ホウエン地方は何処も思春期   作:秋月月日

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 二話連続投稿です!


遂にやってきた救いの手

 ピーコちゃん(ゴーリキー♀)をエロジジイに突き返したカナタ達三人はデボンコーポレーションの社長室にやってきていた。

 荷物を盗まれた男性に包みを返した訳だが、「是非お礼をしたいと社長が言っております」と言われ、別に急ぎの旅でもなかったので男性の案内を受けることにしたのだ。その際にハルカに「ジム戦受けんで良いの?」と聞いたら「実は先にバッジゲットしてました!」と凄く衝撃的な返答をされてしまった。……というか、ワカシャモはジム戦中に進化したらしい。バトル中での進化というのはミシロクオリティだからこそなせる業なのだろうか。

 そんないろんな意味で悲しい事実を知ってしまいながらも男性についていき、冒頭の状況に戻る――という訳だ。

 無駄に高級そうなソファに座らされ、カナタは少しばかり緊張してしまっていた。まさか人生の中で社長と呼ばれる人と面会する日が来ようとは。しかも、ホウエンでトップクラスに有名なデボンコーポレーションの社長が相手だなんて。……謝礼とか貰えんのかな?

 妙な期待に胸を躍らせるカナタ。

 そんな彼の右側では、例の思春期コンビが相変わらずのマイペースを披露していた。

 

「ナギさんナギさん。あの壁に裸の女性の絵画がありますよ。すっごく綺麗なおっぱいですね! 私もあれぐらいのサイズは欲しいなぁ」

 

「いやいや、あまり大きくても得ばかりではないぞ? というか、私は貧乳の方が少しばかりうらやましいな」

 

「そりゃまた何で?」

 

「だって貧乳の方が感度が良いらしいし!」

 

「なんと!」

 

「ハイそこ意味不明な内容で盛り上がらなーい!」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 本当に失礼すぎるコンビを口で黙らせてから数秒後、ここにカナタたちを連れてきた中年男性と共に凄く風格のある初老の男性が姿を現した。

 ツワブキ社長。

 ホウエン随一の企業『デボンコーポレーション』の社長であり、社長という立場になった今でも自分の手で製品を作る事をやめられないという生粋の職人だ。

 ツワブキはニコニコ笑顔でカナタ達の向かいのソファの傍に立ち、そのまま丁寧に頭を下げた。

 

「この度は我が社の為にいろいろと奮闘していただき、本当に感謝致します」

 

「あ、頭を上げてくださいツワブキ社長! 別にそんな、大したことじゃないですから!」

 

「あ、やっぱりそうですか? それでは本題に移らせてもらいます」

 

「少しは悪びれろや!」

 

 コイツもギャグ要員か! と相変わらずキレの良いカナタのツッコミが炸裂する。

 肩を怒らせて目も怒らせるカナタを先ほどの男性(おそらく秘書か何かなのだろう)が宥める傍で、ツワブキ社長はナギたちに一枚の封筒を差し出した。

 

「多大なご迷惑をかけた後でこう言うのもなんなのですが……この手紙をある人物に渡してほしいのです」

 

「恋文ですか?」

 

「だとしたら、渡す相手は――浮気相手!? きゃーっ! 来ましたよナギさん昼ドラ展開ってやつですよ!」

 

「ドロドロな三角関係とも言うな!」

 

「ちょっとお前ら表に出てろ!」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 止まらない思春期コンビを社長室の外へと蹴り出したカナタは「はぁぁぁぁぁぁ」と心底疲れたような溜め息を吐き、眉間を指で揉み解しながらツワブキ社長に問いかけた。

 

「それで、この手紙はいったい誰に渡せば良いんですか?」

 

「私の息子――といっても分からないでしょうから、名前を申し上げておきます」

 

 ツワブキはスゥッと目を細め、

 

「そう。アレは強い雨が降りしきる春の日のことだった――」

 

「あ、回想とか良いんでさっさと簡潔に短く言ってください」

 

「……あなた、やけにボケに手慣れていますね」

 

「まぁ、仲間と幼馴染みが四六時中エロボケ思春期モードなんで」

 

 そう言うカナタの顔には信じられない程に膨大な哀愁が漂っていた。

 ツワブキは冷や汗交じりで顔を引き攣らせながらも、カナタの要望通りの行動に移る。

 

「ダイゴ、という私の息子にこの手紙を渡してほしいのです」

 

 ダイゴ? はて、何処かで聞いた事があるような名前だな……。やけに記憶に引っかかった『ダイゴ』という名前に首をかしげるカナタ。実は絶対に知っていなければならない名前なのだが、カナタはほとんど忘れてしまっているようだ。

 ま、別に良いか。思い出すのを中断し、カナタは手紙を掴み取る。

 

「用件は分かりました。――それで、そのダイゴさんとやらがどこにいるのかの見当はついてるんですか?」

 

「はい。ダイゴは昨日からムロタウンにある『ムロの洞窟』というところで石探しをやっているはずです。あの男は昔から珍しい石を集めるのが趣味でして……そう、アレは十年前の春の日の事」

 

「アンタそれボケじゃなくて素だろ絶対に!」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 ツワブキからの依頼を受けたカナタは社長室を後にした。

 階段を下って受付ロビーに向かうと、待機客用のソファの上で寛いでいるナギとハルカの姿が視界に入ってきたので、カナタは面倒くさそうに頭を掻きながら二人の元へと歩み寄った。

 カナタの接近に気づいたナギは相変わらずのクールな顔で彼の方を見る。

 

「意外と早く終わったのだな。――それで、誰に手紙を渡せと言われたんだ?」

 

「ムロの洞窟に篭ってるダイゴって男に渡せば良いらしいです」

 

「ほぅ? ダイゴ、か……」

 

「あれ? もしかして知り合いか何かですか?」

 

「……いや、まったく知らない名だ」

 

 そう言って小さく微笑むナギに、カナタは訝しげな視線を向ける。絶対に何か知ってんだろこの人。今の目は嘘をついている目だ。――と、出会って二日程だというのにカナタはナギの挙動の違和感を既に掴めるようになっていた。まぁ、恥ずかしいから本人には言わねえけど。

 「それじゃあ、外に出ようか」カナタの疑いの視線から逃げるように立ち上がったナギが先頭に位置取る形で三人はデボンコーポレーションの外に出た。

 と、そこでカナタは何かを思い出したように「あっ」と呟き、

 

「そういえば、ツワブキさんから謝礼としてポケナビ貰ったんだった。ほら、これがナギさんとハルカの分。そっちには既に互いの番号を登録してっから、心配は要らないです」

 

「意外と太っ腹なんだね、あの社長さん!」

 

「まぁ確かに、太っ腹だったな」

 

「アンタそれ違う意味で言ってんだろ」

 

「あ痛っ」

 

 スパーン! とどこからともなく取り出されたハリセンがナギの後頭部に炸裂する。

 ナギは叩かれた箇所を擦りながら、ハリセンで肩を叩いているカナタにジト目を向ける。

 

「そんな便利アイテム、いつの間に購入したんだ……?」

 

「秘書の人から貰ったんですよ。『これから頑張れ』っつー激励の言葉と共に。因みに、このハリセンはそう簡単には壊れないそうです。――という訳で、これからはアンタ等がボケる度に俺のハリセンが火を吹くんで。そのつもりでボケてください」

 

「私としてはハリセンよりも君のマグナムに火を噴いて欲しいんだが痛っ! さ、さっきよりも威力が上がってる気がするんだが!?」

 

「俺のツッコミをダメージに換算してみたんです」

 

 冷たい瞳で冷徹に言い放つカナタに、ナギとハルカは本気の本気で身震いした。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 とりあえずはムロタウンに向かおう。

 そう結論付けたカナタはナギとハルカを引き連れてカナズミシティの出口へと向かっていた。

 

「っつーか、ハルカまでついてくる必要ねえんだけど……」

 

「ま、いいじゃんいいじゃん! せっかく出会ったんだし、一緒に旅をしようよ! ナギさんとももっといっぱいお話ししたいしね!」

 

「って言われてますけど、どうします?」

 

「私は君の判断に従うよ。……まぁ、個人的には、人数が多い方が旅は楽しいとは思うのだがな」

 

「俺は別にナギさんが良いなら良いんですけど……」

 

 互いを気遣いながらも結局は了承してくれそうな感じの二人にハルカは(やっぱりお似合いの二人だなぁ)と心の中で二人をからかう。というか、あのカナタが美人さんと一緒に旅をしている事自体に驚きなので、それ以上の事があったとしても今さら驚いたりはしない。遂にカナタにも春が来たのかぁ。

 出口への歩を止めることなく、カナタは疲れたように溜め息を吐き、

 

「……しょうがねえ。今更過ぎるっぽいし、別に一緒に来ても良いんじゃね?」

 

「さっすがカナタ、話が分かるぅ!」

 

 やったーっ! と子供のように喜び勇んで飛び回るハルカにカナタは苦笑を浮かべる。コイツ、十八歳になっても心は子供だなぁ。

 新たな仲間を加え、カナタは凄く怖ろしい未来への一歩を踏み出す。

 と。

 三人がカナズミシティの出口まであと数メートル――というところまで歩き切った、

 まさにその時。

 

「あれ? カナタとハルカって、一緒に旅を始めてたっけ?」

 

「「ゆ、ユウキ!?」」

 

 傍にヌマクローを従えたもう一人の幼馴染みが、三人の前に姿を現した。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 ユウキ。

 カナタとハルカと同じミシロタウン出身のトレーナーであり、二人のライバルでもある少年。

 そんなユウキと再会したカナタ達は出口付近のベンチに移動し、ひと時の休憩をしていた。

 

「という訳で、コイツはユウキ。俺とハルカの幼馴染みです」

 

「ど、どうも。ユウキです」

 

「ああ、よろしく」

 

「んで、こっちの人はナギさん。なんやかんやで一緒に旅をすることになった人だ」

 

「運命的な出会いってヤツだね!」

 

「ちょっとハルカ黙ってろ」

 

 サムズアップでテヘペロ状態なハルカをハリセンを掲げることで黙らせる。こりゃまた随分と便利なアイテムを手に入れてしまったなぁ。秘書の人、ありがとう……ッ!

 場違いに感極まっているカナタに気づかない様子のナギはユウキをまじまじと見つめる。

 緑のバンドと白のニットが合体したかのような特徴的な帽子を被った、幼顔の少年。オレンジと黒が織り交ぜられた半袖の服は運動用に作られたもので、黒の長ズボンは動きやすさ重視の伸び縮みする素材で作られている。如何にも『トレーナーです!』という格好をした少年だ。

 ナギは顎に手を当て、カナタに疑問をぶつける。

 

「して。この少年はどのようにぶっ飛んだ性格をしているんだ?」

 

「そんな当たり前のように聞くことじゃねえだろうが!」

 

 スパーン!

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 カナタは大きく溜め息を吐き、律儀にナギの質問に答えた。

 

「ユウキはそこのバカとは違って、結構マシな性格をしてます。というか、そこのバカが特殊な思春期過ぎるだけで、ウチの町は普通な奴らばっかなんですよ。そこのバカだけが例外なんです」

 

「酷い! うわーんユウキ、慰めてーっ!」

 

「あはは……」

 

 『そこのバカ』を三回も連呼されたハルカはドバーッ! と涙を流しながらユウキの身体に抱き着いた。そんなハルカに照れる素振りすら見せず、ユウキは苦笑いを浮かべながら彼女の頭を優しく撫で始めた。

 カナタは肩を竦め、ハルカに言う。

 

「幼馴染みとの再会に時間をかけるのは勝手だが、俺は置いてくからな」

 

「あ、それは流石に許容できない! 私も行くったら行くんだもん!」

 

「だったらさっさと準備しろこの思春期バカ」

 

「うわーん! またバカって言われたーっ!」

 

「って、やっぱり二人は一緒に旅をしていたの? 僕の記憶が正しければ、別々だった気がするんだけど……」

 

「あーいや、お前は間違ってねえよ」

 

 カナタは疲れたように目を逸らし、

 

「不幸にも、この街で見つかっちまったんだ」

 

「あぁ、そういう事……ドンマイ」

 

 苦笑しながら優しく肩を叩いてくれたユウキにカナタは本格的に感極まってしまいそうになる。――が、ここで泣いたらプライドが揺らいでしまうので、カナタはぐっと我慢した。

 いつまでも子供なハルカにチョップを入れて彼女をナギに預け、カナタはユウキに軽く手を振る。

 

「んじゃ、俺は先に行くよ。お前も頑張れよ」

 

「あっ! ちょ、ちょっと待ってよカナタ!」

 

「あン?」

 

 やけに焦った様子のユウキにカナタは思わず足を止める。

 ユウキは少しばかり恥ずかしそうに頬を掻きながら、

 

「良かったら、僕もパーティに入れてくれないかな? まぁ、一人は寂しいっていうのもあるにはあるんだけど……カナタのストレスが心配で心配で」

 

「一緒に行こう! 俺からも大歓迎だ!」

 

 ユウキの申し出を断るどころか凄くイイ笑顔で了承するカナタ。彼の後ろで『私の時と違う!』と叫んでいるバカがいたが、カナタはあえて意識の外へと追いやった。これ以上あのバカに胃へのダメージを増やされるわけにはいかない。というか、少しでいいから黙っててください。

 戸惑いの表情を浮かべるユウキの両手を思いっきり握り、カナタは彼の腕をブンブンと上下に振る。まさかの二連続パーティ増加という予想外のイベントだったが、ナギの言う通り旅は人数が多い方が楽しいハズ。別に大した問題はないだろう。というか、料理上手なユウキが一緒に居てくれた方が野宿の時に美味しい物が食べられる――という個人的な欲求が関係しているというのはここだけの秘密だ。

 固い握手を交わすユウキとカナタ。

 そんな二人を見て、相変わらずの思春期コンビはヒソヒソと顔を寄せ合い――

 

「ボーイズラブ、ってやつですよ、ナギさん」

 

「これが噂の……あの調子で青姦までしてくれないだろうか」

 

「私たちも混ざって4Pにしちゃいます?」

 

「あぁ、それは良い考えかもしれない」

 

「最低なエロ会話が筒抜けなんだよこのエロバカコンビ!」

 

 スパパーン! と怒涛のハリセンツッコミが思春期ガールズに炸裂し、それを見ていたユウキは顔を引き攣らせながら乾いた笑いを漏らしていた。

 

 




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 次回もお楽しみに!
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