【仮題】雪柱の男   作:窮鼠猫を噛み噛み

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サブタイトル考えんのがしんどい……。


変身の鬼

 

 

 

あれから白叡は胡乱を彼の家まで送り届けた。道中2人に会話はなく、白叡は鬼の襲撃を警戒しており、また胡乱は先程のショックのあまり呆然と白叡に引かれてフラフラと歩いている。

やがて家に着けば、巴が悲鳴のような大声で胡乱に苦言を零し、白叡に礼を言った。胡乱はすぐ様家の中に入れられ、白叡は役目を終えて去る。

すると、見計らったかのように日和号が飛んできて、白叡の肩にとまる。

 

「奴の場所まで案内しろ」

 

白叡が小さく言うと、日和号はコクンと頷き先導するために再び飛ぶ。白叡もただ鬼を逃がすほど甘くはなく。自分が追える状況で無いことを分かれば、瞬時に日和号へ鬼の追跡を命令していたのだ。

日和号に連れられてやってきたのは、この町のずく近くにある森。白叡の予想と違って、暁は街の外へ出たようだ。

 

「ただ鬼を斬るだけじゃダメなのか……。全く、想像以上に面倒くさいんだな」

「おーい!そこで何してる!」

「?」

 

突如茂みの中から男が、コチラに大声を出しながら小走りでやってくると、

 

『雪の呼吸 一式捌番 不香の花(ふきょうのはな)!』

 

間合いに入った瞬間に後ろ回し蹴りで蹴り飛ばす。蹴り飛ばす際に、近づいてきた何者かは「グエッ」と、潰れたカエルのような悲鳴を上げ体内から刀を吐き出し蹲る。

 

「え?アイスクリン屋のおじさん?でも刀を吐き出したってことは…………」

 

そう蹲っている男は、昼間に立ち寄ったアイスクリン屋の男であったが、先程の戦いで見た刀を吐き出していた。

あまりに予想外というか、辻褄の合わない状況に白叡は首を傾げる。その一方で、蹲る鬼は戸惑い、驚愕していた。

 

(何が違っていた!?変装……いや、俺のこれは変装なんかじゃねぇ。返信は完璧なはずだ!)

「刀で攻撃しなくてよかった……。もし鬼じゃなかったら大変なことになってた。まぁ結果鬼だったみたいだが」

「て、てめぇ!なんで俺が偽物だとわかった!?」

「は?分かるわけねーだろ。急に走りよってきたから蹴っ飛ばしただけだ」

「(だ、誰かわからずに攻撃しやがったのか!!)」

「と言うよりどういう原理だよ。なんでアンタがまんま別人の姿になってんだよ」

 

アイスクリン屋の男の格好をした鬼は、あまりの驚きに口をこれでもかと開けて驚愕するが、白叡の疑問を聞き今度は得意げに笑みを浮かべる。

 

「言ったはずだぜ。俺の血鬼術はそんなもんじゃねぇってな。きゃはきゃは!これが俺の血鬼術の真骨頂――――」

 

突如、鬼は自らの首がへし折れ間接や筋肉、骨の生々しい音ともに身体が変形していく。軈て鬼の体はアイスクリン屋の男の姿でも、暁の姿でもなかった。逆だった黒髪に墨で塗りつぶしたような真っ黒な瞳、細身で肌は色白く手足の長い姿になる。

 

「―――醜いところを見せて悪かったぜ。これが俺の血鬼術『骨肉細工』で、この俺の男前顔だってなぁ!!」

「………………」

「あん?どうしたよ?俺の気の利いた呆けに対して何か言うことねーのか?」

「……お前、誰だ」

 

鬼の呆けを無視して、睨めつけながら問う。それに鬼はにィっと笑みを浮かべれば、おちゃらけた態度で1つの笑い話でもするかのように話し始める。

 

「きゃはきゃは、俺はあの婆さんの息子なんかじゃねぇ。俺は元々明治政府お抱えの殺し屋家業の人間でよォ。明治維新やらなんらがあった時は、おかげでいい暮らしができてたってもんだぜ。だが、明治10年に起きた西南戦争が終わったと同時に、俺達は表からも裏からも消えたがな」

「…………」

「俺があの男を食ったのが今から半年前だったか。それがまた酷い味でよー。選り好みして食わねぇ俺でもありゃ二度と食いたかねっつーの。きゃはきゃは!ここに来たってのも人間社会に溶け込んで美味い肉を食うためなんだぜ。我ながらいい考えだと思ったんだがよーお!あの馬鹿夫婦共は俺の存在に気づいちまったのが運の尽きって話だよなぁ!知らなきゃ殺すことも無かったってのによォ!」

 

興が乗り、愉快そうに話す鬼。白叡はその鬼をただひたすらに冷めた目で見続ける。しかし鬼はそんなこともお構いなく話し続けた。

 

「アイツら俺が、『テメーらのガキの代わりにテメーらの肉を食わせろ』つったらよォ。喜んで差し出しやがってなぁ!俺がんな約束守るわけねぇっつーのによォ!」

「約束を破るのは悪いことだ」

「おいおい、何自分らのこと棚に上げていってんだっつーの!俺をこんな風にしたのは元々は人間だっつーの。俺らを利用するだけして利用すれば後はポイッだ…………。予定では今夜はあのガキども食って出て行くつもりだったが…………飯の恨みってもんを晴らさせてもらうぜ」

 

刺すような殺気を放ちながら鬼は言う。無駄に長い話は終わったのかと白叡は飽き飽きとした表情で刀を構える。

 

「俺はそもそも正面戦闘が得意じゃねぇからちょいと血鬼術で細工させてもらったぜ。これでお互い強い石拳と強い石拳だ」

 

鬼は血鬼術を発動し両腕の筋肉が膨張し、力こぶを披露し得意げに笑う。そして吐き出した刀を手に持って「これで俺の方がもっと強い石拳だ」とキメ顔で言った。

それに白叡は反応を示さず「ヒュオオオ」と肺に空気を送り込む。血流が早くなり、酸素とエネルギーが全身に巡って、体の底から力が湧く。

 

「鉢特摩白叡参る」

「かっこつけてんじゃねーよ!!」

 

鬼は中高く跳び上がり、奇声を発して自由落下しながら白叡へと刀を振るう。白叡はそれをしっかりと目で捉えながら、白縹色の刀を鞘に収め抜刀の構えを取る。

 

『全集中 雪の呼吸 奥義漆番 螢双雪案(けいそうせつあん)!』

 

一息で放たれた抜刀術から、2発の斬撃が繰り出され鬼の頸を切り飛ばした。

 

「なっ!?なっ!?」

「ただ力任せに振ればいいってもんじゃない。子供のお遊び程度の剣術に、俺が遅れをとるはずがないだろ」

 

突如視界が回り出し、自身の頸を斬られたことすら気付いていない鬼は、困惑顔を浮かべている。そんな鬼に対して白叡は淡々と吐き捨て、軈て宙を舞った頭部は地面に落ちる。そこで漸く自身が斬られたことに気付き、鬼は喚くこともなく己の最期を悟った表情を浮かべた。

 

「あーあーついてねーな……。あん時みてーだ…なぁ……ダツよ……そんなとこにいたのかよ。早く俺もそっち連れてけ……つーの…きゃは…………きゃは…」

 

最後の最期まで笑いながら鬼は消えていく。最後に呟いたのはかつての友の名だろうか。

白叡はそれを見届けて日輪刀に付着した血液を拭き取り鞘に納める。白叡は鬼の残した衣類に一瞥もくれることもなく歩き去る。

 

「道具を使う鬼もいるのか……。やっぱり鬼殺隊に入って正解だな」

 

と、ふと胡乱らのことが脳裏に過ぎる。事の顛末を話すべきだろうかと思案するが、まあ別にいいだろうと結論をだす。どうせこれっきりの人間関係だ。

 

「早く帰らないと……また部屋を汚されたら大変だ」

 

最終選別が終わって帰ってきた時の屋敷の状況を思い出す。たった七日、白叡が家を空けただけで、一軒のゴミ屋敷が完成していた。あの時ばかりは本気で殺意が湧いて帰ってきてすぐだと言うことも忘れて斬りかかったほどだ。

 

「オ疲レ様!オ疲レ様!」

「…日和号。さっさと帰るか……思ったより時間かかったし」

 

これで白叡の初任務は危なげなく遂げることが出来た。因みに帰った時に、また家をゴミだらけにされて斬りかかったとか……。

 

 

―――――

 

 

初任務の日から1年が経った。白叡も数々の任務をこなし、メキメキと力をつけていった。階級も庚となり『雪の呼吸』の練度も上がり、左右田にはまだ勝ち越せてないが勝てるようになった。

最近では左右田と共に任務に当たることもあり、より強い鬼と戦うことも多くなった。そして、槇寿郎以外の柱とも邂逅をして、左右田も白叡を継子と紹介するようになった。この1年の出来事は大体このような内容で、基本的には任務か鍛錬に勤しんでいる。

 

「よく来てくれたね、白叡」

「よお耀哉。身体の具合はどうだ?」

「今日はとても調子が良いよ。さあ、こっちの部屋だ」

 

白叡は個人的に耀哉の屋敷へと招待されており、今ではすっかり打ち解け距離感もとても近い、白叡にとって数少ない友人の1人となっていた。

耀哉は「あまね、入るよ」と一言言って襖を開ける。そこには5人の子供に囲まれ笑んでいるあまねの姿があった。

 

「文を読んだが、本当に2人の子供なんだな」

「ふふ、白叡も抱っこしてみますか?」

「え………」

「それは良い。是非白叡にも抱いて欲しいな」

 

そう、その5人の子供は産屋敷夫妻の子供たちで、女の子4人も男の子1人の5つ子だ。因みに産まれたのは2ヶ月ほど前の事で、柱や階級の高い隊士らは既に知っており柱に関しては既に見に来ている。しかし白叡はその時ちょうど九州の方での任務があったので、左右田と共に見に来る機会を逃したのであった。手紙を通じてそのことは知ってはいたが実際に会いに来てほしいと言うので今日訪ねたのだ。

白叡は末っ子であったため身近に赤ん坊がいた経験がなく、無垢な瞳で見つめてくる赤ん坊を白叡は興味津々と見つめる。そんな白叡を見てあまねが提案すると耀哉も乗り気で言う。

白叡は最初は戸惑うが2人の笑顔の前に屈して恐る恐る持ち上げる。あまねに口頭で教えて貰いながら抱っこをすると、赤ん坊は初めて見る白叡の顔を触ったりして笑っている。

 

「この子が長男か。名前はなんて言うの?」

「その子は輝利哉(きりや)。そして姉のひなきとにちか、妹のくいなとかなただよ」

「弟も妹もいなかったから新鮮な気分だ。俺の兄や姉も俺をこうしてたんだろうな」

 

輝利哉を腕に抱きながらふと呟く。耀哉は白叡の境遇を知っているため心配そうに彼の表情を伺うも、白叡は笑顔で輝利哉を相手している。寧ろ逆に、自分よりも早く上手にあやしている白叡に嫉妬する。「上手だね」っと少し皮肉っぽく言ってみれば、「千寿郎ともたまに遊ぶからな」と淡々と返されてしまった。

あまねはそんな夫の様子を見てつい微笑みを浮かべてしまう。

 

「そういえば白叡。最近、鬼殺隊の隊士から君の……その、悪い噂を聞いてね」

「……悪い噂?」

 

すると、耀哉は表情を一転させ真剣な顔で話し始める。白叡が聞き返すと耀哉はコクリとゆっくり頷き、あまねの表情も強ばったように見えた。

 

「どんな内容なんだ?」

「うん……その前に先ず、白叡と同時期に最終選別を乗り越えた、言わば同期の2人の隊士を覚えているかな?」

「あーーん?…………2人だっけ?名前と顔は知らねーけど、いたのは覚えてるぞ」

 

悪い噂の内容を話す前に耀哉のした質問に白叡は返答すると、耀哉とあまねの2人が揃って「だろうな」といった表情で溜息をついた。

 

「………かなり前だけど、2人とは合同で任務しているんだよ」

「…………合同任務?あー喚くだけで対した働きもしなかったヤツらか」

「はぁ……本当に君って奴わ。それじゃあ他に合同で任務に当たった子たちを覚えてるかい?」

「おいおい、俺がそもそも集団行動が得意じゃないの知ってるだろ?そんな奴が一々、1回一緒に任務したからって覚えられるわけない」

 

1度目の質問に白叡は口悪く返事する。これに耀哉はわかっていたことだが溜息を零してしまう。続けてした質問については考える素振りもなく、寧ろ開き直りながら返した。出会って1年と少しの交流だが、良い意味でも悪い意味でも段々と左右田の影響を受けている気がする。元々他人に対して淡白であったと知っているが、屁理屈というかひねくれた発想をするようになっている。

 

「知っているよ。知っていたさ……」

「それで、悪い噂の内容は―――?」

「うんうん、わかってるよ。これはあくまで隊士間での噂だし、私達や君をよく知る者達は信じてない……。と言うよりもそもそもこの噂自体、真実から程遠いものばかりなんだ」

 

耀哉はそう前置きを言うと、今現在隊士間で囁かれている噂話のその内容を話し始める。

1つは鉢特摩白叡と言う隊士は、階級を上げるために仲間を見殺しにして自分だけの手柄にしている。

また1つは一般人を囮にしてその隙に不意打ちをしている。

さらに1つは継子という立場を利用して、柱や階級の高い隊士に媚びてお零れを貰っている。

等のものだ。それを聞いた白叡は「プッ……」と吹き出す。耀哉とあまねは吹き出した白叡を怪訝そうに見つめる。

 

「……なるほどなー。確かに周りから見たらそう見えるか」

「……私の方から何か言っておこうか?これ以上根も葉もない噂を立てられるのも面倒だろ?」

「いや、それはいいや。別に顔も名も知らない奴らなんてどうでもいいし。興味無いから」

 

白叡はあっけらかんと話すとそもそも話の本題、白叡の悪い噂を払拭するために耀哉自身が動くことを提案する。しかし白叡は悩むことも無く断る。事実白叡にとってそんなことはどうでもよかったのだ。合同任務で死んだ相手の大抵は白叡の言を聞かずに、実力と覚悟が伴わないのに独断専行して呆気なく殺されただけだ。2つ目の一般人を囮に―――――は、催眠系統の血鬼術を操る鬼によってやむを得ない状況であったからで、進んで囮にしたわけではない。3つ目に関しては「知るかそんなもん」という感じだ。

 

「そもそも誰かと仲良くしたいからココに入ったわけじゃない」

「ふっ………そうだったね」

 

白叡の発言に耀哉は呆れたように返すが、表情は柔らかく「白叡らしい」と言った。しかし、白叡のそう遠くない未来では、今より多くの誰かに囲まれ、慕われている姿を何故だか容易に想像できた。

きっとその数は両手で数えられるくらいなのかもしれない。だが白叡の見えにくい良さを理解してくれる耀哉自身以外から現れるはずだ。

そう思いながら目の前で我が子をあやしている白叡を見つめていた。

 

 

 




〜〜大正コソコソ噂話〜〜

白叡が帰ってくる前に、柱達による出産祝いが行われていたそうだ。槇寿郎等の柱は恐縮しながらも5つ子を抱き上げたりしたらしいが、あまねは左右田には指一本たりとも触れさせなかったらしいぞ。
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