ホウエン地方は何処も思春期   作:秋月月日

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 二話連続投稿です!

 さぁっ、嵐の前の静けさが終わった全力投球行きますよ!


ハルカちゃんは思春期

 森の奥へと姿を消したナギを追いかけていたカナタは、一旦ユウキ達の元へと戻ってきていた。理由は簡単。なんか凄く迷子になるフラグがビンビンだったからだ。

 ジュプトルを従えたカナタはヌマクローを従えたユウキに言う。

 

「俺はジュプトルの森での性能を生かして森の奥地までを捜す。ユウキ、お前は森の手前側を捜索してくれ」

 

「分かった。なるべく迷子にならないように気を付けよう。もし何かあったら信煙弾を空に放ち、ナギさんを見つけ次第ポケナビに連絡を入れる事。……ここまでで何か質問は?」

 

「はいはーい! 私はどうすればいいのっ?」

 

 ぴょんぴょんと跳ねながら一生懸命手を上げるハルカ。彼女の傍ではワカシャモが彼女と同じようにぴょんぴょん跳ねまわっている。相変わらず似た者同士だな、とカナタとユウキは少しだけ表情を和らげた。

 自分も仕事が欲しい! と全力でアピールしてきているハルカの肩をカナタは優しく叩き、

 

「ノワキの実、って聞いて何が最初に思い浮かぶ?」

 

「イボイボが付いたバ〇ブ!」

 

「よし、役立たずはここで待機だ」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 下ネタが原因でハルカに待機命令が出された頃。

 ナギは森の中にある湖の畔で満身創痍になっていた。

 体は汗でベタベタに、それが原因で飛行服が体にくっついてしまっていて凄く気持ちが悪い。急に走ったせいで肺の中が二酸化炭素だらけになってしまっている。――うぇっ、吐きそう……。

 飛行帽を脱ぎ、湖の水面に頭を突っ込む。熱を持っていた頭部が水によって冷却されていき、気持ち悪さが少しだけだが軽減した。

 ぷはっ、と湖から頭を抜き、ぶるぶると左右に勢いよく振る。

 

「ふはぁ。とりあえず、これで少し休めば体力は回復するだろう。……まぁ、身体の汗だけはなんとかしたいものだがな」

 

 そう言うや否や、ちらっと湖を横目で見るナギ。先ほど頭から浴びて分かったが、ここの水温は汗を流すのに怖ろしいほどに適している。――水浴び、したいなぁ。

 右を見る――人の姿はない。

 左を見る――人の姿はない。

 後ろを見る――ココドラが気持ちよさそうに眠っている。

 

「――――よし」

 

 周囲に人影がない事を確認したナギは岩陰に隠れていそいそと脱衣作業を始めた。靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、飛行服を脱ぎ、下着を脱ぐ。一糸纏わぬ姿のナギが爆誕した。

 周囲を警戒しながらゆっくりと爪先から湖に入っていく。ちょうど良い冷たさが肉体を刺激し、思わずぶるっと震えてしまう。

 下半身が水温に慣れたところでその場にしゃがみ込み、ゆっくりと肩まで身体を沈めた。……うむ。やっぱり心地よい水温だな。

 全力疾走のせいで火照っていた身体が冷えていくのを実感しながら、ナギは手桶で身体に水を何度もかけていく。

 

「――ハッ! これはエロ同人誌的に言う『女トレーナーが入浴中にポケモンに襲われて抵抗出来ぬままに【自主規制】されてしまう』というような状況と瓜二つなのでは!?」

 

 ツッコミ不在警報発令中。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 役立たずなハルカをムロの洞窟近くで待機させたカナタはジュプトルと共に森の中を駆け回っていた。途中途中で襲い掛かってくる野生ポケモンを倒しながらの移動なため、ジュプトルのレベルが否が応にも上がっていくというオマケ付きである。

 “はたく”でジグザグマをノックアウトさせ、養分をたっぷり含んだ土を蹴り上げながら先を急ぐ。

 

「ジュプトル! ナギさんの姿は見えたか?」

 

 カナタの問いに左右に首を振るジュプトル。もりトカゲポケモンと言われるだけあり、ジュプトルの森での能力は他のポケモンとは比べ物にならない程に高い。そのジュプトルが首を振っているのだから、これは本当にナギが見当たらないという事で間違いはない。

 チッ、とカナタは吐き捨てるように舌を打ち、

 

「地面の割れ目とかに落ちてなきゃいいんだが……ッ!」

 

 実は湖で水浴び中なのだが、そんな事など知る由もないカナタは全力でナギを捜しながら全速力で駆けていく。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

「そういえば、『割れ目』って言葉、なんかそこはかとなくエッチだよね」

 

「しゃも?」

 

「あー、うん。全力で下ネタを言ってもツッコミが無いとなんか虚しいよね……」

 

「しゃも……」

 

「あーあ。早く三人とも戻ってこないかなぁ」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 湖で汗を流し終えたナギは素早く服を身に纏い、再び森の中を歩きはじめた。野生ポケモンに襲われた時の為の対策なのか、彼女の傍にはヤシの葉のような翼と首元のバナナが特徴のポケモン――トロピウスの姿がある。

 ナギはトロピウスの身体に手を当てながら、慎重に足を進めていく。

 

「トロピウス。もし野生ポケモンが襲い掛かってきたら、なるべく傷つけないように一撃で撃破するんだ。相手に無駄な疲労を蓄積させないこと。これがジムリーダーとして私が罪なき野生ポケモンたちに行える唯一の戦術だからな」

 

 こくん、とトロピウスは長い首を少しだけ下げ、了解の意志をナギに示す。

 直後。

 野生のゴローンが真横から突然襲い掛かって来た。

 

「ッ!?」

 

 予想外の方向からの襲撃にナギは目を見開いて驚愕するが、すぐに意識を切り替えて現在の状況で最も妥当な戦法をトロピウスに冷静に伝える。

 

「ゴローンを翼で受け流してからの“マジカルリーフ”!」

 

「ッ!」

 

 ナギの指示に疑いを見せることなくトロピウスは言われた通りに巨大な翼を駆使してゴローンを右から左に受け流し、指示された瞬間に発動していた“マジカルリーフ”をゴローンの身体に一気に叩き込んだ。空中に放り出されていたゴローンは回避行動をとる事が出来ずに直撃。さらにタイプ相性が最悪の“マジカルリーフ”に耐えられず、重力に従う形で地面に勢いよく落下した。

 僅か五秒ほどでゴローンを撃破したナギは「ふぅ」と額の汗を手で拭う。

 

「カナタの旅に同行し始めてからバトルをしていなかったが、まだ腕は衰えていないみたいだな。あー、よかったよかった。バトルの腕が落ちた状態でカナタ達と戦いたくはないからなぁ」

 

 ナギがジムリーダーである以上、いつかはカナタ達三人と戦わなくてはならない日が来る。そしてそのバトルの日こそが――カナタとナギがお別れする日でもあるのだ。

 

「ヒワマキシティまでの旅、か……まぁ、このペースで行けば、ヒワマキシティまでちょうど二か月半ぐらいといったところだろうからなぁ。有給も終わるし、致し方ない事なのだが……」

 

 何でこんなに胸がモヤモヤするのだ? と首を傾げる。彼女の隣のトロピウスは『相変わらず鈍感なご主人様だなぁ』と半ば呆れ返ったような表情を浮かべていた。

 ナギは「うーむ」と呻き、飛行帽の上から頭をガシガシと掻く。

 

「ま、今はそんな事に頭を悩ませている場合ではないな。とにかく今はこの森から脱出しよう。話はそこからだ。――そうだろう、トロピウス?」

 

 肩を竦めながら同意を求めるナギにトロピウスが大きく頷き、首元のバナナが大きく揺れた。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

「そういえばさ、ワカシャモ。バナナとナナの実って色は違うけど見た目はそっくりだよね」

 

「しゃもっ」

 

「そこで私は思ったんだけど……この二つの木の実の皮を剥いてチョコレートをふんだんに塗りたくり、先端にヨーグルトとか練乳をかけてみたら凄くエッチな感じになると思うんだけどどうだろう!?」

 

「しゃも……」

 

「…………まさかワカシャモにまで冷たい視線を送られるとは思いもしなかったなぁ」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 森の中を捜索すること約二十分。

 カナタはついにナギを見つけることに成功した。

 

「あぁっ! や、やっと見つけましたよナギさん! もうこれ以上は逃がしませんからね――ってトロピウス!? も、もしかしてそいつ、ナギさんの手持ちポケモンだったりします!? なるほど、鳥ポケモンだけじゃなくて飛行タイプ全般の使い手なのか……」

 

「……鳥ポケモンじゃなくて悪かったな」

 

 ぶすっ、と口を尖らせて皮肉を言うナギにカナタは顔を引き攣らせる。

 カナタはぐっと表情を引き締め、勢いよく頭を下げた。

 

「ごめんなさい、ナギさん! 今回は俺が十割方悪いです! その服、実は結構似合ってるし個人的にはオーケーだと思います!」

 

「……本当か?」

 

「ええもうそりゃ本気で本当で本心です! だからその、さっきの発言を許してくれればありがたいなぁって思ったり……」

 

 頭を下げた状態で慈悲を求めるカナタくん。女性を怒らせてしまった時は全力で謝罪する。これが許しを請う際の鉄則だ。無駄に強がったり相手の責任問題を口に出してしまったら最後、自分の人生が終わると思え。

 地面と睨めっこを続けながらだらだらと冷や汗を流すカナタ。頭を下げた状態をキープするのはなかなかに辛く、さらにナギの鋭い視線が後頭部に突き刺さっているために緊張感が半端ない。ヤバイ、プレッシャーが凄まじい……ッ!

 恥も外見も無く謝罪の姿勢をキープし続けるカナタにナギは「はぁ」と溜め息を吐き、

 

「歩いている途中に足が挫けて動けない」

 

「…………は?」

 

「だから、歩いている途中に足が挫けて動けない、と言っているのだ」

 

「いやその、それは分かったんですけど……何故にこのタイミングでそれを?」

 

「~~~ッ!」

 

 一向に分かってくれないカナタにナギは頭を乱暴に掻き、

 

「許してほしいのだろう? だ、だったら、私を森の外まで運んでくれ。それで今回の事は水に流してやる」

 

「……それだけでいいんですか?」

 

「なんだ。君は私をずっと怒らせていたいマゾヒストなのか?」

 

「いえ、俺はユウキと同族ではないんで違いますけど……」

 

 森の向こうから「さぁっ、ポケモンたち。もっと僕に攻撃を加えておくれ!」という叫びが聞こえてきたが、カナタは全力でスルーした。あの野郎、真面目にナギさん探してねえじゃんか……。

 ナギが言っているのはつまり、『歩けないから外まで運べ』という事だろうか? そんな事で許してもらえるなら願ったり叶ったりだが……本当にそれだけでいいのか? なんか、後からいろいろと請求されそうで怖いんですけど……。

 カナタは浮かび上がる疑問に首を傾げつつも、

 

「分かりました。そんな事でいいのなら、喜んでやらせてもらいます」

 

「お姫様抱っこで頼む」

 

「……分かりました」

 

 あの持ち方、結構辛いんだけどなぁ。

 幼い頃の経験でお姫様抱っこのマイナス面を知っているカナタはひくひくと顔を引き攣らせるが、今の彼には拒否権はないため、渋々ながらにナギの身体を御姫様抱っこで持ち上げた。……なんかトロピウスとジュプトルがニヤニヤしてるように見えるんだけど気のせいか?

 ふらふらと左右にふらつきながらも、ナギを抱えたカナタは森の外を目指して歩き始めた。

 

「む。そういえばこの体勢、君から私の揺れる胸が丸見えだな。――どうだ、興奮してきたか?」

 

「木の幹に投げ捨てんぞこの思春期女!」

 

 




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 次回もお楽しみに!
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