【仮題】雪柱の男   作:窮鼠猫を噛み噛み

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今回はすごく短いです!


育手と継子

白叡が下弦の壱を倒した事は、鬼殺隊の長であり白叡の友人である産屋敷耀哉の耳に入っていた。烏からの報告を聞けば彼は、非常に嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「遂に十二鬼月を倒したんだね、白叡」

 

現在、柱は9人揃っておらず耀哉は早く白叡に柱になって欲しかった。既に柱として選ばれる条件を満たしていたものの、十二鬼月を倒すまでは柱にならないとキッパリと断られていた。なので今日この報告は耀哉にとって非常に喜ばしいものであった。

決して白叡を贔屓している訳では無いが、やはり友人の活躍は喜ばしいものでどうしても特別なものを感じてしまう。友とは名ばかりの主従関係ではなく、本当に気兼ねなく対等に接してくる白叡は、やはり産屋敷耀哉にとって妻とは違った特別な存在であることに間違いはない。

 

「………このまま、暫く柱の入れ替えがなければいいんだけど」

 

耀哉は自分の抱く懸念が杞憂に終わる事を心から願う。どうか自分の大切な剣士(こども)達が無事であるようにと。

 

 

―――――

 

 

左右田邸

 

屋敷にある道場に2人の鬼殺隊の剣士が木刀を構えて相対していた。白叡は刀を中段に構えた攻守一体の基本的な構え方をする。方や左右田は左半身を開き、刀を片手で無造作に持つ我流の構え。

 

「お前とこうやって稽古するのは久しぶりだな」

「師匠が面倒くさがってやらないからだろ。俺はいつでもできたけど、急にそっちなら誘うなんてどうしたんだ?」

「いや、ほらアレだよ……この小説の執筆者の友達が『左右田ってキャラ全然登場してなくね?家出したん?w』って言ってきたからだよ。俺、少年誌によくあるアニキ系師匠キャラのはずじゃん?なのに暫く名前だけしか出てこないってど言うこと?」

「………全く意味が分からないけど、俺がこの話の主人公だから仕方ないだろ。師匠キャラらしく俺の強さの錆になれ!」

「お前も何言ってるかわかんねぇよ!」

 

飛び出したのは2人ほぼ同時だった。白叡は既に柱である左右田に引けを取らないほどの実力と経験を得ていた。それ故に、数年前までは互角に渡り合うのが限界だったのが、今では互角以上に立ち回ることができる。

互いの稽古と呼ぶには激し過ぎる剣撃をぶつけ合う。

 

(たくよ、知らねーうちに滅茶苦茶強くなってやがる!一瞬でも気ぃ抜いたら持ってかれる!)

(流石師匠だ。俺も強くなったと思っていたが、しっかり対処してくる)

 

白叡の唐竹と左右田の逆袈裟がぶつかり合う。その衝撃でお互い距離をとるが直ぐに踏み込んで殴打し合う。

左右田の変則的で荒々しい攻撃を白叡は洗礼された技術で躱し、受け流す。

 

「シィ!」

「うぉっと!?」

 

左右田が振り下ろした刀を、白叡は手首を返して引っ掛けて合気の容量で左右田の重心をずらす。左右田は前のめりになり体勢を崩すが、続く白叡の剣閃を勘を頼りに体幹を捻って躱す。お互いの攻撃が当たらず、ただひたすら激しい攻防と駆け引きが行われている。何度目かの間合いを外して構え直す。

 

『霞の呼吸』

『雪の呼吸』

 

大きく呼吸をして酸素を肺に送り込む。心臓は活発に喞筒して血液に乗ったエネルギーを身体に循環させる。身体の底から力が漲り重心を深く、そして足の指に力を込める。

 

『肆ノ型 移流斬り(いりゅうぎり)ぃ!!』

『奥義 伍番 冷艶清美(れいえんせいび)っ!!』

 

まるで床を滑るように進み渾身の斬撃を叩き込み合う。2人の木刀が衝突しあった瞬間に衝撃波のような風圧が2人を中心に起こる。

風が収まるが2人は微動打にせずいた。その中心で互いに折れた木刀を突き出した状態で静止していた。

 

「……引き分け………だな」

「………」

 

一瞬の沈黙の後、左右田が引き分けを言って互いに折れた木刀を下ろす。白叡はやや不満そうで、左右田が引き分けを宣言しなければ折れた木刀でも続けようとしただろう。

勿論左右田は白叡に負けたくないから早々に引き分けを宣言した訳では無い。ないったらないのだ。

 

「木刀の方が耐えられなかった……。今日なら勝てると思ったんだが……」

「俺に勝つなんざ、まだ10年早えーよ」

「くっ………、ならもっと早く超えてやる」

 

折れた木刀の破片を拾いながら不服そうに呟く白叡。それに左右田はニヤリと笑いながら言ってやると、白叡は目に見えて悔しそうな表情を浮かべた。予想通りの反応をした継子に、左右田は微小を浮かべて言う。

 

「おぅ。そいつは楽しみだな。お前が俺を超える時まで見ててやるよ」

 

そう言って左右田は乱暴に白叡の頭を撫でた。ぐしゃぐしゃと白叡は抵抗せずされるがままに撫でられる。表情こそ不貞腐れたようにそっぽ向くが、抵抗しないあたり満更でも無い様子だ。

 

「……飯食うか」

「……はい。今日はコロッケというものを作ろうと思っている」

「おーこの前定食屋で食ったヤツか」

 

散乱した木刀の破片を処理して今日も変わらず2人で食事をする。ほんの気まぐれで育手になった左右田だが、誰かと暮らして食事をするこの日常に充実感を感じている。勿論それを口に出す訳では無いがこの日々が少しでも長く続けばいいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが現実とは残酷で非常で理不尽に別れを突きつけるものだ。

 

 

―――――

 

 

目に映る世界は真っ赤に染まっている。身体は熱を持ったように熱いが、体の芯はどこか冷えて身体が震える。傷口からはドロドロと血液が流れその感覚を脳が鮮明に感じるのと裏腹、指先から徐々に脱力していくのが無意識に分かった。

地面に伏して血液が混じったその眼で、伏している自分を見下ろす強大な存在を見る。

 

「上弦……壱………」

 

刀を持ち、6つの目を持つその異貌の鬼は無機質な瞳で見下ろす。

カチカチと歯が音を立てている。寒いのか、恐怖なのか分からないが身体の震えが止まらない。

 

(………ここで終わり?)

 

白叡は切っ先から真っ二つに折れた日輪刀(はんしん)を見てそう思う。鬼はゆっくりと白叡に歩み寄る。

 

「………………」

 

何かを言っているが白叡の耳には届かない。ただ目の前に死が迫っていることは理解できた。

異形の刀は天高く振り上げられた。相手の動作が非常に遅く感じるが、身体が動く気配はなく寧ろ重くなる一方だ。

そして刀は白叡の命を絶たんと振り下ろされた。

 

 

 




〜〜大正コソコソ噂話〜〜

左右田と白叡は常日頃から罵りあっているが、これは彼らの師弟関係を表すコミュニケーションで、何だかんだ仲が良く息もあっている。
そのため傍から見れば兄弟のように見えるが、それを言うと真っ向から否定するらしい。と言っても、2人とも同じような反応で否定するので仲が良いのは一目瞭然である
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