戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第肆拾玖話

 それは私がすか~とお風呂で暖まった帰り道での出来事です。

 なんと…………、

 なんと……!

 なんと!!

 

 覗き魔がいっぱいいた!?

 

 しかもそれぞれがもぞもぞ動いてて不気味だ。しかしこの覗き魔たちは男じゃなさげ(貸し切りの学内にいたら問題だけど)、その後ろ姿にすごーく親しみを覚えるのは気のせいであって欲しい。

 バレないように通り過ぎてしまいたいところです。

 

『――んっ! す、少しは加減しろ……!」

 

『はいはい。千冬姉、久し振りだからって緊張してる?』

 

『そ、そんなわけあるか』

 

 ……気のせいだ。気のせいに違いありません。

 まさか姉弟でそんな禁忌なことをするわけがないよね。これは幻聴で、あれは幻覚。気のせい気のせい。

 顔が熱くなってるのも私の勘違い。

 

『それじゃ、次は……』

 

『……あぁ、ちょっと待て』

 

 私は何も知りません。それじゃあ、皆さんさようなら~。

 

「何をしている、馬鹿者ども」

 

「「「「「「へぶし!?」」」」」

 

 きゅ~……。……巻き込まれた。

 なんと言うことでしょう。この部屋の前は通っただけで運が尽きる鬼の間だったらしい。や、そもそも今朝からどん底か。

 

「あは、あははは……」

 

「こんばんは……織斑先生」

 

「し、失礼しましたー!!」

 

 私とラウラちゃん以外が逃げ出した。ところが残念、ちー姉からは逃げられない。人生、諦めることも大切なのだよ。……どうでもいいことだったらだけど。

 

「盗み聞きとは感心せんが、まあいい。入っていけ」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

 予想外の言葉に皆が驚いた。

 

「えっ!?」

 

 が、私一人っだけ意味が違った。

 だって帰って寝たいんだもん! 徹夜して寝たのは移動中のバス内で小一時間ほど。予定では海で軽く泳いで晩ご飯まで寝るつもりだったのに、海に入り損ねるわ、ビーチバレーに巻き込まれて寝損なうわで、もうくたくたです。

 他の子がいなきゃお風呂では溺死しかけたし……。

 

「ああ、そうだ。一夏、まだ聖が部屋に戻ってきていないらしい。私の代わりに探してきてくれないか?」

 

「踊が? わかった。ちょっと行ってくる。皆はくつろいでってくれ。まぁ、難しいかもしれないけど」

 

 踊君は着いた時に言ってたように本当に部屋を利用してないようだ。体よくおしつけられた事に気付かず一兄が探しに部屋を出て行く。残ったのは女7人のみだ。

 女3人で姦しい……、プラス女4人だとどんなことになっちゃうのやら。

 

「おいおい、ここは葬式か通夜か? いつものバカ騒ぎはどうした?」

 

「い、いえ……」

 

「織斑先生とこうして話すのは……」

 

「初めてですし……」

 

 ありゃ? 多いと寧ろ逆転するのか。あはは、みんなカチコチだ。

 

「ちー姉、ちー姉。誰も先生の前でバカ騒ぎなんてできないと思うんだけど……」

 

「そういうものか。……まぁ、取り敢えず何か飲め。奢ってやる」

 

 そう言うとちー姉は近くに備え付けられていた冷蔵庫を漁りだした。ぽけーっと見ていたら、視線がチラッとある一点に向けられるのを見てしまった。げっ、睨まれた……え? なんでそんなニヤリと笑うのでしょうか。

 

「こんなところか。気に食わないのがあれば好きに交換してくれ」

 

 渡された缶ジュースにそれぞれ満足したみたいで、特に交換はせずに飲み始めた。でも私が持たされたのは何語かわからない赤色の文字で書かれた真っ黒パッケージなお飲み物。ヤバスな雰囲気ダダ漏れです。代えさせてもらおっと。

 

「私は、遠慮させて~……」

 

「はっはっは、そう遠慮するな」

 

 あれ、おかしいな……。交換は好きにして良いんじゃなか……。はい、これで満足です。泣きそうになりながら皆に助けを求めた。すぐに目を反らされてしまった。そしてじっくりパッケージを読んでいたシャルちゃんの顔が真っ青なのがすごく気になるのですが……。

 

「うぅ……。いただきます……。ズズズッ」

 

 …………。

 

「(#=(%"#$#)=(゚□゚」

 

「ひ、響!?」

 

 からいからいからいからいからいからいからいからいからいかライカライカらいからイカラからいからいからいからいからいからァババババババ……!?

 

「どうだ。目が覚めただろ」

 

「ふぇ……ふぇふぁ、ふぁふぇふふぉひ……、ひひ、ほうへふ……」

 

 口の中も外だけでなく喉や胃までちょう痛い。呂律が全く回りません……。

 

「何言ってるかさっぱりだ」

 

「ふぁふぇふぉふぇいふぇふは!」

 

 うぇ~……、文句も言えない。

 

「さて、飲んだな」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「ふぃ~!」

 

 飲ませたくせに~!

 ニヒルな笑みを浮かべるとちー姉は再び冷蔵庫に手を伸ばす。おもむろに取り出したのは一つ星輝く缶だった。そしてプシュッ! と景気の良い音を立てさせると、ゴクゴクと喉を鳴らして噴き出す泡ごと飲み出した。

 

「ふむ。本当なら一夏に一品作らせるのだがな……。我慢するか」

 

 規則に厳しいちー姉がビールに舌鼓を打つのに皆唖然としてる。ラウラちゃんとか目を瞬かせたり目を擦ったりして、自分の目を疑っている。

 

「おかしな顔をするなよ。私だって人間だぞ。酒くらい飲む。それともなんだ。私は作業オイルを飲むような物体に見えるか?」

 

 ちょっと想像してみよう。尽く生徒の不義を締め上げていくちー姉がオイルを煽る姿を。……似合ってるぅウグッ!

 

「そら手が止まっているぞ。もっと飲むが良い」

 

「…………!!!」

 

 ぱたぱた! 口に突っ込まれた缶を押しのけることも出来ず劇物が胃の中に押し込まれる。の、喉が! 喉が焼けちゃう!

 

「さて、もう一度問うぞ。私はそんなオイルを飲むような物体に見えるか?」

 

「い、いえ! そういうわけではありませんわ!」

 

「そ、そうですよ。そんなわけがないですよ!」

 

 …………ピクッ、ピクッ。

 

「ひ、響ー!」

 

「お姉様-!」

 

「さて、前座はここまででいいだろう。そろそろ肝心の話をしよう」

 

 これが、前座だと……!? なんということだ。私は前座で死にそうになったらしい。本編に入ったら、私どうなっちゃうんだろう。

 

「お前ら、あいつのどこが良いんだ?」

 

 あ、良かった。私には関係のない話だ。ゆっくり休めそう。

 

「わ、私は……ただ昔よりも腕が落ちているのが腹立たしいだけで……」

 

「あ、あたしだって腐れ縁なだけで……」

 

「く、クラスの代表としてしっかりしてほしいだけでして……」

 

 箒ちゃんを皮切りに、視線を向けられていた鈴ちゃんとセシリアちゃんも口々にもごもごと言った。でも本音とは真逆のことで誤魔化そうとしてる。

 

「ふむ、そうか。ではそう一夏に伝えておいてやろう」

 

「「「言わなくて大丈夫です!」」」

 

 が、そんなものちー姉には通じない。酔っ払いに弄ばれて大慌てです。身から出た錆を綺麗に剥がれていた。

 

「えっと……、優しいところです」

 

 遅れて顔を真っ赤にしたシャルちゃんが呟いた。

 

「強いところでしょうか……」

 

 ラウラちゃんも迷いながら答えた。

 

「あいつは誰にでも優しいぞ。それに弱いだろ」

 

「ははは……、そうなんですよね」

 

「私よりは、ずっと強いです」

 

 一兄だしね~。

 

「それなら、聖だって似たようなものだろ。どう違う? 強さなら比べものにならないほどのものがあり、目立たないがあいつも優しい。そこのところどうだ、響?」

 

「ふぇっ!? ふぇーっと……、そう、でふね……。踊ふんは、ほっへも優しい人です。わはひひたいにすふに手をはすわけしゃないでふへど、ひふも見守ってふれてるって感しさせてくれまふ。ふかひいひめはへへふぁほきも……」

 

 あれ? なんか皆が微妙な表情を浮かべてる。

 

「これ飲みなさい」

 

 鈴ちゃんから飲みさしのオレンジジュースを貰ってしまった。

 

「私のも飲め。今のは何とか理解出来たが、何を言ってるかほとんどわからん」

 

「僕のもどうぞ」

 

「私のもやろう」

 

「私も「「「「「お酒はダメですよ!?」」」」」……それもそうか」

 

「あひはほう?」

 

 忘れてた。

 受け取ったジュースで口を冷やす。おぉ……生き返るぅ~。

 

「それでなんて言ったの?」

 

「えっと……踊君はとても優しくって、いつも見守っていてくれる人だよ、って。私が虐められてた時もいつだって傍にいてくれたんだ」

 

 いやー、懐かしいな~。あの頃は大変だった。

 

「響さんが虐めを?」

 

「ちょっと意外かも」

 

「私の知るお姉様とはかけ離れているな」

 

 同感。あの頃の私が今の私と会ったら多分ビックリしちゃうだろうな。

 

「そうだったのね。だからあたしをほっとけなかったわけね」

 

「うん。除け者にされる悲しさや寂しさはよく知ってるから。……そして、誰かが傍にいてくれる嬉しさや喜びも、ね」

 

 どんなに辛くても、踊君が、未来がずっと傍にいてくれたから、私は今もこうして笑える。だから今度は私の番だ、そう思った……のかな。よく覚えてないや。

 

「ああ、響の言う通りだ。お前と一夏がいてくれたから、私は救われた。今更かもしれんが、その……感謝する」

 

「ど、どういたしまして」

 

 えへへ、なんかこう面と向かって真剣に言われるとちょっと照れるや。

 

「…………ちょっと待て。それはいつの話だ? 響が虐められている等という話はきいたことがないが」

 

「うぇへ!? そ、それはもう物凄く前で、ちー姉や一兄と合うよりもずっと前の踊君と一緒にいたころの話です」

 

「そうだったのか……。何があったのか聞かせてくれないか?」

 

 ちー姉に詮索されてちょっと焦った。何とか誤魔化せたから良かったけど、言わないわけにはいかなさそうだ。

 

「うん。えっと……」

 

 どこから話そうかな……。




次回は、
長い間語れずにいた空白期間のお話、具体的には第五話から第六話の3年間のお話になります。
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