【仮題】雪柱の男   作:窮鼠猫を噛み噛み

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お盆休み色々ありまして執筆全く進まなかった窮鼠猫を噛み噛みです。

約2週間ぶりで、急ぎ足で書いたので文章が大変なことになってるでしょうが、どうぞ!


修行と煉獄

白叡が鉢特摩家を出発した後、迷彩と白蓮は白夜の入院している病院へと来ていた。白夜は一命を取り留めて目も覚ましていた。

目を覚まして直ぐに白夜は「直ぐに家に戻ろらなきゃ!」と、取り乱していたが迷彩らが病室に来れば落ち着きを取り戻した。そして白叡と父、兄がいないことが気になり2人に尋ねる。

迷彩らは一度目を伏せるとことの全貌を白夜に話した。

 

「クソっ!俺は……俺はアイツの兄貴なのになんも出来なかった!!」

「…………私も、私も白叡に酷いこと言った……。家族として最低なことをしちゃった……」

「白夜、白蓮……」

 

白夜はベッドの上で歯ぎしりしながら悔しそうに怒鳴る。白蓮も涙を浮かべて俯き、自虐的に呟く。迷彩はそんな2人を抱き締めれば優しく話した。

 

「大丈夫。あの子が出ていったのはあなた達のせいじゃないから。だから次に会えたなら、しっかりと想いを伝えなさい」

 

そして微笑むと2人は1度互いの顔を見合わせて力強く頷く。

一方、左右田に着いて行った白叡は鬼殺隊と鬼について詳しい説明をされていた。鬼は親玉の鬼舞辻無惨によって増えること。鬼は驚異的な再生力を持ち、夜な夜な人を食う事で強くなり、血鬼術(けっきじゅつ)という異能を操るものもいるそうだ。そしてその鬼共から人々を救うのが鬼殺隊で、そんな鬼を殺す為の刀こそが日輪刀(にちりんとう)という特殊な鉱石で作られた刀。その刀で鬼の頸を斬るか日光に当てることで殺せるそうだ。

 

「じゃあ師匠が使ってたあの技は?」

「それは『全集中の呼吸』って奴だ。特殊な呼吸法によって人体を活性化させて、鬼共と渡り合えるぐらいの身体能力を出せる。そんで岩のように硬ぇ鬼の頸を斬ることも出来る。お前さんが斬ることが出来たのは、曲がりなりにもソレが使えたからだ」

「なるほど……」

 

白叡にとって知らないことを左右田は教えながら、自分の屋敷へと()()()()()向かっていた。

左右田は涼しい顔をしながら走っているが、白叡は汗だくになりながら逸れないように走っていた。

暫くすれば屋敷が見えてきて左右田は速度を落とす。やがて門の前に止まれば白叡もその後で止まる。

 

「ここが俺の屋敷だ。んで不本意ながらにオメェが住むことになる家だ」

「はい」

「よーし、入るぞー」

 

門を潜り戸を開くと白叡には信じられない光景が広がっていた。脱ぎ散らかされた衣類、散らかった様々なもの、タンスには埃が被り戸は半開きになって羽織が飛び出ている。

 

「凄く汚いですね」

「他人の家来て開口一番それかよ」

「生活感が全くないですね。とても人間が住めるとは思えない」

「うるせーよ」

 

白叡は遠慮もなく思ったことを口にする。家事はできないが最低限掃除などはやっている白叡からすれば、左右田のこの屋敷はある意味魔獣の巣窟のそれだった。

左右田自身も自分の家が()()()()()()()()()という自覚はある。しかし鬼殺隊としての任務が忙しいし何より面倒臭い。そこでふと、まるでゴミでも触るからのようにいつ脱いだか分からない服を指でつまんでは、「うえっ」とした顔をする白叡見れば思案する。

 

(……コイツは今日から俺の弟子で、俺はコイツの師匠。つまり俺の方が歳も上で立場も上!!いいこと思いついちゃったーん!!)

 

そしてこれから悪事を働く小悪党の様な笑みを浮かべれば白叡の肩に手を置く。

 

「よぉし。師匠からの最初の試練だ!」

「……?」

「屋敷の掃除と片付けをまずやってくれ」

「え……あは?」

「んじゃ、俺は俺でもやる事あるからよろしく」

「おい、待て!」

 

左右田から早速言われた内容を理解出来ず、敬語すら忘れてどこかへ行こうとする彼の裾を掴む。その表情は不満一色で、まるで親の仇を見るように左右田を睨んでいる。

 

「剣の稽古とかつけてくれるんじゃないの?」

「わかってるわかってる。だが家事とかすんのも弟子の仕事だろ…………知らんけど」

 

しかし左右田は白叡の文句をちゃんと聞かず、適当な理由を言い返した。

 

「家事とかやってたら素振りする時間が……」

「嫌なら教えないから別にいいんだよ?」

「んぐぅ……!大人は汚い!卑怯だ!」

「へへーん。悔しかったら早く大人になってみやがれー。つーかまだ20になったばっかだから俺もそんな大人じゃねぇしー」

 

左右田の非常に大人気ない言動に、白叡はあまり家族にも見せたことのないくらいムスッとした表情をする。左右田はそれに苦笑を浮かべては乱暴に白叡の頭を撫でた。

 

「まぁ、今から用事があんのは本当だし、鬼殺隊になるための特訓もつけてやる。だからまぁ、その代わりに俺ができない家事とかやっといてくれ」

「…………あんたがあまり尊敬しちゃいけない人だとわかった」

「おいおい、マジで辛辣だな!」

「家事なんてまともにやったことないから自信はないけど、これからお世話になります」

「おう、お前が独り立ちできるまで面倒は見てやんよ」

 

こうして白叡の弟子としての日常が始まった訳だが、左右田の弟子になって割と本気で弟子入りするところ間違えたと思った瞬間である。

とりあえず左右田が出ていった後に部屋の片付けを開始するが、余りの汚さにとても憂鬱である。ここに来て早々、ホームシックになった白叡であった。

 

 

―――――

 

 

白叡は只管床に散らばった衣類を手回し洗濯機で洗って干す。あまり洗濯を手伝った覚えはないが、母と姉がやっていたのをたまに見ていたのでやり方は知っており、割と早く終わることが出来た。ゴミが少ないというかそもそも物が少なく、掃除と片付けは以外にもあっさり終わった。一人暮らしだからかと白叡はそう納得する。だが1人で行ったため気付けば日は沈みかけていた。

 

「夕飯作らないと…………」

 

取り敢えず色々と材料があったので取りだし台所に並べる。手順やそんなものは全く知らないため、取り敢えず実家にいた時に出てきた料理を思い出しながら逆算して作る。

しかし調理器具など触ったことの無い白叡は悪戦苦闘しながら調理する。

 

「…………よし、できた」

 

見た目は汚いが初めての割にそこそこ出来たと思う。白叡は満足げに料理を食卓に並べれば、

 

「おー綺麗になっとる」

 

丁度いい時に左右田が帰って来ようで、今朝見た時と全く変わった自宅に驚いている。

更に食卓には見栄えは良くないが、11歳の少年にしては出来ている方の料理が並んでいることに感動を覚える。

 

「取り敢えず腹減ったし食うか」

「はい」

 

「いただきます」と合掌しては一口、口に入れる。途端―――

 

「………………まずい!」

「………………あん?」

「うん、不味い不味い……!。店でこんなん出できたら天誅だ天誅!」

「そんな不味いって言わないでくれません!?そんな不味いわけないでしょ…………まっず」

 

左右田の発言に白叡は腹を立てて自分も一口食べてみるが、舌は毒でも塗られたかのように痺れ、脳神経はまるでピンボールのように乱反射を繰り返して刺激する。

2人して水をがぶ飲みして刺激を洗い流した。涙目になりながらむせ返す2人。

 

「…………どっか食いに行くか」

「…………はい」

 

2人どんよりした空気を纏いながら、近くにある町へと出ていった。

 

 

―――――

 

 

白叡の初料理が失敗した翌日。朝食は取り敢えず誰にでもできる握り飯を作って食べた。まぁ白叡が塩をかけすぎて塩辛くなってしまったのは別の話だ。

屋敷は昨日のうちにある程度綺麗な状態に戻ったので早速修行をつけて貰うことになった。屋敷の縁台から広がる中庭に白叡は木刀を携えて立っていた。

 

「よぉし。先ずはお前が我流で使ってた呼吸しながら振ってみてくれ」

「……はい」

 

左右田は部屋着と思われる着物を着て縁台に横になりながら指示した。そのやる気のなさそうな様に、白叡は一抹の不安を覚える。父、白兵の指導は厳しくも真摯であったので、そんな寝転んで指導なんてされたこともなかった。

しかしこれがこの人のやり方と無理やり受け入れ言われた通り木刀を振る。十数本振れば左右田から制止の声が入る。たった数十回だがやはり『全集中の呼吸』は体力を消耗する。

 

「取り敢えず分かった。取り敢えずお前には『霞の呼吸』を教えるわ」

「……左右田さんが使ってる流派ですよね?俺は『霞の呼吸』の適性があったんですか?」

「いんや。まだそれはわからねぇ。だがそれに近いのは確かだ。あとは習得してからじゃねぇとな」

「……なるほど。分かりました」

「あと、言うの忘れてたがこれから毎日四六時中『全集中の呼吸』をしろ。そんでこの瓢箪を呼吸だけでぶっ壊せ」

 

左右田が最後に言って瓢箪を渡してくる。大きさは白叡の手のひらより少し大きいくらいだ。白叡は色々と触ってみて叩いてみると、コンコンと硬い音がする。「これを呼吸だけで……」と左右田が嫌がらせで言っていると思い、猜疑心丸出しの表情で睨む。しかし左右田はそんな白叡を気にせず「それが出来たらコレ」と、次々に大きいサイズの瓢箪を取り出す。

 

「これは全集中“常中”って言う応用技だ。相当な肺活量とかまぁ色んなもんが必要になってくる。細かい内容とか考えんのめんどくせーから自分で考えてやれ」

「教えてくれないんですか?」

「俺が教えんのは『霞の呼吸』と実践的なもんだけだ」

 

凄くいい加減な指導に白叡は色んな意味で苦労しそうだと思う。修行初日はとにかく不安を感じながらも、左右田のヌルッと厳しい感じの指導を受けた白叡であった。

 

 

―――――

 

 

左右田に弟子入りしてから早くも数ヶ月が経った。白叡は午前5時に起床し朝食を作る。

 

「今日は鮭の塩焼きにだし巻き卵と冷奴にしよう」

 

既に家主より手馴れたように調理器具などを取り出し、調理を開始する。その動きに一切の無駄がなく洗練されており、行動の一つ一つに迷いがない。つい数ヶ月前まで料理初心者だった頃とは見違える程だ。

また左右田が1人で暮らしていた時よりも屋敷は清潔感を保たれていた。左右田が汚せば直ぐに白叡が掃除をする。更に最近では左右田に対して遠慮がなくなり平気で悪態を吐くようになった。

 

「起きろ師匠。飯ができたぞ」

 

料理を装って食卓に並べれば、起きて来ない師を起こすため大声を出す。

 

「たくー、なんでこんな朝からでけぇ声出してんだよ……」

「飯ができた。早く食べよう」

 

左右田はボサボサになった頭を掻きむしりながら、間抜け面を晒して食卓に着く。すっかり美味くなった料理に左右田は口に出さないものの満足である。朝食を済ませれば白叡は食卓を片付け、左右田はゴロンと居間に寝転がる。

片付けを終えれば白叡は早速中庭へ足を運ぶ。これは左右田の元へ来てからの一連の流れだ。庭にある丁度いい塩梅の石の上に正座で座り、黙祷する。そして木刀による素振り千本と『霞の呼吸』の型を振る。

左右田はそれをボケーっとしながら眺めてはぐーたらしている。

因みに今では全集中“常中”を体得しており、子供くらいの大きさの瓢箪なら破壊できるようになっていた。『霞の呼吸』も左右田の言った通り適性はあったためすぐに習得した。

 

「ダメだな……。やっぱ技にキレがねぇ」

「…………」

「『霞の呼吸』は確かにお前にあってるが、お前の『心王砕氷流』がどうも邪魔しちまってるな」

 

そう、元々やっていた呼吸法は『霞の呼吸』と近しいもので、且つ適性はあるのだが『心王砕氷流』によって染み付いた癖が、『霞の呼吸』の型の動きをぎこちなくさせているのだ。

故に得た結論は、元々使っていた呼吸法と『心王砕氷流』による『霞の呼吸』の派生である。そのために白叡が今行っているのは『霞の呼吸』の理解を深めること、『心王砕氷流』を呼吸法の型に改良すること。

それに気づいたのが5日ほど前で、まだまだそれに挑んだばかりの状況。白叡は只管、頭を働かせ今まで以上に剣に没頭した。

 

(心王砕氷流の技に呼吸法を合わせる)

 

グッと構えた姿勢から心王砕氷流の型を放つ。1本1本振る度に木刀はしなり空を切る。

挙動を一つも止めずに振り続ける。そんな中白叡の心は喜びに満ちていた。

 

(凄い!こんなに剣を振っても疲れる所かよりキレを増してゆく!凄い、楽しい!ずっと剣を振っていられる!)

 

白叡の表情はとても晴れており、笑顔を浮かべながら剣技を披露していた。唐竹、右凪、逆袈裟、突き、切り上げ、澱みなく放たれる四方八方からの剣。

 

「楽しそうにしやがって」

 

心底楽しそうに剣舞を舞っている白叡を眺め、左右田も微笑みながら呟く。そう言えば、昔世話になった先輩の柱に白叡を連れて来いと言われていたのを思い出した。目の前で楽しそうに剣を振る白叡だが、ここ数週間一日中剣を振っている。丁度いい息抜きになるだろうと重い声をかける。

 

「なぁ白叡よ。ちょいと出かけるぞ」

「……。今、鍛錬中」

「毎日やってただろ。偶には休め、これは命令な」

 

案の定膨れっ面で反論してくるが左右田はそれに取り合わず強引に言いくるめる。白叡も思うところがあるのか木刀を片付けに行く。

 

「それで、何処に行くの?」

「くりゃわかるよ」

 

白叡の質問にそう返すと、左右田はスタスタと歩いていく。白叡も置いてかれないように小走りで追いかけた。

 

 

―――――

 

 

左右田に連れられてやってきたのは、左右田の屋敷程の敷地に建つ立派な屋敷だった。

2人は門の前に立つと、左右田は気にせず敷地内に入っていく。

 

「おーい来たぞおっさん」

 

断りも入れず玄関の戸を開けるなり無遠慮な大声を出す。白叡は「まじかコイツ!?」って表情で左右田を見ては、家主に怒られたらどうしようかと思う。

 

「勝手に私達の家に侵入するなり馬鹿でかい声出す奴はどこの無礼者だ!!」

「よぉおっさん。来てやったぜ」

「お前か左右田!」

 

太い怒鳴り声と共に顔を出したのは、炎の様に揺らめく髪をした強面の男性だった。まゆを釣りあ、非常識な不届き者を睨みつける。白叡はその男の表情にキレた時の白兵を思い出し冷や汗を流す。しかし左右田はその男に怯む所か平然と話しかける。男も左右田と分かるやいなや引きつった呆れ顔に変わる。

 

「突然来やがって……。来る前に連絡ぐらいしろ」

「ああん?んなもんめんどくせぇよ。つーか今更だろ」

「はぁ……。お前もそれなりにいい歳なんだからよ、常識的な行動をだな……」

「わーてるわーてる。たく、相変わらずだなおっさん。そんなんじゃ嫁さんに愛想つかされんぞ」

「余計なお世話だ。……それで、その子がお前の継子か?」

「おお、そうだ」

 

白叡を放ったらかしにして左右田と男は軽口を叩き合う。漸く男は白叡を目視して話を振り、白叡は突然の事で少し反応が遅れるが丁寧に名乗る。

 

「鉢特摩白叡です」

「私は不本意ながらそこの馬鹿と同じく柱。『炎柱』の煉獄槇寿郎(れんごくしんじゅろう)だ」

「おいおいひでぇ言い様じゃねぇか」

「うちの師匠がお世話になってます。こんなんですがどうぞ今後も宜しくしてあげてください」

 

互いに自己紹介をすれば、槇寿郎の発言に何となく左右田が迷惑をかけているんだと思い、頭を下げながら言う。そんな白叡に「お前は俺の母ちゃんか!」とツッコミを入れる。

 

「はははっ。お前の弟子だからどんなに曲者かと思えば、案外しっかりしてるじゃないか!」

「はあ?数ヶ月前はこんな社交辞令なんか言わなかったつーの。俺が教えたんだよ」

「はははっお前がか?まあいい、取り敢えず上がれ」

「たく、失礼なおっさんだぜ」

「お邪魔します」

 

槇寿郎は快活に笑いながら言うと2人を案内する。槇寿郎の後ろではまるで兄弟のような言い合いをしている。

左右田とは3年前ほどからの付き合いで、槇寿郎は既に柱だったが彼はまだ一般隊士だった頃に出会った。柱とは鬼殺隊の最高位に位置する階級で、一般隊士とは隔絶された実力を持っており鬼殺隊を支えている。故に一般隊士や隠し等からは畏敬の念を抱かれている。しかしこの男は敬語なんて使わず不遜な態度で接してきた。そんな左右田に興味を持ち目をかけるようになったのは、今までにあったことの無い人種だったからだろうと槇寿郎は考える。そして気付けば自分と同じく柱となり『霞柱』の名を襲名していた。

それからも相変わらずだがまさかこんなちゃらんぽらんが弟子を取るとわ。それを聞いた時は夫婦揃って吃驚たものだ。

 

瑠火(るか)、左右田達が来たぞ」

「よぉ瑠火さん。体の調子はどうだい?」

 

槇寿郎は襖を開けるなり、昼間だと言うのに布団の上に座っている黒髪の瑠火と呼ばれる女性いた。左右田の発言から何かしらの病だろうかと白叡は推察していると、彼女がこちらを見ていることに気づき名乗った。

 

「鉢特摩白叡です。いつも師匠がお世話になってます」

「槇寿郎の妻、煉獄瑠火です。ご丁寧にどうも。左右田さんも…………いつも通りそうで何よりです」

「何その間は!!なんか含みがある言い方だったよ!」

「師匠うるさい」

 

そのまま口喧嘩と言うよりは、左右田が一方的に突っかかっているだけだが、まるで兄弟のような2人に槇寿郎と瑠火は笑みを浮かべている。すると廊下の先から快活な男の子の声が響いた。

 

「父上!誰か客人が来られたのですか!」

 

バタン!と部屋の戸を開けたのは、小さな男の子をおんぶしている男の子だった。どちらも槇寿郎によく似ており白叡は槇寿郎の息子だと分かった。

 

「あ、左右田殿!来ていらしたんですね!」

「おうおう、お前は相変わらず声でけぇな」

「よもや、そちらが左右田殿のお弟子さんですか?」

杏寿郎(きょうじゅろう)挨拶しなさい」

「はい、母上!俺は煉獄杏寿郎だ!そしてこちらが弟の千寿郎(せんじゅろう)

 

左右田に挨拶し白叡を一瞥した少年こと煉獄杏寿郎は、おんぶしている千寿郎と共に名乗る。白叡も名乗り互いに自己紹介を終える。すると杏寿郎は白叡に興味津々と言うように話しかけた。

 

「鉢特摩はもう『全集中の呼吸』を習得していのか!?左右田殿の修行内容はどんなものなのだ!」

「あ……えっと、一応全集中“常中”はできる。あと、師匠の修行は割といい加減」

「よもやよもや!俺とあまり歳が変わらないと見えるが、それほどまでとわ!余程努力をしたのだな!」

「そう……かな……。全集中の呼吸は家にいた時から無意識にやってたし、剣は物心着いた時から握ってたから……」

「鉢特摩の実家は剣道場だったのか!?呼吸の流派は左右田殿と同じ『霞の呼吸』なのか!」

「えっと…………」

 

まるで機関銃のように話しかける杏寿郎に白叡はオドオドと返す。白叡はこの短い人生の中で、同年代の友達がいたどころか一緒に遊んだこともあまりない。しかも、杏寿郎のようにグイグイと来る性格の子供が町にはいなかったため凄く圧倒されている。

左右田はそんな白叡を見て愉快そうにニヤニヤと笑っており、槇寿郎や瑠火も穏やかな表情で見ている。しかし流石に白叡の様子を見かねてか、瑠火が助け舟を出す。

 

「杏寿郎、あまり質問ばかりで彼が困っていますよ。それに背中の千寿郎も大きな声で驚いています」

「それは申し訳ない!母上、俺はもっと鉢特摩とお話がしたい!千寿郎を任せても良いだろうか!」

「ふふっ。分かりました」

「ありがとう母上!それでは行こう!」

 

杏寿郎はおぶっていた千寿郎を槇寿郎に預けると、白叡を自分の部屋に誘う。白叡はどうしたらいいか分からず左右田の方を見ると、彼は「行ってこい」と目配せし白叡は頷いて杏寿郎について行く。杏寿郎の部屋に移動するなり白叡を座らせれば対面に座る。

 

「ここが俺の部屋だ!大したものは無いが寛いでくれ!」

「あ、ああ……ありがとう、煉獄」

「む……そうだ。提案なのだが、俺のことは下の名で呼んでくれると嬉しい!」

「え?何でだ?」

「父上と母上、それに千寿郎と同じ苗字だから被ってしまう。それに…………」

 

杏寿郎は良案だと話していると一度言葉を区切り、やや照れ臭そうに視線を下げる。

 

「家族以外に下の名であまり呼ばれたことがないのだ。それに鉢特摩とは友達になりたい!どうだろう!」

「友達…………。じゃあ俺も下の名で呼んでくれ、杏寿郎」

「うむ!よろしく頼む、白叡!」

 

白叡は『友達』という単語を呟くとフッと笑って彼の下の名を呼び、自分も下の名で呼ぶように言う。杏寿郎はパァッと笑顔を浮かべるとたいそう嬉しそうに改めて白叡の名を呼んだ。

 

「白叡は何故鬼殺隊に入ろうと思ったんだ!」

「剣術を極めるため……と言うか、強くなるためだ」

「そうか!俺も強くなって弱き人を助けるために鬼殺隊に入りたいのだ!母上が言っていたのだ!弱き人を助けることは、強く生まれた者の責務だと」

「…………そうか。杏寿郎は立派な剣士になるだろうな」

 

白叡は杏寿郎を羨むような表情で言うと、杏寿郎は快活に笑いながら嬉しそうに「白叡こそなれるだろう!」と白叡の様子に気づかずそう返した。

白叡は小さく微笑みながら「そうかい」と肩を竦める。

両極なこの2人は左右田が白叡を呼びに来るまで、談笑し続けていた。




〜〜大正コソコソ噂話〜〜

左右田は家事も掃除を面倒くさがって全くできないぞ。偶に隠が総動員で片付けているらしいが、白叡が弟子入りしてからはそれは無くなったそうだ。
ダメ人間な左右田に対して当たりが強い白叡だが、剣士として尊敬しなんだかんだ懐いているぞ。
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