ホウエン地方は何処も思春期   作:秋月月日

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カナタに迫る恐怖の再会

 マグマ団のアジトからの脱出後、ナギたちはカナタの傷の治療の為にミナモシティにある病院へと移動した。カナタの傷は決して浅いものではなかったが、サーナイトの迅速な応急処置が幸いし、簡単な治療のみで後は自然治癒に任せていればいい、と言う診断結果を下された。

 そして、場所を変えてのポケモンセンター。

 詳しく言うのなら、センター内の客室にて。

 カナタ、ナギ、ツツジ、アスナの四人はマグマ団の幹部であるホムラ(縄でぐるぐる巻き)を包囲していた。

 

「それじゃあ、君たちマグマ団の目的について洗いざらい吐かせてもらうから、覚悟しておきなさい」

 

 そう言って、「フフッ」と黒い笑みを浮かべるアスナ。最近凄い速度で黒化を進行させている彼女に、捕縛されているホムラと傍で彼女を見ていたカナタはほぼ同時のタイミングで頬をヒクヒクと引き攣らせる。

 そして、アスナの左右に陣取っていたナギとツツジはと言うと、

 

「うふふふふ。カナタ様を傷つけた報いをこのわたくしが受けさせてあげますわ……ッ!」

 

「尋問と拷問。くっくっく、これまでのストレスをぶつける時がついに来た……ッ!」

 

「とりあえずその卑猥な玩具をごみ箱にでも捨てる所から始めようか」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 ナギとツツジの拷問器具(内容は自主規制)をゴミ箱に投げ捨てたカナタはホムラの前に腰を下ろし、床に座らされている彼と視線の位置を合わせた。獰猛なホムラの視線と気だるげなカナタの視線が交錯し、妙な沈黙がその場を支配する。

 一分、二分、三分。

 静寂と沈黙が支配した時間が、ただ刻々と過ぎていく。女顔の青年と凶悪な青年の無言のやり取りとも言うべき光景が、三人の少女たちの目の前で繰り広げられていた。

 ―――そして、最初に動いたのはカナタだった。

 腰に装着しているボールホルダーからモンスターボールを取り出し、中からジュプトルを召喚。拘束された状態で自分を睨みつけているホムラの背後にジュプトルを移動させ――

 

「縄を斬ってくれ、ジュプトル」

 

「なっ……!?」

 

 一閃。

 ジュプトルが持つ鋭利なリーフブレードによって、ホムラを縛っていた縄がバラバラと床へと落下した。それでいて、ホムラの衣服には傷一つ付いていない。まだそこまでレベルが高いという訳ではないというのに、怖ろしいまでの正確さだった。

 ジュプトルによって自由になったホムラは両手を何度か開いたり閉じたりを繰り返し、異常かないかを確かめる。そこまで強く縛っていなかったため、異常と言う異常は見当たらなかったようだ。

 スゥッ、と目を細め、ホムラはカナタに問いかける。

 

「……オマエ、こりゃァどォいうつもりだ?」

 

「別に。どうせあのまま縛ってても何も喋ってくれなかっただろうし、あと数分後には自分で縄を解いて逃亡を図ってただろうと予想しての行動だよ。―――それに、アンタは戦力になる」

 

「はン。オレがオマエラに協力するゥ? 世迷言も大概にしとけってンだ」

 

 確かに、それはホムラの言う事が正しい。カナタ達と敵対するマグマ団の一員であるホムラが彼らに協力する義理なんてものは存在しないし、勿論、義務もない。ここから抵抗してカナタ達を撃破し、海底洞窟へと向かったマツブサ達と合流する――それがホムラが取れる最善策であることはまず間違いない。

 しかし。

 アスナと同様、最近急速な速度で黒化が進んでいるカナタは、ホムラが自分たちに協力しなければならないように展開をシフトさせる。

 

「お前が協力を拒むのなら、こっちにも考えがある」

 

「ほォ? そりゃァ面白ェ。どンな考えか、聞かせてもらおうじゃねェか」

 

 ニィと獰猛な笑みを浮かべるホムラ。

 カナタはスッと右手を挙げ、

 

「俺がこの手を下ろした瞬間、この中の誰かがお前に危害を加える」

 

「……………………」

 

 一瞬の、沈黙。

 その一瞬の間に、ホムラは見た。

 背筋が寒くなる程に冷たい笑顔を浮かべる、フエンタウンのジムリーダーの姿を。

 

(いやっ、ほー)

 

 そう、口が動いていた。

 声が聞こえた訳じゃない。テレパシーが届いたわけじゃない。

 ただ、口の動きだけで理解させられた。

 ツーッとホムラの頬を一筋の汗が伝う。動悸は激しくなり、心成しか息苦しくもなっている。

 警戒? いや、これは――恐怖。

 何を考えているのか分からない、あの女に恐怖している。

 

(この、オレが?)

 

 有り得ない、と思いたくても体の震えがそれを否定する。歯はガチガチと鳴り、両手両足は小刻みに痙攣している始末。

 怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い―――ッ!

 顔は青褪め目尻には涙。喉は急激に干上がり、声を出すことも叶わない。

 それが、災いの始まりだった。

 

「タイム、オーバー」

 

 ニヤァ、とカナタの顔に笑みが浮かぶ。

 その直後、カナタの右手が振り下ろされた。

 瞬間。

 フエンタウンジムのジムリーダーが、ホムラの前まで一瞬で距離を詰めてきた。

 

「っ、な……」

 

「うふふ。アジトの中では随分と好き勝手言ってくれましたね、ホ・ム・ラ?」

 

 言いながら頬に添えられるアスナの手が、ホムラの恐怖を掻き立てる。

 ――掻き立てたのも、束の間。

 がしっ、とホムラはアスナから襟首を掴まれ、抵抗の暇すらなく、ずるずると部屋の出入り口へと引っ張られ始めた。

 

「それでは、この方の拷も――尋問はアタシに任せてください! 大丈夫、ギリギリのところで終わらせますから☆」

 

「ン、バッ……きょ、協力、協力する! 協力するから、このイカレ女だけは勘弁してく―――ぐぎぃっ!?」

 

「こーらっ☆ そんなに暴れちゃダメですよ? ―――これからの地獄を耐えきるために体力だけは残しておかないと」

 

「は、離せ、離せェェええええええええええッ!」

 

 そんな叫びを最後に、二人は部屋を後にした。

 アスナとホムラが出て行った扉を沈黙と共に眺めていたカナタとナギとツツジはびっしりと顔中に冷や汗を浮かび上がらせ、

 

「「「さらばホムラ、安らかに眠れ」」」

 

 数分後、隣の部屋から聞き覚えのある青年の叫び声が響き渡って来た。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 翌日。

 アスナによって世界最悪の地獄を目の当たりに――というレベルではなく、地獄を実体験させられたホムラが「協力させてくれ! 頼むから、協力させてくれェ!」と縋りついてきたことにより、一応の戦力強化は成功した。一体アスナが彼に何をしたのか、その真相は未だに分からないが、別に自ら率先して知ろうとする必要はないだろう。ホムラの為にも、自分たちの為にも。

 そんなこんなで翌日な訳だが、カナタ達は懐かしい面子との再会を果たしていた。

 

「ごめんなさい、カナタさん。ユウキさんを見つける事は出来ませんでした……」

 

「別に謝る必要はねえよ、ミツル。そっちの方はこっちで何とかできたからさ」

 

「ほら、だから言ったでしょ、ミツル君? カナタ達が何とかしてくれてるってさ」

 

「お前はもう少し自分で何とかする努力をしろやアホハルカ」

 

「何で私にだけそんな冠詞がついているのかの説明を求める!」

 

 ミツルとハルカ。

 カナタ達と別れてホウエン地方の西部でマグマ団の情報を集めていた二人である。ミツルの言葉からも分かる通り、あまり大した情報を得る事は出来なかったようだが、まぁそれでも無事に再会できたのだから良しとしよう。情報も大事だが、まずは無事でいる事が何よりも大事なのだ。

 ―――と、綺麗に纏めようとした、まさにその瞬間の事だった。

 

「やぁ、カナタくん。久しぶりだね」

 

 突然の、悪寒。

 それは、ミツルとハルカの後ろからやってきた。

 海色の髪と浅黒い肌、そして無駄なく鍛え上げられた肉体と動き易さ重視の衣服に身を包んだ、一人の青年。

 それは、カナタが良く知る――というか、絶対に再会したくない人物ナンバーワンの青年だった。

 その青年の名は―――

 

「お、俺のア○ルを狙うホモジムリーダー、トウキさん!?」

 

「可愛らしい男の娘との純粋な愛を求める同性愛者と言ってくれないかい!?」

 

 どっちでもいいわ! と心の中で全員がツッコんだ。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 可愛い男の娘限定のホモ野郎ことトウキの出現により、カナタとミツルはとりあえず個室へと閉じこもってしまった。ミツルは別にトウキに対して敵意なんかは持っていないのだが、『ミツルの純潔は俺が守る!』と言ってミツル共々籠城してしまったのだ。

 そんな敬意を挟みつつ、ポケモンセンターの一階にて。

 総勢四人のジムリーダーが作戦会議を行っていた。

 

「「とりあえず、トウキ殺す」」

 

「ま、まぁまぁ、二人とも落ち着いてください。トウキさんだって別に悪気がある訳じゃないんですし……」

 

「そうとも! オレはただ、可愛い男の娘を愛でたいだけなんだ!」

 

「うん、やっぱりトウキさんはちょっと黙っててください」

 

 ダメだコイツ、早く何とかしないと……。

 カナタLOVEなツツジとナギ、それと可愛い専門のホモなトウキを前に、アスナは眩暈を覚えていた。こんな面子で作戦会議なんて、絶対に無理と思うのはアタシだけだろうか。ぶっちゃけた話、会議以前に会話すらもままならない気がする。

 さてさて、どうやってここから作戦会議にまで場を誘導したものか。ズキズキと痛む頭を抱えながら、アスナは必死に考える。

 と。

 

「話は聞かせてもらったよ!」

 

「そういう時こそ、超能力者のボクたちの出番だね!」

 

 突然の、可愛らしい声が二つ。

 それは、ポケモンセンターの入り口の方から聞こえてきていた。

 『まさか……』とその場の四人が同じ予想を立てるも、一応の流れとして彼らは入り口で存在を主張する二人組に意識を集中させる。

 そこには、容姿も衣装もそっくりな少年と少女がいた。

 (もとどり)と呼ばれる頭の後ろ辺りに髪を丸くまとめた特徴的な髪型に、羽のような形の白いリボン。十二歳程に見える可愛らしい顔立ちを、小柄な体がより引き立てている。袖口や襟など、所々に赤いラインが入った青いチャイナ服を着ていて、その姿はまるで織姫と彦星の様。少女の方は少し髪が長く、襟元に赤い星型のボタンが付いており、少年の方は緑の星形のボタンが付いている。

 そんな、髪の長さと星形のボタン以外は完璧なぐらいにそっくりな二人は互いのギュッと握り、アスナ達四人にぱぁぁっと笑顔を向けて―――こう言った。

 

「久しぶりだね、淫乱教師にセクハラ巨乳!」

 

「それにホモ野郎と爆乳新人も久しぶり!」

 

「私はランだよ、覚えてる?」

 

「ボクはフウだよ、覚えてる?」

 

「私たちが来たからには、もう大丈夫!」

 

「ボクたちの愛の力で全て解決!」

 

「「そう、女の敵である早漏よりも早く解決さ!」」

 

 彼らの名は、フウとラン。

 弱冠十二歳でのトクサネシティジムのジムリーダーにして、姉弟同士で愛し合っている生粋の純粋毒舌変態コンビ。

 そんな枕詞がいっぱいの天才双子の登場に、(ジムリーダーの中では)一番の常識人であるアスナは涙を浮かべながら頭を抱えた。

 

 




 ――――プリムさんの血液型占い(男性向け)――――

プリム「A型の貴方。今日は空から美少年が降って来るでしょう。それに備え、外出の際にはロープを持っていくのをお勧めするわ」

プリム「B型の貴方。今日の運勢はちょっぴり最高。転んだ拍子に手すりか何かで『アッー!』という事になりかねないわ」

プリム「AB型の貴方。今日は凄く最高ね。貴方の家に家出中の美少年がやって来るだろうから、迷わずに家に上がらせてあげなさい。そして勢いだけで押し倒し、美少年との熱いベッドインを果たすのよ!」

プリム「O型の貴方。――――――貞操に気を付けて☆」
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