ホウエン地方は何処も思春期   作:秋月月日

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黒いアレの恐怖

 とりあえず送り火山を占拠していたアクア団の団員たちを亀甲縛り(キルリアの“ねんりき”多用)で拘束したカナタ達はジュンサーさんたちに通報した後、先ほどカナタに股間を蹴り上げられた筋肉バカに話を振る事にした。

 

「で。お前らのボスってどんな奴なんだ? 正直に言わなかったらお前の金の玉を踏み抜いてやる」

 

「ぐぅっ……そ、そのような脅しに屈するほど我はバカではない!」

 

「…………ふんっ!」

 

 カナタのキックがウシオの股間を強襲し、ウシオの顔が一瞬で蒼白と絶望に染まった。カナタの鬼畜な所業を見ていた男の下っ端たちは縛られていながらも必死に己の股間を護ろうと下半身をもぞもぞと動かしている。……意識なんて軽く飛ぶほどの痛みなのだ、致し方ないだろう。

 ぶくぶくぶく、と泡を吹いて白目を剥いてしまったウシオからカナタは視線を逸らし、傍で亀甲縛りにされていた天然三流悪党系女幹部――イズミにとてつもない程に黒い笑顔を向ける。

 

「――お前もこうなりてえか、あぁん?」

 

「喋る、喋るよ! 全部全て一切合財喋るから、アタイだけでも見逃しておくれ!」

 

「「「イズミ様ぁ!?」」

 

 イズミの相変わらずの三流悪党っぷりに、全下っ端が泣いた。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 カナタの黒化によってアクア団たちからすべての情報を聞き出したナギたちは、送り火山の管理人である老夫婦と向かい合っていた。因みに、縛り上げたアクア団は一人残らずジュンサーさんたちに逮捕されました。その時に「何で全員が股間を庇っているんですか?」とジュンサーさんに聞かれたが、ナギたちは苦笑いで言葉を濁すしかなかった。いや、だって、流石に言えないもん。――股間を何度も蹴りつけてました、なんて。

 ホウエン地方を脅かす二大組織の内の一つを事実的壊滅に追い込んだカナタ(単身)。まさかの戦闘力と裏表の激しさを証明してしまった彼に若干の恐怖を抱きつつも、代表としてナギが老夫婦にこう問いかけた。

 

「ご老人。凄く初歩的な質問で申し訳ないのだが、『藍色の玉』と『紅色の玉』について詳しく聞かせてもらえないだろうか?」

 

「『黄金の玉』についての経験談でもイイですわよ?」

 

「あ、私もやっぱりそっちの方が聞きた痛ぁっ!」

 

 いつも通りに下ネタの方に話題を転換させようとしたナギとツツジの脳天を、カナタのハリセンが勢いよく叩き上げた。目にも止まらぬ速度で叩きつけられたハリセンに彼女等二人は涙目で「「おおおおお……っ!?」」と必死に痛みを逃がそうとしていて、現段階での一番の常識人であるアスナは困ったように「あ、あはは……」と乾いた笑いを零すしかできなくなっていた。

 そして。

 下ネタコンビに激しい一撃を浴びせたカナタはニッコリと背筋が凍るほどの微笑を浮かべ、

 

「真面目に問え」

 

「「はい! ちょっとふざけすぎました! 本当にごめんなさい!」」

 

 くいっ、と構えられたハリセンが軍事兵器か何かに見えて仕方がなかった――と、ナギとツツジは後に語る。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 老人夫婦から『藍色の玉』と『紅色の玉』についての伝説を聞かされた後、カナタ達四人は送り火山付近の港町――ミナモシティへと移動していた。因みに、老人夫婦に最終的に尋ねたのは唯一の良心であるアスナだった。ナギとツツジはともかくとして何故カナタが質問しなかったのかというと――ナギとツツジがふざけないように氷の微笑を浮かべて彼女たちを監視していたのが原因だ。旅を始めたばかりの時に比べてカナタが大分冷酷になったと思われるのは気のせいではあるまい。

 カナタはぐぐーっと背伸びをし――勝手にボールから出てきていたキルリアをボールに戻し――傍にいたナギに声をかける。

 

「にしても、ミナモシティって結構人で賑わってんのな。流石はホウエン随一の港町」

 

「港としての役目はカイナシティの方がメインなんだが、ここはホウエン最大の交易街だからな。様々な地方の人たちがホウエン観光の為にこの街にやって来るのさ」

 

 このミナモシティには『陸地の最果て海の始まり』というキャッチコピーが与えられている。そのキャッチコピーの通り、ミナモシティはホウエン地方の陸地の最東端だ。一応はさらに東にトクサネシティやサイユウシティ、更にはバトルフロンティアがあったりするのだが、それについてはまたの機会に。

 とにかく、ミナモシティは他地方からの観光客が多く、それ故にホウエン地方ではあまり見られない外来品などが多く売られていたりもする。ホウエン地方最大のデパートであるミナモデパートがこの街に存在しているのは、他地方からの観光客にホウエン地方の発展具合を見せつけるため――という噂があるが、その真偽は果たしてどちらなのか。想像してみるのも面白いかもしれない。

 ガイドブックを見ていたアスナは「えーっと」と灼熱色の髪をガシガシと掻き、

 

「ここで立ち話というのもなんですから、とりあえずポケモンセンターにチェックインしておきませんか?」

 

「それは名案ですわね。ヒワマキシティからここに来るまでの間にいろいろとあったので、少しは寝休めをしたい気分ですし……あ、このお寿司屋、この間三つ星を貰ったと噂になった有名店じゃあないですか」

 

 と、言うのは、アスナの横からガイドブックを覗き見ていたツツジだ。運動よりも勉強の方に重点を置いた人生を送ってきたツツジは他の三人に比べて体力が致命的に少ないため、身体に溜まった疲労感も他の三人とは比べ物にならない程に大きいのだ。……まぁ、本人は強がって平然とした振りをしているが、他者から見ても分かるほどに両脚がぷるぷる震えていたりする。まるでトイレを我慢しているかのように見えるその様は、なんというか、その…………凄く、エロいです。

 あと十分ほどでダウンしてしまいそうなツツジに苦笑を浮かべ――再び勝手に出てきていたキルリアをボールに戻してガムテープで厳重に固定し――カナタは疲れたようにこう言った。

 

「そんじゃ、とりあえずはポケモンセンターにでも行くか」

 

「そうだな。私もいろいろと溜まっているからな。そろそろこの辺で盛大に吐き出しておきたいな、うん」

 

「火照った顔で俺をちらちら見てるのには深い意味はないんだよな?」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 アスナ名義で四人部屋を取った後、四人は迷う事無く与えられた部屋へと移動した。

 ――移動した、のだが。

 

「ちょっと待てぃ。なんで俺がお前ら三人と同じ部屋なんだよ!」

 

「何か問題でもあるか?」

 

「大有りじゃボケ! っつーかそう言ってる間にもツツジさんが謎のベッドメイキングを!?」

 

「わたくしの一〇八手が火を噴きますわ!」

 

「待て! カナタの潮を噴かせるのは私の仕事だ! 君なんかには絶対に譲らない!」

 

「なんの! こっちにはアスナというパイ〇リ快楽マシーンがいますのよ? 貴女の胸なんか目じゃない程のアスナの巨乳をとくとごらんなさい!」

 

「ひやぁぁぁぁぁっ! む、胸を揉まないでくださいツツジさぁーん!」

 

「あ、もしもしフロントですか? 俺だけ早急に一人部屋に替えてください今すぐに!」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 要望虚しく一人部屋を取る事が出来なかったカナタは早急に入浴を済ませ、ベッドの上でジュプトルをぎゅーっと抱きしめていた。

 

「ふぅぅ……やっぱりお前は俺の癒しだよ、ジュプトル」

 

「ジュプトォ……」

 

 慣れた手つきで首元を擦るカナタの手の感触に、ジュプトルは気持ちよさそうに目を細めて喉を鳴らした。ナギ恐怖症の為に久しぶりにボールから出てきたジュプトルさん、やっぱりマジ可愛すぎて昇天しそうです。この調子で近い内にドククラゲにダイブしよう。俺の心の癒し、プライスレス。

 ……話は変わるが、現在、ナギたち女子トリオは部屋に備え付けられていた露天風呂で心身の疲れを汗と共に洗い流している。一応は壁と扉で遮られているために覗き行為は出来なくなっているが、それでも露天風呂から聞こえる声は全くと言っていい程遮断されていない。どうやら部屋と露天風呂を繋ぐ壁には遮音機能は搭載されていないらしい。

 ―――そういう訳で、カナタはジュプトルを撫でることで必死に意識を話し声から遠ざけている訳なのだが、

 

『アスナー! 今日という今日は貴女の胸からミルクを出させてみせますわ!』

 

『セクハラですハレンチですえっちぃです! や、やめてくださいツツジさぁん!』

 

『そうだぞ、バカ者。アスナの乳は乱暴に扱うのではなく、優しくエロく揉まなければならないのだ。激しく乱雑に扱うなど、アスナの胸を冒涜するに等しいのだからな』

 

『ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って。どうしてナギ先輩までアタシの胸を揉むのに大いに賛成しちゃってるんですか!? そこはツツジさんを止めてくださいよアタシの先輩として!』

 

『君の胸からあふれ出る魅力に負けてしまったのだ!』

 

『綺麗な胸を張って言う事かーっ!』

 

 煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散――――――ッ!

 バキバキバキィッとマスクメロンのように青筋を浮かべながら、カナタは身体の奥底から湧き出る性欲に必死に抵抗していた。ここで理性の砦を破られるわけにはいかない。ヒワマキシティの時のような性欲モンスターになるわけにはいかないのだ!

 ぎりぃっ、と歯を食い縛り、呪文を頭の中で唱え続ける。煩悩退散邪念撃退南無阿弥陀仏性欲討伐……ッ!

 

『さぁアスナ、わたくしの揉みテクで絶頂に追い込んで差し上げますわ!』

 

『それなら私は指テクでアスナを昇天させてやろう!』

 

『やっ、やめっ、やめて……あっ、やぁ――――――っ!』

 

 ………………もう、ゴールしてもイイよね?

 どれだけ遮断しても脳と理性を侵食してくるエロいやり取りにカナタの本能が一気に優勢になっていく。ここで諦めたら人生的にゲームオーバーなのは重々承知しているが、年頃の男の子としてこの状況にこれ以上は耐えられそうもないのも事実。せめて理性が敗北する前に風呂から上がって欲しいのだが、あの調子ではあと十分以上は上がってこないだろう。

 お願いだから早く上がれ! と姿の見えぬ女子トリオに願うカナタさん。そんなカナタをジュプトルは心配そうに見つめているが、意識がいろんな意味で飛びかけているカナタには見えていない。

 ――そして。

 火照った顔で「はぁはぁ」と喘ぐカナタはベッドのシーツをギュッと握りしめ、

 

「わっきゃぁ――――――――っ!」

 

 限界を迎えると共に床に向かって激しく頭突きを連発した。

 

 




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 次回もお楽しみに!
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