【仮題】雪柱の男   作:窮鼠猫を噛み噛み

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今回はすごく短いです。


悼む

 

日が登ってすぐに、鎹烏によって左右田の訃報は鬼殺隊に知れ渡った。

不要湖にて上弦の壱と交戦していた選抜隊の援軍として、岩柱の悲鳴嶼と共に派遣された彼は、生存者一名を撤退させその殿として鬼と交戦の末殉職。

たった一夜にして柱を含めた10数名の隊士が殉職した。その報告を受けた鬼殺隊の長である産屋敷耀哉は、愁いを帯びた顔で縁台に座り空を眺めていた、

 

「次代の柱を残してくれた……と言えば聞こえはいいけど………。よそう……、よく私の友人を守ってくれた」

 

色々と思うことはある。たらればを言い始めればキリがないほどに沢山ある。だがそれをぐっと飲み込み、当主としての精一杯の感謝を口にする。

 

「……白叡はまだ目を覚まさないのかい?」

「はい、治療は終えて命に別状はありませんが………」

「そうか……」

 

左右田によって救われたただ一人の隊士である白叡は、あの日から3日経った今でも目を覚ます気配がないらしい。担当の医師が言うには命に別状もなく呼吸も安定しているらしいが一向に目を覚ます気配がないらしい。体力が無くまた様々な理由より外に出られない耀哉に変わり、妻のあまねが先程見舞いに行って帰ってきたのだが今日も目覚めなかったらしい。

 

「大丈夫。白叡なら必ず目を覚まして私たちの前に来るよ」

「そうですね」

 

強く確信しているように笑みを浮かべながら言う耀哉を見て、あまねはクスリと笑い返事を返した。

 

 

―――――

 

 

場所は左右田邸。何時もは何かしらの音が響きちょっとした賑わいがあった広い屋敷だが、今は静寂が屋敷内に充満していた。何時もはいるはずの家主の姿は見えず、また日が登っている間はせっせと家事をこなしている同居人の姿も見えない。そんな屋敷の中には住人でない人物が3人、ベッドの上で痛々しく包帯を巻かれ眠っている少年を看ていた。

 

「もう5日、全く起きる素振りがないな………」

 

3人のうちのひょっとこのお面をつけた女性、鉄穴口が穏やかな寝息を立てて寝ている白叡を撫でながら呟く。お面をつけているため表情は伺えないが、声には悲しみと不安が滲み出ている。彼女の隣に立つ煉獄杏寿郎もまた、常に自信に溢れたその表情を弱くする。隣に立つ弟の千寿郎もまた俯いてしまっていた。

 

「……すまない。白叡なら大丈夫さ。医者も問題ないと言っていたしな」

「はい、そこは心配はしていません。ですが、左右田殿のことが……」

 

一層重くなってしまった空気を何とか変えようと鉄穴口が言うがそれはどうやら上手くはいかなかった。彼らは一様に白叡の目覚めを疑っていない。だが、その目覚めた後のことが心配だった。左右田の死を、目覚めて直ぐの彼にどうのしかかるのか。

未だ彼等ですら受け入れようとしているところだ。ここ数年最も近く共に暮らしてきた、白叡にとって兄に変わる様な存在であった左右田の死に、白叡の心が果たして耐えられるのだろうか。

 

「全く貴様は何時も無責任だ………」

「鉄穴口殿………」

 

鉄穴口が知らせを受けた時彼女は、白叡の新しい日輪刀の制作作業中であったのだが、直ぐに作業を中断して自分の工房を飛び出してきたのだ。それほどまで、鉄穴口にとってこの2人は鍛冶師と剣士の間柄で収まらない仲になっていたのだ。

白叡が屋敷に運ばれて以来ここで寝泊まりして看病していることを杏寿郎らは知っていた。

 

「さて、君達もそろそろ帰りなさい。目が覚めたら烏を飛ばすよ」

 

彼女は2人を屋敷の外まで見送る。杏寿郎と千寿郎の2人は別れの挨拶を言うと煉獄邸へと帰っていく。その2人の後ろ姿を見てふと、鉄穴口は呟いた。

 

「……良い友達を持ったな、白叡」

 

左右田からよく白叡についての話を聞かされていた。普段はいい加減なくせに人を見る目だけはある。あと実力も。白叡本人に言わないが鉄穴口には「白叡に友達が少ない」とボヤいていた。その度に鉄穴口から「お前は友達いないだろ」と返されては苦虫を噛み潰したよう顔をしていたが、それでも白叡の数少ない友人はいいヤツらだと言っていた。最初御館様と友人になったと聞いた時は、鉄穴口もお面の奥で驚いた。

そんなことを楽しそうに話す左右田との時間は、鉄穴口にとっても楽しい時間だった。

 

「逝くなら逝くと………」

 

左右田との関わった年数でいえば白叡よりも長い。それ故に左右田の人間性と言うものをよく理解している分、心のどこかで「アイツらしい」と思ってしまうのが無性にむかつく。

鉄穴口は一度深呼吸して心を落ち着かせて漸く屋敷の中へと戻った。

 

 

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