忘れられない大事な在りし日への追憶。
彼との出会いは、まるで映し出されたフィルムのようにハッキリ覚えている。
「お、おい!そこのお前!頼む、吾輩をここから出してくれ!」
出会いはとてもおかしなものだったけど、それでも奇跡のような出会いだったんだ。
「お前、まさかペルソナ使いか?おいおい・・・とんだ掘り出し物だぜ。ん?いや、こっちの話さ。気にすんな。」
「ふむ、センスも悪くないと来たか。こりゃ更に期待出来るな。」
「なぁ、お前、悪人を成敗したいんだろ?なら、吾輩と手を組まないか?その代わり、吾輩の技術を教授してやる。どうだ、win-winだろ?」
最初は利用し、利用されあう様な関係だったけど数々の修羅場をくぐり抜けていくうちに俺たちの間には確かな友情が芽生えていった。
「ふう、今回のはヤバかったな。お前が居なきゃお陀仏だったぜ。ありがとな、■」
「人間ってのはよくわかんねー生き物だよな。善意と悪意、理性と欲望。全く真逆のものを矛盾させることなく中に飼っている。少しバランスが崩れればどんな善人でも悪に転げ落ちて、少しのきっかけがあれは悪人が善に傾く事もある。」
「愚かで不安定だが、そこが愛おしいとも感じる。不思議なもんだ・・・なに?吾輩の方が不思議生物だって?やるかコラー!!」
様々な戦いをくぐり抜け、歴戦の友となった俺達だったが、無情なタイムリミットが迫っていた。
たったの1年、あまりにも短過ぎる時の牢獄。その網がもうすぐそこまで来ている。偽神を倒すには至らなかったものの、あらゆる手を使って封じる事に成功した俺達は思い出の場所、ルブランの自室にて向かい合っていた。
「んだよ、改まって話って。四六時中一緒にいた吾輩達の間に今更そんな大層な話なんてねぇだろ?」
「あれか?実家に帰るにあたって、実は猫は飼えませんとか言う気か?やめろよ、吾輩野宿なんて御免だ・・・っと、そういう雰囲気でもねーか。」
「今更気がついてねーと思ってんのか?言えよ、ずっと隠してたことについてなんだろ?」
彼の優しい声に、思わず堰き止めていた事情についての話を、全て打ち明けた。ループの事、もうすぐリミットが近づいていること。言えることを全て。
彼は、黙りこくって下を向いていた。
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「そう、か。成程・・・な。」
「・・・・・・まず一つ」
「そういう大事な事は!!!事前に伝えとけよぉぉ!!!!」
「なんでお別れって時に話すかね!!??こちとら覚悟もなんも出来てねぇんだけど!!??」
「ごめんって、謝って済むかバァァァーーカ!!!」
謝罪をするとべしべしと肉球で叩かれる。爪も出てて地味に痛い。数分ほどそれが続いたが疲れたのか息を整えてまた座り込んだ。
「はぁ・・・、正直まだ整理がつかねーが無理矢理納得しておこう。」
「それにしても、お別れ、お別れ・・・か。」
「・・・・・・くそ、唐突過ぎて実感がわかねぇが、お前のその顔を見るに事実なんだろうな。」
「ったく、先に言っとけよ・・・急にそんな事言うなんてよぉ・・・いや先に言われても逆に気を使っちまうか。」
「・・・ま、最後なんだ。折角だし色々言わせてもらうぜ。」
それからは、これから別れとは思えないほど穏やかに思い出話に浸った。静かに、しかし暖かく、2人で思い出を振り返っていく。
やがて、話題も尽きた頃、彼がポツリと話し始めた。
「次会う時には、吾輩はお前を忘れちまうのか・・・正直、寂しいな。」
「・・・・・・吾輩達、色んな奴と戦ったよな。そして、色んな奴を救った。中には強敵もいて、救えなかった奴もいる。反吐が出るような奴を助けなきゃいけなかったり、罪の意識に苦しむ奴を捕まえなきゃいけない時もあってさ。」
「挫けそうな時も、全部を投げ出したくなるような時もあった。」
「でも、それでも戦い続けられたのは、人間を理解できるようになったのは、全部お前のおかけなんだ。お前がいたから今の吾輩がある。」
「感謝してるぜ、■。」
「お前は最高の相棒だ!」
彼の屈託の無い笑顔を見て、思わず泣き崩れ彼を抱き締める。彼も、嫌がる素振りを見せずに抱き返してくれる。酷く暖かな体温は、やがて薄れていく体と共に宙に溶けていく。
「・・・・・・時間、か。」
「なぁ、■。お前は忘れるなよ?吾輩の事。」
「たとえ何度別れても、吾輩に会いに来てくれ。何度でも吾輩と仲間になってくれ。約束だぞ?破ったら高級寿司1年分だからな!」
やがて、体が消え、首にまで迫ってきた終わりの中、彼は溢れてきた涙を拭ってぐちゃぐちゃの顔をした俺と真っ直ぐに見つめ合う。
「ちぇっ、湿っぽい最後にはしたくねーと思ったのによ。よし、せめて別れの挨拶くらい爽やかにしとくか。」
最後は、お互い笑顔で
「またな!! 蓮!!」
きっと会いに行くよ。何度も、何度でも。
だから
「またな、俺の最高の
「・・・・・・バァーカ」
主人の居なくなった部屋は、春の暖かさはなく、酷くもの寂しげであった。
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