Tales of Vesperia 流砂で生き埋めはNG   作:ナイトフェンサーK

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なんとなく思いついた一発ネタ

注意 キュモールがもはや別人です。
   強化されています。
   術技とか使います。


01 ゲーム的にはチュートリアル

 帝都ザーフィアス貴族街・モルディオ邸前にて

 

 

 

黒髪の青年が、二人の騎士を相手取っていた。普通、一般人が訓練を積んでいる騎士と戦った場合、まず勝ち目はないだろう。ましてや、数の利は騎士の方にあるのだ。何もできずに負けるということすらあり得る。

 

ならば、この光景は何なのだろう。一対二という数の差があるにも関わらず、二人の騎士は息も絶え絶えであり、対する青年は息一つ乱していない。不敵な笑みを湛える姿には、確かな余裕が見て取れるほどだ。

 

「デコもボコも、身体鈍ってるんじゃねえの。事務仕事ばかりで訓練の時間が取れてないのか?」

 

青年は刀を納め、からかい交じりに声を掛ける。

 

「デコと…言うなで…あ~る」「ボコじゃ…ない…のだ」

 

乱れた息を整えながらも律儀に揶揄に反応する辺り、騎士二人の根が真面目なのが伝わってくる。もっとも、律儀に反応するからこそ青年は揶揄しているのだが、それを二人に気付けというのも無理な話であった。

 

事の経緯を知らずに戦いの様子を見ていたものがいるならば、もはや、稽古をつけているようにさえ感じることだろう。

終始、騎士を圧倒し続けた青年は只者ではない。

 

――ャン……シャン……

 

すると、唐突に、極めて小さな音が鳴りだした。

戦闘によって感覚が鋭敏になっていた青年の耳は、それを逃さず拾い上げる。

 

――ん?何だ……音の間隔が一定だぞ。それに、これは……足鎧(グリーブ)のすれる音か。

  どんどん近づいて来てるな

 

――カシャン……カシャン……

 

音は徐々に大きくなる。それは、音源が近づいているから起きる現象だ。帝国のグリーブは、兵士の行動の邪魔にならないように、機動力を損なわない程度の厚さとなっている。

この辺りの事情は、国や兵士の運用によって差が生じるものだが、帝国の騎士にとって今以上に防具が重くなるのは困りものなのだ。

それに、盾で防げばオールオッケーという、脳き……単じゅ……華麗なる用兵に従えば、防御力に一抹の不安を覚えるグリーブも、いかなる攻撃をも盾で防ぐという心掛けを補強することに繋がり一石二鳥なのだ。

全ての攻撃をジャスガすればいいとは、さすが帝国、テルカ・リュミレースで覇権を握るだけあって、いうことが違う。

 

さておき、金属が奏でる軽快な調べは、騎士が歩行するときに生じる音の特徴と同じものであった。

 

――カシャン

 

「そこまでだ」

 

そういって現れたのは、紫がかった青色の髪を後ろに撫でつけた長髪の男。紫色のマントを風に泳がせ、悠々と歩く一人の騎士。帝国騎士団に所属し、自身の姓を冠する隊を率いる帝国騎士団隊長が一人。

 

「こっこれは…キュモール…隊長…」

 

「お見苦しい…ところを…なのだ…」

 

息も絶え絶えに上官に敬礼する二人の騎士。彼ら――長身痩躯のアデコールと矮躯肥満のボッコス――の所属はシュヴァーン隊だが、隊が異なれど上官には敬意を払う。軍人という縦社会の常ともいえる光景だ。

 

「楽にするといい。シュヴァーン隊長は秘密主義だが、部下想いなのは公然の秘密だ。私のために無理をする必要はないよ」

 

場の空気を一新した騎士、キュモールは気負う様子無く青年を見やる。泰然自若とした佇まいは帝国騎士団隊長の肩書に相応しいものだった。

 

現れた人物を見て、青年は意識を切り替える。何故なら相手は騎士団隊長にして、騎士団長アレクセイからも一目置かれる人物だからだ。

内心の警戒を悟られないように、自然な流れを意識して話す。

 

「……キュモールか。珍しいことがあるもんだ。こういうときはいつもフレンの奴が来るってのに」

 

――そうだ。フレンの奴はどうしたんだ。

  下町で騒ぎが起きたら、いつも率先して来るはずなんだが。まさかあいつ

 

青年は親友フレンの常ならざる行動に、よもやと思いを馳せ、

 

「そのフレン・シーフォが居ないから私が来るはめになったんだ。はぁ……それで、今度は何をやらかしたのかな。貴族の家に忍び込めばどうなるか、分からないはずもないだろう?」

 

――ユーリ・ローウェル

 

――薄々感じてはいたが、どうやらあの眩しい金髪は留守にしているらしい。

  それはそれとして、“今度は”とは何なのだろう。

  まるで俺がいつも何かやらかしているような言い草だ

 

キュモールの言葉に遺憾の意を感じながらも、青年、改めユーリの胸中を占める思いは、やっぱりか、という呆れと納得の入り混じったものだった。

納得は、下町の騒ぎにはすっ飛んで来るようなヤツが動いている様子がないのはそもそも城に居なかったからと分かったことに対して。

呆れは、下町の非常事態にどこで何やってんだバカ野郎という多少のやつあたりである。

気の抜けたユーリは、ついでとばかりにフレンの所在を尋ねるが、

 

「何か勘違いしているようだ。フレン・シーフォは、いや、失礼。フレン・シーフォ小隊長は巡礼のために帝都を発っている。出立して既に幾日も過ぎているが、そうだね、今頃はハルルの辺りにいるんじゃないかな」

 

それを聞いたユーリは衝撃を受けた。

かつて、フレンと共に騎士団の門を叩いた。

そして、ユーリは騎士団を抜けた。

騎士団に居ては、自分の本当に守りたいものを守れないと思ったから。

 

それから、自分は何をしたのだろう。

下町の生活を助けるために、いろいろやった。ときには、騎士ともめることもあった。

それでもよかったのだ。

下町の喧騒が、暖かさが守りたいものなのだから。

 

この生活がずっと続くと思うほど楽観的ではなかった。

だが、それでももう暫くは続くと思っていた。

変わらぬ日常。そこには、フレンも含まれていた。

 

だからこそ、フレンが帝都を発ったという報せは、日常の終りを告げる鐘に違いない。

 

――さっき、キュモールはフレンを小隊長といった。

  無事に巡礼を終えたら、もしかしたら隊長になるのかもしれない。

  俺が足を止めている間も、あいつはずっと進み続けてたんだ。

  いつの日か二人で誓った、この国を変えるという夢に向かって

 

「思索にふけるのは構わないけど、君を牢に入れるのが私の仕事だ。このまま連行するよ、いいね?」

 

――おっと、今は目の前の事をなんとかしないと。

  貴族出身だから期待はしていなかったが、予想外にまともそうなやつだ。

  盗られたものを盗り返すためとはいえ、貴族の家に忍び込んだのは事実。

  それでも、どうにかならないか試す価値はある

 

「悪い悪い、考えに夢中になってた。ところで、俺が何をやらかしたのか聞かなくていいのか?」

 

――話の内容を蒸し返すようだが、さて、どう返すのか

 

「なるほど、確かに私は君に尋ねた。だが済まない、君を連行することに変わりはないよ」

 

――たとえ、今朝の下町の騒ぎが、近頃帝都を賑わす魔核泥棒の仕業だとしてもね

 

キュモールの答えはユーリにとって好ましいものではなかったが、同時に、どことなく懐かしさを覚えた。その原因はきっと、下された命令を遵守する頑固な一面が、親友のそれに重なって見えたからだろう。

 

――あいつはルールにうるさかったが、どうやらこいつも同類らしい。

  帝国騎士は石頭しかいないのか

 

騎士団を抜けた身であるにもかかわらず、ユーリは騎士団の先行きに不安を覚えた。ルールにうるさい騎士と、それをまとめあげる騎士団長の苦労する姿が脳裏を過ぎる。悲しみを背負うアレクセイの姿に思わず畏敬の念を抱いてしまった。頑張れ、アレクセイ。今ならば、アレクセイとも仲良くできる気がする。

 

明後日の方向に考えがそれるなか、前触れなく背筋を悪寒が走り抜ける。

 

――ぞくっ

 

反射的に、ユーリは刀を抜いた。思考に一切の遊びはなく、精神が戦士としての在り方へと瞬時に切り替わったのだ。

油断なく、悪寒の正体を探り、ユーリはキュモールを見据える。

相変わらず、キュモールは剣を鞘に納めたままの自然体だったが、自分の直感が先ほどの悪寒の原因はやつにあると告げている。

 

「……さっきの、あんたか」

 

それは、確信に満ちた問いだった。

 

「その通り。大それたことはしていない。ただの威圧だよ」

 

何の気なしに答える様子に、心底からそう思っていることが伝わって来る。

 

帝国で騎士団隊長を名乗ることが許されるのは、役職に相応しい実力があることの証明だったのだと、ユーリは実感と共に理解した。

 

――さて、泥棒が逃げてから時間はあまり経っていない。

  つまり、魔核を盗り返す機会は、今しかない……が、

  それを成すにはキュモールを退かせる必要がある、と

 

逡巡は一瞬。

ユーリは立ちはだかる壁の厚さを正しく認識し、その上で覚悟を決めた。

 

「あんたを相手に加減するつもりはねぇ。退かねぇってんなら、押し通るまでだ」

 

対するキュモールは、そうか、と一言こぼし、ゆるりと鞘から剣を抜いた。

 

「手荒な真似は好ましくないが、仕方ない。相手になろう」

 

 

 

 

 

繰り返される剣戟の音は百を超えた。

両者ともに傷はなく、しかし、戦いの優劣は一目瞭然だった。

方や、息を乱して刀を振るう。もはや気力のみで戦っている。

方や、息を乱さず剣を振るう。一挙一動に力が漲っている。

 

――ここまでか

 

「終わりにしよう」

 

「退いて…くれるのか…」

 

「まさか。単に、今の君ならば仕留めるのも容易いということだよ」

 

「はっ…言うじゃねぇか……やれるもんなら…やってみな…」

 

未だユーリの眼に諦めの色は映っていなかった。それどころか、今なお戦意が沸き上がっている。

 

――強いな。その精神が

 

不屈の精神を垣間見たキュモールは、それ故に油断なく詰みの手順を整える。

そして、放たれた威圧――高めた闘気を発する技術――は、恐怖の感情をユーリの本能に訴えかける。

しかし、ユーリは背筋を走る悪寒に身を竦ませることなく、最短距離を駆けてキュモールへ迫る。

一度あったから二度目に備える。ユーリのやったことは単純だが、本能に訴えかける恐怖を抑え込むことは、生半可なものでは決してできない。

 

――とった

 

攻撃圏内に入るや否や、放たれた袈裟懸けの一撃がキュモールに迫り、

 

――ぴこっ

 

気の抜ける音と共に、ユーリの意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

いやはや、なかなかに強かった。何度かひやっとすることがあったが、さすがは主人公ということか。ゲーム的にはこれでレベル5。刃を打ち合わせる度に洗練されていく動きとか、末恐ろしいにもほどがある。

知ってるか、チュートリアル戦闘なんだぜ、あれ。

 

まあ、実際にはゲームじゃないし、レベルとか確認しようがないからあまり当てにならないけど。それでも、現段階でのユーリの実力を私の基準に当てはめるなら、アレクセイには遠く及ばない。もっとも、旅の道程で経験を積んでいけば直ぐに強くなるだろうから、心配することでもない。

 

それはさておき、とりあえずは城の地下牢にユーリをぶち込むとしよう。ストーリー的には何気に重要な場面だからね。胡散臭いオッサン(鴉)との遭遇がなければ、主人公一行に欠員(鴉)が出るかもしれないし。頼むぞユーリ。君の誑し込み力でオッサンを誑し込むのだ。ついでに、お姫様も誑し込んでいってくれ。帝都にお姫様を置いとくと、万が一舞茸がやらかしたときにエライことになるから。

あとは、ザギとかザギとかザギとか。あれはユーリ以外に任せられないよね。

 

 

 

 

 

気絶したユーリを担ぎ、世界の行く末に思いを馳せる男は、世界にとっての異物である。

その存在がどのような影響をもたらすのか、今はまだ分からない。

 

 

 

 

 

「あっ、デコボココンビ忘れてた」







――とった

キュモール「ピコハン」


この作品ではユーリとキュモールが初対面であるという設定で書いてます。
原作では因縁があるように描かれていましたが、貴族らしい騎士をイメージした結果、
必要以上に平民と話さないだろうと考えたからです。
とはいえ、設定を変更する可能性もあるかもしれないので、深くは気にしないで下さい。
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