ぶっちゃけ、五秒で雌雄が決しましたよね。
「ら、ラルトス、戦闘不能! キルリアの勝ち!」
《よっしゃやったッスやってやったッスこれで今夜はカナタとお楽しみヴェヘヘヘヘ!》
「戻れキルリア、今すぐに!」
落ちてしまいそうな程に緩んだ頬を両手で抑えて恍惚とした表情を浮かべていたキルリアを神速でボールに戻し、カナタは心底疲れたように大きく溜め息を吐いた。何で俺のキルリア、こんなに変態キャラなんだろう……?
今後自分に襲いくるであろう過度のストレスに恐怖心を抱きながらも、カナタはミツルの元まで歩み寄る。
「えーっと、その……頑張れ」
「……カナタさんは違う意味で頑張ってください」
「………………うん」
この少年とは凄く仲良くなれそうな気がした。
☆☆☆
ミツルとの決戦を終えたカナタたちは旅の疲れを癒やすため、キンセツシティのポケモンセンターへと移動した。もちろん、いつものメンバーにミツルを加えた状態で、だ。
何故かリーダーにされているカナタが四人部屋のチェックアウトを済ませた後、五人はそのままポケモンセンター内にあるレストランへと移動。それぞれが注文した料理が届き、待ちに待った昼食タイムを開始する事となった。因みに、メニューとしては――
ハンバーグ定食(カナタ&ナギ)
焼肉定食(ユウキ)
海鮮丼(ハルカ)
サンドイッチ(ミツル)
――凄く個性あふれるメニューだった。というか、カナタとナギがしれっと同じ料理を頼んでいるところがなんともニヤニヤ状態だった。さっさと結婚すればいいのに。
もっきゅもっきゅと料理を咀嚼する中、カナタはずっと気になっていたことを向かいの席に居るハルカに小声で尋ねた。
「(ぶっちゃけ、ミツルのどこに惚れたんだ?)」
ブバァッ! とハルカの口から素晴らしい虹のアーチが吐き出された。
げほごほげほっ! と咽込んでいたハルカは涙目でカナタを睨みつけ、頬を真っ赤に染めながら隣のミツルに聞こえないような音量で返答する。
「(な、ななななななんで私がミツル君に、その、ほほほほれほれっ惚れてるって事になってるのかなぁっ!?)」
「(いやもう駄目だろその反応。自分が隠してる気持ちを露骨に伝えてんのと同義だろ)」
「(な、なんてことを言ってるの!?)」
鋭いカナタの指摘に動転したハルカはバンッ! とテーブルを勢いよく叩きながら立ち上がり、
「私は上の口も下の口も固い事に定評がある女なんだよ!?」
「その調子で減らず口も固くしてくれ頼むから」
☆☆☆
とりあえずハリセンでハルカをしばいたカナタは大きく溜め息を吐き、隣で礼儀正しくハンバーグを食しているナギの方に視線を向けた。
カナタの視線に気づいたナギはフォークとナイフをプレートの上に置き、紙ナプキンで口元をサッと拭う。
「どうかしたか、カナタ?」
「いえ、ナギさんはそうやって黙ってれば完璧美人なのになーって思いまして」
「……君は時々本当に失礼になるな」
ひくひくっとナギは頬を引き攣らせる。
「いいか、よく聞いておくのだ、カナタ。女に失礼な事を言うなとは言わないが、時と場所は選ばなければならないんだ。例えばの例を上げるならば、このレストランのような公衆の面前で【自主規制】だの【見せられないよ!】だのという言葉を叫ぶ事はしないだろう? それと一緒なのだよ、今回も。女への失言は時と場所を選ぶことが大事なのだ――って、なんだその凄く納得いっていなさそうな顔は?」
「……いや、正直心の底から『お前が言うな』って気持ちでいっぱいです」
「………………これからは私も善処させてもらうよ」
そう言ったナギに肩を優しく叩かれ、カナタは思わず泣きそうになった。
☆☆☆
「ユウキさん。カナタさんとナギさんは一体何の話をしているんですか?」
「え゛。え、えーっと、その……ま、まだミツルくんには早すぎる話かなー?」
「そ、そうだよミツルくん! 『先走り汁』とか『処女膜』とかいう言葉は、まだまだミツルくんには早すぎるんだ!」
「???」
「ねぇハルカ、とりあえず一発殴らせてくれない?」
「えぇっ!? み、ミツルくんは言葉の意味を理解してないんだからセーフなんじゃないの!?」
「うん、その考えがもはや手遅れなんだよ。――とりあえず一発、本気で行くから」
「うわっ、うわぁっ、うわぁあああああああああああああああああああっ!」
☆☆☆
騒がしいというかハレンチすぎるというか――まぁぶっちゃけ下ネタのオンパレードだった昼食を終えた五人はキンセツシティジム――ではなく、先ほどの広場へと戻ってきていた。
彼らがここに来た目的はただ一つ。――ジム戦に向けてのレベル上げだ。
カナタとハルカとユウキとミツルはバトルフィールドの中央付近で向かい合い、各々が選んだボールを勢いよく空に向かって放り投げる。
「君の出番だ、マクノシタ!」
「頼むよ、ラルトス!」
ユウキとミツルのポケモンがフィールドの上に顕現し、それに続く形でカナタとハルカのポケモンが――
「頼むからエロは自重してくれ、キルリア!」
「その美脚プレイを見せてあげて、ワカシャモ!」
「「なんか凄く卑猥な枕詞がついちゃってる!?」」
☆☆☆
新米トレーナーカルテットがそんなやり取りで盛り上がっている頃、フィールド傍のベンチにて。
「…………なんか私、こういう時はアウェーだな」
飛行タイプのエキスパートであるヒワマキシティジムのジムリーダー様は、とてつもない程に寂しそうな表情で、とてつもない程に寂しい言葉を発していた。
☆☆☆
レベル上げを手っ取り早く行うには、やっぱりダブルバトルが適任だ。
そう判断した四人はナギに審判を頼み、本日二度目のポケモンバトルを開始する事にした。
「それではただいまより、カナタ&ユウキVSハルカ&ミツルのバトルを開始する!」
相変わらずの飛行士スタイルなナギの叫びに四人は小さく頷きを返す。そこはかとなくナギが嬉しそうな顔をしているのだが、別にこれはやる事が出来たからではない。別に仲間外れにされていたのがやっと解除されたからって喜んでいるわけではないのだ!
先ほど選択したポケモンたちがフィールドの所定の位置に着いたのを確認したナギはスッと右手を天に掲げ、
「使用ポケモンは一体! ペアのどちらか一方のポケモンが戦闘不能になった時点でそのペアの敗北とする! ――それでは、バトルスタート!」
「先手必勝! ワカシャモ、マクノシタのお腹目掛けて“にどげり”!」
最初に動きを見せたのは、素早い動きに定評があるハルカのワカシャモだった。
強靭な足腰を駆使した走りで一瞬でマクノシタの懐に入り込んだワカシャモは右足を勢いよく振り被り、目にも止まらに速さでマクノシタの鳩尾目掛けて足を発射。鉤爪付属の右脚はマクノシタの腹を容赦なく抉り、超即行でバトルを終わらせる――
――はずだった。
「なっ……!?」
そんな驚きの声を上げたのは、ワカシャモに指示を出したハルカ当人だった。
そして。
ハルカを驚かせた現実というのは――ワカシャモの足がマクノシタの身体の寸前で止まっている現実だった。これは夢でも空想でもない。れっきとしてリアルな光景だ。
その現実を作り出したものの正体は、キルリア。
ハルカの指示をあらかじめ予想していたカナタがキルリアに指示を出し、マクノシタへのダメージを事前に防いだことによる神業だった。特に凄いのが、その指示を頭の中に浮かび上がらせることだけで成し遂げたこと。キルリアが常にカナタへサイコメトリーを働かせていなければ絶対に成し得ない芸当だ。
予想外の展開に悔しそうな表情を浮かべるハルカ。隣のミツルは呆気にとられた様子で「すごい……」と素直に感心している。
悔しさと感心を放つハルカたちの向かいに居るユウキは隣のカナタに視線を向けることなく、
「ありがとう、カナタ。今のは流石にヤバかったよ」
「礼を言うのはアイツラを倒してからにして欲しいな。――ほら、次の攻撃がくるみてえだぜ?」
「あははっ、やっぱり休ませてはくれないんだね」
肩を竦めて嘆息するカナタにユウキは苦笑を返す。同じ故郷出身という事もあるが、ユウキとカナタは基本的に心の底から信頼し合っている仲なので、こういった軽いやり取りだけで互いの考えを伝え合う事が出来るのだ。……別に腐女子が大好きな『アレ』な関係ではないので、悪しからず。
こちらに向かって勢いよく突撃してきているワカシャモとラルトスを鋭く見据え、ユウキとカナタはほぼ同時のタイミングで溜め息を吐く。
そして。
それぞれのポケモンたちへの指示を一瞬で考え、二人は自分たちの対戦相手に向かって腹の底から叫びを上げた。
「「上等だ、どこからでもかかってこい!」」
☆☆☆
カナタ達がダブルバトルで盛り上がる中、広場の入り口付近にて。
肩の辺りまでの黒髪と垂れた目つき、それと見事な黄金比を実現させたスタイルが特徴の女がカナタ達を遠目ながらに監視していた。女の耳にはイヤホンマイクが装備されていて、その中から三十代前後と思われる男の声が漏れ出てきていた。
鋭い目つきでカナタ達の監視を続けるカガリに、イヤホンマイクの向こう側に居る男は淡々とした口調で言う。
『奴らの様子はどうだ?』
「まだ脅威と思えるような動きは見せていません。あえて言うならユウキとカナタのコンビが危険でしょうが、今の時点では私たちの敵ではないでしょう」
『
女の報告に男は十秒ほどの沈黙を返し、
『それでは、奴らがバトルを終えて一息吐いたと同時にプランBを発動する。私が指示したとおりに事を進めるんだぞ――カガリ』
「任せてください、マツブサさま」
その言葉に返事をすることも無く通信は途切れ、女――カガリは淡々とした様子でイヤホンマイクをズボンのポケットへと仕舞い込んだ。その動きに合わせるように、ベージュ色のベレー帽が僅かに上下に揺れ動く。
ジーンズとシャツとベストという凄く簡素な服を着ているカガリはベレー帽を目深に被り直し、
「――全ては大地の恵みの為に」
腰元のボールを握り締めながら、カガリは広場の中へと足を踏み入れた。
ツツジ「忘れたころにやって来る、第二回・思春期あるある~♪」
アスナ「また始まった! ついには後書きを占拠する形で意味不明なコーナーがまた始まった!」
ツツジ「さぁ始まりましたわ不遇な女性ジムリーダー救済コーナー! 今回は――ではなく、今回
アスナ「え、えー。またそのコーナーなんですかぁ?」
ツツジ「ぐちぐち文句を言うんじゃありません! アシスタントのくせに!」
アスナ「初耳すぎる!」
ツツジ「それでは、時間も押しているので、さっそく『思春期あるある』のその2を暴露したいと思いますわ!」
アスナ「わー、ぱちぱちぱちー☆」
ツツジ「思春期あるある、そのに! 同級生が話しているエロ話に興味がない振りをしつつも実は耳を傾けている!」
アスナ「だからリアルすぎますってツツジさん! 流石のアタシでもドン引きしちゃうぐらいにリアルすぎます!」
ツツジ「思春期は常にリアルを追い求めているものなのですわ……」
アスナ「なんか前に同じような言い訳しましたよねぇ!?」
ツツジ「それでは、次回も忘れたころにやってきますので、その時にまたお会い致しましょう! しーゆーあげいん! 次回もアナル引き締めて、頑張っていきましょうですわーっ!」
アスナ「は、はれんちは禁止ですよツツジさぁーん!」