周回プレイヤージョーカー君   作:文明監視官1966

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目に映ったシャドウは例外なく轢き殺す、どうも駄文の悪魔です。

いつも感想、誤字修正ありがとうございます!バットエンドではラスボスの悪神を受け入れるエンドが一番好きだけどトラウマな私です。あのジョーカーの悪い笑みとねじ曲がった現実が胸糞悪くて良かったです。二度と見たくねぇけどな!!

丸喜エンドの虚無感は凄かったけど悪神エンドには勝てないっすね。あれはホントにキツかった。

話変わるけど丸喜エンドって個人的にはバットエンドの中のバットエンドって感じしますね。ジョーカーが今までの全てを捨てて虚構を選ぶの、P5においては最悪の決断だと思うんすよ。でもそれを切り捨てると今度は人々から虚構とはいえ幸福を奪う事になる。グッドでもバットでも無い、正しく『トゥルーエンド』ですよね。

でもきっとジョーカーはそれを選ぶんですよ。悲しいね、でも嬉しいね。けれど虚しいね。

つーわけで今回もノリで作って展開をマキマさんです。ペルソナ5最高と言いなさい。マキマキィ〜!


A beautiful rose has thorns!/Part2

我は汝・・・汝は・・・

汝、ここにたなる契りを得たり

 

契りは

囚われをらんとする反逆の翼なり

 

我、「愚者」のペルソナの誕に祝福の風を得たり

へと至る、更なる力とならん・・・

 

 

 

 

COOPEARTION:『イゴール』

 

 

ARCANA:『愚者』 RANK.1☆

 

 

 

 

 

不機嫌なままイゴールと契約し、帰り際にカロリーヌとジュスティーヌに約束のチョコレートを渡してベルベットルームから帰還した蓮。ブスーッとしながら起き上がって着替えると下に降りて定番のパパッと掃除してから朝食を作り始める。

 

今日は新鮮なレタスにハム、卵を挟んだシンプルなサンドイッチだ。ついでに残っていたプチトマトもつけている。なんともヘルシーな朝食だ。気分は英国人、何となく心が踊る。

 

もしゃもしゃと食べていると惣治郎がやって来て開店準備をしていく。二人でゆったりと朝のニュースを見ながらコーヒーを飲み、またもや内なる宇宙(コスモ)へと旅立った蓮は暫く幸せなひと時を過ごし、登校時間になると歯を磨いて爽やかにルブランを出発した。

 

因みに今回の豆はエメラルドマウンテンであった。

 

 

 

──────────

 

 

 

『説明しよう!』

 

 

コロンビア産 エメラルドマウンテンとは!

 

国土の約半分が山岳地帯のコロンビアでは、山脈の急斜面がコーヒーの栽培地となり、高い生産力の礎となっているのだ!

 

エメラルドマウンテンはみんな思っている通り宝石のエメラルドからその名を付けられたぞ!選び抜かれた豆に相応しいブランド名だ!

 

酸味・苦味・甘みのバランスが良く、鮮明なコクとまろやかな口当たりが魅力な豆なのだ!!

 

 

 

──────────

 

 

(ブルーマウンテンとはまた違うコクに匂い・・・やはり惣治郎さんの淹れるコーヒーは最高だ・・・)

 

今朝の不機嫌はどこへやら、恍惚な表情を浮かべながら歩く蓮。鼻歌を歌いそうな勢いで歩いていると途中で竜司と偶然会ったので一緒に登校した。小声で今日の作戦の事を話し合ってから学校に着くとまた後でとそれぞれの教室へ向かった。

 

特に言うことも無いほど直ぐに午前の授業が終わり、昼休みを迎えると午後からは球技大会が始まった。生徒がジャージに着替えて体育館へと向かう。蓮も勿論ジャージに着替え前を開きポケットに手を突っ込む威圧感たっぷりスタイルで教室を出るとこれまた奇遇に竜司と鉢合わせ一緒に体育館に行った。

 

体育館の中にはバレーのネットが張られクラス対抗で競い合っていた。きょろきょろと中を見渡すと他の教師達と話しながら生徒達のバレーを見ている鴨志田の姿もあった。この球技大会の顔みたいなものなのだから当たり前だろう。視線に気づいたのかこっちに目を向けてきたのでふっと目を逸らし、変に声をかけられても面倒なので睨み返そうとしていた竜司の襟首を掴んで引き摺って体育館の隅に座った。

 

「あーあ、だりぃ。帰りてー。球技大会なんかやりなくねーっつーの。どうせ鴨志田の野郎の自慢大会だろ?ならまだ授業やってた方がいいぜ。寝れるし。」

 

「意外だな、竜司はこの手の運動は好きだと思ってた」

 

「まぁ嫌いじゃねぇけどよぉ、チーム戦とかだと運動神経良くても俺は浮くしな。問題児の辛いとこだぜ。」

 

「言えてる」

 

竜司もやはりクラスでは孤立している為こういった団体競技には苦手意識・・・と言うよりかは面倒に感じるのだろう。蓮も同じような思いなので理解出来た。それはそれとして楽しむ気なのが蓮なのだが。

 

そんなこんなで適当に駄べりながら時間を潰していると蓮のクラスに順番が回ってきてルールである『全員1回は参加する事』、というボッチ特攻によって強制的にコートへ出ることになった。別にその事への不満はないがやはり他のクラスメイト達はわざとらしく距離を取り蓮をチラチラ見ている。

 

いくらなんでもビビりすぎだろう、借りてきた猫の方がまだマシだぞと転校初日に威圧感で縮こませた本人がそう考える。正直、自業自得です。

 

対して対抗チームはなんと教師チーム。運動の出来るそこそこ若い方で固められ、しかも鴨志田がいるチームだ。生徒達相手だと言うのにこのガチデッキ、大人気ないとしか言いようがない。どんだけ良いとこ見せたい&負けたくないのだろうか。作り笑顔が凄まじく腹が立つ。

 

「試合開始!」

 

審判役の生徒の声で試合が始まり、こっちが側からのサーブでスタート。教師陣があからさまに手加減してちょっとの間続くボールの応酬。現在左後ろにいる蓮は適当に後ろにきたボールを拾いながら様子を見ていると鴨志田が早速行動を起こしてきた。

 

蓮の顔面に放たれる高速のスパイク。素人では反応も出来ないそれにしかし普段からこれよりも速い即死攻撃のオンパレードを受けていた蓮にとって全く驚異にならない。無表情でシレッとレシーブで返して痛がることも無い。ムキになった鴨志田に何回も狙われるが尽く返された。

 

ここで蓮を潰そうと全力を出そうと考えた鴨志田だがそれをすると流石に大人気なさ過ぎて生徒からの評判に関わると考え、仕方なしに標的を変更。鴨志田の標的に選ばれた哀れな生贄は蓮と同じチームだったバレー部員の地味マン三島であった。

 

顔を歪めた鴨志田を見ていつも練習を受けている三島は何をされるか察したのか体を強ばらせる。そして恐怖の余りに棒立ち状態の三島に鴨志田は容赦なくスパイクを叩き込んだ。故意に狙われた球は高速回転しながら三島の顔面へと吸い寄せられる。

 

「うっ・・・!・・・・・・あれ?」

 

せめてこれから来る衝撃に耐えようとキュッと目を瞑った三島だったが、彼の顔に衝撃が走ることは無かった。いつもは激痛を知らせるだけの耳を塞ぎたくなるような生々しい音が体育館に響き渡ったというのにだ。三島は不思議に思い、閉じていた目を恐る恐るゆっくりと開く。するとそこには衝撃的な光景があった。

 

「・・・・・・。」

 

なんとあの悪い意味で話題の青年、蓮が三島の前に庇うように立ちその左手で鴨志田の放った豪速球を弾いていたのだ。あの威力の球を止めるとは凄まじいパワーである。だが、その代償は決して軽いものでは無かった。

 

あの豪速球を弾いた手を見ると真っ赤に腫れ上がり、酷い内出血を起こしているのが見えた。とても先程まで血色のいい健康な手だったとは思えないほどグロテスクになってしまっている。それを見て三島はサッと一気に血の気が引いていくのを感じた。あれを顔面に受けていたらと思うと酷く恐怖したからだ。しかし同時になぜ彼は自分を庇ったのかという疑問が湧いた。

 

チラリと三島は蓮の顔を見ると彼は全く意に介した様子も無く痛がる素振りすら見せない。腫れた手を確認するようにグッパッと握ったり開いたりながらスパイクを放った鴨志田をジッと見るだけである。

 

緊張感が支配し、シンッと静まり返った体育館。そんな静寂を破ったのもまた蓮であった。鴨志田から目を外した蓮は振り返ると呆然としている三島に声をかけたのだ。

 

「怪我は無いか」

 

「えっあっ!う、うん・・・大、丈夫・・・」

 

「そうか、良かった」

 

ただそれだけ言ってずっと昔から友として絆を深めていた青年に微笑みを向けると「保健室に行ってきます」とだけ言って体育館を出ていってしまった。勿論竜司もそれを追って鴨志田を一睨みしてから体育館を出る。本来なら教師陣も動かなければならない場だったというのに唖然として去っていく蓮の背中を見る事しか出来なかった。完全に教師としてのプライドに傷がついた訳だ。

 

それに気がついた鴨志田は射殺さんばかりに蓮の背中を睨んだが生徒達に囲まれている事を思い出し慌てて三島に駆け寄り「大丈夫だったか?」と手遅れのいい教師ムーブをした。何ともまぁ滑稽な姿であった。

 

 

「おい蓮!大丈夫なのかその手!めちゃくちゃ腫れてんぞ!」

 

「問題無い、かすり傷だ」

 

体育館から出てきた2人は自動販売機のある中庭の休憩所に来た。蓮は何ともないように淡々と言うとどこに隠し持っていたのか包帯を取り出して腫れた手をグルグル巻きにして目立たないように隠す。そんな彼に竜司は心配しながらも呆れた目を向けた。

 

「いやかすり傷て・・・そうは見えねぇぞ」

 

「そんな事よりも、これで動き易くなったんだ。早速バレー部の人達に話を聞きに行こう。」

 

「お前まさかそれ狙いで・・・いや、そうだな!折角お前が体張ってくれたんだ、グズグズしてる暇ねぇよな!」

 

そう言って顔を合わせ頷いた彼らは作り出した機会を無駄にしないよう城の中で奴隷として扱われていた生徒達の所へ行き話の聞き出しを開始した。

 

竜司の記憶を頼りにまずは蓮と同じDクラスのバレー部の元へ行くと直ぐに見た顔のボロボロの生徒を見つけた為、早速話しかけるとビクッと肩を震わせて酷く怯えながら振り返る。

 

「な、なにか・・・ひっ!?」

 

その直後、小さな悲鳴。無理もない、彼の前にはこの学校の問題児2人が威圧感たっぷりに佇んでいるのだから。きっと彼の目には目を鋭く光らせた猛獣が2匹、牙を剥き出しにして威嚇しているように見えているだろう。荒い息を吐き、今にも喰らいつきそうな獣にバレー部の生徒はガクガクとマッサージ機のように凄まじい微振動で震えてる。膝も波のように揺れている。今にも気絶しそうだ。

 

「君、バレー部・・・だよね?」

 

「なぁ・・・少し、話聞かせてくれねぇかァ・・・?」

 

「あ・・・あ・・・」

 

絶望感の余りにドラゴンボールの様なリアクションをとるバレー部の生徒。そんな彼に2人は北斗の拳のタッチに似た顔になりながら彼を見下ろしている。可哀想。

 

「バレー部の体罰について・・・さ」

 

「た、体罰・・・」

 

その話を口に出した瞬間、今度は違うものに怯え始めパクパクと金魚のように開閉していた口を噤み、何も喋らないと表現するように固く口を閉じてしまった。ふるふると首を横に力無く振って拒絶の意思を示している。ガタガタと心底に根付いた恐怖で蓮達ではない何かを見ている。それはきっと・・・。

 

「おい、黙ってないで何か・・・」

 

「竜司、よそう」

 

これ以上脅し・・・話を聞いても何も喋らないだろうと判断した蓮は竜司に次へ行こうと肩に手を置き声をかける。竜司も押し黙ってしまった生徒を見てこれ以上は無意味だと感じたのか震えている彼の肩に手を置いて「悪かった」と言ってから教室を後にした。

 

どうやら鴨志田の体罰による闇は蓮達が思っているよりも深く根強く彼らの心に巣食っているらしい。恐怖という鎖で雁字搦めにされていることを理解した。

 

それからも二手に分かれて同じように上級生下級生問わず話を聞きに行くも尽く失敗、その全てが最初こそ蓮達に怯えていたが『体罰』というワードを聞いた途端に今度は鴨志田の事で怯え始めとても話を聞ける状態では無かった。途中で新聞部の女子生徒に話を聞くも収穫はなく敢え無く時間切れとなった。

 

 

スマホでお互いの状況を確認し合い、再び休憩所に集まることとなった蓮は一足先にそこに着き喋って乾いた喉を潤すため買ったジュースを飲んでいる。

 

するとそんな彼に話しかける物好きなある人物がいた。

 

モフモフの金髪にクォーターゆえの青眼、端正な顔立ち。そう高巻杏である。

 

「・・・ちょっといい?」

 

「高巻さん、何か用?」

 

「すぐ済むから・・・てか、あんたなんなの?こないだの遅刻も嘘だし。妙な噂、あるし」

 

腕を組んでそう聞いてくる彼女は警戒しながら蓮の事を睨んでいる。噂の内容と不可解な行動で変に警戒心を持たれているようだ。この頃のツンケンしてる彼女もちょっとしか期間が無いから何度見ても新鮮に感じるなぁと心の中で考えていると曲がり角から竜司がやってきた。

 

「そいつになんか用かよ」

 

「坂本・・・そっちこそ、クラス違うじゃん」

 

「たまたま知り合ったんだよ、そんで何か用でもあんのか」

 

強気な杏にやや気怠そうに頭をかきながら再度質問をする竜司。すると杏は少しむっとしながらも腕を組み替え姿勢を崩して竜司に質問を投げかけた。

 

「・・・鴨志田先生に何するつもり?」

 

「はぁ?・・・あぁそうか、お前鴨志田と仲良かったもんな」

 

「ッ!坂本には関係無くない!?」

 

一気に険悪になる2人、お互いの事情を知らない同士ギスギスした空間が広がるが蓮は慌てもせず何食わぬ顔でジュースを飲んでいる。ツマミにすな。

 

「アイツの裏の顔見りゃお前も・・・いや、かんけーねーか」

 

「裏?それ・・・なに?」

 

「・・・言ったってわかんねーよ、もういいだろ」

 

そう冷たく突き放して竜司は杏の横を通り過ぎて蓮の隣へ近づく。そんな彼に一瞬複雑な顔をした後に鋭い目を向けた杏は2人に忠告をした。

 

「あんた達の事、もう噂になってるから。何しようとしたって皆協力してくれないし。」

 

「・・・・・・。」

 

「一応・・・忠告。それだけ。」

 

一見、厳しい現実を突きつけているだけのように聞こえるこの言葉だがこれは今の彼女が出来る精一杯の優しさからくる言葉なのだ。精神的に疲れているにも関わらず蓮達のこれからの立場を危惧してという事を汲み取れるようになったのはいつ頃だったか。蓮はそう考えながら去ろうとする杏の背中にそんな現実に逆らう意志を示した。

 

「例え周囲が力を貸してくれなくても、その全てが俺達を迫害しようとも、俺達は自分が正しいと思う道を歩んで行く。忠告感謝するよ・・・高巻さん。」

 

強く強く、意志を込めたその言葉を聞いた杏は一度立ち止まり下を向いて拳を震わせたが直ぐに早足でこの場を去ってしまった。そんな彼女の背中を見送ると目を後ろに向けてこっそり見ていた竜司はため息を吐いた。

 

「相変わらず気の強え女・・・」

 

「知り合い?」

 

蓮が買っておいた新品ジュースを渡すと竜司はサンキュと礼を言いながら一気に飲み込んだ。

 

「まぁ、中学が一緒だってだけだ・・・てかそんな話よりもだ、こっちは全然ダメだったわ。そっちはどうだった?」

 

「報告通り・・・というのは嘘で新しい情報をゲットした」

 

「マジで!!教えてくれ!」

 

収穫があったことに喜びを隠せず蓮に詰め寄る竜司。勢いが良すぎて飲んだばかりのジュースが礫となり蓮の顔にかかる。明らかに不快そうにしながら竜司の顔を掴んで引き離すと顔を拭きながら説明し始めた。

 

「俺と同じクラスでバレーで庇った三島がいるだろう、彼は何やら特別な指導を受けているらしい。それが何を意味するのか・・・想像に容易いな」

 

「あいつか・・・そういやいつも怪我してたな。うし、帰っちまう前に話聞きに行こうぜ」

 

そうと決まればすぐに行動に移った。球技大会は既に終わっている為、このままだと帰ってしまうかもしれないと早速2人は三島を探しに行き丁度正面玄関に差し掛かった時に帰ろうとしていた三島をギリギリで見つけ出しダッシュで近づいて背後から話しかけた。

 

「いたァ!ちょっと待った!」

 

「三島、少しいいか?」

 

「え、うぇ!?あ、雨宮!?それに坂本!」

 

最初に話しかけたバレー部生徒と同じように2人に話しかけられたことで恐縮し、逃げようとするも固まった足が言うことを聞かず結局2人に捕まってしまった。

 

子供のように涙を浮かべながら震える三島にまたかと竜司はうんざりした顔をしながら三島に体罰についての話を持ちかけた。

 

「そんな怯えんなよ・・・取って食おうって訳じゃねぇんだから。」

 

「う・・・うん・・・はい」

 

わざわざ敬語に言い直すほど怯えきっている三島。蓮はそんな彼を見て何となく最近話題になったモルモットが車になっている番組を思い出していた。可愛いよね、あれ。

 

「単刀直入に聞くぜ、お前鴨志田に『指導』されてんだろ?それって体罰なんじゃねぇのか?」

 

やはりというか当然というか、その質問をした瞬間から怯えが恐怖に塗り替えられ目に見えて別のものに警戒するように周りをバッと見渡してから無理のある否定を口にする。

 

「ち、違いますよ!」

 

「なんで敬語なんだよ・・・今日だって球ァ当てられそうになってたろ。体も傷だらけだし、無理あんぜ」

 

確かに竜司の言っていた通り、三島の体はよく見なくても傷だらけであった。腕に包帯を巻き、青アザが目立ちシャツから覗く首元にはガーゼや絆創膏などが見え隠れしている。顔の方もよく見れば血が滲みカサブタが多い。これは行き過ぎた体罰が行われているのは決定的だろうと竜司は確信した。

 

「これは、練習で・・・」

 

「練習、ねぇ・・・それだけでそんななるかふつー。もしかして口止めされてんのか」

 

「そ、それは・・・」

 

聞かれたくないところを的確につかれた為しどろもどろしている三島。こんなに動揺しているを見て最早前置きも必要ないだろうと判断した竜司は鴨志田の体罰について切り出そうとした所でそれを遮る者がいた。

 

「三島、竜司、一旦外に出るぞ」

 

なんと意外な事にそれは蓮であった。本来ならここにキモ顎(鴨志田)が来て三島が捕まる流れなのだがわざわざ怪我しに行く友人を見捨てることも出来ない為、有無を言わさずに2人を引っ張り鴨志田に見つからないように玄関を出てすぐ横の壁に隠れる。別にここで鴨志田に見つからなくても後の流れに影響は特に無いし改変しても問題は無いだろう。

 

蓮の考え通りその数秒後には廊下の先から鴨志田が湧いて出てきて先程まで蓮達がいた玄関前を通って行った。それを壁から覗いて見ていた竜司(と、こっそり三島)は鉢合わせなかった事にホッと息を吐いた。

 

「あっぶねー・・・もう少しあそこにいたら野郎に見つかってたぜ」

 

「何となく嫌な予感がして咄嗟に隠れて正解だった」

 

「そ、そうだね・・・」

 

そうして廊下の先に消えていくモンスター(鴨志田)を見送る三馬鹿組。脅威が去った事で力が抜け地面にへたり込む三島。そんな彼の肩に手をやって蓮は出来る限り優しく声をかけた。

 

「三島、バレない内に今日は帰れ。」

 

「・・・・・・うん」

 

鴨志田による体罰で身も心もボロボロの彼を労わっての言葉だった。このまま部活に行かせるのは気が引ける。そんな蓮の意図を汲み取ったのか三島は素直に頷く。久しぶりに人の暖かさに触れたからというのも大きいだろう。

 

2度も蓮に助けられている三島は彼に対して自らが犯した罪に内心で強い罪悪感に苛まれながら、しかしそれを口にする事の出来ない卑怯な自分に苛立ちを感しながら三島はトボトボと帰って行った。それを知っている蓮はけれども言葉は投げかけ無かった。いっぱいいっぱいの彼は今はそっとしておいた方がいいだろう。

 

「・・・って、結局話聞けてねぇし」

 

「まぁ仕方ないさ、あの状態で聞いてもマトモな情報は得られないだろう。」

 

「まーそうだよな・・・仕方ねぇ。他の奴らにもっかい話を聞きに行くしかねーけど、今日は一旦帰るか。どうせこの後直ぐ聞きに行っても誰も話聞いてくんねぇだろうしな。」

 

三島の背中を見ながらボリボリと頭をかいて竜司は今日の調査を諦めることにした。賢明な判断だ。彼の言う通り2度訪れても口は割らず寧ろ更に固く黙秘するだろうから。

 

これ以上の収穫は望めないと判断すると仕方なく2人は荷物を揃えて大人しく帰宅した。途中、駅でチラシを取るために少し寄り道したがその後は真っ直ぐに帰った。

 

ルブランに帰ると夕飯を食い、風呂に入った蓮は早めに二階の自室に上がると自身の荷物から長年使い続けた道具を取り出す。そして明日からのパレス攻略に使用するにあたって問題は無いか一つ一つチェックしながら整理していく。

 

次の潜入に備えて、必要な物を揃えて並べる。

 

「キーピック、各種装備品、使用可能スキルカード・・・」

 

机の上に何年、何十年・・・いや、最早数など問題ではない。最初期からこれまでずっとお世話になってきた道具達を置いて手に取って丁寧に確認していく。傷だらけの万能の永久キーピックを見て少しだけ感傷に浸る。

 

思えばこいつとも長い付き合いだ、もしかして自分の恋人はこのキーピックなんじゃないかと意味不明な事を考え始める蓮。ちょっと何言ってるか分からない。これがジョーカーのジョーク、略して『ジョーク』である(ブフダイン)何も上手く無いしつまらないので忘れて欲しい。

 

大丈夫だと目視で確認するとポンポンと投げていたキーピックを掴んでカバンの中へ入れた。

 

各メンバーの装備品も問題なさそうだ。と言っても最初から強力な物を使う気は無い。どうせ使っても使いこなせず増した力に振り回されるだけだ。それに何でこんなもの持っているのかと疑われるのは勘弁だ。面倒だし。

 

強い力は強い意志と実力を持ってようやく扱えるのだ。それは蓮が1番よく知っている。だから武器の威力や防具の頑強さなどはレベルに合わせた装備を出してある。まぁだからといって最初の段階で使う気も無い。フラグを回収して少ししたら使い始めるつもりだ。確認が済んだら一度荷物の中へ戻す。あ、貼る気功各種(シップ)だけは持っておこう。

 

次にスキルカード。大体のカードは揃えてある、数もそこそこある。これならスキル構成も楽に済むだろう。何年もかけて複製し続けて貰った甲斐があった。種類ごとに並べていたそれをマジシャンのように纏めて回収するとトントンと最後に綺麗に揃えてカバンの中へしまう。

 

それらを整理したら次に回復アイテムなどの消費アイテムの確認に入る。

 

「ふむ、魔石、ナオール錠、宝玉、ソウルドロップ、etcetc・・・。」

 

本来なら失われるはずのアイテム。しかしどういう訳か何時しかそのアイテム達も少数は手に残るようになっている。今現在手元にある体力回復とSP回復アイテム、それに状態異常回復など、数こそ少ないが充分だ。これだけあればもしもの事があっても対処しきれる。

 

これも問題ないと確認し、取り出しやすいように袋に纏めて何個か入れておく。残りは荷物の中へ。

 

後はドロン玉や気配消臭剤、カエレールなどのアイテムも確認し何個か袋に詰め込む。そしてその袋は机の上に置いておく。

 

最後にミゼリコルデとR.I.ピストルの調整を済ませて潜入の準備を終わらせる。カバンを机に置いて伸びをすると電気を消してベットに倒れ込んだ。

 

「・・・・・・出来るだけ大筋からは離れず、か。」

 

蓮は()()()()()()()()()について考え、ため息を吐いた。自分で言ったことを直ぐに破ることになるかもしれないとは、いやはや難儀というものだ。そもそも大筋から外れなければならぬ事が多すぎる。果たしてこの調子で正しいエンディングまで辿り着けるのだろうかと不安を覚える。

 

「・・・・・・ま、なるようになるか」

 

最後には無理矢理ポジティブに締めて思考をそこで区切り、毛布を被る。

 

>ピロン

 

と、そこで丁度竜司からメッセージが届いた。あぁ、そういえばそうだったと思いながらスマホを取って返信する。

 

>『起きてるか?』

 

『あぁ』<

 

>『気づいたことがあんだけどさ、バレー部の体罰って校長も親も知ってんだよな?』

 

>『ならなんで誰も何も言わねぇんだ?』

 

『バレー部という象徴を失わない為、そしてその上に立つ鴨志田を失わない為だろうな。』<

 

『残念な事にバレー部は秀尽の顔だ。鴨志田がいなくなればその顔に傷が付く、それを恐れているんだろう』<

 

>『そういう事だよな・・・どいつもこいつも腐ってるぜ!体罰だぞ!皆傷ついてんだぞ!なのに我慢するしかねぇなんて・・・!』

 

>『高巻はいいな、呑気でよ・・・』

 

『彼女も彼女で悩んでる、気がする』<

 

>『どーだろうな・・・とにかく、このままじゃ終われねぇ』

 

>『明日の休み時間使ってもっかい情報持ってる奴探してみようぜ』

 

『諦めきれないしな』<

 

>『ああ!!頼むぜ蓮!!』

 

 

メッセージのやり取りが終わると蓮は再びスマホを置き、あの時の杏の苦悩した顔を思い浮かべる。彼女と、そして()()()()()の為にも最善の明日を取ろう。

 

そう考え、そのまま目を閉じ意識を暗闇に沈めていった。

 

 




本当は杏の下りまでいこうとしたんですけど長くなったので分けました。

唐突ですけどどっかで番外編やりたいですね。ぶっ壊れたジョーカーとかやってみたい。つってもアイデアあんまり無いのでこういうのが見たいとかあったら感想にお願いします。いいなと思ったら作ってみたいっす。

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