いやぁ、応募用の小説の執筆に集中してたんですけど、もう絶対に間に合わない感じになっちゃいまして……次の機会にすることにしました。
という訳で復帰一発目&ルビサファリメイク決定記念に最新話を投稿です!
色々と制約が取っ払われたんで、これからはちゃんと更新できるはず!
ホウエン地方編が終わったら、ちょこちょこ送られてくるリクエスト話も書いてみたいですしね……コミュ障レッドさんとカナタの絡みとか、ヤンデレなエリカ嬢とか、フウロに弄られるナギとか……。
「あぶねぇ……今回はマジで死ぬかと思った……サーナイトがいなかったら即死だった……」
《ワタシを盾にするなんて、なんて大胆! あぁっ、この感じ、たまらないッス!》
「…………そのまま死ねばよかったのに」
《辛辣なカナタも大好きッス!》
「……はぁぁぁ」
マルマインによる大爆発で消し飛んだ部屋の瓦礫の上で、カナタは疲れたように溜め息を吐いた。マツブサのクロバットに貫かれた腹部からは未だに激痛が走っているが、サーナイトの迅速な応急処置のおかげで痛みが少しだけ和らいでいる。激痛な事に変わりはないが、まぁ歩くぐらいなら問題ないだろう。
頬を紅潮させてもじもじと気持ち悪いサーナイトから目を逸らし、自分の傍で目をぐるぐると回しているマルマインへと視線を向ける。この惨状の元凶がこのポケモンな訳だが、見方を変えればこのポケモンはそれほどまでの火力を持っているという事になる。大爆発でこの威力を出せるのなら、さぞ戦力になる事だろう。
とりあえずハイパーボールを投げてみる。―――二秒で捕獲できた。
「…………」
マルマインが入ったハイパーボールを無表情で眺めながら、カナタは自分の手持ちポケモンたちを頭の中で並べてみる。
癒し系ジュプトル。
不遇系ドククラゲ。
淫乱系サーナイト。
自爆系マルマイン。
「まともなポケモンが遂に半分になっちまった……ッ!?」
何で俺の人生はここまでハードモードになってしまっているのだろうか。特にサーナイト、テメェが元凶だ。少しは自嘲しやがれコノヤロウ。
ひくひくと頬を引き攣らせて心で罵倒を放ちながらもサーナイトに肩を借り、カナタは瓦礫の上から降りていく。
《カナタの匂いカナタの匂いカナタの匂い! くんかくんかくんか! はぁはぁはぁはぁはぁはぁ!》
「テメェの鼻を抉りとるぞコノヤロウ」
結局のところ、運が悪いんだろうなぁ、と諦める事にしました。
☆☆☆
崩れてきた天井に潰されそうだった所を、マグマ団幹部・ホムラに助けられた。
それは正義のジムリーダー・アスナにとってはかなりの屈辱であり、一人の女としてかなーり悔しかったりする出来事だった。危ない所をイケメンに助けてもらう、というのは全世界の女性の憧れのシーンだと思うのだが、他人に借りを作る事を誰よりも嫌うアスナにはその当たり前は通用しない。
故に。
崩れていくアジトを走りながら、アスナはホムラに絡みまくっていた。
「勘違いしないでよね! アタシは別に、君に助けられてなんかないんだからねっ!」
「いやそれはねェだろ。あンだけ盛大にオレから助けられといて、その嘘は流石にねェわ」
「う、うるさい! あれは無効よ、無効! アタシが認めない限り、あれは無効です!」
「あーそーですかーそりゃァよかったですねー」
「真面目に聞けぇええええええええええええッ!」
耳を抑えて前を走るホムラに、アスナの全力の怒号が炸裂する。
☆☆☆
サーナイトに肩を借りながらアジトを進んでいたら、マグマ団の下っ端たちに包囲された。
漫画に出てくる悪役のようなゲスい笑みを浮かべながら、マグマ団の下っ端たちはこれまた漫画の悪役のようなセリフをカナタに浴びせかける。
「ゲヘヘ……俺たちマグマ団を敵に回して、無事に逃げられると思うなよ……」
「お前のポケモンを売り捌きゃあ、大分金儲けできそうだしな。ここで死んでもらうぜ!」
「…………」
《…………》
ゲヘヘヘヘ! と数により優勢で調子に乗る下っ端たちに、カナタとサーナイトは複雑な表情で沈黙する。下っ端は男と女の両方がいる訳だが、今回は何故か男しかいない。女の下っ端たちは崩れ行くアジトに臆して逃げたのか、それともカナタのパーティの女性陣の迎撃に向かったのか。ぶっちゃけどっちでもいいのだが、そこが地味に気になった。
そして、別に自分のバトルの腕に自信があるから、と言う訳ではないが、この場を借りてあえて言わせていただこう。
―――コイツ等、絶対に俺に勝てねえだろ。
実力というか立場というか展開というか、彼らが放つ言葉の端々に死亡フラグが乱立している気がしてならない。これはあくまでも漫画でのイメージだが、敵の組織の下っ端が下卑た台詞を吐くと、次のページでは既に満身創痍で瀕死状態になっているのが大半だ。それが現実に当て嵌める事が出来るとするならば、あと数分としない内に彼らはバトルに負けて地に伏せる事は明白だ。
さぁ、どうしよう。
憐れな悪役の方々に憐みの視線を送りながら思案する事約一分。
「ジュプトル。そいつらの股間にリーフブレード」
「ジュプトォーッ!」
『あっふぅぅうううううううううん!?』
久しぶりにご登場した癒し系による蹂躙劇が始まった。
☆☆☆
マグマ団の下っ端たち(男)を無残な死に追いやったカナタはサーナイトとジュプトルを従えたまま、アジトをうろつく作業を続行していた。本当はただ単純に迷子になっているだけなのだが、そこを認めてしまうとどうしようもなくやるせない気持ちになってしまうので《アジトをうろついている》と見栄を張らせていただくことにする。
痛む腹部を手で抑えつけながら、カナタは苦悶の表情を浮かべる。
「うぐ……こりゃあさっさと病院に行かなきゃだな……やっぱり治療とかすんのかな? やだなぁ、痛くされるのはやだなぁ……」
《ワタシはカナタに痛くされるのを望んでるッスけどね》
「真面目な顔で何言ってんの? バカなの死ぬの? むしろ死ねよテメェ」
《ああん! その罵倒、その視線――まさに甘露! げへ、げへへへ、もっと罵って~っ!》
「…………もうマジでやだ、このサーナイト……」
「…………ジュプトォ」
よよよ、と涙を流すカナタの肩を、ジュプトルは複雑な表情を浮かべながら優しく叩く。
☆☆☆
アジトを隈なく散策したが、これと言ってめぼしい発見はなかった。
それどころか突如として爆発音が鳴り響き、あろうことかアジトが崩れ始めてしまった。
それが、ツツジとの激闘の末に単独行動を選択する事になってしまったナギの、簡潔な経緯だった。マグマ団の幹部とイイ感じになったどこぞの爆乳ジムリーダーとは違い、今回のナギは完全に要らない子と化してしまっている。
ガラガラと崩れていくアジトの中を、ナギは息堰切って走り抜ける。
「はぁ……はぁ……ええい、一体全体何事だ!? 誰かが自爆装置でも作動させたのか!?」
何の事情も知らないナギがそんな結論を導き出してしまうのは無理もない事だと言える。マグマ団の何者かが証拠隠滅の為にアジトを爆発させた、という事が有り得そうな現状だからこそ、ナギは逃げまどいながらもそのような結論に至ったのだ。
しかし、事実は全く異なる。ぶっちゃけた話、新しくカナタの手持ちポケモンとなったマルマインの大爆発にマグマ団のアジトが耐えきれなかっただけなのだ。強固に造られたアジトを崩れさせるほどの威力など非現実的で非常識すぎると思うのだが、要はマルマインがアジトの防御力を軽く上回ってしまったという話なのだろう。深く考える事でもあるまい。
上から降ってきた瓦礫をギリギリのところで回避し、分かれ道を直感で右折する。
と、その時。
選んだ道の先に、世界で一番大切な少年の姿があった。
「カナタ! 無事だったか、カナタ!」
ぱぁぁっと顔を輝かせながら、女顔の新米トレーナーことカナタへと駆け寄るナギ。
そんな彼女に気づいたカナタは一瞬嬉しそうに表情を和らげるも、直後には顔を顰めて苦しそうにこう言った。
「あ。え、と……まぁ、なんとか大丈夫だよ、ナギ。ちょっとヘマやっちゃってたりはするけど……」
そう言って、彼は上着をぺらっと捲る――そこには、血に染まった腹部があった。
「け、怪我をしているじゃないか! しかも、決して軽傷ではない……一体何があったのだ!?」
「く、詳しい話は後で良い、か? すまんけど、ちょっと限界だったり……あはは」
乾いた笑いを零す彼の青褪めた顔には、冷や汗がびっしりと浮かんでいた。
それもそのはず。腹部を貫かれている状態で脱出のために歩き回っていたのだ。しかも止血程度の応急処置しか施されておらず、おまけにマルマインの大爆発を超至近距離で浴びせられたばかりでもある。今こうして生きている事自体が奇跡のような経験を、彼は短時間の間にしてしまっている。
ふらぁ、と崩れ落ちるカナタを、ナギは焦りながらも抱き留める。
「よく頑張ったな、カナタ。安心しろ。君は私が守ってみせる」
「う、ん……ありがとな、ナギ……」
その言葉の直後、カナタの重さが一層増した。どうやら気絶してしまったらしく、カナタはナギの胸の上で穏やかな寝息を立て始めていた。こんな時に思うのもなんだとは思うが、やはりカナタの寝顔は最高に可愛いと思う。
気絶したカナタを背負い、ナギはキリッと表情を引き締める。ここから外へと脱出するまでの間、私が絶対にカナタを護ってみせる! どんな敵が襲って来ようが、ジムリーダーとしての実力をフル動員させて殲滅する所存だ!
さぁ、ここからが正念場だ。
愛する恋人を護る為、ヒワマキシティのジムリーダーは立ち上が――
《あ、じゃあカナタが気絶しちゃったみたいなんで、いまから容赦なくサイコキネシスで壁をぶち抜くッスねー。はーい、あ、よいしょー!》
「テメェ少しは空気読めよぶち抜かれてえのかああん?」
☆☆☆
そんなこんなで意外と簡単に脱出する事に成功したナギとカナタ。サイコキネシスで壁をぶち抜くのは流石に疲れたのか、《んじゃ、ワタシはボールの中に戻るッス。……カナタに手を出したら殺すッスからね?》という脅し文句を残してサーナイトはボールの中へと戻って行った。因みに、ジュプトルはナギがカナタに話しかけた時点で自主的にボールの中へと非難している。未だに怖がられているのだなぁ、とちょっぴり悲しくなってしまったのはここだけの秘密だ。
ゴゴゴゴゴ、と激しい音を立てながら崩れていくアジトを、ナギはミナモシティ近くの岩礁から見守る。全員ちゃんと脱出できているのだろうか、という心配を胸に抱くことも忘れない。
と。
「あ、ナギ先輩! 無事だったんですね!」
「おお、アスナじゃないか! 君こそ無事だったのだな!」
すぐ傍の岩礁から、紅い髪と爆乳が特徴の後輩ジムリーダーが姿を現した。所々に擦り傷があるが、どうやら命に別状はないらしい。というか、かなりピンピンしている。悪の組織のアジトの中から脱出してきたとはとてもじゃないが思えない。……まぁ、私も同じくピンピンとしている訳なのだが。
――――――というか。
「な、なぁ、アスナ。つかぬ事を聞くようで悪いのだが……君が引き摺っているそこのズタボロの男は一体誰なのだ……?」
そう言うナギの視線の先には、赤の装束に身を包んだ満身創痍の青年の姿が。肉食獣のような獰猛さを感じさせるがかなり整っている顔には何故か誰かに殴られた跡があり、両手両足に至ってはぴくぴくと小刻みに痙攣してしまっている。
ひくひくと頬を引き攣らせながら青年を指差すナギに、「ああ、コイツですか?」と青年を少し持ち上げながらアスナは黒い笑みを浮かべ――
「ただのゴミです。気にしないでください」
「え゛。い、いや、アスナ、それは流石に……」
「ただのゴミです。気にしないでください」
「い、いや、だから、流石にその言い方は酷」
「こ、この、クソアマ、いい加減にし――」
「あは☆」
「――ぐぼぁあああっ!?」
一瞬。
震えながらも目を覚まし、言葉を紡いでいた青年の顔面にアスナの拳が突き刺さった。それはまさに一瞬の出来事で、動体視力に自信があるナギですら見逃してしまいそうになるぐらいの速度だった。
がくっ、と白目を剥いて崩れ落ちる青年。
そして、キラキラ笑顔を浮かべる黒アスナ。
そんな二人を順番に見た後、ナギはとりあえず無難な選択を取る事にした。
「そ、そうだな。まぁ、君がそう言うのなら、そうなのだろうな……」
「さっきからそう言ってるじゃないですかー。もう、ナギ先輩ったらおちゃめなんですから☆」
「あ、あはは、はは……」
アスナだけは絶対に怒らせないようにしよう、とナギが心から誓った瞬間であった。
ナギ「そういえば、ツツジの奴はどうしたのだ? 姿が見えないが……」
アスナ「ああ、ツツジさんならそこで浮かんでますよ?」
ナギ「うおっ!? ぜ、全然気づかなかった……って、ん? どこか、そこはかとなく傷だらけに見えるのは私の見間違いか……?」
アスナ「ああ、いえ。脱出の直前にツツジさんと合流したんですが、なんか『カナタ様を探しに行きますわ!』とか言って引き返そうとしたんで……くいっ、と」
ナギ「………………………………そ、そうか。それはナイスな判断だな、うん」
アスナ「あははっ。ナギ先輩に褒められちゃったー☆」
ナギ(さらば、ツツジ。安らかに眠るが良い……)