周回プレイヤージョーカー君   作:文明監視官1966

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うぉぉぉぉぉぉぉ!更新うぉぉぉぉぉぉぉ!

皆様、季節の変わり目ですが如何お過ごしでしょうか。春になると変態が活発になると聞きます。皆様もお気をつけください。それはそれとして最近イヤに元気が有り余ってるんですけどなんでですかね?(旬の時期)

ビックバンバーガーのチャレンジの時の店員さんの声って上田瞳さんですか??教えて有識者!

それでは今回もまきまき禪院真希!


The PHANTOM

 

「ええと・・・その、大丈夫かしら?」

 

「大丈夫です、衝撃は逃がしました」

 

「そうは見えないけど・・・・・・」

 

額にたんこぶを作りながら少し傾きがある椅子を直している蓮。そんな彼にやや困惑していた冴だったが、持ち前のクールさと切り替えの速さで冷静さを取り戻し、惣治郎に注文をする。

 

「ブレンド1つ」

 

「あいよ」

 

「ブレンド一丁ぉぉ!!」

 

「居酒屋か!」

 

「へべれけッ!?」

 

惣治郎の返事にちょっと合いの手を入れたら孫の手が飛んできたでござる。そのまま蓮の額にクリーンヒットし、たんこぶを二重にした蓮はまた椅子修理に戻った。そんな彼に心配そうに汗をかきながらやや引き気味な冴に蓮はそういえばと話題を振った。

 

「あ、そういえばお姉さんあの明智君と一緒にいましたよね?あの後どうでした?」

 

「え?・・・・・・ああ、貴方どこかで見た事があると思ったらあの時の・・・。」

 

その話を聞いた事で蓮に一度会っている事を思い出した冴は、店に入ってから感じていた既視感に気が付いた。取るに足らない出来事だったが、彼女は蓮がやけに()()()()()()()を覚えていたのだ。

 

検察官という職業柄、常人よりもよく人を見ている彼女はその観察眼、或いは勘で彼に微かな違和感を感じていた。見た目や纏っている雰囲気はまるで一般人、だが、行動の節々に感じる洗礼された所作。そしてこちらを逆に一瞬で隅々まで観察するその目。

 

とてもでは無いが一般人とは思えないそれらは、直ぐに彼の素朴な雰囲気の中に溶けていった。彼と相対していた明智は他の事に気を取られ気付いていなかったようだが、彼女は確かにそう感じたのだ。

 

「まさかこんな所で再会するなんてね」

 

そのことを思い出してから、冴の目付きがやや鋭くなり蓮は小首を傾げる。

 

「明智君なら特に気にしてなかったわよ。仕事の途中だったからそんなこと直ぐに忘れてたわ。」

 

「そうですか、いやあのハンカチ高そうだったから。何だか気になっちゃって。あ、サイン貰っとけば良かったかな。」

 

そう言ってははっと笑いつつ椅子をイジる蓮。そんな特に普通の少年と言った感じの彼の一挙手一投足を見逃さないように観察している冴は耳に流れ込んでくるニュースにふと顔を上げた。

 

『続いてのニュースです。先日、地下鉄で起きた列車暴走事故は未だに原因が解明されておらず、多発している精神暴走の関与と併せ、警察は事件の究明をいそいでいます。』

 

「ああ、今話題になってるやつか」

 

「・・・これ気になりません?普通に暮らしてた人がある日急に乱心したり錯乱状態に。それも立て続けに・・・偶然かしら。」

 

「どうかねぇ」

 

ニュースを見て、精神暴走に懐疑心を持っている冴は顎に手をやってそう語る。確かに、今まで悪に傾向していた訳でもないただの一般人が特に理由も無くいきなり暴れるなんて普通に考えて意味不明だ。

 

ただの精神鑑定なんかじゃ解析できないだろう。それこそ、自分達怪盗と同じように『心をイジれる異世界に行ける人間』でもない限り。

 

まぁ、犯人は既に知ってるのだが現時点で彼女に伝えても疑いをかけられるだけなので放置でいいだろう。今はせいぜい泳いでるといいさ。

 

「それにしても、アルバイトなんて余裕あるんですねここ。」

 

「いや、そういう訳じゃ」

 

なにか含みのある言い方にやや狼狽える惣治郎。それを無視して彼女は蓮に話しかける。勿論、観察も忘れずに。

 

「貴方、大学生?」

 

「現役バリバリの高校生です」

 

「え?高校生?そ、そう・・・学校は?」

 

「秀尽です、今話題の」

 

見た目が大人びていたからか大学生かと思っていた冴はほんの少し動揺したが、そういえば会った時も制服を着てたなとらしくないミスに内心ため息を吐きながら聞き覚えのありまくる高校の名前に反応する。

 

「へぇ・・・知り合いもそこに通ってるわ。今大変よね。」

 

「ええ、まぁ。突然な事で皆困惑してますよ。」

 

「鴨志田って教師、人が変わったように自分の罪を告白したんですってね。それもある日突然・・・人間の心理状態ってそう簡単に変わるものかしら」

 

そう言うとまた顎に手を当てて自分の思考の海に入り込む。どうやら彼女の癖のようだ。

 

「ねぇ、貴方何か知らない?どんな小さな事でもいいの。」

 

「おいおい、あんま踏み込むもんじゃねぇだろ。」

 

「精神暴走と少しでも接点があるなら疑ってかかる、当然の事では?」

 

「相手は子供だろ」

 

「だからなんです?解決の糸口をみすみす見逃せと?」

 

なんかほっといたら勝手に口論が始まった2人。やめて!私の為に争わないで!と無駄に瞳を潤ませながらヒロインぶって間に挟まると2人はアホらしくなったのかスン、と大人しくなった。もっと可愛くやれば良かったか?と斜め上な反省をしている蓮にどうなの!?と言うような目線を送る冴。

 

「うーん、俺も多少関わったけどそれ以上の接点は無かったですし。寧ろビックリと言うか。」

 

椅子をピカピカに拭きながらシレーっとそう答える。嘘はついてないよ嘘は。ただホントのことに混ぜてるだけだから*1

 

それを聞くと冴は「そう・・・」と興味が無くなったように蓮から目を逸らし、また顎に手をやって考え込む。まぁ大きなヒントを得たかと思えばこんな曖昧な言葉を聞かされれば落胆も大きいだろう。ごめんね、どうせ後であの部屋で全部バレるしええやろ(鼻ほじ)

 

「お待ちどう」

 

「・・・・・・ありがとうございます」

 

そんな彼女に惣治郎がブレンドコーヒーを差し出す。暖かな湯気を出す大人の友を一瞥すると思考を止めて静かに飲み始めた。やはりコーヒーブレイクに余計な思考は不要。風味と雰囲気を全力で楽しむべき。

 

という訳で、自分も休憩がてらコーヒーを頂こうと綺麗になった椅子に座ってキリッと格好付けて注文する。

 

「マスター、何時もの」

 

「働けアホ」

 

 

ひーん

 

 

 

その後、コーヒーを楽しんだ冴は直ぐに会計をして帰ってしまった。仕事が忙しいのは分かるがもう少しゆっくりして行けばいいのに、と上品に牛乳を飲んでると惣治郎にコブラツイストを食らったので真面目に手伝って今日は終了。

 

次の日、気合いの入った服装で惣治郎に出かける事を伝えると(こいつ、まさかデートか・・・?へっ、やるじゃねぇか)と変に勘違いした惣治郎に暖かく見送られ、引き止められることなく出掛けることが出来た。

 

 

 

そうしてやってきたのは渋谷にあるビュッフェ会場である。お値段なんと4人1時間で約4万円。つまるところ1人約1万円だ。正確にはランチで8000円だけど。サイゼで良くない?*2ちなみにはみ出た1万は蓮が自費で出しました。金ならある(富豪並感)

 

だが、その高さも納得の料理の質がある。普段食べられないお高い料理がズラリだ。まぁ俺ならなんなく再現出来るけどと鼻息をふんすと吐きながら1人胸を張る蓮。

 

そんな彼を無視して解き放たれた犬のように料理へと一目散に駆けていく竜司と杏はせっせと食べたいものを詰むと空いている席に座って黙々と食べ始めた。

 

「いや早っ・・・バーゲンセールのおばちゃんかよ」

 

「余程楽しみだったんだな・・・」

 

「あ、あはは・・・・・・」

 

珍しくモルガナと2人で呆れた目を向ける蓮。流石の鈴井も空笑いだ。そんな彼らもとりあえず皿に料理を乗せ、席に着く。勿論、モルガナの分もよそって。

 

「何言ってんの!1時間しかないんだよ!ノルマまで食べ尽くさなきゃ!ほら、志帆も食べよ!」

 

「だからってスイーツばかりは・・・・・・」

 

「そーだそーだ、太んぞ?あ、この肉うんめェ・・・!」

 

「うっさい!!その分走るからいーの!!」

 

「杏、ほどほどにね・・・?」

 

話をしつつも竜司は肉汁の海に溺れながら、杏は甘みの波に呑まれながらバクバクと食い進める。頬を緩めて心底幸せそうにしている2人に何よりだと思いながらモルガナにご飯を食べさせる。こちらも幸せそうにしていた。

 

(さて、この後はあの()()に会うことになるがさてさて・・・今度はどんな嫌がらせしてやろうかな)

 

ヒョイヒョイとモルガナにご飯をあげながら悪い顔で考える。前は何だったか・・・そう、降りようとしてる時にボタン連打してやったんだ。開閉を繰り返す向こうでイラついてるハゲの顔は傑作だったな。

 

その前は突き飛ばそうとしてきた付き添いの男を強靭な体幹で逆にはね飛ばしてハゲをピンボールのように突っ飛ばしたりしたっけ。

 

後は顔にクリームぶつけたり、頭からワインを被せてやったり、ビール瓶をハゲに叩きつけたり・・・・・・やっぱ1番はズボン降ろした上できん玉蹴り大会を開いた事かな。周りの付き添いもノリノリで蹴ってたもん。相当鬱憤が溜まってたんだろう。

 

今回はどうするか、シンプルに罵倒してみるか?あんま派手な事はしたくないし。よし、最高にキレキレなものを用意しておこう。くく、面食らうハゲの顔が楽しみで仕方ないぜ。

 

ニヤニヤしてると蓮の手に猫の手がポンポンと乗せられる。

 

「ん?」

 

「おい、料理が無くなっちまった。取りに行こうぜ!吾輩魚料理がいい!」

 

「あぁ、そうか。うん、行こう。」

 

悪事を考えてたらいつの間にか料理をモルガナが食い尽くしてしまったらしい。キラキラと目を輝かせるモルガナを満足させる為に料理を取りに行くことにした。その際に2人を見ると何故か最初よりも量が増えている。いつの間におかわりしたの・・・?

 

さて、2人を鈴井に任せて色々と豪華な料理が並んでいるテーブルの前に着くと何を盛ろうか迷い始める。モルガナが。

 

するとたまたま、たまたま近くにいた主婦達やらIT企業の社員やらどっかのハゲの部下やらTV局の社員やら、()()()()()()()()()の会話が耳に入ってくる。皆一様に鴨志田の事件について話をしていたが内容は特に興味が無く、そこに発生する話題性にのみ注目しているらしい。何とも腐った世間話である。

 

綺麗事のように煌びやかな料理の中にいるのが泥のような醜い欲望に塗れた人間達とは、笑えない冗談だ。おーやだやだと思いながら料理を積んでいると視線を感じる。

 

なんだ?と思い周囲を見ると、話をしていた主婦やらIT企業の社員やらが皆蓮を横目に見ている。はて、目立ったことはしてないんだが。そう思っているとまた会話が聞こえてくる。

 

「ねぇ奥さん、見てあそこの・・・・・・」

 

「あら!いいじゃない・・・!」

 

「ん?あのガキ・・・可愛い顔してんじゃねーか」

 

「えぇ・・・(ドン引き)」

 

「ほう、なかなか・・・」

 

「へ、おもしれーガキ」

 

「うほ♂いい男♂」

 

「お前ホモかよォ!!」

 

 

・・・・・・ふっ、どうやらここでも俺は魔性となってしまうらしい。知らず知らずのうちにこの場にいた人達を魅了してしまった蓮はとりあえず主婦達に向けてウィンクをバチコンとかまし、気絶させてから皆の所に戻った。

 

「吾輩が料理見てる間なんか騒がしかったけど、何かあったのか?」

 

「いや、特に何も」

 

ご馳走に夢中だった為、あの会話には気が付いなかったモルガナにまた料理を食べさせ始める。鈴井も一緒にあげ始め、2人でモルガナの世話をしていると竜司と杏が盛り沢山の料理を指摘する。

 

「おいおい、流石に持ってきすぎじゃね?」

 

「食べ切れるの?残すのは行儀悪いよ?竜司、手伝ってあげれば?」

 

The、お前らに言われたくない。その山盛りの肉とケーキはどうなんだ。

 

「いや、ならお前も食えよ」

 

「ごめーん、私もうお腹いっぱーい、力になれなくて凄く残念!」

 

「めちゃくちゃ食ってんだろが!」

 

竜司に処理を押し付けつつ、ケーキをパクパクしている杏に噛み付く竜司。これには流石の鈴井も「杏、めっ!」とお叱りが入り杏の頬を引っ張っている。

 

とはいえ、この量の料理など蓮にとっては腹八分目どころか五分目にもいかないが取りすぎた料理に苦戦する2人が面白いのでわざとペースを落としながら食べていく。

 

「おぶ・・・もう、食えね・・・」

 

「う・・・流石の吾輩も・・・むり・・・」

 

「PON、CRASH CRASH!PAPAPA!!グルメスパイザー!!うんまそォ〜!!」

 

「やめて・・・大声で叫ばないで、出ちまう・・・」

 

「大丈夫?坂本君、お水飲む・・・?」

 

「お、おお。さんきゅ鈴井・・・おぶ。」

 

食い過ぎた為にグロッキーになってる竜司とモルガナの隣で元気いっぱいに一時的にト〇コ並の肩幅になってポータブルなんたらかんたら、縮めてプラゴミをシャコシャコしている蓮。胃袋がトリ〇並にブラックホールな彼の様子に更に吐き気を増加させる竜司。かわいそう(他人事)。

 

「お疲れ様、最後にお口直ししたら?オススメは季節のタルト!グレープフルーツが甘酸っぱくてもう最高!」

 

「今酸っぱい話とかやめろ・・・ヴ、やばい・・・俺、トイレ・・・!」

 

それはさておき、そろそろ2人が限界なので両頬を引っ張られる杏とめっ!してる鈴井に一声かけてからプラゴミをあるべき場所のゴミ箱にCRASHして慎重にトイレへ向かう。

 

嫌味を言ってくる大人?ああ、優しく目を合わせたら何も言わずにそそくさと消えてくれたよ、HAHAHA*3

 

レストランの階のトイレは清掃中だったので上の階までやってきた竜司とモルガナは急いで個室に駆け込み、仲良くキラキラとマーライオンしてスッキリするとまだ突っ張る腹を抱えてエレベーターの前まで戻ってきた。

 

「はぁ・・・マジで危なかったぜ。ギリギリセーフだったわ。」

 

「吐くまで食うとか豪語しててホントに吐くとはな」

 

「おめェもだろが!え〜と、レストラン何階だっけ?」

 

「上がってきたから下の階だろ」

 

「おぉ、そだった」

 

ポチッとな、と声に出しながらエレベーターのボタンを押す竜司。もう少ししたら到着するだろう。その僅かな時間に、運命の瞬間がやってくる・・・・・・。

 

 

 

 

ざわ・・

 

ざわ・・

 

ざわ・・

 

ざわ・・

 

 

 

周囲がやたら福本先生作品のような作画になりながら騒がしくなり始めた。

 

 

コツ・・・

 

 

コツ・・・

 

 

 

 

聞こえる・・・奴の足音が・・・ゴミクソ腐れ外道鬼畜畜生ハゲの足音が・・・!!

 

その音のする背後を愉悦で一杯になった胸を抑えながらゆっくりと振り返る。

 

 

そしてそこには───────

 

 

 

いたぞぉぉぉぉぉ!!!!

 

いたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!!

 

 

 

思わず釣り上がる口角を無理矢理抑え込み、わざとぶつかってくる取り巻きを体幹で逆に弾き飛ばし、何事かと言うような感じに目を向ける。

 

その瞬間に目に飛び込んでくるツルツル卵のような頭部、そんな頭部とは逆に整えてある髭にセンスのない眼鏡。見間違えようがない、こいつこそがあのハゲ!!何度も殺り合った大物感を纏った小物!!()()()がいないと特に何も出来ないハゲ!!

 

名前はまだ伏すッッ!!!何故ならハゲで覚えてくれた方が面白いから!!!*4

 

 

そんな奴がチラリと蓮を一瞥する。だが直ぐに目線を逸らし、エレベーターを注視し始める。お?ビビっとんのか?おぉん?赤い彗星さんよォ!!*5

 

なんて思ってると蓮を突き飛ばそうとした連れ添いが今度はイラつきながら手でどかそうとしてくる。

 

「このっ・・・おぉッ!?」

 

「ん?」

 

連れ添いの男の手がハゲの頭部に目がいってる蓮の肩に触れた瞬間、彼が幻視したのは・・・・・・

 

 

ズゥゥゥン・・・・・・

 

 

全貌の見えない岩(コレ)

 

・・・・・・いや、これは最早、山と言うべきか。個人でどうこうできる物じゃない。人の身に余る重さ。連れ添いはこの時を持って確信した。コイツは絶対に敵に回してはいけないと。

 

だが、ハゲの手前、障害を排除しない訳にはいかない。そんな立場故の板挟み。どうする!?どうするべきか!?困惑の渦の中、刹那的な加速を見せる彼の脳内では幾十、幾百ものプランが浮かんでは消えていく。いっそ、もう手遅れでも知らないフリを・・・。

 

そう考えた所で蓮が男に目を向けた。

 

「〜〜〜ッ!?」

 

こ、殺される!?!?

 

蓮のプレッシャーに当てられた唯一の人物だからこそ、そう思い込んでも仕方ないほど混乱していた彼に蓮はしぃ〜と人差し指を口に当てた。

 

この動作が意味する事、それは『黙って業務に戻ってね♡』という事である。優秀故にそれに瞬時に気づいた男はまるで何事も無かったかのようにスーツで見えないがぐっしょりの背を向けた。

 

さて、これで軌道修正は完了。さぁさぁ、早く来いっ!

 

 

「おいっ、普通に割り込みだろ!」

 

ウキウキ気味の蓮とは真逆の竜司が割り込んで来たハゲに向かって突っかかる。

 

「な、なにか・・・?」

 

それに対し、蓮と相対した男が振り返ること無くやや震えがちな声でそう返す。あちゃ、少し脅し過ぎたか。まぁ受け答えが出来るならその後は問題ないか。

 

さて、そんな茶番を繰り広げているとハゲはこちらを見下したように鼻を鳴らした後、目線すら合わせずに吐き捨てるように呟いた。

 

「少し来ない間に客層が変わったな、託児サービスでも始めたか」

 

 

Foooooooo!!来たァーー!!見て見て見て!この上手いこと言いましたよって顔!!内心絶対にドヤ顔してそうなこの顔!!

 

うふふふふ!!じゃあこっちもね!上手いこと返さないとね!無作法と言うものだからね!

 

殴りかかりそうな竜司を抑え、こちらもハゲをジロっと見たあとフッと笑いながら傑作な返答をしてやる。

 

 

 

「へぇ、ここって少し前は老人介護もしてたのか。知らなかった。」

 

 

「・・・・・・あ?」

 

 

俺の言葉に少しの間理解が追いつかなかったのか、絶句して硬直していたハゲは辛うじて絞り出した声でこちらに振り返る。

 

権力者として人の上に立ってから久しく聞いてないであろう小馬鹿にするような皮肉。しかも自分よりも一回り以上も年下のガキに鼻で笑われながらというオプション付き。

 

ハゲの怒りの沸点は容易く突破した。

 

 

「大変そうだな?そんなに介護士を雇って」

 

 

けど楽しいので燃料追加ァ!

 

「ぶふっ!」

 

隣で竜司が吹き出すのと同時にハゲが怒りの形相でこちらに突っかかってきた。おぉ、怖い怖い。どうしたんでちゅかぁ〜?おじぃちゃぁ〜ん?ご飯ならさっき食べたでしょ〜?皮肉っていう肉をよォ!!(ドヤ顔

 

「先生っ、お時間が・・・!!」

 

「ッッ・・・・・・チッ!!!」

 

今にも殴りかかりそうなハゲを付き添い達が必死に止めている。そりゃそうだ、こんなにギャラリーがいる中で政治家が暴力騒ぎなんて起こせないよな?しかも相手はただのガキ、理由も低俗な罵倒だ。メンツに関わるってものだろう??

 

顔を怒りに染めて腹の虫が治まらない様子のハゲだったがその事が分からない程馬鹿では無いので特大の舌打ちをかまして丁度来たエレベーターに乗り込んで行った。この後個人を特定しようとして予約の名前も偽名で監視カメラにも絶妙に顔が写ってない事を確認して屈辱の苦渋を舐めてくれ。

 

「またのご利用お待ちしておりま〜す」

 

「貴ッッ様・・・!!」

 

扉が閉まるまで鬼のような目つきで睨んできたので、ドアが閉まる直前に最高にいい笑顔で頭を撫でる動作をするとまたブチ切れて突っかかろうとするのを付き添いに抑え込まれながら騒がしく下に降りていった。

 

 

ふぅ〜⤴︎、面白いお笑い芸人達だったなぁ。あんな笑えるキレ芸なかなかお目にかかれないよ。ハゲのプライドを傷つけられた事に大変満足した蓮は見た事も無いくらい笑顔を浮かべている。それはもうニッコニコだ。

 

「ダッハハハハ!!蓮!お前最っ高だな!見たかよあのハゲの顔!タコみたいに真っ赤だったぜ!」

 

「フハハハハハ、かなり大爆笑ぉ〜!!」

 

「下らねぇ・・・が、良くやったぜ。溜飲が下がるとはこの事だな。」

 

大盛り上がりのクソガキ2人は手をベチベチと合わせて即興ハンドシェイクで更にアゲアゲになっていた。アホアホコンビの戯れを見たモルガナはため息を吐きながらも最高に悪い顔で笑っている。同類じゃねぇか。

 

こうして第一の気分スッキリ爽快イベントを終え、最高の気分で元の階に戻った3人は何故か落ち込んでいる杏と鈴井にも陽気に喋りかけた。

 

 

「わりーわりー、遅れた!」

 

「遅い!どこほっつき歩いてたのよ!」

 

「うお、そんな怒んなよ。楽しく行こうぜ楽しく!」

 

「え、何そのハイテンション。普通に怖いんだけど・・・。」

 

「何かあったのか?」

 

何時もより更に優しげな表情を浮かべる蓮にやや引き気味になりながらも先程、自分達が巻き込まれた事を話し始める。どうやら他の客がぶつかってきて皿を落としてしまったのを自分のせいにされたらしい。しかも店側の人間も何のフォローもせずまるで「あーあ」と言うような面倒くさげな顔をしていたそうだ。

 

こちらがお気楽にやってる時に何とも不幸な事態に巻き込まれてしまったものである。

 

「ケッ、クソみたいな大人がわんさかいやがるな。」

 

「私達、やっぱ場違いだったのかな・・・」

 

「そう、なのかも・・・」

 

「そんな事ないさ」

 

蓮が励ますが2人の気分が戻ることは無い。思っているよりも引きづっているらしい。

 

そこで竜司が少し黙り込み、真剣な顔でモルガナに向かい合う。

 

「・・・・・・なぁ、モルガナ。パレスって誰にでもあるんだよな。」

 

「ん?あぁ、歪んだ欲望を持ってれば、な。」

 

「オタカラ盗れば改心すんだよな?」

 

「そうなるな」

 

「どうしたの急に?」

 

急に竜司がし始めた真面目な質問に杏が疑問を持つと、彼は拳を握り締めてある提案をする。

 

それは彼らの今後を決める大きな大きな決断であった。

 

「さっき俺らも会ったんだ。身勝手で人の事を素で見下してやがるクソな大人に。・・・俺らならそんなヤツらも改心させられるんじゃねぇかと思ってよ。」

 

「!・・・怪盗、続けるってこと?でもさ、それって・・・。」

 

「分かってる!それは自分達にとって都合のいい事なんじゃねぇかって!でもよ!!それで今まで我慢するしかなかった奴らを救えるんだぜ!?」

 

怪盗続行に乗り気では無い杏に、そう思いをぶつける竜司。そこにあるのは微かな迷いと、確かな正義。自分達と同じような境遇の人を助けたいと思う青臭く、しかし美しい人の清き心だ。

 

かつては承認欲求から怪盗を続けていた竜司は何時しかこうして他人の痛みに寄り添うようになった。それがループの影響なのか定かでは無いが、好ましいとは思う。

 

「俺自身もそうだったから分かる、お前らだって分かるだろ?理不尽に押し潰される怖さがさ。」

 

「そりゃあ・・・そうだけど」

 

「『怪盗チャンネル』でそういう奴が、感謝してくれてたんだ。で、思った。俺らならもっと色んな奴らを救えんじゃねぇか?それこそ、表には出てこないような奴らから!」

 

『怪盗チャンネル』、正式名称『怪盗お願いチャンネル』略して怪チャンはとある一生徒が開いているサイトではまぁ誹謗中傷の方が多いが、それでも鴨志田に虐げられていた生徒達から感謝のメッセージが届いていた。それに刺激された竜司は誰かの為に怪盗を続けたいと思っていたのだろう。

 

「私も、思うよ。困ってる人を見過ごしたら、前の私に戻っちゃう。でも、その・・・またシャドウと戦う事になるんだよね?」

 

「うむ、それは避けられん」

 

どうやら杏はシャドウとの戦闘に嫌悪を感じてるらしい。いや、ここは素直に恐怖と言った方がいいか。だがそれはとても当たり前の感情だ。一般人だった彼女がいきなり戦えと言われても無理がある。

 

前は必死だったとは言え命の危険だって感じてたのだ。それももう一回、いや何度も繰り返せと言われれば怖気ずくのも仕方の無い事だ。

 

「私も、あまり同意出来ない・・・かな。皆と違って力が無い私が何言ってんだって感じだろうけど、やっぱり危険な目にあって欲しくない。」

 

そして鈴井も反対のようだ。彼女からしたらいつ死んでもおかしくない場所に見送らなければならないのだ、気が気でないだろう。そんな彼女の真剣な目に少したじろぐ竜司だったが直ぐに立て直して説得を試みる。

 

「鈴井・・・それは、まぁ・・・でも大丈夫だろ!なんてったって俺らには頼りになる蓮がいるんだからな!ついでにモルガナも。」

 

「ふっ・・・っておい!!なんで吾輩がついでなんだよ!!普通メインだろ!先輩だぞ!!専門職だぞコラァ!!」

 

「や、だって強さなら蓮の方が上じゃん」

 

「それは、うむ・・・・・・」

 

竜司の鋭過ぎる一言に押し黙ってしまうモルガナ。ごめんね、強くって。チクチク言葉ダメ絶対。

 

「勿論頼りっぱなしになんてならねー。足手まといにならないように力を付けてくさ。な!どうだ蓮!!」

 

「おっけー」

 

「ほら!本人も了承したぞ!」

 

「軽っっ!?軽過ぎでしょ蓮!もっとこう、ないの!?迷いとか!」

 

「雨宮君・・・・・・」

 

ハゲを揶揄って機嫌のいい蓮はロ〇ラ並の軽さで返すと杏には驚かれ、鈴井には呆れられた。おかしい、最近鈴井から残念な人扱いを受けてる気がする。*6関係ないけどロー〇って今通じるのかな。

 

「でも、うん。確かに蓮がいるなら大丈夫だよね。安心して!私も強くなるから!」

 

「私もできる限り全力でサポートするね!直接関われないけどそのくらいなら!」

 

ともあれ、蓮というまぁ色々不安もあるが心強い存在がいる事で2人も前向きになり怪盗活動に賛成してくれた。

 

「2人とも、ありがとう」

 

「フフ、これで吾輩達、駆け出しだが『怪盗団』になれるってことだな。そんじゃ、リーダーは吾輩って事で・・・。」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

世の中の悪人に巣食う欲望を盗み奪う怪盗団の結成がここに果たされたが、モルガナがシレッとリーダーに立候補すると蓮以外の3人が心の底から疑問の声が上がった。鈴井だけは他二人に対する声だが。

 

「おぉい!!なんだよその反応!!」

 

「いや、何となくリーダーは蓮って感じだったし」

 

「モルガナはどっちかと言うと、参謀?とかそんなんじゃない?」

 

「む、参謀・・・・・・悪くないな」

 

杏殿がそう言うなら仕方ねぇなぁ〜とくねくねするモルガナは自主的にリーダーを降りたので自動的にリーダーは蓮となった。というか押し付けられた。なお、参謀役は後に入ってくる世紀末覇者先輩に取られる模様。

 

 

「うーし!んじゃ、名前決めようぜ名前!」

 

「名前?なんの?」

 

「決まってんだろ!怪盗団のだよ!そうだな・・・イナズマイレブンってどうよ!」

 

「お前自分の属性全面に押し出してんじゃねーよ、てかイレブン要素どこだよ。5人だぞ吾輩達。」

 

「じゃあエターナルブリザード!ウルフレジェンド!ウルティメイトフォースゼロ!!」

 

「お前なんか別人格に引っ張られ過ぎだろ!!どっから受信してんだ!!」

 

多分、作者の中の人に対するイメージだと思う()、中の人が強過ぎるからねしょうがないね。

 

「じゃあおめーはどうなんだよ」

 

「ふむ、『アマダイノポワレシャンピニオンソース』とかか?」

 

「料理名じゃねぇーかアホッ!」

 

人に文句つけといて自分も巫山戯たモルガナの鼻に酸っぱいケーキの皿を押し付けゲロの匂いを思い出させる拷問を仕掛けた竜司は次に杏に話を振る。

 

「杏はどうだ?なんかいいのねぇか?」

 

「えー、じゃあ・・・『ピンクダイヤモンズ』とかどう?よくない?」

 

それを聞いた瞬間、蓮とモルガナの頭の中に河川敷で笑顔で野球をする人達が思い浮かんだ。おとさん、俺、ジュネスで働くよ。

 

「草野球感半端ねぇな・・・鈴井はどうだ?」

 

「わひゃ!わ、私!?えっと、えっと・・・影に潜むって感じで『ザ・ファントム』とか?」

 

「おぉ!めっちゃ良いな!ナイス案だぜ鈴井!」

 

「そ、そう?えへへ・・・。」

 

なんと、ゲームではデフォルトで入力されている名前が鈴井から提案された。ホントなら蓮がこれを提案するはずだったのだが、これによって自動的に名前でボケなければいけない事が確定してしまった(芸人魂)

 

ううむ、どうしようか。ここはやはりインパクトを重視して頭に残るようなのにしたいな。となると・・・・・・これしかない!

 

突然のアドリブにも対応してこそ真の怪盗というもの。蓮は即座に思考し、無駄にスペックの高い頭脳で最適な答えを弾き出した。

 

「なんか鈴井のでいい気もするけど、蓮はどうだ?なんかあっか?」

 

「フッ・・・・・・『毛狩り隊「うし!鈴井の『ザ・ファントム』に決定な!!」

 

「異議なーし!」

 

「吾輩もー!」

 

 

ぴえん

 

 

そりゃそうである。カスみたいな名前をスルーして決定された怪盗団の名前は『ザ・ファントム』。このループの中で最も多く名乗った愛着のあるその名前に蓮は思わず笑みを零す。やはりこの名前が1番しっくり来るな。

 

ちなみに過去1番ヤバい名前だったのは『マジックミラー団』だ、こちらからは見えてて向こうからは見えない的な理由でゴリ押した悪ふざけだったのだが意外と皆ノリノリで言うに言えずに結局最後まで名乗る羽目になったのを覚えてる。勿論、世間からは弄られまくった。あと権利的に『幻影旅団』。

 

「あ、食べ放題の時間終わっちゃった」

 

「マジで?ま、充分食ったし今日は解散にすっかー。」

 

その後、ひとまずターゲットや全会一致などの諸々の話を済ませ解散した蓮達。3人と別れた後、帰り道でモルガナと談笑しながら次の試練について考える。

 

色欲の悪魔を倒し、次に現れるは『虚飾』の呪物。己こそを真とし、他を偽りで塗り潰す贋の巨匠。

 

そして新たに加わる独自の感性の中に確かな芯を持つ男。彼を中心として絡まる運命の鎖。

 

出会いの時は、近い。

 

 

「お、見ろよ蓮」

 

「ん?・・・ふふ、いい写真だ」

 

「にゃふふ、そうだな!」

 

 

スマホに届いた1枚の写真、竜司が撮ってくれた何気ない日常のフィルムに鈴井さん(彼女)がいる事が何よりも嬉しい。

 

 

月光のように美しい彼女の笑顔に選択の答えを見て、微笑みながら帰路につくのであった。

 

 

 

 

 

 

*1
詐欺師の発想

*2
庶民のユートピア

*3
殺意の波動

*4
作者の中ではハゲで定着している模様

*5
人違いだけど人違いじゃない

*6
ヒント:今までの行動




どこを削ればいいか分からなくなって結局長くなるのなんなん?

作者はP5の時に怪盗団の名前を†ナイトメア†にして後悔しました。ゲームで共感性羞恥を刺激されるとは思わなかったが故の愚行です。ネタに振り切るならまだしも、素面でやるならみんなはマトモな名前を付けようね!

次回からやっと斑目編!できる限り早く出します!
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