「ダメだよ、響。一夏を身代りにしちゃ」

 

「いやぁ~、面目ないっす」

 

 しかし、回り込まれてしまった! く、私の海がなんか遠い気がする。ミイラを引き連れたシャルちゃんをどうにかしないと、行けそうにない。

 

「……何そのミイラ」

 

「これ? ラウラだよ」

 

 ミイラを見る。頭と覚し丸い部分から銀色の髪が生え、左右で揺れていた。銀髪はクラスにも学年にも一人しか見覚えがない。知らないだけかも知れないけど、シャルちゃんの周りにいるってなると、ホントにこのミイラはラウラちゃんみたいだ。

 顔が見えなくなるくらいミイラしてるのに、見て分かるほどに弱々しくなっていてちょっとびっくり。。

 

「どったの?」

 

「聞いてよ! ラウラってばせっかく可愛い水着に着替えたのに、自分には似合わない、って隠しちゃったんだよ。部屋から連れてくるだけでも大変だし……」

 

「と、とりあえず引きずってでも一兄の前に出してみたら? 一兄の感想次第で変わるんじゃないかな?」

 

 疲労困憊気味なシャルちゃんにアドバイスもどきをしておく。一兄ならどうにでもできるだろう。ラッキースケベ的なことかセクハラ的なことをしそうだけど、今に始まったことじゃないから気にしない。

 悪いことにはならないだろうし。

 

「そうだね。行くよ、ラウラ」

 

「……うぅ」

 

 よし、二人とも一兄に押しつけることができた。何がどうなったらそうなるのかわかんないけど、鈴ちゃんを背負って海から上がる一兄にサムズアップしておこう。

 ……睨まれた。

 

「今度こそ! いざ行「響」……、今度は誰!?」

 

「少し良いか?」

 

「うぇい……。」

 

 次は踊君だった……。尋ねるような効き方をしながらも拒否権のない質問に頷くしかない。う~み~ぃ……!!

 

「? ……響、会ったか?」

 

「へ? 誰と?」

 

 踊君、私そんなに超人じゃないよ。1を聞いて10を知るとかできない一般人です。せめて主語下さい。できたらもうちょっと名詞とか修飾語とかもあったらうれしいな。

 

「会ってないならいいんだ」

 

「いや、だから誰と!?」

 

 一人で完結しないで欲しい。このままじゃ私が後でもんもんとする羽目になるんだけど。

 

「気を付けろ。この旅、何か嫌な予感がする。一往、警戒しといてくれ」

 

「え、あ……ちょっ!? だから誰となのー!」

 

 去らないで! 言うだけ言って行っちゃうとかただの嫌がらせ! 結局、誰のことを話してるのか教えてもらえず砂浜を後にしてしまった。しかも嫌な予感とか不吉な言葉を残していく始末です。

 いったいどこの何を警戒したらいいんでしょうか。海の中? 空? それとも陸? そしてそれは機械的なことなのか生物的ことなのか……うん、まったくっわかりません。できる気がしない。

 

「ま、いっか。なんとかなるよね」

 

 今は遊ぶんだ! 海に突撃だぁ!

 

「ひびりん、ひびりん! ひびりんもバレーしようよ! 今、おりむーと織斑先生が決戦を繰り広げているのだ~」

 

「後で行くから! お願い、離してー! おーよーがーせーてー!」

 

「いいからいくのだ~」

 

「あーれ~~」

 

 キツネなのほほんちゃんは普段の姿からは想像できないくらいえげつない力を発揮して、まったく逆らえなかった。キツネに掴まれたよー……。やっぱり海は遠かった!

 

 

 

「やるぞ、響!」

 

「うん!」

 

 連れ去られた結果、一兄とタッグで担任ペアと対決することになってしまった。もうこうなったら自棄っぱちです。ビーチバレーを楽しんでやる!

 

「行きます!」

 

 まや先生のサーブからスタートした。

 一兄が腕で受けて跳ね上げる。すぐにボールの下に入ってパスを上げて……、流れるように一兄がスパイクを放つ。

 

「おらぁっ!」

 

「甘い!」

 

 けれどあっさりちー姉にレシーブされ、まや先生がネットギリギリに迫る高いトスをした。そして狙い澄ましたかのように鬼が飛び上がる。

 

「ふんっ!」

 

「なんのぉ!」

 

――バッシーン!!

 

 流星のように突き抜けようとする道筋に、なんとか腕を差し込んで落下を防いだ。でも腕が痛い。恐ろしいことに柔らか素材でできたボールがバスケットボール並に堅かったのだ。

 あんまり受けたくない。

 

「…………ビーチバレーってあんな音が鳴るものだっけ?」

 

「おぉー! たっかーい!」

 

 運良くほぼ真上に上がったボールはネットを優に超えて……倍くらいありそうな高さまで飛んでいた。

 ホントおかしな腕力してらっしゃるよ。

 

「一兄!」

 

「任せろ!」

 

 上に跳ねたと言っても結構な距離が風に流された。でもボールに動きを合わせていた一兄が跳び込んで辛うじて球を繋いだ。

 

「いっけー!」

 

 今度は私の番! 空いたスペースを狙って、スパイク!

 

「させません!」

 

 まや先生がブロック。いつものドジッ子な雰囲気のないまや先生も織斑先生に負けず劣らず強い。

 そこから激しい攻防戦が始まり、時間いっぱいまで楽しんだ。

 結果は2対2で決着付かず。3点先取制だったんだけどね、一試合に10分20分掛かっちゃって、気付いたら時間が来てしまっていたのだ。

 ちょっと残念。けど勝てたかどうか怪しいからこれはこれで良かった……のかな?

 

 後は晩ご飯で騒いで、女子会で騒いで寝るだけです。

 でも何か忘れてるような…………? ま、いいや。

 

 

 

 

 

 

 ……あ、結局海に入り損ねたんだ…………。

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