ホウエン地方は何処も思春期   作:秋月月日

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 今回は少し下ネタが少なめで、砂糖要素が少し多めです。

 うぅ、評価で「気持ちが悪い」と言われてしまった……やっぱり人を選ぶみたいですね、この作品……。

 で、でも、僕はやめない! 次回こそは、次回こそは下ネタ大量でいってやるんだからぁっ!



思春期の心は儚く脆い

 カナタとナギに在らぬ誤解が生まれた翌日、カナタはポケモンセンターの食堂で朝食を摂っていた。

 彼と同じテーブルにはナギとユウキとハルカの姿があり、彼らもカナタと同じようにモグモグガツガツと朝食を胃の中へと流し込んでいた。ポケモンセンターの食堂は基本的にバイキング制なため、四人の朝食には大きな違いが表れている。

 

「カナタは相変わらずご飯派なんだね」

 

「朝は米を食わねえとやる気というか力が出ねえかんな……っつーか、そういうお前もご飯を食べてんじゃん」

 

「僕はパンとご飯を交代で食べてるから。やっぱりバランスが大事だと思うんだよね」

 

「ふーん」

 

 やはり朝食一つ取っても多種多様で十人十色であるらしい。そういえば、ずっとパンが主食だったイッシュ地方で、最近急激にご飯の需要が伸びているとかいうニュースがあったっけ。文化というのは世界を飛び越えてしっかりと根付いていくものみたいだな。

 あむっ、とご飯を口に入れて咀嚼する。カナタはご飯のお供として味付け海苔を特に好んでおり、今回の朝食もご飯を海苔で巻いて食べるというシンプルな食事法を選んでいる。海苔の味だけでご飯二杯はイケるかも、と茶碗一杯の白米をがつがつと食べ終えていく。

 茶碗の中身が無くなり、カナタは「ふぅ」と一息吐く。

 そして隣に座っているナギと彼女の向かいに座っているハルカの器にちらっと視線を向ける。

 

 バナナとヨーグルトとミートボール。

 

「む。どうした、カナタ? 私の顔をそんなにじろじろ眺めて」

 

「いや、やっぱり重症なんだなぁって思っただけです」

 

「???」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 朝食を摂り終えたカナタ達はポケモンセンターを後にし、ムロの洞窟へとやってきていた。

 

「おい、ユウキ。こんなところで何する気だよ」

 

「なにって、カナタのポケモンを鍛えるんだけど?」

 

「は? 俺の?」

 

 うん、とユウキは小さく頷く。

 

「僕とハルカは昨日の内にバッジを手に入れてるから分かるけど、カナタの今の手持ちはムロタウンジムと相性最悪なんだよ。この町のジムは格闘タイプが専門で、水タイプと毒タイプ、それと草タイプのポケモンしか持っていないカナタとはとてつもない程に相性が悪い。一発逆転の切り札を持っているなら話は別だけど、ジュプトルもドククラゲもそんな技は覚えていないだろう?」

 

「そりゃまぁ、そうだけど……」

 

「カナタは僕やハルカと違って飛行タイプのポケモンを持っていない。せめてエスパータイプのポケモンがいれば話は別なんだけど、トウキさんはエスパー・格闘タイプのアサナンを手持ちにしているから、最高の相性という訳にはならない。――故に、カナタはポケモンのレベルをぐっと上げてレベル差でゴリ押しするしか戦法はないんだ!」

 

「な、なんだってー!」

 

 慈悲なく言い渡された判決に、カナタは凄くワザとらしい叫びを返した。

 というか、確かにユウキの言っている事はもっともだ。カナズミジムの時はこちらが相性で優っていたから良かったものの、実力で言うならばこちらの方が劣っていた。――つまり、相性が不利になった場合、カナタは普通に負けてしまう。おそらくだが、カナタはミシロトリオの中では最も弱い。相性云々は別としても、手持ちの多さと手持ちの実力で普通に差がついてしまっている。

 ユウキは腰のホルダーからボールを手に取り、

 

「カナタのドククラゲは僕とハルカのどのポケモンよりもレベルが高いだろうから良いとして、問題はジュプトルだ。物理防御が高い格闘タイプのポケモンを打倒するためには特殊技が必要だけど、ジュプトルが覚えている特殊技は“すいとる”だけ。物理技である“タネマシンガン”と“はたく”は今回のバトルでは使えないと思った方が良いだろうね。あ、因みに“でんこうせっか”は相手を翻弄させるために必要になると思うから、そのつもりで」

 

「了解!」

 

「それじゃ、早速始めよう! 君の出番だ、マクノシタ!」

 

「まくっ!」

 

 ユウキが持つボールから現れたのは、餅巾着の様な頭が特徴のポケモン――マクノシタ。攻撃力と体力が高い格闘タイプのポケモンで、ムロタウンジムのジムリーダーであるトウキが手持ちとして愛用しているポケモンだ。

 カナタは「よーっし」と前髪を手で掻き上げ、ホルダーから取り出したボールを前に向かって放り投げる。

 

「きっちり鍛えてもらおうぜ、ジュプトル!」

 

「ジュプトォーッ!」

 

 シャッ! と両腕のブレードを構えるジュプトル。もっとレベルが高くなれば強力な物理技“リーフブレード”を覚える事が出来るのだが、流石に今回のジム戦までにそこまで育て上げるのは困難だろう。せめてトウキのポケモンに苦戦しないぐらいのレベルにするのが今回の特訓の目的だ。

 カナタとユウキは小さく笑みを浮かべ、ほぼ同時のタイミングで互いのポケモンに指示を飛ばす。

 

「ジュプトル、“でんこうせっか”でマクノシタを翻弄しろ!」

 

「マクノシタ、“つっぱり”で迎撃するんだ!」

 

 ユウキによるジュプトル特訓メニューが幕を開けた。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

「…………」

 

「ん? どうかしたんですか、ナギさん?」

 

「いや、別に大したことじゃないんだが……」

 

「???」

 

「私が持っている“つばめがえし”の技マシンをカナタにあげれば良いんじゃないか? って思ってな……」

 

「…………あー」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 陽が真上に昇るまで特訓を続けたカナタ達は、ムロの洞窟の外に出て昼食を摂っていた。今回の昼食のメニューは多種多様な味を揃えたおにぎり。因みに、作ったのはナギとハルカだ。

 昆布が入ったおにぎりを頬張りながら、カナタは個人的な感想を述べてみる。

 

「美味しいですねっ、このおにぎり。ナギさんって料理もできるのか……」

 

「まぁ、君と出会うまでは一人でホウエン地方を飛び回っていたからな。料理が出来ないと色々と不便だったんだ」

 

「私も頑張ったんだよーっ! えーっと、それとこれとあれが私の自作です!」

 

「「じゃあそれ以外を食べさせてもらう」」

 

「二人揃って酷くない!?」

 

 キッパリと言い放つカナタとユウキにハルカは「がーん!」と涙目で露骨にショックを受けた。三人のコントのようなやり取りに、ナギは口元を隠して小さく噴き出した。

 ユウキの口に無理やりおにぎりを押し込もうとするハルカを羽交い絞めにしながら、カナタはナギの方に顔を向ける。

 

「そういえば、ナギさんってどんなポケモンを持ってるんですか? 見た感じ飛行タイプ使いっぽいですけど……」

 

「確かに私は飛行タイプ専門のトレーナーだが……どうして見た感じで分かったのだ?」

 

「あ、えと、それは……」

 

 カナタは気まずそうに数秒ほど視線を彷徨わせ、

 

「露骨な飛行士ファッションだったんで、もしかしたら飛行タイプ使いなのかなー、って思いまして……」

 

「え゛」

 

 凄く申し訳なさそうに放たれた辛辣な言葉にナギの身体がピシリと固まった。薄らと浮かんでいた微笑みは引き攣った笑みへと早変わりし、目尻には微かに涙が浮かんでいるのが見て取れる。

 ナギはゆっくりと立ち上がり、カナタ達三人から少し離れた波打ち際まで移動したところで膝を抱えてしゃがみ込んでしまった。

 カナタは冷や汗を大量に掻きながらも彼女の傍まで走り寄り、

 

「べ、別に良いじゃないですか、飛行士ファッション! お、俺は好きだなー格好良くて!」

 

「…………露骨って言われた」

 

「わ、分かり易いたとえが上手く思い浮かばなかったんですよ! そ、そうです! ナギさんの格好、空を飛び回る鳥ポケモンみたいで素敵じゃないですか! よっ、世界一の鳥ポケモン使い!」

 

「…………ちょっと、一人にしておいてくれ」

 

「わ、悪かったです、俺が悪かったですから元気出してください! ほ、ほら、海の上にペリッパーの群れがいますよー!」

 

「…………どうせ私にそっくりだとか言うつもりなのだろう?」

 

 ブバァッ。

 

「う……うわぁあああああああああああああああああんっ!」

 

「ぷっ、くくっ……ま、待って! 今笑ったのは……くふぅっ……わ、ワザとじゃないんです! だから待ってくださいナギさんっ! ナギさぁーんっ!」

 

 零れる涙を腕で拭いながら島の森の奥へと駆けていくナギを、カナタは全速力で追いかけた。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

「あの二人、さっさとくっつけば良いのにね」

 

「まぁでも、すれ違ってるカナタとナギさんを見てると面白いから良いじゃん! あの初心な感じの恋愛模様、私は大好きだなぁっ!」

 

「君はそういう子だったね……」

 

「たはは。野次馬根性はホウエンでも五本の指に入ると自負しております!」

 

「あ、そ。……そういえば、ハルカもやけに仲の良い異性の友達がいたよね? ほらあの、トウカシティで君のお父さんからジグザグマを借りていた少し年下の男の子」

 

「…………ナンノコトデショウカ」

 

「分かり易っ! ほらあれだよ、えっと、名前は確か……ミツ――」

 

「そ、そんな事よりバトルしようぜ!」

 

「(ニヤニヤ)」

 

「ぐふぅっ! そ、そのニヤケ顔を今から私が絶望フェイスに早変わりさせてやんよっ! 覚悟しろやコラーッ!」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 笑いを必死に堪えながら追いかけてきていたカナタを全力で振り切ったナギは、ムロの森の奥深くまで来たところで足を止めた。

 前後左右に視線を向け、ナギは乱れていた呼吸を深呼吸を駆使して正常化させ――

 

「……やばい、迷った」

 

 ――冷や汗が頬を伝って地面に落下した。

 右も向けども左を向けども森・森・森。ポケモンを出して空に移動できないかと上を見てみれば、そこには無駄に成長したことで空への道が封鎖されてしまっている光景が広がっているだけ。――つまり、元来た道を戻らない限り、脱出は不可能という訳だ。

 とにかく今は落ち着こう。そう判断したナギは傍にあった岩に腰を下ろし、「はぁぁ」と顔を両手でビッチリと覆って溜め息を吐いた。

 

「汚れても良い服を好んで着るようにしていたが、まさかよりにもよってカナタに爆笑されてしまうとは……はぁぁぁ」

 

 別にカナタも笑おうとして笑ったわけではないのだが、傷心気味の乙女は思い込みが激しいもの。今の彼女に何を言っても無駄になるのは目に見えている。彼女に追い付き次第カナタがやるべきことは、全力の謝罪と全力の土下座、この二つだけである。

 ナギは顔に当てていた両手を拳に変換し、自分が座っている岩に向かって何度も何度も振り下ろす。

 

「カナタのバカ、カナタのバカ、カナタのバァアアアアアアアアアアカッ!」

 

 子供の癇癪のように叫びながら何度も何度も岩を叩くナギさん(21歳)。普段はクールな思春期ガールであるナギだが、今ばかりは幼い子供の様に見えてしまっている。それほどまでに自分の飛行服を笑われたのがショックだったという事だ。

 拳が痛くなってきたところで空気を吸い、右足の踵を思い切り岩の表面に叩き付ける。――その直後。

 

「わわっ、と……?」

 

 座っていた岩が突然持ち上がり、ナギの身体を振り落とした。

 何が起こったのかがいまいち分からないナギは着地と同時に立ち上がり、不思議そうに後ろを振り返る。

 

 お怒りモードのゴローニャ爆誕☆

 

「……………………うわーお」

 

 そして。

 ナギが顔を全力で引き攣らせて一歩後退した瞬間、

 

「グォオアアアアアアアアアアアアッ!」

 

「うわぁああああああああああごめんなさぁあああああああああああああいっ!」

 

 ナギVSゴローニャの鬼ごっこが幕を開けた。

 

 




 感想・批評・評価など、お待ちしております。

 次回もお楽しみに!
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