ホウエン地方は何処も思春期   作:秋月月日

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絡繰り屋敷はラッキースケベの宝庫です

 カイナシティのポケモンセンターで一泊し、海の科学博物館でアクア団と名乗る悪の組織とのいざこざを終えた後、カナタ達四人は110番道路にある怪しげな建物の前にやってきていた。

 『絡繰り屋敷』と書かれた看板が掲げられている建物を見上げながら、カナタは呆れの表情で言い放つ。

 

「……ここまで怪しさ満点な建物を今まで見た事ねえんだけど」

 

「確かに。流石にここまで怪しいと逆にスルーしたくなっちゃうよね」

 

 外見は普通の武家屋敷の様なのに、屋根や壁のあちらこちらに歯車や謎のレバーという中途半端に現代的な技術が取り入れられている。「怪しいですよ」と自分から全力でアピールしているような屋敷に、カナタとユウキは苦笑交じりに冷や汗を流す。

 そんな中。

 いつの間にか屋敷に接近していたナギとハルカは壁を突き破る形で設置されたレバーをきゃいきゃいと触りながら、

 

「ナギさんナギさん! このレバー、処女膜突き破った【自主規制】みたいですね!」

 

「うむ。サイズといい長さといい、絶妙な黄金比だな」

 

「テメェらのその絶妙なやり取りに俺は落胆を隠しきれねえよ!」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 そんな訳で、カナタ達四人は好奇心に負ける形で絡繰り屋敷へ足を踏み入れることにした。入室のギリギリまでナギとハルカはレバーで盛り上がっていたが、カナタのハリセンで頭を叩かれ、渋々といった様子で屋敷の中に蹴り入れられてしまったのだ。

 巨大なタンコブを頭に乗せてしくしくと泣いているナギとハルカをユウキが慰める中、カナタは自分たちが足を踏み入れた謎の和室を注意深く観察する。

 

「なんか、スゲー違和感のある部屋だな。特にあの掛軸の違和感が凄い」

 

「しくしく……ま、まぁ確かに、あの掛軸は何かを隠すかのように設置されているな。――そしてそこの机の下に誰かが隠れているという事を私は既に看破している! さぁっ、隠れていないで大人しく姿を現せ!」

 

『くっ! ワシの隠れ場所をものの数秒で看破するとは、これは面白いお客が来たようぞな!』

 

 そんな凄く露骨な叫びの直後、カナタの傍にあった机の下からもぞもぞと中年の男性が姿を現した。額に巻かれた鉢巻きに『我こそが絡繰り大王ぞな!』と大きく書かれているところがなんとも怪しさ満点である。

 あぁ、絶対にこの人も変人だな。今までの経験のせいで無駄に鋭くなってしまったカナタが疲れたように溜め息を吐く中、怪しい男はカナタ達の前まで移動して自己紹介を開始した。

 

「ワシこそが、この絡繰り屋敷の主、絡繰り大王なのであーる!」

 

「帰るぞ、みんな。このおっさんからは地雷の香りしかしない」

 

「ま、ままま待つのぞな、待ってくれなのぞなーっ!」

 

 迷う事無く踵を返すカナタに絡繰り大王は勢いよく縋りつき、

 

「ご、豪華な景品も用意してるのぞな! だから、だから頼むから我が絡繰り屋敷に挑戦してくれなのぞなーっ!」

 

「ええい、うるさい怪しい縋りつくな! 俺たちは先を急いでるんだ! こんな如何にもなトラップハウスで時間を潰してる暇なんてねえんだよ!」

 

「落とし穴に落ちる際にそこの巨乳の美人さんともみくちゃになれるぞな! 狭い道を通る際にそこの巨乳の美人さんの巨乳が押し潰される光景をマジかで見る事が出来るぞな!」

 

 ……ナギさんともみくちゃ? ナギさんの巨乳が押し潰される光景?

 さぁ、イマジン、想像してみよう。イメージトレーニングのお時間です。

 落とし穴の底に落下した際にナギが下敷きになってしまい、その上に馬乗りになってしまったカナタが彼女の胸を過失で鷲掴みにして揉みしだいている――そんな光景。

 カナタが横歩きで普通に通れる狭い道を、ナギが巨乳を歪めて「ん……くぅっ」と喘ぎながら通り抜けようと奮闘している――そんな光景を。

 …………せぇーっの。

 

「行きましょうナギさん! 時には息抜きも大事です! 俺たちの冒険はこれからだっ!」

 

「私にツッコミを求めるなんて君らしくないぞ!?」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 そんな訳で、絡繰り屋敷に挑戦する事になりました。

 絡繰り大王の口車に乗せられたカナタは仲間たちとの話し合いの末にナギと二人でチームを組むことになり、ユウキとハルカに見送られる形で絡繰り屋敷のトラップエリアへと踏み込んだ。

 畳と白い壁で構成された道を進みながら、カナタは頭を抱えて溜め息を吐く。

 

「はぁぁ……まさかあんなワザとらしい口車に乗せられるだなんて……」

 

「まぁ、君も私と同じ思春期だった、という訳だな。――ようこそ、思春期の世界へ」

 

「認めない! 俺はそんなの認めない!」

 

 ウェルカム☆ と親指を立てるナギにカナタは全力で抗議する。

 確かに絡繰り大王の言った『ナギともみくちゃ』『ナギの巨乳が押し潰されるのを間近で目撃』というなんとも魅力的なワードに釣られてしまったのは事実だ。それは認めよう。俺だって年頃の男なんだから、えっちぃ事に釣られてしまうのも無理はないんだ。うん。

 しかし。

 だからといって、俺がナギさんやハルカと同じ思春期だと言われるのだけは見逃せない! 俺は普通の人格者であり、常時下ネタを発したり下ネタで喜ぶような思春期では断じてない! そう、俺は潔白、世界で一番の常識人なんだ!

 うがー! と頭を抱えるカナタにナギは静かに苦笑を浮かべる。

 と。

 ナギが突然足を止め、左側の壁をジーッと凝視し始めた。

 

「どうしたんですか、ナギさん?」

 

「い、いや、少しこれが気になってな……」

 

「これ?」

 

 なにかトラップを解除するための仕掛けでも見つけたんだろうか。それとも何か下品な絵でも描いてあったか?

 露骨にうずうずとしているナギの後ろから顔を覗かせ、カナタはナギの視線の先にあるものを直視する。

 

 赤いスイッチ(『押せ!』と書かれた傍に『落とし穴が発動します』と書かれている)

 

「(うずうずうずうずうずうずうずうず)」

 

 あ、この人マジでヤバい状態だ。

 

「言っときますけど、絶対に押しちゃダメですからね?」

 

「わ、分かっている! だ、誰がこんな子供だましに引っかかるか! だ、大体、『押すな!』ではなく『押せ!』と書かれたスイッチを押すようなバカがこの世にいるわけがないだろう!」

 

「いや、そんな事言いながら全身震えてんじゃないですか。というか、ナギさんって『押すな!』と書かれたスイッチを見たら押したくなるし、『押せ!』と書かれたスイッチを見たら全力で押しに行くタイプでしょう?」

 

「わ、私はそんなに単純な女ではない! こ、こんな露骨な罠に引っかかるほど、私は単純では……」

 

 ポチッ←ナギがボタンを押す音。

 カパッ←ナギとカナタの足場が一瞬で消える音。

 

「オイコラナギさんテメェ」

 

「………………きゃは☆」

 

「結局その露骨な罠に我先にと引っかかってんじゃねえかよぉおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

「ご、ごめんなさぁああああああああああああああい!」

 

 好奇心旺盛な二人の思春期は、露骨な奈落の底へと一直線に落ちていく。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

「今、ナギさんとカナタの悲鳴が聞こえなかった?」

 

「ふぁぐ? ふぁふぁへほふぇふぇふぇ!」

 

「せめて口の中の饅頭が無くなってから喋りなよ」

 

 もっきゅもっきゅ――ごくんっ。

 

「多分、落とし穴に落ちて着地と同時にカナタとナギさんが性的にドッキングしちゃったんだと思うんだ!」

 

「はい、ハルカ。もっと饅頭を食べて口を閉じていようねー」

 

「そういえばさ、ユウキ。お饅頭っておま【自主規制が少し遅れました】を彷彿とさせる言葉に聞こえないかな? かな?」

 

「……少しだけ普段のカナタの気持ちが分かった気がするよ」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

「ん、ぅ……」

 

 ナギの好奇心の結果として落とし穴に落下したカナタは、ブラックアウトしていた意識をようやっと浮上させることに成功した。まさか落下の衝撃で気絶するなんて……どんだけ深かったんだよこの落とし穴。

 光から闇へと一瞬で移動したことで目に僅かな痛みが走るが、カナタは何度も瞬きする事でこれを緩和。徐々に闇に目が慣れてきたところで、カナタは思わず悲鳴を上げそうになった。

 

「(な、ななな何で俺がナギさんの胸の上に手ェ置いてんのぉおおおおおおおっ!?)」

 

 もにゅっ、という柔らかな感触が右手から脳まで走り、カナタはズザザザーッ! と凄まじい速度でナギの身体から距離を取った。ナギは未だに意識を失っているようで、カナタが過失で胸を揉んでしまった事には全く気付いていないようだ。

 未だにナギの巨乳の感触が残っている右手を何度も結んで開いてしながら、カナタはボンッ! と顔を紅蓮に染める。

 

「や、柔らかかったなぁ……なんかこう、マシュマロの様でそうでない様な……――って、俺は何言ってんだぁああああああああああッ!」

 

 ぎゃぁあああーっ! と頭を抱えて悶えるカナタくん十八歳。いつもはナギやハルカの下ネタに対してツッコミを入れているカナタだが、やっぱり性欲は人並みにはあるようだ。

 ガンガンガン! と落とし穴の壁に頭を何度も何度も叩き付ける。爆ぜろシナプス消えよ煩悩!

 そして。

 カナタの“ずつき”の騒音で眠りを邪魔されたナギは「ん、くふぅ……」と妙に色っぽい呻き声を上げ、ゆっくりと美しい双眸を開いた。

 

「あふぅ……おはよう、カナタ……すぴー」

 

「オイコラこんな状況で寝てんじゃねえまた間違いが起きたらどうすんだぁっ!」

 

 割とマジで回避したい未来の為にカナタはナギの両肩をがっくんがっくんと大きく揺さぶる。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

「『エロ女教師ツツジの思春期あるある』のお時間ですわ!」

 

「…………あのぅ、ツツジさん?」

 

「はい、どうかしましたか、アスナ?」

 

「いや、その、どうしてアタシのジムでそんな摩訶不思議なコーナーを始めようとしてるんですか? アタシ、これからコータス達と温泉に行こうと思ってたんですけど……」

 

「そんなの簡単ですわ。男性が処女膜を突き破るぐらいに簡単ですわ!」

 

「っ!? は、はれんちです! あ、あーあーアタシは聞こえなーい!」

 

「ウフフッ。まぁ、そう邪険にしなくても良いではありませんの、アスナ。今回は出番の少ないわたくしたちジムリーダーのための救済コーナーなのですのよ?」

 

「いや、そうかもしれませんけど……ぶっちゃけアタシはまだ登場できないし、ツツジさんに関しては超初期からの登場キャラじゃないですか。正直、一番不遇なのはトウキさんだと思うんですけど」

 

「あんな新人類は捨て置いておけばよいのですわ! わたくしが言いたいのは、何故にナギがあそこまで優遇されているのか、という事なのです!」

 

「へ? ナギさん、何か優遇されてるような事でもあったんですか?」

 

「くっ……この天然ピュア巨乳少女がァ……ッ! 爆ぜなさい!」

 

「なんでアタシ罵倒されたの!?」

 

「ふんっ。まぁ、いいですわ」

 

「アタシは良くないよ。全然良くないよ」

 

「それでは、『エロ教師ツツジの思春期あるある』の第一回目を開始いたします!」

 

「わー。ぱちぱちぱちー」

 

「思春期あるある、そのいち! コンビニで十八禁コーナーを見かけると、一番近くのジュース棚を漁る振りをしてちらっと横目で見てしまう! そして店員の視線が他に向いた瞬間、少しだけ距離を詰めて表紙を確認してしまう!」

 

「リアル! 思いの外すごくリアルなあるあるを出してきた!」

 

「思春期というのは常にリアルなエロスを求めるものなのですわ」

 

「よく分からないけどとりあえずツツジさんは全国の思春期に謝った方が良いと思う!」

 

「知りませんわよそんな事。――それでは、またの機会にお会いしましょう! あなたのハートもエロティック☆」

 

「えろてぃっく!? え、なに言ってるんですかツツジさ――ってアタシよりも早く温泉に行かないでくださいよ卑怯ですよツツジさぁぁああああん!」

 

 

 




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 次回もお楽しみに!
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