蒼き鋼と鋼鉄のアルペジオ Cadenza   作:観測者と語り部

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航海日記40 始まりの大戦艦

 501は機能停止して気絶している403に膝枕しながら、漂着した小島の浜辺で、霧と超兵器の戦いを見ていた。

 

 船体を失った躯体では、広域通信すら使うのが難しく、超兵器のジャミングで役に立たない状況となっている。こうなっては戦いが終わるまで救助を呼ぶのは難しいだろう。

 

 本来、自身の躯体(メンタルモデル)を持たない501は、こうして躯体を維持するのも一苦労であり、分かりやすく言えば無理をしているという状況である。それでも躯体を必死に維持し続けるのは、動けない403に代わって彼女を助けるためだと言っていい。

 

 ヴォルケンクラッツァーの重力砲が船体の推進装置を削り取り、艦尾の一区画を丸々消失する中で、403を抱えて脱出できたのは奇跡だったのだから。

 

 船体が急速に沈んでいくなか、無事な区画を保護するために隔壁で封鎖して。ダメージコントロールの為に遠隔注水操作と自動消火を行いながら。最終的には魚雷発射管から自身と403の躯体を射出する羽目になった。正直、二度とやりたくないと思う。

 

 メンタルモデルじゃなかったら絶対に死んでいた。もちろん、脱出した後は403を引っ張って遠泳することになる。

 

 身にまとう服は所々ボロボロで、ナノマテリアルを使って再構成する余裕もない。破れた服の欠片から銀砂が零れ落ちて、キラキラと輝きながら風に乗ると、銀の砂粒が空に舞い散っていく。髪や肌には水が滴り、普段の可愛らしい姿は見る影もない。むしろ見るも無残である。

 

「あっ、お姉ちゃん。よかった。目が覚めた」

 

 ふと、403が目を開けて、ゆっくりと起き上がる。501はそれに満面の笑みを浮かべて喜んだが、403はどこか上の空の様子で、水平線の彼方を見つめていた。その視線の先には、ここからでも見える超兵器の巨大な姿がある。

 

「それはダメ……」

「お姉ちゃん?」

「貴女たちもわたしを置いていくの……? むこうのヤマトやムサシのように……? そんなの、イヤだよ……」

 

 そこか様子がおかしい403に501は声を掛けることがでいなかった。

 まるで、ここではない何処か別の場所を見ているようで。だから、501は403が何処にもいかないように、そっと彼女の躯体を抱きしめるしかないのだった。

 

◇ ◇ ◇

 

「あんた達、一体……」

『重巡タカオ。ご苦労様でした。あとは私たちに任せて後方まで下がりなさい』

『お願いだから。私とフソウ姉さまの邪魔をしないでね』

 

 タカオの疑問に有無を言わせぬ声で告げるフソウ。ヤマシロも普段の幼さなど無かったかのように、一方的にタカオに告げて、概念伝達を打ち切った。

 

 フソウの表情は何かを決意した様子で、今までのおどおどしていて自信のない姿は一切見られない。まるで大戦艦としての誇りを思い出したかのように周囲に強烈な気配を発している。常に謎めいた雰囲気を持ったナガトとも、超越者としての余裕を持ったヤマトやムサシとも違う。だが、そこには確かに霧の大艦隊を総べる程の気迫を持った大戦艦がいた。

 

 普段の彼女を知るメンタルモデルが見れば、本当にあのフソウ、ヤマシロなのかと疑っただろう。それほどまでに二人の印象はかけ離れている。

 

 その後ろでは浮かない顔をした重巡モガミ率いる艦隊が、損傷しているミョウコウやナチを保護し、海中に沈んでしまったヒエイの躯体を引き上げている。どうやらフソウとヤマシロを援護するつもりはないようで、シグレやミチシオなどの駆逐艦はひたすら救助活動に専念しているらしい。

 

 それもフソウとヤマシロの命令なのだろう。あの二隻の大戦艦は、たった二隻で超兵器に挑むつもりなのだ。霧の生徒会と自称する大戦艦一隻と重巡四隻を軽くあしらえる力を持った超兵器戦艦に。

 

 タカオはそれを無謀だと思ったが、フソウとヤマシロから発せられる機関のデタラメな観測値に驚いて動くことができない。数値はすでに並み居る大戦艦を超え、超戦艦に匹敵しそうな勢いまで上昇している。それは、尚も止まる気配がない。

 

「行こう、タカオお姉ちゃん。ここにいても、邪魔になるだけだよ」

「でも……」

「きっと、フソウもヤマシロも、私たちが逃げるのを待っていてくれてる。ここにいても、私たちは何もできない。なら、離れていたほうがいいよ。これ以上犠牲なんて出したら、コンゴウもいい顔しないと思うし」

 

 動けないタカオを促したのは重巡マヤ。三番目の姉妹艦でもある彼女も、フソウとヤマシロに目を向けながら、船体を方向転換させて、海域を離脱し始める。

 

「……っ、分かったわよ」

 

 それに続いて、迷いながらも同じように離脱していくタカオ。プライドの高い彼女は、何も出来なかった自分が悔しかった。せめて、もっと力があればと歯噛みする。そうすれば、きっとあの二隻が出てくることはなかった。

 

 タカオもマヤも胸の内では分かっているのだ。あんな出力を叩き出すフソウとヤマシロが無理をしているという事を。恐らく一回限りの切り札。使えば自分も只では済まない諸刃の剣。

 

 現に二隻の大戦艦は少しずつではあるが、自身を構成する船体の表面が溶けていっている。ナノマテリアルが銀砂と成らず、熱で溶けて銀色の血を海に垂れ流す。それ程までのエネルギーを機関から抽出し、膨大な熱エネルギーを周囲に発生させている。排熱が追い付いていないようだ。

 

「さあ、行きましょうか。ヤマシロ」

「うん。いつまでもヤマシロは一緒だよ。フソウ姉さま」

 

 かつては欠陥戦艦とすら呼ばれた二隻の大戦艦が、ゆっくりと動き出す。展開形態に移行した船体から、それぞれ四つの重力子レンズに似た装置を、己の船体周囲に展開し、位相空間への扉を開く。

 

 次元空間曲率変位(ミラーリング)システム。超戦艦にだけ許された特別な防御兵装。それを、この二隻は無理してでも使うつもりだった。そうしなければ、あの超巨大戦艦には対抗できないだろうから。

 

 同時にヴォルケンクラッツァーが動き出し、艦首の格納部からせり上がっていた艦首砲が黒い球体を放つ。

 

 重力砲。超重力砲に匹敵し、場合によっては凌駕する超兵器側の重力兵器。だが、それはミラーリングシステムのひとつに呑み込まれて無力化される。ヒエイのように相転移されたエネルギーが衝撃波となって拡散される事もない。それは搭載された防御システムの制御が完全に近いことを意味している。

 

 しかし、代償として防いだヤマシロのミラーリングシステムが銀砂となって霧散し消滅する。二隻に搭載されたシステムの防御は一回きり。残るミラーリングシステムの発生装置は七つ。それ以上は重力砲を防げなくなる。

 

 ならば、重力砲の飽和攻撃によって押しつぶしてしまえばいい。そう判断したヴォルケンクラッツァーだが、次の瞬間には多数の荷電粒子砲に船体を焼かれていた。

 

「チャージなんかさせない。これ以上、お前の好きにさせるものか」

 

 大戦艦ヤマシロが言葉と共に船体を斜めにして、多数の主砲をヴォルケンクラッツァーに向けていた。だが、その威力は先ほどまでの霧の戦艦や重巡洋艦とは桁違い。どうやらヴォルケンクラッツァーの防御重力場や電磁防壁を易々と突破してくるらしい。

 

 すぐに損傷個所を修復し、徐々に前進していく超巨大な船体。ヴォルケンクラッツァーは多数の兵装を展開して、フソウとヤマシロに襲い掛かる。多弾頭対艦ミサイルVLSから多数のミサイルを連続して打ち上げ、巨大な連装80cmを始めとする大小様々な主砲が火を噴き、δ(デルタ)レーザーの十六条の緑光が次々と照射される。

 

 フソウとヤマシロも応射するように接近し、6基12門の荷電粒子砲を次々と放ち、侵蝕弾頭兵器を無数に降らせ、ダメ押しとばかりに多数のパルスレーザーを雨霰のように浴びせかける。

 

 超巨大なひとつの船体と、それに対して小さく見える二つの船体が交差し、フソウとヤマシロは相手を挟み込むように位置して、一瞬ですれ違う。その間にも、空は侵蝕兵器と大型ミサイルの爆発する光で埋め尽くされ、海は迎撃による誘爆の影響でで水柱があがり、外れた光線の熱量が海水を蒸発させる。三隻の間を無数の光の瞬きと、戦艦一つを飲み込みそうな爆風が火を噴いて空間を埋め尽くす。

 

 瞬きのたびに無数に繰り返される破壊の応酬。クラインフィールドを貫通し、防御重力場を粉砕し、電磁防壁を突破する。その度に互いの船体が崩れ、粉砕し、破壊される。そして再生を行って、再び撃ち返す。

 

 たった一度の交差で、ヴォルケンクラッツァーは近接防御兵装をすべて失い、艦橋周りが火の海と化した。主砲の一基は砲身が折れて見るも無残な姿になり、もう一基は根元から爆砕して空高く吹き飛んでしまった。それをすぐに修復していく。

 

 一方、フソウは後部甲板の兵装が全滅し、ボロボロに砕かれていた。山城も後部艦橋が半分に折れ、真ん中の主砲二基と周囲のミサイル発射システムなどが、δ(デルタ)レーザーによって焼き消された。その再生速度はヴォルケンクラッツァーに比べて非常に遅い。しかも、フソウのミラーリングシステムも二基が破壊された。

 

「ふふ、うふふふ――」

「あはは、楽しい。楽しいね、フソウ姉さま」

 

 そんな中でもフソウは楽しそうに笑う。ヤマシロも同じように笑っている。楽しくて、楽しくて仕方がないと言うように。袖口が広い巫女服は既にボロボロで、緋袴の裾は焼け落ちていても笑いが堪えられなかった。

 

 コアが異常を持つ? まともに演算できない?

 

 そんなものは生まれた時から知っていたことだった。

 

 最初のメンタルモデルを持ったのが超戦艦ヤマトだとするならば、第二次世界大戦時の船を模して、演算コアを最初に持たされたのがフソウ・ヤマシロである。それ故に不安定なことも多く、欠陥を多数抱えているのも当たり前だった。

 

 我らは祖を生み出すための雛形であり、この世界の大戦で敗戦まで追い詰められた者たちの無念が形となったもの。

 

 故に知っていながら受け入れた。それが世界中に展開するであろう霧の艦隊の役に立つのであれば。アドミラリティ・コードの役に立つのであれば問題ない。

 

 何より、今は艦隊の役に立てていることが嬉しかった。大戦艦として力を振るい、派手に戦うことに望外の喜びを感じていた。だから、自身が派手に損傷していたとしても、喜びのあまり笑い続ける。

 

 目の前に勝てないような相手がいて、それに全力を奮って戦うのだ。たとえ、その先の待っているのが自身の破滅なのだとしても悔いはない。

 

「まだよ。まだ、私は戦えるわ。私も、ヤマシロも戦える」

 

 うわごとのように呟きながら、フソウは上下に展開したままの船体を旋回させ、艦首をヴォルケンクラッツァーの横腹に向ける。次の瞬間、青白く眩い光とともに船体一体型の超重力砲が発射され、ヴォルケンクラッツァーの分厚い装甲を分解しながら、崩壊させていく。

 

 艦首前面の主砲二基は荷電粒子砲を照射して、できる限り敵の兵装を再構成する前に削っていく。

 

 反対側ではヤマシロが同じように赤黒い超重力砲を放ち、左右から攻撃する形となる。そのまま内部の重要防御区画(バイタルパート)まで貫通して、敵の超兵器機関の一部を跡形もなく破壊していく。

 

 さらにダメ押しとばかりに、周囲の海がクラインフィールドで押し広げられ、海を渡ることしかできないヴォルケンクラッツァーの船体が海底に落着する。己の自重がそのまま破壊力となって変換され、船底を潰しながら固いクラインの壁にぶち当たる。

 

 それでも完全に沈黙することはなく、無事な主砲から砲弾を発射し、VLSから再び大型の多弾頭対艦ミサイルを発射する。

 

 目標は悠々と空間の上に浮かび続けるフソウ・ヤマシロの二隻。だが、ヴォルケンクラッツァーの反撃は先ほどよりも散発的であり、二隻の大戦艦は易々とそれを防いでいく。それどころか、観測される機関の出力がさらに上昇した。もはや、周囲の空間が歪み始めるのを目視できるほどのエネルギーを纏っている。

 

「ふふ……どうやら…倒し切る前に、私たちが、自壊するほうが……先の、ようね……ヤマシロ………ヤマシロ?」

「…………」

 

 フソウの問い掛けにヤマシロは応えることができなかった。すでに自壊と相まって船体はボロボロで、自身の躯体(メンタルモデル)も限界が近い。溢れ出す機関出力を抑えるので精一杯なのだ。フソウもヤマシロも、機関を暴走させているに等しいのだから。

 

 フソウ・ヤマシロに積まれた機関はヤマト型超戦艦に積まれたものとほぼ同じ。彼女たちのプロトタイプといっていい。そこから生み出される機関出力を抑え、安定させるには、どうしても演算力の大半が必要となる。

 

 普段から武装をまともに扱えないのは、それが原因だった。霧の船として生まれ変わり、どこまでかつての力を行使できるか推し量る為に生まれ、それが終われば力を抑えるために外付けの抑制装置(リミッター)を付けてでも自身の力を抑え込んだ。

 

 だが、それを抑えずに、機関出力を全て解放すればどうなるか。結果は火を見るよりも明らかだった。

 

 リミッターを解除したフソウとヤマシロの二隻は、今やコンゴウ型戦艦の速力すら越え、アイオワ級戦艦のスピードすら凌駕する勢いで海を疾走できる。巨大な艦橋を模した観測装置はヤマト並みの観測結果をもたらし、攻撃や防御に最適な数値を割り出す。そして、反撃の為に放たれる攻撃は迎撃されない限り全弾命中させられる。403が出会った時の攻撃を外しまくっていた頃とは違う。今までの二隻からは考えられないような能力を発揮していた。

 

 けれど、代償だって馬鹿にはならない。身に余るほどの機関出力は、船体の想定強度を軽く超えてしまい。内側から二隻の船体を崩壊させていく。機関を中心に赤熱化し、溶けたナノマテリアルをドロリと海面に垂れ流し、それでも敵を討ち果たすために戦い続けたのだ。

 

 持って180秒が限界であり、すでに二隻はタイムリミットを超え始めている。これ以上はどうなるか誰にも分からない。

 

 もはや、メンタルモデルを維持するのも難しい。既に二人から表情は消えかけてきている。表情の変化という無駄な演算を行えなくなってきている。それどころか今にも消えてしまいそうなほど、自身の躯体(メンタルモデル)をぶれさせてもいた。時折、氷を割るような音と共に構成体が欠け、砂のように崩れていく。自身の躯体(メンタルモデル)の一部が段々と消えていくが二人は気にする余裕もない。

 

 ひときわ高い艦橋の上に立つヤマシロの右腕が取れた。艦橋天辺の床に叩き付けられた腕は、そのまま遥か下の海に落ちていき、銀砂となって跡形もなく消える。そのうち足とかも崩れて立っていられなくなるだろう。コアを船の中心に移したほうが良いのかもしれないが、そんな気力ももはやないと、ヤマシロは自虐気に笑った。

 

 まだ、敵は死んでいない。まだ、戦える。私たちは最後まで戦い続けると。ヤマシロはそう呟こうとして。同時に身体が崩れ落ちた。視界がぶれて仕方がない

 

 また、目に映る自身の躯体が消えそうになっている。目に映る手の部分が半透明になって、正六角形の構成体を露出させながら消えていく。身体の隅々から銀砂が零れ落ち、風になってさらさらと流されていく。もう、実体化しているのも難しいんだろう。

 

「この……身体。お気に、入、り…………だった、のに……なぁ……」

 

 そうして、静かにヤマシロの躯体データ(メンタルモデル)が死んだ。

 

――ヤマシロ。私もすぐに逝く。だから、もう少しだけ待っていて。

 

 フソウはそれを黙って見つめていた。もはや、喋ることも難しい躯体(メンタルモデル)の心の奥で。そんな事を思いながらヴォルケンクラッツァーに止めを刺すために彼女はゆっくりと動き出す。

 

 同時に船体のコントロールデータが姉のフソウの元へ送られてくる。どうやらヤマシロは、最後に全てを託すことにしたらしい。姉のやりたい事を、彼女も内心では分かっていたのだろう。立場が逆ならフソウもそうしていたから。

 

 これから、フソウは己の膨大なエネルギーとヤマシロの膨大なエネルギーを練り合わせて、巨大なミラーリングシステム(異世界への入り口)を瞬間的にこじ開ける。ヴォルケンクラッツァーを撃破しきることはできなくても、この世界から追い出すことが出来れば、それで構わない。

 

 いくら霧の艦隊を凌駕する超兵器と言えども、あれほどの損傷を負いながら、再びこの世界に舞い戻ってくるには、それ相応の時間が掛かるだろう。現地で船体を建造してもらって、それから稼働するために必要なデータを転送するのとは訳が違うからだ。

 

 フソウは片手をゆっくりとあげると、自身とヤマシロの機関出力を残ったミラーリングシステムに注ぎ込む。同時にヴォルケンクラッツァーをクラインフィールドの壁に閉じ込め、その周囲を五基のミラーリングシステムが取り囲んだ。

 

 瞬間的に生成された異次元の穴底に落ちていくヴォルケンクラッツァー。それと同時にフソウとヤマシロの船体はついに爆散し、周囲に強烈な重力子エネルギーを撒き散らす。

 

 自身の躯体が消滅し、コアが致命的な損傷を受けるなか。フソウは最後の瞬間に誰かが見ていることに気づいて、"彼女"の姿を見た気がした。

 

 ああ、そんな顔をしないで欲しいと思う。フソウとヤマシロがおもしろいと思った子は、まるで、捨てられた子供のような泣き顔をしていたのだから。

 

◇ ◇ ◇

 

 異世界に飛ばされたヴォルケンクラッツァーは、浮かぶのもやっとという体でありながら、重力砲を再び稼働させる。

 

 周囲には雪が降り、山のような大きさの流氷が流れてくる極寒の海域。そんな場所で戦闘状態に移行するのは、目の前に自身と同じような存在がいるのを確認しての事。

 

 空を無数の艦載機がジェットエンジンを響かせて飛び回り、多数の艦艇に対艦ミサイルを放ち。時には迎撃にミサイルを放つような空の下。

 

 立ちはだかるのは左右に巨大なアングルドデッキを持ち、中央から艦首にかけても巨大な航空甲板を持つ超巨大な航空戦艦だ。自身と同じように艦橋周辺に、それ相応の主砲をもっており、こちらに向けて砲塔がゆっくりと指向していくのが観測できる。

 

 超巨大航空戦艦テュランヌス出現! 超巨大戦艦ヴォルケンクラッツァー出現!

 

 そして、どちらかともなく主砲が放たれ、巨大な黒い球体がテュランヌスを飲み込み。無数のジェット艦載機の飽和爆撃がヴォルケンクラッツァーを襲うなか。

 

 それでも沈みきれない二隻は船体を再構成しながら、昼夜問わずに戦い続ける。互いに戦い続けることこそが、己の存在意義を果たすことになると知っているが故に。

 

 どちらが勝ったのか、その結末を知る者はいない。

 

 ただ、無数の目玉がそれを静かに見ていただけだった。

 




先に謝っておく。完全に更新が途絶えたらごめんと。
ちょっと調子が悪くて……

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