結局のところ、バトルを制したのはカナタ&ユウキだった。
互いに格闘タイプとエスパータイプのコンビを組んでダブルバトルを行っていたわけだが、作戦の立て方やバトルの腕前の問題で、カナタ達に軍配が下る事となってしまったのだ。というか、ハルカはバトル初心者のミツルと組んでいるのが敗因、と言っても過言ではないのだが、それを指摘してしまうとハルカがブチ切れてしまいそうなのでここでは口を閉ざさせてもらう事にする。
バトルを終えた四人は各々のポケモンたちをボールに戻し、審判役を買って出てくれたナギの元へと集合する。
「お疲れ様だな、君たち。良いバトルだったぞ」
「うぅ、勝てなかったーっ! くーやーしーいー!」
「ご、ごめんなさい、ハルカさん! ボクが至らなかったばかりに……」
「いぃっ!? い、いやいや別にミツルくんのせいじゃないよ!? 私がまだまだ弱いせいってのも敗因なんだよ!?」
「で、でも……」
「そ、そんなに落ち込まないで、ミツルくん! これからもっと強くなればいいんだから!」
「は、ハルカさぁん!」
「うなななななななっ!?」
涙目で今にも泣きそうな顔のミツルに勢いよく抱き着かれたことにより、ハルカの精神に多大なダメージが発生した。『萌えきゅんダメージ』というヤツだ。
顔を紅蓮に染めて「あわわわわ!」と露骨に焦っているハルカ。彼女の心の中では天使と悪魔が肩を組んで『そのまま襲っちゃえー!』と全力で叫んでいるのだが、そんな誘惑に屈するようなハルカではない。…………ほ、ほんとだよ!? 別に少しぐらいいいかなー? とか思ってないんだからねっ!
顔面真っ赤で混乱焦燥驚愕中なハルカにカナタたちが生暖かい視線を送っていた――そんな時。
「そこのアンタたち、ちょっといいかい?」
いつの間にか回り込まれていた背後から、そんな女の声が聞こえた。
☆☆☆
振り返った先に居たのは、たれ目と均整のとれた体つきが特徴の美しい女性だった。被っているベレー帽と右の二の腕に巻かれた腕章――『MGM』と書かれている――に思わず視線が行ってしまう。
と、そんな事はさておき。
突然現れた女性は懐から名刺を取り出し、一番近くにいたカナタにスッと差し出した。
「私はカガリ。『MGM』という報道機関に所属している記者だよ。以後、お見知りおきを」
「は、はぁ。どうもわざわざご丁寧に……」
慣れない対応に調子が狂ってしまうカナタ。そんな彼の隣のナギは女性――カガリに訝しげな視線を送っている訳だが、現在進行形で対応に困っているカナタはそんな彼女の様子になど気づかない。
カガリから受け取った名刺を財布の中へとしまい、少しだけ首を傾げつつもカナタは言う。
「それで、あの……俺たちに何か用ですか?」
「もちろん、用があったからこそアンタ達に接触させてもらったのさ」
そう言ってカガリは懐から手帳とペンを取り出し、
「『巨乳のトレーナーの胸を揉んで勃起する女顔のトレーナー』についての情報を集めてるのさ!」
「きょ、曲解だ捏造だ誇張表現だぁっ!」
そう叫ぶカナタの顔には十分すぎるほどの焦燥が込められていた。
☆☆☆
誤解を解くためにとりあえずナギに土下座をかましたカナタは涙目のままカガリに向き直った。
「えーっと、まずはその誤解を解きたい訳なんですけれど……どうすりゃイイですかね?」
「うーん、そうだねぇ。私としてはこのまま捏造記事として発行したい気持ちでいっぱいな訳なのだけれど、それじゃあアンタが困るって話だろう? いや本当、私としては残念極まりない事なんだけどね」
「オイアンタ絶対サディストだろ」
「まぁ確かに、私は人を虐めるのが大好きで大好物だね。――じゅるり」
「ユウキ、君に決めた!」
「ぴっぴかちゅう!」
☆☆☆
カナタの指示で対応役を交代したユウキはニコニコ笑顔でカガリの前に立ち塞がり――リュックサックの中から無骨な首輪と鞭を取り出した。
「ん?」と目を細めるカガリにユウキは恍惚とした表情を向け、
「僕にこの首輪を着けるのと僕を鞭でシバくの、どっちの方が好みですか?」
「アンタにその首輪を着けさせて地面に四つん這いにさせて尻を鞭で百叩きにするってのが最高だね」
「か、カナタ! 僕は遂に運命の人を見つけちゃったのかもしれない!」
「絶対に交錯して欲しくなかったわそんな運命!」
何でそんなに嬉しそうなのってわざわざ言うまでもねえか! と半端ない混乱を見せてしまうカナタ。隣でナギが手を握って「落ち着け」と言ってくれなければ頭がオーバーヒートしていたところだ。……いや、今は違うベクトルで頭がオーバーヒートしそうですけど。
ナギの手の柔らかさと暖かさにドキマギしつつも、カナタは鞭を持ってユウキに振り被ろうとしているカガリに話しかける。
「と、とりあえず! あなたが持ってきたその情報は全くの嘘、デマなんです! お、俺がナギさんの胸を揉んでぼ、ぼぼぼぼぼぼ勃起なんてするはずがねえでしょう!?」
「それはそれでムカつくのだが……」
「あーもーちょっとナギさん黙ってて! これ以上この場をややこしくしねえでください!」
☆☆☆
とにかくこれはデマ、デマなのよ!
渾身且つ迫真の演説でなんとかカガリを説き伏せたカナタは額に浮かんだ汗を手で拭い、自らの手で掴みとった明るい未来に心の中で手を合わせた。ありがとう、これからよろしく……っ!
真実だと思っていた情報を一つ潰されたカガリは「あーあ」と別段落ち込んでもなさそうな様子で溜め息を吐き、
「思ってた通りの展開だけど、やっぱりつまらないなぁ」
「……は?」
「私としてはもうちょっとこう、激しく滾る展開が欲しかったわけだけど、現実はこのざま。ダメだね、まーったく興奮しなかったよ」
「え、と、その……一体何が言いたいんですか?」
「あ?」
「っ……」
ドスの利いた声と共に放たれた鋭い眼光にカナタは思わず威圧されてしまう。た、たかが情報を一つ潰されただけで、そこまで怒る事ねえだろうよ……。
脅えるカナタをナギがサッとすぐさま背中で庇う様子にニヤニヤ笑顔を見せ、カガリは演劇でもするように両手を大きく広げ――
「ああ、これは失敬失敬。いつもの癖でアンタを怖がらせちゃったみたいだねぇ。いや、本当に悪かったよ、まさか
「……警戒している奴の、仲間?」
震えるカナタをナギが抱きしめる傍らで放たれたユウキの問いに、カガリはニヤァと妖しく笑う。
「そうさ! 私たちが本当の意味で警戒しているのはアンタなのさ! ミシロタウンのユウキ!」
「…………はい?」
思わずそんな間抜けな返事を返してしまう。いや、それも無理はないだろう。出会ったばかりの女性から唐突に《アンタを警戒している》と言われてしまうというこの状況。自分が当事者じゃなくても「は?」と疑問の声を上げてしまうだろう。――それほどまでに、意味不明な状況なのだ。
妖しい笑顔のカガリはユウキの顎に指を当て、艶めかしい表情を浮かべた顔を彼の顔へと近づける。
「アンタのその紅色の瞳は美しいね。この世の全てを大地に染め上げるあのポケモンを象徴する色とそっくりだ」
「この世の全てを大地に染め上げるポケモン……? それって、まさか……」
「ふぅん? 流石はかの権威オダマキ博士の愛息子、ポケモン関係の知識は豊富みたいだねぇ。――尚更気に入ったよ」
そう言って。
ユウキの顎を指で持ち上げたカガリは流れるようにユウキの唇に自分の唇を重ね――
「アンタなら『紅色の玉』に適応できる。――私が保証するよ」
「ぐ、ぅっ!?」
――ユウキの鳩尾に自らの拳を叩き込んだ。
☆☆☆
ユウキの意識が刈り取られた。
その現実を認識するまでに五秒ほどの時間を要したカナタは、我を取り戻すと同時に腰のホルダーからモンスターボールを取り出してジュプトルを召喚した。
ぐったりとした様子のユウキを抱えるカガリを指差し、カナタはジュプトルに指示を出す。
「ゆ、ユウキを取り戻すんだ、ジュプトル!」
「ジュプトォーッ!」
両腕の葉の刃を輝かせ、カガリに向かって振り下ろすジュプトル。普通だったら人間相手に当てて良いような技ではないのだが、今はそんな事を気にしている場合ではない。相手が女だろうがなんだろうが、大切な仲間を誘拐しようとしている奴は全員敵だ。一切の容赦も必要ない。
――しかし。
ジュプトルの攻撃はカガリに届くことなく、逆にジュプトルが力なく地面へと崩れ落ちてしまった。
その時間、まさに一瞬。
文字通り瞬きする間もない程の時間で戦闘不能にされたジュプトルをカナタは弾かれたようにボールへと戻し、ジュプトルを倒したであろう者に視線を向ける。
それは、いつの間にかカガリの傍に現れていたポケモンだった。
それは、金色の毛並と九本の尻尾が特徴の美しいポケモンだった。
そのポケモンの名は――
「よくやった、キュウコン。流石は私のポケモンだね」
「こーん」
ユウキを抱え直しながらのカガリの言葉にキュウコンは嬉しそうな鳴き声を上げる。見たところ、このキュウコンはカガリに凄く懐いているようだ。彼女への態度とか鳴き声のトーンとかから考えれば、それぐらいの事は優に想像できる。――だが、今はそんな事はどうでもいい。
主戦力だったジュプトルが倒された今、カナタの中で戦えるポケモンというのはドククラゲしかいない。一応はキルリアもいるのだが、先の戦闘で疲労しているため、数に含めることは出来ない。これ以上の無理をさせるわけにはいかないのだ。
ドククラゲはキュウコンに対するタイプ相性は優位。――しかし、それは素早さを考えなければの話。ドククラゲの数倍も早いキュウコンに攻撃を当てるのは至難の業だ。というか、今の実力では百パーセント不可能だろう。
ちら、と後方のハルカたちに視線を向ける。ミツルを護るように彼を背中に隠しているハルカの傍には臨戦態勢のワカシャモが鋭い眼光を光らせている。
そして、自分の隣に居るナギへと視線を向ける。――心の底からブチ切れていた。額に浮かんだ青筋や怒りに染まった瞳などから、彼女の心境が優に想像できた。
カナタはドククラゲが入ったボールを握り締めつつも、カガリへのコンタクトを取る。
「アンタは……いや、アンタ達は一体何者なんだ?」
「何者か、か……それをわざわざ答えるのは面倒くさいけど、寛大な私はしっかりとその問いの答えを提示してあげようじゃないか」
そう言って。
着ていた服を脱ぎ棄てて赤い装束へと早着替えしたカガリは胸元に描かれた火山のようなマークを親指で指し示し、
「我々の名は『マグマ団』! この世の全てを大地に染め上げるためにマツブサ様が組織した、世界最強の宗教集団さ!」
自分で宗教集団とか言うな、というツッコミを我慢した俺は悪くない。
☆☆☆
マグマ団。
そういえば、カイナシティで出会った青装束の奴らも『アクア団』とか名乗ってたっけ……と懐かしい記憶を掘り起こすのも束の間。
気絶しているユウキを抱えたカガリが余裕綽々な表情でこんな事を言ってきた。
「私たちは大地の王を永き眠りから覚まさせるため、おくりび山から『紅色の玉』を奪取した! 大地の王復活のためには必要不可欠な道具だから、迷う事無く盗みに行ったさ」
だけど、とカガリは付け加え、
「紅色の玉には適正者が必要だったのさ。誰もが簡単に使えるって訳じゃあない。それはもちろん、我らが統領マツブサ様も同様だった」
カガリは拳をギュッと握り、
「そこで私たちは調査した! 紅色の玉に耐え得るだけの精神力と適正力を持つ、最高の生贄の存在を! そして私たちは発見した! 紅色の玉に耐え得るだけの精神力と適正力を持つ、最高の生贄の存在を!」
「それが……ユウキだとでも言うつもりか?」
「そう、つまりはそういう事だ! 私たち『マグマ団』と憎き『アクア団』の活動を阻止している奴らの一人、ミシロタウンのユウキこそが最高の適正者! 我々は大地の王グラードンを復活させるため、ユウキを新世界への生贄に捧げることにしたのさ!」
イカレテル、とカナタは直感でそう思った。
世界を大地で染め上げるだとか最高の生贄だとか、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。頭がイっているとしか思えない。相手にするだけ無駄だろう――と、そう思ってしまっていた。
しかし。
彼の隣で臨戦態勢を取っているナギは違った。
何を思ったのか彼女はいきなりその場に膝を突き、頭を抱えて小刻みに震えだしてしまったのだ。
いきなりのナギの反応に衝撃を受けたカナタは彼女の傍で屈みこみ、
「ど、どうしたんですかナギさん!? 顔が真っ青ですよ!?」
「ま、マツブサ……マツブサがまた、私の前に立ちはだかる……マツブサがまた、私に乱暴を……マツブサがマツブサがマツブサがマツブサがぁああああああああああああいやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
「な、ナギさん!? しっかりしてください、ナギさん!」
「ああああああああ! あああああああああああああああああああああ!」
「ナギさん!」
涙で顔をグシャグシャに、恐怖で顔をグシャグシャに。とにかく心の底から脅えてしまっているナギを力いっぱいに抱きしめる。その震えが止まるように、その恐怖が止まるように。
雷に脅える子供のように喚き散らすナギを抱きしめるカナタはカガリに鋭い睨みを利かせ、
「テメェ……ナギさんに何をした!」
「ああん? 別に私はなぁんにもしてないけどね。でも、その様子から察するに、大昔にマツブサ様に乱暴された感じなんじゃない? あのお方、昔は趣味で強姦とか誘拐とか結構やっていたそうだし。ま、マツブサ様に抱かれるなら本望って感じじゃない? いやまぁ、私は遠慮させてもらうけど」
「テメェ……ッ!」
「ありゃりゃ、怖い顔だねぇ。好きじゃないよ、そんな顔。私はもっと脅えた表情が大好物なのさ。そう、例えば――そこのヒワマキシティジムジムリーダーみたいな脅え顔が、ね」
「――――――、は?」
今こいつは、なんて言った?
ナギさんが、ヒワマキシティジムのジムリーダー?
思わぬ言葉に耳を疑うカナタ。彼の後ろに居るハルカもそれは同様で、「え? え?」と疑問の声を上げながら何度も何度もナギを見直している。
そして。
「く、ぅっ……――」「な、ナギさん!? しっかりしてください、ナギさん!」過去のトラウマと現在の罪悪感の二つに押し潰されてしまったナギが気絶という名の現実逃避を行った――その直後、
「そっちの事情なんて私は知らないからね。それじゃあみなさん、素晴らしい新世界でまたお会いしましょうって感じで――またの機会にまた会おうじゃないか!」
「て、テメェ待ちやがれ!」
「残念ながら遅すぎだね。ユンゲラー、“テレポート”!」
カガリの腰のホルダーにあったボールの中のユンゲラーの技によってカガリとユウキの姿が掻き消え、彼女たちを掴むために伸ばされたカナタの手が勢いよく空を切った。
大事な仲間を失うと同時に衝撃の事実を突きつけられたカナタとハルカはほぼ同時のタイミングでナギの顔を覗き込み、
『……なんでずっと黙ってたんだろう』
その時の二人は心の底から悲しそうだった、とその場に居合わせていたミツルは後に語る――。
ツツジ「突然ですけど、アスナって胸大きすぎますわよね」
アスナ「温泉に入るなりなに言ってるんですかツツジさぁん!?」
ツツジ「いえ、流石にちょっと我慢なりませんでしたわ。なんですの、その無駄な脂肪の塊は。わたくしも胸は大きい方ですけれど、アスナはちょっと異常だと思いますわ。ほら、ちょっと吸い上げてあげるからこっちに来なさいな」
アスナ「吸い上げる!? そんな、人の胸見ながら脂肪吸引みたいな事を言わないでください! 嫌ですよやめてくださいこれは正常です!」
ツツジ「わたくし一度でいいから巨乳の乳首をカリッて噛んでみたいですわ」
アスナ「どこのエロ親父ですかその願望! ちょっ、マジでやめてくださいツツジさん! そんな前から胸を揉まないで――ひゃぁん!」
ツツジ「む。巨乳の癖に感度が良いとは……ますます母乳を吸いたくなってきましたわ」
アスナ「そんなもの吸っても出ませんから! ちょっ、あんっ……ん、くぅっ!」
ツツジ「はい、それでは胸のマッサージはここまで。ここからは『おっぱい吸引式搾乳』のお時間ですわーっ!」
アスナ「超セクハラ!?」
ツツジ「はい、それでは良い喘ぎ声を聞かせてくださいませー」
アスナ「ちょっ、いやっ、あんっ……きゃぁあああああああああああああああああっ!」