ホウエン地方は何処も思春期   作:秋月月日

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ツツジ「アスナ! わたくしのポケットマネーで小型飛行機を購入してきましたわ!」

アスナ「既に嫌な予感しかしない!」

ツツジ「ほら、さっさと乗りなさいな! 急がないと置いていきますわよ!?」

アスナ「ちょっと待ってちょっと待って! もしかしなくてもツツジさんが操縦する感じですか!? 嘘だよね、嘘って言ってよツツジさん!」

ツツジ「女に不可能はないのですわ!」

アスナ「せめて免許取ってから言ってほしかった!」

ツツジ「さぁっ、行きますわよアスナ! 目的地はヒワマキ。わたくしたちの旅はこれからですわ!」

アスナ「アタシの人生が打ち切りになる未来が見え――ぎゃぁあああああああああああああああああああああああっ!?」




三流悪党は憎めない

 119番道路へとやってきたカナタとナギを出迎えたのは、高さ二メートルはあろうかというほどの長草群だった。

 

「大丈夫か、カナタ?」

 

「あ、ああ。なんとか大丈夫だ!」

 

 カナタは行く手を遮る長草をかき分けながら、数メートル前を先行するナギの問いに答える。個人的にはジュプトルの“いあいぎり”で長草を一掃したいのだが、「環境破壊ダメ、絶対」というナギの言葉を受けてしまったのでそんな暴挙に出ることは出来ないのだ。……今『ヘタレ』とか言った奴こっち来い。

 前方で揺れるナギの紫色の髪を目印に、カナタは慣れない道を必死に全力に進んでいく。

 ――と。

 今まさに転びそうになっていたカナタの前に、やけに見慣れた手が伸ばされてきた。水色のグローブをはめているところからもこの手の持ち主が誰なのかが容易に想像できる。

 地面に片手をついた状態でナギの手を掴み、体重を彼女で支えながらもカナタはなんとか立ち上がる。

 珍しく弱い立場になってしまっているカナタを見るのが楽しいのか、ナギは心の底から楽しそうな笑顔を浮かべ――

 

「この長草群の中でなら青姦セッ〇スしても問題はなさそうだな!」

 

「問題ありまくりだ迅速に悔い改めろ」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 カナタとナギがヒワマキシティを目指している頃、キンセツシティにて。

 知らぬ間にホウエン地方の西側を担当する事になってしまったハルカとミツルはキンセツジムへとやってきていた。

 

「が、頑張ってください、ハルカさん!」

 

「いやいやいや、ミツルくんも挑戦する側だからね? 私の後にちゃんと挑戦するんだからね?」

 

「そ、それはそうですけどぉ……」

 

 ああ、なにこの可愛い生き物お持ち帰りしたい食べちゃいたい。

 うるうるとした瞳にしゅんと落ち込んだ表情がまたなんともたまらない――と凄くギリギリな理性に更なる追い打ちをかけるハルカさん。二人旅の冒頭からこの様子では今後が凄く心配になってしまう訳なのだが、まぁそこは彼女の理性の耐久度の高さに期待するしかあるまい。……ハルカがショタコン疑惑な件についてはまたの機会に論するとしよう。

 うじうじと相変わらずの自信のなさを披露しているミツルを引っ張りながら、ハルカはジムの中へと足を踏み入れる。

 ジムの中には大小様々な機械が設置されていて、そこから放たれる電磁バリアがプロレスのリングの様なバトルフィールドを作り上げていた。――そしてその奥に、『彼』はいた。

 禿げ上がっていながらも何とか生き残っている白髪と無駄に蓄えられた白いひげ。隠しきれない程の明るいテンションが含まれているおおらかな顔つきに如何にも中年太りといった感じの体格。

 そう、この中年男性こそが――

 

「がっはっは! 新しい挑戦者はこれまた随分と可愛らしいのう! どれ、ワシが少し揉んでやるか! あ、言っておくが、別に乳を揉むという訳ではないぞ? がっはっは! そりゃそうか!」

 

 ――今この瞬間程カナタのツッコミが恋しいと思ったことはない。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 突然降り始めた大雨から逃れるために天気研究所へと走り込んだカナタとナギは、もはや何度目かも分からない程のトラブルに巻き込まれていた。

 

「よりにもよってアクア団に占拠されてるとか、マジで笑えねえ……」

 

「ここはポジティブに考えよう。アクア団の悪事を止める、良い機会だと考えるようにするんだ。そうすれば、少しぐらいは明るい気持ちになれるのではないかな……うん、本当に……」

 

「アンタも結構キテるよな」

 

 そんな漫才をしつつも、二人は天気研究所の中へ足を踏み入れた。カナタはジュプトルを、ナギはエアームドを傍らに、アクア団を撃破するための行動を開始した。

 早速立ち塞がってきたアクア団の下っ端を撃破しながら二人は二階を目指して駆けていく。

 

「フッ、他愛もない。もっと激しくしてくれないと私は満足できないぞ!」

 

「オイコラ恋人だからって容赦しねえぞコンチクショウ」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 二階に上った先にいたのは、ロープと猿轡で拘束されている数人の研究員とパソコンをカタカタやっている数人のアクア団だった。一人だけやけに露出度の高い女がいるが、おそらくはあれがここを襲撃したグループの主犯格だろう。もしかしたらアクア団のリーダーかもしれな――いや、確かカイナシティでアクア団のリーダーには会ったことがあったな。あんまり記憶に残ってなかったから忘れてたわ。

 ジュプトルを従えたカナタは目の前のアクア団を睨みつけ、

 

「単刀直入に忠告させてもらう! 痛い目を見たくなかったらそこの人たちを解放してさっさと何処かへと消えやがれ!」

 

「はン! クソガキ風情が誰に物を言ってるんだい!? アタイたちは天下無敵のアクア団だよ!」

 

「ハイ小物臭が凄いセリフですねありがとうございます! そして下っ端の方々も俺に同意してくれてる表情ですねありがとうございます!」

 

「んなぁっ!?」

 

 カナタの言葉に驚愕した女は勢いよく自分の部下の方へと振り返り――

 

「……まぁ確かに、イズミ様って小物臭が凄いとこあるよな」

 

「同感同感。なんつーか、こう……三流悪党みたいな感じがするよな」

 

「私イズミ様に憧れてるけど、流石に今のセリフはちょっとドン引きだなー」

 

 ――え、なにこれ。アタイ何で部下から好き勝手言われてんの?

 

「これが世に言う『頼りない上司に渋々付き従う部下』の例、か……」

 

「オイコラテメェ! か、勝手にアタイの現在状況を冷静に分析且つ解説してんじゃないよ! しかも具体例がリアルすぎる! アタイはそこまで不遇キャラじゃねぇ!」

 

「自覚がないって悲しいっすよね」

 

「う、うわーん!」

 

 遠慮も加減もないカナタの毒舌にイズミは膝から地面にへたり込んでしまう。幹部クラスのイズミの陥落に下っ端たちは露骨に焦っていたが、カナタとしては「お前ら今更だろ」と冷徹に指摘を浴びせたい気持ちでいっぱいだ。

 「君、意外と容赦ないな」「いやぁ、最近ストレスが溜まってたんで……つい」ナギのジト目を受け流しながら、カナタは困ったように乾いた笑いを零す。もはや夫婦漫才もビックリの息の合いようだった。さっさと結婚しろ。

 「ふぁ、ふぁいとですイズミ様!」「あんな奴に負けないで!」部下の激励によってなんとか持ち直したイズミは懐からモンスターボールを取り出し、

 

「ここまでコケにされたのは生まれて初めてだよ! もう許さん! 行け、サメハダー! あのクソ憎たらしい女顔野郎をけちょんけちょんにしてやるんだ!」

 

「《けちょんけちょん》とか死語すぎませんかね?」

 

「お前マジで何なんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 バッサリだった。まさに袈裟切りにされた下級武士状態だった。絵に描いたようなカウンターだった。

 冷たく直線的なカナタの毒舌に心を折られたイズミはその場に座り込んで「アタイは強いんだアタイが最強なんだアタイこそが無敵なんだ……」と暗い表情で呪詛のように呟きを漏らし始めてしまった。なんか恨めない悪党だな、と思ってしまったカナタとナギと研究者たちを一体誰が責められようか。

 なんかこのままバトルってのも難しいなー、と困ったようにカナタが頭を掻いた――次の瞬間。

 

 ドゴォッ! という轟音と共に研究所の二階に大穴が開き。

 ゴガグシャメギャァッ! という雑音と共に外から巨大なナニカが研究所内に無理やり侵入してきた。

 

 何だ何だ地震か隕石か!? と慌てふためく研究者たち。カナタとナギは突然現れた物体――小型飛行機にぽかーんと口を間抜けに開くしかなくなっている始末。

 そして。

 ガラガラガラ、と瓦礫を弾きながら開かれたハッチの中から、彼女達(・・・)は現れた。

 

「死ぬかと思った本当に死ぬかと思った!」

 

「おーっほっほっほ! このわたくしにかかれば飛行機の操縦など朝飯前なのですわ! ……うっぷ。ヤバイこれマジヤバいちょっと吐きそうちょっとアスナこれ受け止めてくださいな……」

 

「い、嫌ですよ何言ってるんですかツツジさん! というか、自分で操縦しといて自分だけ酔うとか最低の極みじゃないですかぁ!」

 

 ……とりあえずアクア団の方々が研究所の外に突き飛ばされたんだけど、放っといても大丈夫なのかなぁ?

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 研究所を半壊させることと引き換えに研究員たちの命を救った女二人を引っ手繰り、カナタとナギは一目散に研究所から逃げ出した。

 一年中氾濫している事で有名なヒワマキ川の橋を渡ったところで座り込んだカナタとナギはゼーハーゼーハーと荒い呼吸を繰り返し、

 

「「い、いきなり何やっとるかお前らはァああああああああっ!」」

 

「痛っ」

 

「ご、ごめんなさぁい!」

 

 スパーン! と平手とハリセンで叩かれた二人の少女は各々のリアクションを返し、涙目で顔を逸らしてしまった。

 ツインテールと制服が特徴の少女――ツツジは平手で叩かれた頭を抑えながらナギをキッと睨みつけ、

 

「レディの頭を叩くなんて最低ですわ! このふた〇り女!」

 

「…………ナギ?」

 

「ち、違うぞ! このバカの言っている事はデタラメだからな!? いくら私が男勝りな性格をしていると言っても、流石にそんな衝撃事実は存在しないからな!?」

 

 疑わしげな視線を向けてくるカナタにナギは全身全霊を込めて抗議の声を上げる。そもそもカナタが半信半疑になってしまうところに問題があるのだが、焦りまくってしまっているナギはそんな些細な事実には気づかない。

 要らぬ事を言ったツツジをナギがハリセンでなぶり始めたところで、カナタは置いてけぼり状態となっている少女へと視線を向けた。

 その少女は、紅い髪と無駄に巨大な胸が特徴的だった。黒の半袖シャツに描かれた炎のマークは豊満すぎる胸のせいで横に大きく歪んでいて、シャツとジーンズの間から覗くくびれと臍がなんとも言えないエロスを醸し出してしまっている。

 えーっと、とカナタは頭を掻き、

 

「ナギを始めとした変人たちを相手取ってきたツッコミ役のカナタです。なんか雰囲気的に凄く仲良くなれそうな気がするので、これからよろしくお願いしまーす」

 

「なんか凄く不名誉な印象を植え付けられてる気がする!」

 

 ぺこり、と礼儀正しくお辞儀したカナタに苦労人系巨乳少女――アスナのツッコミが炸裂した。

 

 




カガリ「気分はどうだい、ユウキ? 捕虜生活も悪くはないだろう?」

ユウキ「……不満だらけだよ、カガリさん。僕はこの生活に不満しかないよ!」

カガリ「は? いや、何で不満が……? 三食ちゃんと出してあげてるし、ベッドとトイレだって設置されてる。ポケモンたちの為にトレーニングルームまで貸し与えているってのに……どこが不満なんだい?」

ユウキ「だって捕虜だよ、捕虜! 捕虜って言ったら鞭でシバかれたり熱く燃える蝋燭を垂らされたり首輪を着けられたり絶食させられたり……とにかく、そんな素晴ら……素晴らしいご褒美が満載なはずなんだよ!?」

カガリ「言い直す訳でもなく言い切りやがった!」

ユウキ「もっと厳しく激しい捕虜生活が良いよ、カガリさん! そしてできればあなたに鞭でシバかれたいです!」

カガリ「い、いやまぁ、それは私もそうだけどね……(うずうずうず)」

ユウキ「カガリ様! いや、ご主人様! この愚かしい捕虜めをズタズタのボロボロに痛めつけてください!」

 ――プツンッ。

カガリ「よーっし、分かった! 上等じゃないか! ほら、まずは私の靴を舐めな、この豚野郎! そしてその次は『紅色の玉』との感応実験だ! 相当の痛みがある実験だけど、アンタにとっちゃご褒美以外の何物でもないんだろう? ほら、何とか言ってみな!」

ユウキ「あぁん! 痛い、でもそれが気持ち良い! もっと、もっと僕をなぶってください!」

カガリ「ウフフ。なんて愚かで下衆な豚なんだろうねぇ……ほら、次行くよ! ほらっ! ほらっ!」

ユウキ「あ、ありがとうございまぁーす!」

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