周回プレイヤージョーカー君   作:文明監視官1966

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迷走に迷走を重ね、悩んだ結果迷走しながら走ることに決めました。どうも私です。詰めるだけ詰め込みました。私の脳ではRの要素を組み込んで話を広げるのは難し過ぎる・・・。読みにくいと思います、すみません。

そして今回は大幅にカットしていきます

うおおお!!巻き巻き巻き巻き巻き巻き巻き、巻きィ!!


Unknown

 

 

「・・・・・・最近、つけられてる気がする」

 

 

 

杏のその言葉から、この一件は始まった。

 

 

ビュッフェに行った日から何日かたった頃、三島に怪盗であることを見破られたのでちょっと脅しつつ*1新たなコープを発生させたり、取引相手達とコープを深めたり、惣治郎にコーヒーを入れる許可を貰ったりして楽しく過ごしていた。

 

その際、屋上でほぼ校長に脅されて怪盗団の事を探っている生徒会長に絡まれたりしたが何故かダンスバトルを仕掛けようとして会長を困惑させていた。

 

その際の映像がこちら。

 

「ここ、進入禁止のはずだけど?」

 

「・・・話し終わったら直ぐに帰るって。つか、カイチョーさんがなんか用すか?」

 

「問題児君に噂の彼女にバレー部の子、そして訳ありの転校生。変わった取り合わせだと思って。」

 

「う・・・。」

 

「・・・っ!感じワル・・・!」

 

「ワルイージ」

 

「雨宮君、ステイ」

 

「うす」

 

「ところで、鴨志田先生と色々あったみたいだけど?」

 

「尻を撫でられた」

 

「えっ・・・・・・そ、そう。災難だったわね・・・。えと、そう、憎くない?前歴の事だって鴨志田先生が広めたそうじゃない。」

 

「さっきからなんなんスか?つーか、こいつスゲー人間出来てるんで・・・出来てるよな?」

 

「あ、あったりまえじゃん!」

 

「え?う、うん。勿論!」

 

「なんでそこで言い淀むのよ・・・」

 

「ふむ、つまり会長さんは俺達を疑ってると」

 

「・・・・・・別にそうは言ってないわ。」

 

「なるほど、ならば・・・正々堂々ダンスで勝負だ!!!」

 

「・・・は?」

 

「勝ったら俺達に絡むのは止めてもらう!さぁ!レッツダンシングスターナイト!」

 

「いややらないけど・・・」

 

「(´;ω;`)」

 

「あ、泣かせた」

 

「えぇ!?そんな事で!?ちょ、やめてよ私が悪いみたいじゃない!」

 

その後、なんやかんやあって杏達が怪盗活動に対する決意を強めたり蓮がキレキレのダンスを披露して4人に絶賛されたりした。ナートゥはご存知か?

 

そしてその後、モルガナからメメントスの存在を知らされ車となったモナを湾岸ミッドナ○トをプレイしたことがあるという意味不明な理由で運転役を買って出たジョーカーは盗んだバイクで走り出すように豪快に乗り回し、鈴井を入口に待たせて突入。

 

ジョーカーがしっかり掴まってろよ!と言った直後にシャドウを引き飛ばしながら加速した為、車内でもみくちゃにされたスカルとパンサーにお仕置されつつもターゲットとして元交際相手のストーカーと化した『中野原夏彦』をボコし、もとい改心させたジョーカー達は彼から『マダラメ』の情報を僅かに得る。

 

それが終わると今度は下に降り、謎の行き止まりを発見。モナが確信を持ちつつ調べると、なんと壁が動き更に下に降りる為のエスカレーターが姿を現した。奥に興味を持つが今突入してもジョーカー以外が危険な為、ここで帰還する。

 

 

 

しかし、ここでイレギュラーが発生した。

 

 

 

「あ?なんだあれ」

 

「どうしたのスカル?」

 

「いや、鈴井の隣になんか、子供?がいるような・・・」

 

エスカレーターを登って後は帰るだけ、という所でまたまたジョーカーの知らないイベントが発生していた。それは今までのループの中で1度も見た事がない不思議な雰囲気を纏った少年。まるで宇宙服のような装いをして玩具のような車をバックに漂っている花のような物に手を翳す。

 

「よっと」

 

すると花のような物が解け、何故かグラスに入ったジュースになって少年の手に収まってしまった。

 

「あれは・・・」

 

なんだ?とは続けなかった。続けたら矢継ぎ早に疑問を口にしてしまいそうだったから。困惑を押しとどめて顔には出さずに鈴井の隣にいる子供?の所へ向かうと彼もこちらに気がついたようでジュースを一口飲むと不思議そうにこちらを見ていた。

 

「あ、皆・・・」

 

「ん?なんか変な気配がするなと思ったら・・・おにいさんたち、何者?」

 

こてん、と首を傾げる子供?にモナ達も同じように首を傾げる。

 

「いやこっちのセリフなんだが・・・」

 

「志帆、この子何時からいたの?」

 

「えっと、皆が降りてからちょっとしたらあの花みたいなのが現れて、そしたらこの子が車に乗って現れたの。その後すぐにみんなが帰ってきたからあまり喋ってないけど、いい子だったよ。悪意とかも感じなかったし。」

 

「えぇ・・・怪しくねぇ・・・?」

 

「あ、もしかしておねえさんのお友達?じゃあ悪い人達じゃないね!おっと、ごめんなさい、先に挨拶しないと。」

 

鈴井と杏達の会話を見てそう判断したのか、少年はジュースを手品のように消し、ニコッとキュートに笑って自己紹介をし始めた。

 

「僕は『ジョゼ』!ここで『花』を探してるんだ!」

 

「花?」

 

「花って、さっきの黄色いシャボン玉みたいなやつ?」

 

「うん!そうみたい!僕は人間を勉強しなきゃいけなくて、あの花をいっぱい集めたいんだ。」

 

「勉強って、さっきのジュースにして飲んでたやつか?・・・花のジュース飲むのが勉強になんのぉ?」

 

そんな簡単な方法があるなら教えて欲しいとあからさまに羨ましがっているスカル(とついでにパンサー)を置いてジョゼは話を進める。

 

「ねぇ、お兄さん達、僕の勉強手伝ってくれないかな?花を集めてそれを僕に譲って欲しいんだ!勿論、タダでとは言わないよ。この場所は色々役立ちそうなのが落ちてるし、それと交換しようよ!」

 

「えぇー・・・どうするよ、ジョーカー」

 

「ふむ」

 

困惑するモナに聞かれ思議する。メメントス内を散策するついでと考えれば特に問題は無い、それに落ちてるアイテムと交換というのも魅力的だ。異世界攻略に使うものもあるし、花とやらを集めるだけでそれが貰えると言うのなら断る理由もないだろう。

 

それにこの少年からはカロリーヌ達のような独特の雰囲気を感じる。並大抵の敵は寄せ付けない程の実力を秘めているに違いない。そんな相手との取引だ、正体は分からないがこちらを騙す様子も無いし今後の事を考えれば利益の方が勝る。

 

「その取引、乗った」

 

「ほんと!?ありがとう、お兄さん!」

 

取引に応じたジョーカーが膝をつき視線を合わせて手を差し出すとジョゼもニパッと可愛らしい笑顔を咲かせて手を取った。これにて取引成立である。

 

それを確認したジョゼは自分のコミカルな車へと乗り込み、見かけによらずバリバリなドリフトで切り替えエスカレーターの前に移動すると立ち去る前にパッとジョーカー達の方へ振り向く。

 

「じゃあ、僕そろそろ行くね!あ、そうだ。人間は遊びが好きって勉強したから面白そうな仕掛けを準備しておくよ!」

 

「仕掛け?」

 

「うん、楽しみにしてて!・・・っと、思い出した。勉強して覚えた人間の挨拶!」

 

そして最後に笑顔で手を振って一言。

 

「おつかれ〜!」

 

その後、フルスロットルでメメントスへと消え去って行ったジョゼに思わず手を振り返した5人は思った事を口にしてみる。

 

「なんか、変わったヤツだったな」

 

「だね・・・でもいい子だった」

 

「うん、あと可愛かった」

 

「シャドウの気配は感じなかった。何者かは分からんが、あの様子だと少なくとも敵では無さそうだな」

 

「そのようだ」

 

まぁ、実際に敵に回ったとしたら非常に厄介な相手になる事は確実だろう。前提として自分以外は全滅するだろうなと冷静に戦力分析するジョーカー。それほどまでにあの小柄な少年は底知れない力を宿しているらしい。

 

そんなこんなでジョゼと知り合ったジョーカー達。今更そんな新要素が生えてきたところでなんの動揺もありませんよと余裕をかましてメメントスを出たジョーカーに待ち受けていたのは更なる新要素であった。

 

鴨志田の件が思っていたよりも深刻化し、生徒達のメンタル面の心配・・・という世間的な建前の元、なんと非常勤のスクールカウンセラーがやってくると言うのだ。おいおいおい、これ以上俺の悩みの種を増やさないでくれとモルガナ吸いをして顔面を引っかかれた翌日、その噂の担当男性教師が集会にて発表された。

 

「それでは先生、自己紹介を」

 

達磨校長の長ったらしい前座が終わり、壇上に現れたのはどこか抜けた印象もあるが春の日差しのように柔らかな雰囲気を纏う優男。顔も整っており、少々無精髭が生えているがそれもチャーミングに映る程の物腰の柔らかさがあった。

 

そんな彼はコホンと喉を調節すると自己紹介を始める。

 

「初めまして、僕の名前はまる・・・・・・」

 

と、名前を言おうとした直後にブツリ、とマイクが切れてしまう。あれ?と困惑する彼だったが直ぐにマイクをつけ直し、トントンと叩いて音を確認してから再び自己紹介に入った。

 

「失礼、丸喜拓人と申します。よろしくどうぞ。」

 

ニコリと微笑を浮かべる彼に女子生徒の多くは「かっこいい」や「大人〜」と早くも魅了されていたが、当の本人は一礼するとマイクに額をぶつけてしまっていた。

 

「あっだ!?」

 

ガツンと痛そうな音が鳴り響く。思わず、自分の額を抑えたくなってしまった。

 

どうやら彼は見た目通り抜けているらしい。間抜け、と言うよりは愛嬌に感じる辺り彼の人の良さが分かる気がする。クスクスと生徒に笑われながらも恥ずかしげに笑って紹介を続ける。

 

「担当はカウンセリングです、堅苦しく構えなくて大丈夫だから。相談なら何でも・・・あ!お金の相談は困るかな〜アハハ。」

 

そうゆる〜く言うと周りからも笑い声が聞こえてくる。ふむ、流石カウンセラー、場を和ませる才能があるようだ。しかしそれが気に触ったのか校長は無理矢理彼を押しのけると強制的に話を終わらせてしまった。お前そういう所やぞ(辛辣)

 

ともあれ、全体集会が終わりまた4人で集まると竜司が気だるそうにして先のカウンセリングについて話をし始める。

 

「はぁ、まさかうちの学校がメンタルケアとか言い出すなんてなー」

 

「ニュースにもなってるし、放置はマズイって思ったんじゃない?」

 

「つか、なんだっけ名前?」

 

「坂本君、丸喜先生だよ」

 

「そーそー、丸喜。ツッコミどころ満載過ぎだろ。なんか抜けすぎっつーか。本当にカウンセリング出来んのかね。」

 

その言葉には半分賛同である。だが彼の纏う雰囲気が癒しとなり人とコミュニケーションを取る際に非常に話しやすくなるのは確かだろう。今ある判断材料から見ても彼は生粋のセラピストだと蓮は感じていた。

 

なんて話していると何やらこちらに近づいてくるゆるーい感じの気配を感じる。どうやら早速お出ましの様だ。

 

「!竜司・・・。」

 

「ん?おぉ。」

 

竜司の背後から近づいて来ていた彼に気が付き、杏が小声で注意すると直ぐに意図を汲み取り口を噤む竜司。そして振り返って見るとやはり思い通りの人物が彼の前に立っていた。

 

先程、集会にて自己紹介をしていたゆるふわ系男子、丸喜拓人である。

 

「どうも、坂本君に高巻さん、鈴井さんだよね。それに雨宮君。」

 

「「「「!?」」」」

 

緩い雰囲気から飛び出した刺さる様な言葉。第一声から自己紹介もしていないのに名前を言い当てられた事で警戒心を最大まで上げた竜司がずいと前に出て杏と鈴井を庇うように立ち塞がる。

 

「なんで名前知ってんすか?」

 

そう言って不良感を前面に出して睨む竜司に丸喜は慌てて両手を振りながら弁明を始めた。

 

「えーと、鴨志田先生と、その・・・色々あった生徒の何人かは、前もって聞かせてもらってたから。」

 

「なるほど」

 

「いや納得がはえーよ5歳児か!」

 

直ぐに相手を信じちゃう蓮くん(5歳)に鋭くツッコむ竜司。それを見て笑っていた丸喜だったが4人の視線に気が付くとコホンと咳き込み気を取り直してから話を続ける。

 

「雨宮君、転校早々大変だったね」

 

「ええ、色々と」

 

「つか、俺らになんか用すか?」

 

「ああ、そうだった。さっき集会でも言ったけど君達カウンセリングに興味あったりするかな?」

 

「は?カウンセリング?」

 

唐突な質問に4人は思わず目をパチクリとさせ、顔を見合わせる。そして言葉は交わさずに完全に思考が一致した4人は同時に丸喜の方を見て手を横に振った。

 

「いや、ねっすけど」

 

「え?あー、でもほら、今ならお菓子とかあるよ?食べ放題・・・はちょっと無理だけど、でもそこそこ食べられるし・・・どう?」

 

「ほう」

 

「雨宮君、甘味に釣られてない?」

 

「まさか」

 

だって5歳児だもん。お菓子に吊られそうになる蓮を鈴井が釘刺してる間に丸喜はわたわたと手をあっちにこっちに動かしながら説得を試みている。

 

「実は、鴨志田先生の事で関係性の強い生徒は必ずカウンセリングするように言われてね。一応、学校側からの気遣いなんだけど・・・。」

 

「気遣い、ねぇ」

 

それを聞いて湧き出るのは『呆れ』。今更何を、としか思わない。そっちは見て見ぬふりを続けて助けて欲しい時に手を振り払ったくせに。最早学校に対して少しも信用を寄せていない竜司は不機嫌に鼻を鳴らしてハッキリと拒絶の対応を見せる。

 

そんな竜司に対し、丸喜はそれを汲み取り慎重に言葉を選びそれでも寄り添おうという意思を表した。成程、学校側ではあるが確かに善人ではあるようだ。

 

「いきなり見ず知らずの僕と話せって言われても、困るのは分かるよ。こういうの強制でやっても意味無いし、せっかくなら君達にもなにかメリットが・・・」

 

むむむと唸り考え、閃いた!と頭に電球を浮かばせながら手を叩いた。

 

「そうだ!カウンセリングに来てくれたら、代わりにメンタルトレーニング教えるよ。テスト前の集中力の上げ方とか、デートのときに緊張しない方法とかさ。どうかな?」

 

「ほう」

 

丸喜の頭の上から落下して地面で割れた演出の電球を見ていた蓮は再び興味を惹かれたらしく眼鏡を光らせる。自分で使う分にはまぁ必要ないが丸喜のように他人のメンタルを操作するなどの応用の方には興味が湧く。話術、交渉術は習得しているのでそれと組み合わせる事で仲間のメンタルを安定させるのが容易になるかもしれない。

 

だが、そんな彼に今度は杏が釘を刺す。

 

「蓮?」

 

「まさか」

 

恐怖心、俺の心に、恐怖心(蓮 心の俳句)

 

彼女の圧に屈した蓮は眼鏡の位置を直しながら振っていた尻尾をシュンと垂れ下げたが、諦め切れない蓮はどうにか皆に提案してみる。

 

「だが、興味深い話だ。受けてみよう。」

 

「えぇー・・・まぁ、受けねーなら受けねーで面倒な事になりそうだしな。」

 

「うーん・・・確かにそうだね」

 

「皆が受けるなら私も・・・」

 

やったぜ。言ってみるもんだとご機嫌になった蓮は頭の中でコロンビアのポーズを取っていた。そして4人の肯定的な返事を聞いて丸喜はパッと表情を明るくして嬉しそうに笑う。

 

「本当かい!?よ、良かった〜。それじゃあ、とりあえず取引成立って感じかな!僕は保健室にいるから都合のいい時にでも来てよ。」

 

その本当に嬉しそうな顔になんかこれで行かなかったら可哀想だなと罪悪感が湧いてきた蓮を除いた3人は微妙な顔をしてそそくさと彼の前から立ち去ろうとする。

 

「う、うぃっす、んじゃ俺らはこれで」

 

「うん、またね」

 

人がいい丸喜の雰囲気に何だか絆されそうになって警戒心が緩んだ事に危機感を覚えた3人は直ぐに歩いて行ってしまったが、そんな彼等を借りてきた猫を見る様な慈母神の瞳で後ろから見つめていた蓮は、あっと声を漏らした丸喜に呼び止められていた。

 

「?どうした?」

 

「その、ありがとう、カウンセリング受ける気になってくれて。取引した分、君の力にならないとね。何時でも頼ってくれていいから!最大限力になるよ!」

 

「ああ、頼りにさせてもらう」

 

主に技術提供と情報収集の面で。何もかもが未知な人物という点でも関わりを持っていた方が監視がし易いからという冷徹な部分もあるが、勿論一人の協力者として仲良くしたいのも本音だ。ククク、貴様のスキル、友好的な関係を築きその上で互いを尊重し、決して悪用すること無く誰かの心を支える為に有効活用させてもらうぞ・・・!*2

 

そして丸喜から差し出された手に応え、ガッチリと握手を交わす。

 

 

 

「よろし────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうか、汝もまた、星の子か

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ぇ」

 

 

 

 

その瞬間、彼のよく知る()()()()()()()()()と全く未知の()()()()()()()()()()()()()が頭の中を支配した。

 

 

 

 

 

我は汝・・・汝ハ・・・

汝、こコにたなル契りを得タり

 

契リは

囚わレをらンとすル反逆ノ■なり

 

我、「顧問官」のペル■ナの誕ニ

祝福の風ヲ得たり

 

へト至る、

更ナる力となラん・・・

 

 

 

 

COOPEARTION:『丸喜拓人』

 

 

ARCANA:『顧問官』 RANK.1☆

 

 

 

 

 

 

目の前に浮かぶ青く光るタロットカード、見た事もないアルカナ。これまでどうやっても増えることが無かったコープの固定数を覆す新たなる契約者。その突然の契りに蓮の思考は完全に停止していた。

 

いや、それだけじゃない。コープが繋がった直後、本能が警告を鳴らすほどとてつもない圧と視線を感じていた。そして聞こえた"ナニカ"の声。ノイズにしか聞こえなかったが、それは確かに知性のある言語だった。

 

(何が、起こって・・・・・・!?)

 

理解不能。百戦錬磨の蓮も暫く出くわさなかったその規格外な緊急事態には瞬時に対応できず、再起動に数秒を要いた。

 

 

「?雨宮君?」

 

突然虚空を見てフリーズした蓮に握手したまま首を傾げる丸喜。その声でようやく正気に戻った蓮は荒れ狂う思考を何とか押さえ込み、溢れ出そうな冷や汗を塞き止める。あまりにも不自然なそれを目の前の正体不明(アンノウン)に見られる訳にはいかない。

 

「い、いえ・・・立ちっぱなしだったので少し目眩が」

 

「うわ!大丈夫!?顔が青白いよ!?」

 

やはり全て隠しきるには無理があったようで少し顔に出てしまった様だ。だがここで隙を見せる訳にはいかない。迅速にここから立ち去り思考を整理しなければ。それだけが蓮を突き動かしていた。

 

「ご心配なく・・・直ぐに収まると思うので」

 

「そ、そう?無理しないでね?」

 

「では俺もこれで・・・・・・」

 

「うん、引き止めちゃってごめん、それじゃ」

 

「はい・・・・・・」

 

強烈な寒気を感じながらその場から早足で離脱した蓮は校舎に入ると直ぐに壁に身を隠し、背を壁に預けると口に手を当ててドッと冷や汗を流す。かつてないほどの異常事態に目まぐるしく動く思考を何とか落ち着かせて冷静さを取り戻していく。無意識に手袋を直す動作をしている辺り相当混乱していたようだ。

 

(よし・・・なんとか落ち着いてきた。とりあえず、()()はなんだ?)

 

そう言って掌に浮かび上がらせるのは先程意図せずに獲得したアルカナ。描かれる数字は"1"。刻み込まれる名は"顧問官"。

 

(どういう事だ?何故いきなりコープが解放されたんだ?彼も協力者という事か?だとしたら彼は何者なんだ。)

 

それにこのアルカナも奇妙だ。何故数字が1なんだ?それでは魔術師とは被ってしまう。顧問官というのも・・・いや、待て。

 

冴え渡る彼の頭脳が知恵の泉から知識を引っ張り上げてくる。

 

タロットで顧問官・・・少し言い方を変えれば質問者や相談者ともとれる。と、なるとこのアルカナは古典秘教タロット、エテイヤ版のタロットカードにおける1、ウェイト・マルセイユ版の教皇に該当する男性の質問者なのでは無いか。

 

よく見るとこの数字はアラビア数字だしこれは確定で間違いないだろう。意味合いは確か・・・"正位置が"理想"、逆位置が"知恵"だったか。そしてカオスの名も持つのは何とも彼、善か悪も分からない正体不明の丸喜には絶妙に合っているアルカナだ。

 

(理想にカオス、か。何とも意味深なものだ。)

 

何故いきなり彼という存在が生えてきたのか、何故今になってこんな劇的な変化が訪れたのか全く分からないが、彼が台風の目で、この世界において重大な鍵となる人物だというのは確かだ。出来る限り仲良くしておいたほうがいいな、と蓮は落ち着いてきた息を深呼吸で整えながら考える。

 

(これは本格的に兆しが見えてきたのかもしれないな)

 

今まで見えなかった希望の光が僅かにだが見えてきた。蓮の心が今度は急速に高揚に包まれていく。だが勿論油断も慢心もしない。この機会を逃さず、積極的に関係を築き確実に希望を手繰り寄せてみせる。

 

ひとまず、ニヤケ始めている頬を抑えながら3人に合流するとしよう。

 

そう考えた彼は歩き出そうとして・・・

 

 

(・・・?)

 

 

視界の端に青い蝶が横切った気がして振り向くと、そこには何も無くただ廊下が広がっているだけだった。

 

(気の、せいか)

 

()()が現時点でいるはずが無い。恐らく未知の現象に思った以上に疲弊しているのだろう。頭を振り思考を晴らした蓮は待っている3人の元へ急ぐのであった。

 

 

 

 

『・・・・・・マイトリックスター

 

 

その背中を1匹の青い蝶が見守っていると知らずに。

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

その後、杏が放課後に丸喜のところに赴き変な罠や事情聴取もなく普通に世間話をして終わった様で話せる範囲で話してスッキリしたと語っていた。蓮も行ってみたら?と言われたのであんな事があった後で少し抵抗があるがこれもループ脱出の為だと腹を括って丸喜の所へ向かう。

 

モルガナはその辺で時間を潰すと言って別れ、蓮だけで保健室を訪れるとそこには意外な人物がいた。

 

「あ、雨宮先輩。お疲れ様です。」

 

「芳澤後輩」

 

そう、鴨志田のせいで少し疎遠になってしまっていた芳澤であった。どうやら先に丸喜のカウンセリングを受けていたようで保健室の前で談笑している所に来てしまったらしい。

 

「はい、先輩もカウンセリング受けられるんですか?」

 

「まぁ、色々あって」

 

「そうなんですか。安心して下さい!丸喜先生は良い方なので!私、秀尽に来る前からお世話になってるんです!」

 

前に会った時とは違い、よそよそしさもなくキラキラした目でそう語る芳澤。なるほど、彼女はかなり丸喜を尊敬しているらしい。それにここに来る前から世話になっていたと言うので彼女程の快活な少女が頼るのならば彼の腕も本物だろうと蓮は確信した。

 

「あれ、2人は知り合いなんだね」

 

「はい、困ってた時に助けて貰って・・・あ、すみません。時間が・・・私もう行きますね。」

 

「ああ」

 

「あ、うん。気をつけて帰るんだよ。」

 

蓮との出会いの話を説明しようとした芳澤だったが時間を見るとすぐにそれを打ち切り、急いだように帰ってしまった。この後、練習でもあるのだろうか?と考えながら彼女の背中を見ていたが丸喜に招かれて保健室に入る。

 

そこからはお菓子を食べながらこれまでの事情を少し話した後、他愛もない話を繰り広げ最終的にかなり脱線してお菓子はどれが好きかという話題になって今日のカウンセリングは終了した。

 

「やっぱりコンビニのお菓子は最高だよね・・・値段も手頃だし、何より美味しい。」

 

「セ〇ンのバタークッキーは至高」

 

「通だね〜!」

 

きゃっきゃっと子供の様にはしゃぎながらお菓子を貪る自称5歳児共。しかし途中で丸喜が正気に戻り安心したように笑った。

 

「?なんだ?」

 

「いや、精神的に無理してるんじゃないかと思ってたけどそんなことは無さそうで安心したよ。君は自分の中と外にある『現実』できちんと折り合いをつけてるんだね。」

 

「そこまで大人な理由じゃないさ。ただあるがまま受け入れてるだけだ。」

 

「いやいや、凄いことだよ。大人でもそれは難しい事なんだから。理想と現実のギャップに苦しむ、なんてよくある事さ。」

 

そう言うと、丸喜の顔に影がさす。彼もまたそのギャップに苦しめられた人間である事はそれで理解した。そして、それに折り合いを付けられる人間である事も。

 

「君に起こった事を思うと苦しむどころか()()()しまっても不思議じゃないと思う。けど君は辛い現実に真っ直ぐ立ち向かっているように見えてね。それが凄いと思ったんだ。」

 

「・・・何も思わない訳じゃないさ。」

 

そう呟く蓮の中に、これまでのループの記憶が蘇ってくる。

 

辛い現実にそれでもと立ち上がった事、厳しい現実に打ちひしがれ涙を流した事、終わりの無い現実に絶望し折れた事、醜い現実に心底失望した事、見失った現実に再び立ち向かった事、繰り返す現実に何度でも挑んだ事。

 

その全てが蓮にとってかけがえのないものであり、今の自分を作り出した大切な記憶だ。自分の理想の為に現実に抗う。仕方がないと折れるなどもう沢山だ。誰かの評価や扱いなど知った事でない。だから寧ろ逆なのだ。折り合いを付けるのでなく、自分を押し通しているだけなのだから。

 

「誰に何を言われてもただ、自分として歩きたい。誰かのせいにしたくない。俺は、俺が納得出来る人間でありたいんだ。」

 

それが他人から見たら現実を見ているという風に見えているだけなんだ。と蓮は思う。事実ドライに現実を受け入れている所もあるが、それすらも理想を求める為の手段として考えている。理想が先か、現実が先かの違いなのだと彼はそう考えていた。

 

「・・・凄いな君は。確固たる自分を持ってるんだね。そうか、君は君として完結してるのか。それも、柔軟な形で。」

 

「丸ぼうろ美味しい」

 

「うん、台無しだね」

 

余りにもあんまりな崩壊具合にシリアスな雰囲気は爆散し、丸喜も悲しげな顔をやめて一緒に丸ぼうろを食べ始める。その後はまた楽しげにお菓子を食べ時間も遅くなってきたので解散の流れになった。

 

純粋に蓮との談笑が楽しかったのかまた来てくれるか?とあざとく聞いてきたのでこれは一部の女子に刺さりそうだなと考えながら了承し、更に研究の手伝いをするという新たな取引も受ける事でコープを深める口実を手に入れたのだった。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

そして、話は冒頭に戻る。ここまで長くて忘れているかもしれないのでおさらいすると杏が誰かにつけられているかもしれないと言ったのだ。

 

杏のいきなりの発言に竜司は眉を上げ、蓮は昨日丸喜に貰ったチョコバーを食べていた。

 

「はぁ?つけられてるって、誰に?」

 

「それは分かんないけど、なんか妙に視線を感じるって言うか・・・」

 

「気の所為じゃねぇの?」

 

暗に自意識過剰じゃね?と言う竜司に杏はむっとして竜司に食ってかかろうとしたが、鈴井がフォローに入る事で事なきを得た。

 

「ううん、気の所為じゃないと思う。私も時々感じるもん。」

 

「なら気の所為じゃねぇな」

 

「コイツ・・・!」

 

残念な事に竜司の中では発言の説得力が鈴井>>>杏の形で成り立っていた。この仕打ちに杏は殴ってやろうかと拳を震わせていたが再び感じた視線に寒気を走らせる。

 

「う・・・ほら今も感じた!」

 

「うん、確かに・・・でもどこから・・・?」

 

「分かんない、でも近くにいるのは確かなの。う〜、どうすれば・・・。」

 

「とっ捕まえればいいじゃねぇか。」

 

「でもどうやって・・・」

 

「あ?ンなもん簡単だろ」

 

「「?」」

 

 

首を傾げる杏と鈴井に竜司は渾身のドヤ顔を繰り出してこう言った。

 

 

()()()()だよ」

 

 

 

 

超古典的手段であった。

 

 

 

「んで?この2人に何かよーかよ?」

 

 

 

そして超効果があった。

 

 

杏に先に歩いて貰ってストーカーが接触しようとした瞬間に3人が間に入るという分かりやすいトラップ普通に引っ掛かった犯人に竜司は啖呵を切る。

 

白昼に晒さられた犯人の姿は・・・

 

 

スラリと伸びた手足(股下500m)

 

 

サラリとして青みがかった黒髪

 

 

腰に付けた幾つかの鍵

 

 

そして、芸術品のように整った顔立ち

 

 

追い打ちに儚げな雰囲気を纏った普通の美男子であった。

 

 

 

「うおおお!"突撃"ィィィ!!!」*3

 

 

「竜司!落ち着け!顔面偏差値で敵と判断するな!」

 

犯人のイケメンっぷりに嫉妬が爆発した竜司が襲いかかろうとするが蓮が何とか阻止して口にリラックスゲルをぶち込む。味のしない謎のゲルを無理矢理飲まされ、ビクンビクンし始める竜司を置いておいて犯人と話を始める杏。

 

「君たち、なんなんだ?」

 

「それはこっちのセリフ!付きまとってたくせに!」

 

「付きまとう?心外だな。」

 

「ずっと尾けてたでしょ!電車の中から!」

 

「一般的にはそれをストーカーと呼称する」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

蓮の付け足しに漸くその事実に気がついたのか少し焦りを見せながら口を開く犯人。しかし、そこに車のクラクションが割り込み蓮達の隣に一台の車が止まった。

 

 

そして、窓が下がるとそこには意外な人物が座っていた。

 

 

「やれやれ、いきなり車を降りたかと思えば・・・呆れるほどの情熱だな。結構結構。はっはっは!」

 

 

現代日本画界の巨匠、そしてメメントスにて改心させた中野原から飛び出たビッグネームの持ち主。

 

 

"斑目一流斎"

 

 

その本人が蓮達の前に姿を現していた。

 

 

 

そしてこれより、"虚飾"に塗れた博覧会が幕を開けるのであった───

 

 

 

 

 

*1
本人基準

*2
善人の鑑

*3
敵一体に小ダメージ




途中の理想と現実が云々は要約すると蓮は超自己中だけど空気は読めるよ、精神攻撃?何それしらねって事です。

地の文を減らしたらなんかあっさりしてしまう、うむむ。

そして蓮君がここまで動揺したのはいきなり生えてきた謎の人物+高めてた警戒心+不意打ちSAN値チェックと色んな要素が重なったから。普段ならすぐに立て直せる。これによって蓮はかなり丸喜先生に注目する事になりました。結果オーライ。
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