ホウエン地方は何処も思春期   作:秋月月日

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 二話連続投稿でぇす!


ナギさん無双

 まぁ、五分と掛かりませんでしたよね。

 

「マクノシタ、戦闘不能! ジュプトルの勝ち! よって勝者、挑戦者カナタ!」

 

「よっしゃぁああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

 フィールドのほぼ中央で目をぐるぐると回すマクノシタをトウキが悔しそうな顔で回収する中、カナタはジュプトルとドククラゲと抱き合っていた。いやまぁ、ドククラゲはぶっちゃけ何もしてないんだけど、そこはほら、大切な仲間だから喜びを分かち合う的な感じだよ。戦闘に参加してなくても一緒に喜ぶものなんだよ!

 ジュプトルの予想外の活躍で無事に貞操を護り抜く事が出来たカナタはトウキの元へと歩み寄り、

 

「ば、ばばばばばばバッジをく、くくくくくださいいいい」

 

「そんなに恐怖しなくても良いよね!? 約束通り、君と一晩過ごすのは止めるっていうのに!」

 

「うぅ。で、でも…………本当に大丈夫?」

 

「あぁっ、やっぱり可愛い! やっぱり今夜、オレの家に来な――「奥義! “つばめがえし”!」――ぶげらぁっ!」

 

 目はキラキラで頬は仄かに朱く染まり、トドメとばかりに鼻息を荒くしていたトウキの側頭部を観客席から全力ダッシュしてきたナギが勢いよく蹴り飛ばした。ベキィッ! と凄くヤバい感じの音がジムの中に鳴り響き、トウキがバトルフィールドの壁に凄まじい速度で激突する。――こうかはばつぐんだ!

 飛び蹴りの後にシュタッと華麗に着地を決めたナギはカナタをむぎゅぅっと抱きしめ、壁の染みと化したトウキに向かって叫び散らす。

 

「いい加減にせんか馬鹿者! 君のような変態にカナタをあげるわけにはいかない! というか、その身なりで男の娘専門のホモとか、もはや懲役ものだぞ!?」

 

「ぐ、ぐるじぃっ。いぎががががががが!」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 窒息寸前でナギのおっぱいホールドから解放されたカナタはナギの後ろに隠れながらトウキの傍まで近寄った。子供のように背中に触れてくるカナタにナギは顔を紅蓮に染めていたが、カナタはそんな彼女の様子には気づかずにぐいぐいと背中を押していた。

 パラパラと破片を振りまきながらトウキは立ち上がり、いつの間にか傍にいたジムトレーナーが抱えていた箱の中からジムバッジと技マシンを取り出し、恐る恐るといった様子で差し出されているカナタの手に優しい手遣いで手渡した。

 

「イテテテ……こ、これがオレに勝利した証、ナックルバッジだ。そしてこっちは技マシン08、中身は“ビルドアップ”だね。オレの厚意だと思って受け取ってくれ」

 

「待て、待つのだカナタ。まずはバッジと技マシンを消毒するのだ。そして君の両手を殺菌消毒し、綺麗な水で洗浄し、二日間ほど天日干しする。そこまでしてようやっと、このクソ変態ホモ野郎のエキスが君の身体から離れてくれるはずなのだ!」

 

「落ち着いてナギさん! それは逆に俺の細胞が死滅しちまう危険性がある!」

 

「む。それもそうだな」

 

 カナタの叫びに冷静さを取り戻したナギは顎に手を当ててしばしの間熟考する。結局は二人ともトウキのフォローを入れてない訳なのだが……まぁ、トウキの性癖が原因なのでノーコメントとしておこう。

 カナタの体温を背中に感じている事で普段よりも頭の回転が速いナギは「む。これなら良いかもしれないな」と両手をポンと打ち、

 

「この変態ホモ野郎をサーファー大好きクラブに献上しよう」

 

「どうせパワーアップして戻って来るだけだから断固として却下です!」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 ホモの巣窟ムロタウンジムを後にしたカナタ達四人はムロタウンの桟橋へとやってきた。

 彼らがここに来た目的はただ一つ。例のエロジジイの船を使ってカイナシティに行くためだ。

 

「はぁぁ……酷い目に遭った……あの時ナギさんがトウキさんを蹴り飛ばしてくれなかったら、俺マジでヤバかったかもしれんね。本当、サンキューですナギさん」

 

「別に大したことはしていないさ。仲間を護るのは当然だし、君の貞操は私のものだからな」

 

「後者については今回だけはスルーツッコミで許してやります」

 

 助けてもらった恩もあるし、とそっぽを向いて小さくつぶやくカナタにハルカとユウキは苦笑する。相変わらずカナタはツンデレだなぁ。というか今、ナギが告白ギリギリなこと口走ってたけど、言った当人も言われた当人も全く気付いてないよね。……あー、なんかじれったい。

 早くくっつけ! というユウキとハルカの視線に気づかない鈍感ボーイことカナタは桟橋の上を歩いていく。

 と。

 そんなカナタ達の視線に、予想外――という訳でもないが、とにかく凄くストレスが溜まる光景が映り込んできた。

 その、光景とは――

 

『うひょひょひょ! 眼福眼福。107番水道を泳ぐ水着のおねえさんの揺れる乳とムチムチの太腿がまたなんとも言えないわい! ほれ、ピーコちゃんもそう思うじゃろう?』

 

『リキ、リキィ!』

 

『ひょっひょっひょ! 嫉妬なんて可愛いのう、ピーコちゃん! ――おぉっ!? い、今、水着のお姉さんの水着が波にさらわれたように見えなかったか!? うひょひょ! 双眼鏡で眼福じゃーっ!』

 

 ………………………………スチャ。

 

「カナタ、君に決めた!」

 

「いよっしゃストレス発散だぁあああああっ!」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 ハリセンで目も当てられない程にエロジジイを叩きのめした後、カナタ達四人はカイナシティの真下のカイナビーチまで無事に到着する事が出来た。カナタたちをカイナビーチまで送り届けたエロジジイは痣と傷だらけの顔で涙を流しながら「はい、マジですいません。だからそろそろ家に帰してください。はい、はい、反省してます」と決死の土下座によって遂に解放され、凄まじい速度で自宅へと戻って行った。去り際に『絶対におっぱいを揉みしだいてやるから覚悟しやがれ!』とかいう叫びが聞こえ、ナギが額にビキリと青筋を浮かべていたのがなんとも言えなく怖ろしかった。

 そんなこんなで無事にカイナビーチへと降り立った四人はというと。

 

「さぁやってきましたカイナビーチ! ビーチと言えば海、海と言えば海水浴! という訳で、今日は羽目を外して泳ぎまくっちゃおう! うっへっへ! エロいお姉さんたちがたくさんいるねぇ。これは事故に見せかけておっぱいを揉みしだいちゃわなきゃ失礼ってもんだよ……ヴェッヘッヘ」

 

「ハギ老人が憑依したみたいに最低な顔してるよ、ハルカ。――あ、僕、浮き輪借りてくるね」

 

「私も着いていきます、軍曹!」

 

「ハルカは単に海の家のお姉さんの胸を揉みたいだけだよね……? ――あ。カナタとナギさんは好きに泳いでていいですよ? それじゃっ」

 

 まぁ、海といえば水着回だよね――という状況になっていました。まる。

 青のワンピース水着を身に纏ったハルカと黒を基調として赤の炎の模様が入ったトランクスタイプの水着を身に纏ったユウキが海の家へと向かっていく中、パラソルの下で置いてけぼりをくらったカナタとナギは引き攣った笑みで大量の冷や汗を流していた。

 

((ふ、二人きりで遊べとか、究極の試練すぎる……ッ!))

 

 ただでさえ互いに気になっているという関係なのに、そこに水着姿で海で遊べという更なる試練が舞い降りるというこの状況。ハッキリと言おう。意識するなという方が無理である。

 黒を基調として緑の木々の模様が入ったトランクスタイプの水着を身に纏うカナタはちらっと横目でナギの姿を目視する。

 服の上からでも分かるほどに豊満な胸とむっちりとした尻が黒のビキニに覆われていて、きゅっとしたくびれがなんとも言えない大人の色気を醸し出している。腰の辺りまでの長髪は動きやすさ重視の為にポニーテールに纏められていて、普段は見ることのできない健康的な鎖骨が露わとなってしまっている。高身長なナギらしい、すらりと長い手足がギリギリのところまで露出されていて、トドメとばかりにギュギュっと押し付けられることで生まれた胸の谷間がどうしようもない程に色っぽい。

 結論。

 こんなエロい人と遊べとか無理ゲーすぎる。

 

「そ、そんなにジロジロ見られると、流石の私でも恥ずかしいのだが……」

 

「ふにゃあっ!? す、すすすすすいません!」

 

 顔を紅蓮に染めたカナタは身体を隠すように膝を抱えながら口を尖らせるナギから目を逸らす。正直なところ、膝で胸が押し潰されてるので今すぐにでも他の姿勢にシフトして欲しいんだけど、それはそれで目の毒になってしまうからぶっちゃけどうしようもないんです。……ありがとう、神様。ナギさんの水着姿が見られただけで俺は幸せです。

 目を逸らしながらもちらちらと横目でナギを見てしまうカナタ。もちろんその視線にナギは気づいていて、膝を抱えた状態で顔を真っ赤にしてしまっていた。

 

(う、うぅ。思い切って大胆な水着を選んだのは良かったが、まさかここまで恥ずかしい思いをするとは……い、いやまぁ、カナタを魅了することは出来ているから良いかもしれないのだが……そ、それでもこれは流石に恥ずかしすぎるというかなんというか……ッ!)

 

 どうにかしてこの状況を打破しなければならない。ユウキとハルカが気を遣って二人きりにしてくれたのだ。このチャンスを生かさないでどうする!

 

(武器は、何か武器はないのかっ!?)

 

 傍に置いてあった鞄の中をガサゴソと漁り、状況を一変させる事が出来るアイテムを捜索する。化粧用品――違う! ハイパーボール――違う! フェザーバッジ――違う! というか、それを今ここで取り出すといろいろとマズイ!

 何やってんだ? と訝し気な視線を向けてくるカナタに背中を向けた状態で、ナギは必死に捜索を続ける。――あった! これなら、このチャンスを生かす事が出来るに違いない!

 ナギは胸元で拳を握り、二回ほど深く深呼吸する。

 そして鞄から取り出した最強のアイテム――サンオイルをカナタに見せつけ、

 

「わ、私の背中にこのサンオイルを塗ってくれないか!?」

 

「単純だけど凄くハードルが高い行為を要求された!?」

 

 ナギの背中に触れるという史上最強の試練が、カナタの前に立ちはだかる!

 

 

 

「うへへへ。初のう初のう。やっぱりナギさんはカワええのう」

 

「君、本当に十八歳の女の子? 今の君をミツルくんが見たら凄く悲しむと思うんだけど」

 

「な、ななななななんでそこでみちゅっ、ミツル君の名前が出てくるのかなぁっ!? い、いいいいい意味が分からないなぁ!」

 

「君って本当に嘘が苦手だよね。ま、だからこそ弄り甲斐があるんだけど」

 

「マゾヒストが女の子を虐めるなんておかしいよね! ええい、くらえ! ハルカちゃんパーンチ!」

 

「ぐっふぁっ! も、もっと強く、もっと激しく殴って下さぁああああああい!」

 

 

 




 感想・批評・評価など、お待ちしております。

 次回もお楽しみに!
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