ホウエン地方は何処も思春期   作:秋月月日

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 二話連続投稿です。


アジト攻防戦開始

 ドククラゲを駆使してマグマ団のアジトの中に無事に侵入したカナタ達。

 しかし、アジトの中へと続く扉にはマグマ団の下っ端が二人ほど見張りとして就いていて、姿を見られずに先に進むのは極めて困難な状況となっている。ここで拳銃とか弓矢があれば姿を見られることも無く敵を撃破できるのだが……というか、お前らトレーナーなんだからいい加減にポケモン使え。

 

「ここはカナタのキルリアの“ねんりき”で奴らを撃破する、というのはどうだろう?」

 

「まぁ、それがベストかもなぁ……」

 

 ナギの提案にカナタは嫌々ながらも賛同する。あの外に居ても中に居てもいろんな意味で騒がしいキルリアをあんまり多用したくないのだが、まぁキルリアでしかこの状況を打破できないのもまた事実なため、ここは仕方なく彼女の案に乗ることにしよう。ごめんなジュプトル。きっとお前も役に立つ時が来るはずだからさ。

 下っ端たちから見えない位置でボールを構え、キルリアを召喚す――

 

 ――サーナイトが現れた。

 

「何でだぁあああああああああっ!? 何でお前はまた勝手にいつの間にか進化しちゃってんだ!?」

 

《愛の奇跡ッス。ウフフ。これでカナタを襲っても違和感ゼロッスね!》

 

「ゼロじゃねえよ悪化したよ! 今のお前に襲われてる所をナギに見られたが最後、俺の人生はエンドコースだよ! 無駄に人間みたいな体つきしやがって!」

 

《ワタシの念力一〇八手がカナタに快楽地獄をプレゼントするッスよ!》

 

「いやぁああああああああああっ! このサーナイト、なんか怖いぃぃぃぃっ!?」

 

 くねくねと腰を揺らすサーナイトに、カナタは本気で戦慄した。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 結局、サーナイトの“サイコキネシス”(何時何処で覚えたのかなんて聞かない。事実を知るのが怖ろしいから)で下っ端たちを撃破したカナタたちは、ついにアジトの中へと足を踏み入れていた。

 アジトの中にはマグマ団の団員たちが見張りのように歩き回っていて、思うようには先に進めなくなっている。こんな状況でユウキを見つけなくてはならないというのだから、今がかなり難易度が高い現状である事は察してもらえるはずだ。

 四人+サーナイトで壁に背中を着けながら、彼らは先へと進んでいく。

 

「うーん……ここからは手分けして進んだ方が良さそうだな……」

 

「それじゃあ、アタシとツツジさんのペアが左に行くね」

 

「アスナ!? わたくしはカナタ様と共に先に進みたいのですが!?」

 

「ハハッ、ワロスワロス」

 

「最近の貴女、地味に酷く冷たくなってないかしら!?」

 

 いやそんな、気のせいっすよ、アハハハ。

 度重なるエロボケのせいで順調に感情を失くしてきているアスナさん。このままでは彼女がクールビューティな毒舌ツッコミキャラになってしまうおそれがある。そんなのキャラ崩壊なんていうレベルじゃないので、是非失敗して欲しい成長だ。

 とりあえずここで争っても仕方がない、と判断したツツジはナギとカナタに目配せをする。――五秒と掛からず二人は小さく頷きを返した。はて、今から何が始まるのだろう? 一人だけ状況が読めていないアスナは、身を隠しながらも首を傾げる。

 そして。

 カナタとツツジとナギの三人は曲がり角に身を隠したまま右手を大きく振り被り、

 

「「「さーいしょーはグー。じゃーんけーん―――」」」

 

「こんな所でジャンケン、だと!?」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 敵地でのじゃんけん大会勃発により無駄なタイムロスを発生させてしまったカナタ達はツーマンセルという構成でアジトの中の探索を始めた。因みに、ペアとしてはカナタとアスナ、ナギとツツジ、という考え得る限りでは最悪のチーム分けとなってしまっている。ぶっちゃけた話、ナギとツツジのチームなんて仲間割れする未来しか見えないんだよなぁ。

 恋人と友人の心配をしながらも、カナタはアスナを引き連れて奥へと進む。

 

「どうやら、このアジトはワープ装置で移動するみてえだな」

 

「そして、そのワープ先を記憶しておかないと、どんどんと深みに嵌っちゃう、って訳だね」

 

《まぁ最悪の場合、ワタシの“テレポート”でなんとかするッスよ!》

 

「あーうん、もうお前に常識を語る事をやめたくなる自分を殴りてえよ」

 

 とりあえずどうしてこの短時間でサーナイトにまで進化しちまったのかを説明せよ。お前、つい何時間か前まではキルリアだったじゃねえかよ。常識外れというか規格外すぎるサーナイトの成長速度に、カナタはただただ溜め息を吐く。

 しかし、今の状況で自分の戦力が格上げされたことは素直に喜ぶべきことだ。本当はジュプトルとドククラゲのレベル上げを行いたいのだが、今はそんな悠長な事は言ってられない。今度絶対にレベル上げしてやるからな、とジュプトルとドククラゲに約束し、カナタはサーナイトを従えながら下っ端たちを“サイコキネシス”で暗殺(気絶させているだけ)していく。

 

「うーん……なんか、流石にアジトの中が騒々しくなってきたなぁ」

 

「まぁ、これだけ団員たちを撃破してれば、侵入者の存在ぐらいは気づかれるだろうしね……」

 

「これは見つかるのも時間の問題かもな」

 

 そう、カナタが呟いた、まさにその瞬間の事だった。

 

「オイ」

 

 背後からの、短い呼び止め。

 それは狂気に満ちた男の声で、少なくともカナタが知っている人物の声ではない。それはアスナも同様の様で、何か言葉を放つよりも先にボールからコータスを召喚していた。

 ゆっくりと、声の主を警戒しながら二人は後ろを振り返る。

 そこには、マグマ団の装束を身に纏った、凶器な笑みが特徴の青年の姿があった。獰猛な獣のような目つきと裂けた笑みのせいで狂っている印象を受ける一人の青年。間違いなく、マグマ団の中では幹部クラスの実力者だ。ただの下っ端風情があそこまでの迫力と威圧感を放てるわけがない。

 強い。

 アスナは、バトルを始める間もなく、目の前の青年の実力を悟った。彼女はカナタの実力はまだ知らないが、まだ旅を初めて何か月かそこらの新米トレーナーであるカナタがあのマグマ団に勝てるとは、とてもじゃないが思えない。失礼かもしれないが、アスナにとってのカナタはそこまで強いイメージではない。

 故に、アスナはカナタに背中を向け、切羽詰まった声でこう言った。

 

「カナタくん。ここはアタシに任せて、先に行ってくれないかな?」

 

「アスナ!?」

 

「今のアタシたちの目的は、君の友人であるユウキって人を助ける事。こんな所で足止めを食う訳にはいかないんだ。―――だから、カナタくんは先に行って」

 

「…………でも」

 

 女を一人、置いてはいけない。

 そんな無駄な事を考えているのであろうカナタに思わず笑ってしまいそうになるも、アスナは代わりに精一杯の笑顔を彼に向けて、彼を先に進ませるためにこう言った。

 

「大丈夫。すぐに追いつくから」

 

「……分かった」

 

 ダッ! とアスナに背中を向けて走り出したカナタに、アスナは安堵の息を零した。ここで彼に何かが起きては、ナギに顔向けできない。アスナの使命はカナタを無傷で先に送り届けることだから、こんな中盤で彼をストップさせる訳にはいかないのだ。

 自ら足止めに立候補したアスナはコータスの首を撫でながら、目の前の青年に向き直る。

 

「それで? 君はアタシたちを捕獲しに来た、という事でオーケーなのかな?」

 

「まァ確かに、リーダーからそういう任務は受けてンだが……オレ個人の目的は、他にあるんだわ」

 

「君個人の、目的?」

 

 疑問の声を上げるアスナに、青年は猟奇的な笑みを返す。

 

「オレは強ェ奴とバトルがしてぇ。それも、世間で認められるぐれぇの実力者とだ。最強の名を冠するためにはこの地方全ての実力者を粉砕し、最終的には世界中の実力者を撃破する。―――この目標を達成するためなら、別に任務なンてどうでもいいんだわ」

 

「最強、か。……うん。君がマグマ団なんかじゃなかったら、それ相応の場でバトルしてあげたかったかな」

 

「カカッ。そりゃあ残念な事実だが、別に立場とか場所なんて今は関係ねェだろ? オレは強くてテメェも強ェ。マグマ団の幹部とフエンタウンのジムリーダーのバトルだなんて、もはや録画ものだぜ?」

 

「あははっ。それはまぁ、確かに君の言う通りかもね」

 

 この人は、戦闘狂(バトルハッピー)なのだろう。ポケモンバトルで相手を叩き潰すことに快楽を覚えてしまった、危険な思想の持ち主。バトルは楽しむもの、というモットーを掲げているポケモン協会の一員であるアスナとは、完全に考え方が違う存在だ。

 勝つ為に戦う者と楽しむ為に戦う者。

 勝つ楽しみに魅せられた者と楽しく勝つ事に魅せられた者。

 見ようによっては同じに見えるが、その心は全く異なる正反対の存在。

 どこで道を違えたのかなんて知らないし、別に知ろうとも思わない。アスナは別に偽善者ではないから、他人の人生についてとやかく言うつもりはない。

 だが。

 今、この場に置いて自分の前に立ち塞がるというのなら、無理やり関わるしかない。

 

「ンじゃまァ、まずは自己紹介としゃれ込もうぜ」

 

 そう言って。

 青年は懐からボールを取り出し、自分の真横に相棒であるポケモンを召喚する。

 

「オレはホムラ。こっちは相棒のグラエナだ。これでも一応、マグマ団の幹部をやらせてもらってる。今からテメェをぶっ飛ばす男の名だ。よォく覚えておけよ?」

 

「あははっ、それはまた大きく出たわね」

 

 それじゃあ次は、アタシの番。

 アスナは相棒のコータスの首に手を添え、青年――ホムラを指で示し、豊満な胸を張ってこう宣言した。

 

「アタシはフエンタウンジムリーダーのアスナ。こっちは相棒のコータス。今から君を圧倒する女の名前だから、よく覚えておいてね」

 

「…………面白ェ」

 

 アスナの挑発に、ホムラは気づかぬ内に笑っていた。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 あるところで、青年と少女が激突した。

 またあるところで、少年が友人のために走り出した。

 同じ時刻、同じ場所で、様々な人間の想いが交錯し、一つのドラマを生んでいく。

 そして、これもまた、そのドラマの内のワンシーンだ。

 

「……凄いシンクロ率だ」

 

 マグマ団アジトの一角で、その女性は二つのカプセルとパソコンを交互に見ていた。

 カプセルの片方にはルビー色の宝玉が浮かんでいて、もう片方のカプセルには一人の少年が目を瞑った状態で浮かんでいる。二つのカプセルは無数のコードで繋がっていて、互いを満たす培養液は赤く淡く輝いている。

 ちゃぷん、と少年の培養液が小さく揺れた。

 それを合図に、少年の双眸がゆっくりと開かれる。感情の無い、冷たい紅色の瞳が虚ろに虚空を認めている。

 少年の覚醒を確認した女はカプセルを開き、培養液が零れていくのを気にすることなく、こちらに倒れてくる少年の身体を受け止めた。―――そして、もう一つのカプセルの中身を手に取り、少年の首に装着されている首輪の中央へとはめ込んだ。

 力なく項垂れる少年に、意識はない。

 そんな少年を強く抱きしめ、女――カガリは興奮冷めやらぬ様子で頬を紅潮させながらこう呟いた。

 

「アンタは本当、私を飽きさせないね―――ユウキ」

 

 さぁ、集え。

 世界の終わりを導くメロディを奏でるために。

 さぁ、戦え。

 世界の未来を決めるために。

 

 




 ―――フヨウちゃんの血液型占い―――

フヨウ「…………A型のあなた。今日は悪霊に憑かれる恐れがある。家を出る前に全身に塩を振ると良い、と思う」

フヨウ「…………B型のあなた。今日は心霊写真が撮れる。是非、幽霊たちの存在を世間に知らしめてあげると良い、と願う」

フヨウ「…………O型のあなた。今日は幽霊に会う事は出来ない。残念。とりあえず、送り火山でお参りをして、無理にでも幽霊に会いに行くべき」

フヨウ「…………AB型のあなた。―――――――――気を付けて」
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