私です、舞台版全て見ました。めちゃくちゃ面白かったです。こんなに夢中になるとは思いませんでした。いきなり歌うのも慣れれば普通に演出として見られるし、合間に挟まるギャグ(多分アドリブ)が最高に面白いし、何より演技に熱が入ってて凄く引き込まれましたね。
特に舞台版3が好きです。双葉パレスが好きなのも相まって夢中になりました。あと双葉が双葉。お前のコードネームは『もったいない』だ!で腹筋メギドラオンしました。
2も祐介役の人の演技が良かったり金城が面白かったりで好きだし、4も冴さんや明智、ラスボスまで全部良くて面白かったし。もう最高でした。この場をお借りして『チョコッピ☆』さん本当にありがとうございます!!
では本編を〜巻ーかーない!!パワー!ハッ!!
「ち、違う!これは本物のサユリじゃない!」
「ど、どういう事だ!?流れ的にこれが本物じゃないのか!?」
祐介の指摘に当てが外れたモルガナはそう叫んだ。見られたくないと言わんばかりに隠されたそれは必ず斑目を追い詰める切り札だと踏んでいたのだ。
しかし、蓋を開けてみれば現れたのは紛い物。そんな馬鹿なと動揺するが相当な審美眼を持つ祐介が自身の原点となる本物と贋作を見間違えるはずもない。ならばこのサユリは間違いなく贋作なのだろう。事情を知らぬ素人が見れば違いは分からないが。
まさかの展開に困惑する彼らを見て、下衆な笑みを零した斑目はわざとらしく咳払いをするといけしゃあしゃあと喋り出す。まるで全て己の掌の上と言うように。
「だから言っているだろう。本物は盗み出されたと。この部屋のどこにも本物などありゃせんよ。」
「そ、そんな・・・!」
「なんなら、部屋中見て回るかね?それか家中見て回るか?まぁ盗まれてるのだから何処にもありはしないがね。」
「ぬ、ぐぅ・・・!」
憎たらしい表情でそう語る斑目。この自信に満ち溢れた顔から察するに本物はかなり巧妙に隠されていると考えられる。モルガナは物陰で歯噛みした。
(ク、クソ!まさかあれが偽物だなんて!と、という事はまさか本物はほんとうに盗まれて・・・!?)
本来ならばここで本物のサユリがお披露目され祐介に全てを悟られるはずだったのだが、どういう訳かそのイベントが発生していない。
どころか本物のサユリは何処かへと隠され、真実が揉み消されようとしている。これが周回の影響なのか、はたまた流れを変化させたバタフライエフェクトなのか。いずれにせよ、このままでは祐介の疑念が完璧に晴れず仲間に加わらない可能性が高い。それどころか最悪恩師を疑い切れず改心を止められる可能性すらある。
更に最悪なのは、それを歪みだと認識してその修正が出来る蓮本人がここにおらず、またこの事態を把握してすらいないという事だ。知らない所で知らない間に勝手に詰みかけている状況、それを何とか出来るのは現場にいる杏とモルガナの2人だけだ。
しかし切れた頭を持つモルガナは先の出来事で思考が混乱してしまっている。
頼みの綱は杏のみ。
そんな彼女はまだ冷静に部屋の中を見渡していた。まるでその全てを見透かすように。
イメージするのは尊敬する彼の事。カモシダパレスを探索している時に聞いたある言葉を思い返す。
『ねぇ、ジョーカーってなんでそんな罠とか見抜けんの?私全然分かんないんだけどさ。コツとかあるの?』
『ん・・・簡単だ。周囲をよく見るんだ』
『よく見る?それだけ?』
『勿論、ただ見るだけじゃない。自分なら、相手ならどこに仕掛けるか、どう隠すか。どう騙すか。今回なら鴨志田ならばどうするかを考えて
『へぇ〜、なんか難しそう・・・』
『そうでも無い、慣れれば楽だ。それにパンサーなら多分出来ると思うぞ』
『え?ほんと?』
『ああ、素直で感受性が高く、直感も鋭くて観察力もある。やろうと思えば、直ぐにでも出来るさ。』
『そ、そう?えへへ、なんかすっごい褒められちゃった・・・!』
『お、なら俺どう俺!出来るようになる!?』
『スカルは見破るより蹴破る方が早いってなるから向かん』
『お前に聞いてねぇよモナァッ!!』
『割とそう』
『あれぇッ!?』
(蓮の言う通りに、相手がどうするか考えて、周囲を観て、導き出す・・・)
杏は蓮の言葉を思い出し、全てを観察し答えへのピースを探し出す。まずは辺りに散らばったサユリの贋作を見る。人々を騙し私欲を肥やす為に数え切れない程量産された、嘘で塗り固められた商売道具。
そして次に斑目本人。未だにこちらを舐め腐った目で見てきているが、お構い無しにその目を覗き返す。そこに映るのは他者を欺く為に温厚篤実を装ったどす黒い悪意と虚飾に溢れた本性。
最後に見るのはモルガナが明かした意味深に隠された贋作のサユリ。
自分なりに感じた事を、事細やかに思い返し、探っていく。
どうしてわざわざ、あんなあからさまな置き方をしていたのか?贋作ならそんな隠し方をする必要なんて無いはず。
そう、まるで
自分だったらどんな心理で、斑目ならばどんな狙いで。
探して、観て、考え出した全てを纏めある可能性を導き出す。己の直感、観察眼を最大限発揮した彼女の推理は斑目への静かな怒りと祐介への同調などあらゆる要素全てが彼女の潜在能力を引き上げる事で、一時的に蓮を凌ぐ程の鋭さを見せつける。
「何となく、アンタがどんな人間か分かった。」
「なに?」
贋作のサユリへと歩み寄り、それを見ながら告げると斑目が片眉を上げて聞き返した。何を馬鹿なと言いたげに。だが杏は斑目の方を見もせずに語り続ける。
「嘘で全部塗り潰して、真実を隠して皆を騙す。厚顔無恥な詐欺師、それがアンタの本性。」
「・・・・・・。」
「だから、サユリを隠す方法も何となく分かる」
「なっ」
突然言われた思わぬ言葉に固まる斑目、何を馬鹿なと目を見開くが寧ろそのリアクションが杏の推理に真意を持たせる事になる。杏も確信を持ったのか、斑目の方へ向き直りキッと睨み付けた。
「嘘を聞かせて、贋作を見せて、本物なんて無いって
そう語って杏は贋作のサユリへと手を伸ばし、その表面を掴むと・・・・・・
「あっやめっ!?」
「
思い切り引き裂いた!
「ニャッ!?まさか!!」
「あっ!!そ、それは・・・!!」
そして、ビリビリと破られた贋作のサユリの下から現れたのはクリアケースの中に厳重に入れられた1枚の絵画。虚飾によりその姿を隠されていた真実が明るみになる。
サユリの下から出てきたのは、
「これは・・・!間違いない!本物のサユリだッ!!」
「違う!!贋作だ!!」
「いや!俺の目は誤魔化せない!どういう事なんだ、先生!!」
まさか贋作の下から本物が出てくるとは思わず、動揺していたが真っ先にそれを見抜き、直ぐに激情を顕にした祐介とそれを誤魔化そうとする斑目。しかし彼の審美眼も心も既に師への信用を完全に失っており、通用しない。
そして彼の頭には、異世界の中で見た斑目の心の具現化、無限の泉が過ぎっていた。弟子も、作品も、芸術も。全てが自身の金を生み出す道具であると、考えていると。その事もあり怒りの籠った憤怒の目で斑目を射抜いている。
それに怖気付き、たたらを踏む斑目に更に追い打ちをかける様にずいっと身を乗り出し、迫る事で更に後ろへ下がり、遂に壁へと背中を付ける。
「これみよがしに隠された物、その下から偽物が出てくれば誰もそこに本物が隠されてるなんて思わない。流石、巨匠様ね?その心理と嘘を利用したんでしょ。」
「いつか喜多川くんにバレてもいいように」
「ぬぅ、うぅう〜・・・!!」
彼女の言う通り、贋作被せのサユリは万が一祐介がこの部屋を見ても誤魔化せるように掛けた保険であった。例え正確な審美眼を持っていても本物を隠されれば意味が無い。木を隠すなら森の中とはよく言ったものだ。
だが、その保険がやって来た万が一の事態で自分の首を絞める事となったのだ。完全に逃げ道を塞がれ、言い訳すら出てこない様で唸り声を上げるのみ。
「とんだ認知トリックだぜ、本物を偽物で隠すなんて芸術家として終わってやがる!」
「お、おのれぇ〜・・・!!」
完全に偽りのメッキを剥がされた斑目はその本性をもう隠そうともせずに杏達を忌々しげに見ながら歯を食いしばっている。やがて腕の袖口に手を突っ込むと携帯を取り出し、即座に何処かへと連絡を入れた。
「警備会社に通報してやったわ!!話ならそこでたっぷりするといい!お前もだ祐介!!」
「ッ!アンタって人は!」
豹変した斑目は最早なりふり構わなくなり、師の仮面すら外して祐介すら捕らえようとしている。この事実を外へ漏らさない様に、自身の保身の為に。その余りにも身勝手な振る舞いにとうとう我慢の限界を超えた祐介が掴みかかろうとしたが、直前に杏が押さえ込んで止める。
「ちょ、待って喜多川くん!」
「杏殿!異世界ナビだ!あっちに避難しよう!」
「そ、そっか!うん!喜多川くん来て!」
「待ってくれ!俺は!俺は!!」
「いいから早くッ!!」
モルガナの提案を聞いた杏はまだ斑目へと向かおうとする祐介の手を両手で掴んで無理矢理引っ張って部屋の外に出し、モルガナが追い付いた瞬間に異世界ナビを起動し、パレスの中へと緊急避難した。
一方その頃─────
ジョーカー&スカルペア
「アイツら大丈夫かなー、正直かなり成功率低いと思うんだけどよ」
「大丈夫、2人ならきっと成功させるはずだ」
「えー?マジで?」
「よし、じゃあ次は指スマやろう」
「え?いっせーのじゃねぇの?」
「え?いやいや」
「え?いやいやいや」
モルガナと杏の作戦を待っている間、マダラメパレスの襖前でアルプス一万尺をやって暇潰しをしている2人。それまでに様々な指遊びではしゃいでいたが、遊びの名前で議論に投じていた所突然辺りに張り巡らされていた赤外線が消失した。現実世界で斑目の襖が本人の前で開かれたのだ。
「お、おぉぉぉ!!!開いたァ!!やったのかアイツら!」
「ああ、やってくれたようだ。早速行こう、スカル。」
「おう!!アイツらが頑張ったんだ!今度は俺らの番だぜ!!」
遊びを切り上げて漸く開かれた堅牢な襖の中へ気合いたっぷりに乗り込んでいく2人。当然、制御室までは警備員の守りが厚かったが破竹の勢いで突っ込んでくるスカルとジョーカー*2に尽くなぎ倒され、あっさりと突破されていく。だが、それに耐えた強敵シャドウがその姿を変貌させて彼らの前に最後の壁として立ち塞がる。
『うおおおお!!ここは通さんぞ賊共!!マダラメ様の為にぃ!!』
「ハッ、んなら力ずくで突破させて貰うぜぇ!」
「押し通る」
『バゥッ!』
警備員のかたちが溶けて辺りに墨のように黒い液を撒き散らしながら上級シャドウ、『
『喰ラエェェ!!』
「うぉ、狙いは俺か!けどよぉ・・・俺だってパワーにゃ自信があるんだぜぇ!!迎え撃てキャプテン・キッドォォォ!!!」
『ヌォッ!?』
迫り来る爪に対し、走りながら殴り飛ばすように腕を振り抜きそれに呼応して凄まじい勢いで飛び出したキャプテン・キッド。砲弾の如き『アサルトダイブ』により船体がヌエの腕を弾き、どころかその巨体すらも吹き飛ばす。着地も出来ずに背中から落ちたヌエは即座に起き上がろうとしたが目の前に身麗しい踊り子のような女性が現れていた。
『コイツハッ・・・!』
「『アプサラス』ッ!!」
それはこのマダラメパレスで手に入れたジョーカーのペルソナであるアプサラス、彼女はその綺麗な空色の手をヌエに向けて翳す。スキルを発動しようとしているようだが、そこに感じる冷気にヌエはほくそ笑んだ。
(フ、馬鹿メ!ソイツノ技ハ知ッテイル!私ハ氷結ニ対シ耐性ヲ持ッテイルンダ!発動シタ瞬間ニ反撃デ痛手ヲ負ワセテヤル!!)
そう、ヌエはアプサラスが持つ
否、そもそも
ギチィッッ!!
『エ?』
誰も馬鹿正直に氷結を使うとは言っていない。
「『金剛発破』!!」
『オォラァッッ!!!』
『ウゲェェェェッッー!!??』
その細腕からは想像もできないほどに強烈な腰の入った打撃が叩きつけられ、ヌエの腹部に波を起こしながらめり込む。その衝撃たるや床に円形の陥没を作るほどであった。
『キャオラッ!!』
『チョ、マッ、グベ!?』
何を隠そうこのヌエをボコるアプサラス、こういった相性面で意表を突く為に物理面を強化したタイプなのだ。マダラメパレスにシャドウとして普通におり、通常の手の内がバレてるからこその戦術だ。
勿論、ブフも使えるが寧ろメインはこっち。氷の妖精から拳で戦う系美女にスタイルチェンジ。こっそりタルカジャ二重掛けにアドバイスも積んでるので先の打撃は想像を上回るほどの馬鹿威力となっていた。ヌエ可哀想。見てあれ、世紀末覇者先輩みたいに殴った拳の形に陥没してるよ。
コォォーと白い吐息を出して佇んでいる姿は正しく鬼神。背中に鬼が宿ってる。しかも指示出して無いのにヌエを蹴り飛ばした。これにはジョーカーも困惑。
しかしアプサラスが横目に見ながら顎で使うとジョーカーは従順にペルソナを切りかえて追撃を行う。
「チェ、チェンジ!『ジャックランタン』!」
『うぉぉー!やったるヒホー!』
「燃やせ、『アギ』!」
蜃気楼のように消えたアプサラスの代わりに元気いっぱいに飛び出して来たのはピクシーを出し抜きマスコットキャラ枠を狙っているペルソナ、ジャックランタン。手に持つ角灯に揺らめく炎が火球となり、ヌエへと襲いかかる。
『ウ、グ・・・ハッ!シマッ!?グアァァァァッ!!??』
氷結のブフとは違い、火炎のアギが弱点のヌエ。アプサラスから受けたダメージが大きく、回避できずに致命的なダメージを受けてしまった。グラリと巨体を揺らし倒れ伏したヌエに一気に畳み掛けに行く2人。
『ヤッター!火達磨ヒホー!』
「トドメだ、行くぞスカル!」
「しゃアッ!!」
2人だけだが総攻撃でヌエを袋叩きにすると最後にはキッドとアルセーヌが同時に仕掛け自慢のフックと爪でX字に切り裂き、完全に消滅させた。
「おっしゃ!ナイスコンビネーションだったぜジョーカー!」
「ピカチュウ!」
「それ属性的に俺の枠じゃね?」
「俺はコイツと旅に出る、利休〜!」
「人違いです」
「利休の腕、俺によく馴染むぜ」
「
「父親似のゾロ」
「いらん情報寄越すな」
ともあれ、強敵を倒した2人は仲良くハイタッチした後に制御室に向かう。奥に見える巨大な像を見て「ああ、なんかカモシダのとこでも見たなあれ」とシラケた目を向けながら制御室へ入り込み、警備システムをダイナミックタッピング*3で解除してその場を後にした。
道中、警備に見つかりそうになったものの得意のゴリ押しで全員叩き潰して襖前まで戻ってきた2人。*4
「ちゃんと警備は解除されているようだ」
「ふぃー!これでこっちのミッションは達成だな!後はパンサー達と合流するだけだ!アイツら上手く逃げてっかな・・・ん?」
2人が達成感に浸っていると上の空間が変に歪み始めた。まさか新手か!?と警戒するスカルだったが、そこから聞こえてきた悲鳴に来訪者の正体を察する。
「ぬおぉぉぉぉーーッ!?」
「きゃあぁぁぁーーッ!?」
「にゃんとぉぉーーッ!?」
歪みの中から降ってきたのはパンサー達3人だった。あのあばら家から誰にも捕まらずに逃げる為に異世界へと入り込んだが、起動の瞬間に移動しながらの異世界への侵入は侵入地点を大きく歪めてしまったようで美術館の入口前とは全く違う場所に飛ばされてここへと、しかもZ軸もズレて宙へと投げ出されてしまったらしい。
3人仲良くフライアウェイしたが、祐介はパンサーを落っこちないように抱えて地面へと着地する。当然、彼の腕には彼女のふんわりウェイトが乗っかりビリビリと衝撃に震えていた。おっと、女の子は羽毛のように軽いのでこれは祐介の着地の仕方が悪い。間違いない。うん。
「ぐぅぅ・・・」
「にゃぁーーっ!?ぎゃふっ!?」
「ぬおぉっ!?」
しかもそこへモナが頭上に落ちてきた事で祐介はパンサーを抱えながらダウンすることとなる。
「おぉー・・・大丈夫か?」
「だ、大大、大丈夫・・・だ」
「めっちゃ足震えてっけど・・・てかパンサーも早く降りてやれよ」
「ご、ごめん!今降りる!」
プルプルと産まれたての子鹿のように足を震わせる祐介を見て慌ててその腕から降りるパンサー。ほぼ無いも同然だが、多少の重みか無くなったからかドサッと腰を下ろす。
「はぁ・・・はぁ・・・ここは、例の異世界か・・・先生の心の中・・・」
「ああ、まさか直接ここに落ちてくるとは思わなかったぜ」
「夢中で逃げてたからね・・・喜多川くん?」
腰を下ろしてから辺りを一瞥し、俯いて黙り込んでしまった祐介。そんな彼の異変に気がついたパンサーが駆け寄り、降りた時に足を捻ったのかと心配していると彼は拳を強く地面に叩きつけた。
「クソッ!!何故だ!!何故・・・!!この世界もやはり真実だと言うのか・・・!今までずっと騙していたのか・・・!サユリも・・・!」
ただ怒りのままに地面を叩きつける祐介。無理もない、心から尊敬していた偉大なる師が、雄大なる義父が裏では自身の原点である絵を複製して売り払い、金儲けの道具にしていたと知れば。これまでの弟子も、自分自身もその道具の一つと知ってしまったのなら、ここまで怒りを顕にするのも当然だ。
あれほど信じていたのに、斑目は最後には祐介の手を振り払い彼を裏切った。それが、彼の心の中にある兆しを見せる。心の底から冷えていく、怒髪天の極みが。
「お、おいおいどうしたんだよ」
「実は・・・」
「待った、パンサー。パレス内の警戒度が恐ろしく上がってる。ここに留まるのはマズイ、その事は移動しながら話そう」
「そ、そうだね・・・喜多川くん、大丈夫そう?」
「・・・・・・あぁ、すまん」
明らかにパレス内の警戒が高まっており、今にもシャドウが湧き上がってきそうなのを感じ取ったモナの助言により移動しながら事の顛末を説明するパンサー達。その間も後ろを走る祐介の表情は暗く、怒りが滲んでいる。
「ハァッ!?本物はホントに斑目が持ってて、しかも偽物を上に被せて隠してただァ!?どこまで腐ってんだあのジジイ!そんなん喜多川騙し続ける気満々だったって事だろ!?とことんクソだな!」
「パンサー、良くやってくれた。ホントに。マジで。なんでも奢ります。」
「う、うん。ありがと。え?どうしたのジョーカー?そんなに?」
知らない内に予測不可能詰み要素が襲いかかっており、絶対絶命のピンチを解決してくれていたということでジョーカーは本気でパンサーに感謝していた。それはもうめちゃくちゃ感謝していた。なんなら走りながら土下座しそうな勢いだ。等速直線運動で。
そりゃ(知らない内に詰みかけてたのを回避してくれたなんて)そう(五体投地どころか五体浮遊もする)よ。
ハンター協会の会長並に感謝を伝えるジョーカーは仏に祈るように手を合わせて頭を垂れている。走りながら。からのフォトンストリーム。
「だぁーっクソッ!怒りが収まらねぇ!とにかくこっから出るぞ!んで、喜多川を志帆に預けてソッコーで攻略してやる!!」
「あほ、こんな警戒度の中でどうやって攻略すんだよ。気持ちは分かるが一旦帰還して少し時間を置かなきゃ袋の鼠だ。」
「んなのやってみなきゃ分かんねぇだろ!」
「思い上がってんじゃねぇぞ!向こうは実質無限の兵を持ってんだ!数の暴力が如何にヤバいかはお前もよく知ってんだろ!鴨志田のとこで何学んだんだ!」
「っ!け、けどよぉ!!」
これからの事を決めようとしていがみ合う2人。いつもの事だが、今回は空気が宜しくない。怒りと焦りと意地が口論をヒートアップさせないうちに鎮火させなければ、と考えたジョーカーは先程までのお巫山戯ムーヴを潜めリーダーらしく堂々と、引き締まった雰囲気を纏って2人の方を向く。
「そこまでだ2人共、いがみ合っても仕方がない。スカル、どうあれ喜多川を抱えてるなら一度退くしかない。悪いがここは折れてくれ。モナ、何時だってクールなのがお前だろう?心配しなくともスカルを思っての事だとは分かっているさ。」
「べ、別にそんなんじゃねぇーし!!」
「う、むぅ・・・ぁーったよ!悪かったな、モナ、ジョーカー。」
リーダーらしくビシッと決めた事で2人の雰囲気が軟化し、無事大火事にならなくてすんだ。よしよし、みんな仲良くね。
久々にリーダーらしい所を見せたジョーカーに「こういう所は流石だよね」と尊敬の眼差しを向けるパンサー。よせやい*5。まぁ数秒も経てば直ぐにいつもの変なジョーカーに戻るんだが。
逃走中に仲違いという最悪な事は起こらず、順調に出口へと進むジョーカー達。しかし無限の泉があるブースへ入った瞬間、異様な雰囲気を感じ取った。
「ッ!これは・・・!?皆、逃げっ」
経験からそれが何かを察知したジョーカーだったが、しかしもう遅い。ジョーカーの警告が届く前に通って来た扉のロックが閉まり、引き返すことが出来ずに上から降ってきた
「うぉ!?なんだこれ水か!?」
「いやこれは、墨だ!」
「なんで墨がっ、て・・・あれ?」
いきなりかけられた液体の正体は祐介が直ぐに看破したように、大量の墨であり全員が全身にそれを浴びてしまった。とはいえただ濡れただけで特に問題は無いと判断したパンサーが駆け出そうとして体を倒した瞬間、ガクリッと膝を折り坂を転がり落ちそうになる。
「おいパンサー!うおっ!?」
「うにゃっ!?」
「ぬぉっ!?」
「ぐぅっ」
それを助けようとしたスカルも自慢の力が入らずにパンサーと共に倒れ、巻き込まれるようにモナと祐介、そして彼らのクッションになろうとしたジョーカー達全員が坂を転がっていく。
アルセーヌを呼ぼうとしたが大きな倦怠感によって呼び出せず、仕方がなくコートを脱いで全員を覆って少しでも怪我をしないように配慮したジョーカー。下まで落ちるといつもよりもキレが落ちているが皆の無事を確認してから華麗にコートを着直し、周囲を警戒する。
(アルセーヌが呼べなかった・・・それにこの独特の倦怠感・・・やはり)
ジョーカーは自身がかぶった墨の正体に気が付いた。このパレスの主が使う特殊な墨、喰らえば力を吸い取られ全ての攻撃が弱点となる非常に危険な物。そんなものを不意打ちで浴びてしまった。
この状況はとてもマズイ。まさかこんな手を使ってくるとは、ジョーカーは歯噛みしながら何とかペルソナを引き出そうとする。これから現れるこのパレスの主に対抗する為に。
「くそっ!んだよこの墨!力が入んねぇ・・・!」
「ペルソナも・・・出せない・・・!?」
「マズイぜ・・・こんな状態で敵でも来たら!」
スカル達も同様、いやまともに動けない分ジョーカーよりも酷い。モナがそう焦って口にするのと同時に、憎たらしい笑い声が響き渡る。
「ウワァーハッハッハッハッ!!」
ピカーーッ!!
「なんっうぉ眩しッ!?」
その笑い声が聞こえた方へ反射的に顔を向けると・・・
「妙な気配がすると思えば、こんなにでかい鼠が入り込んでいたとはな」
無限の泉の中からいきなり眩い光がビカビカと溢れ出す。
そしてその光と共に無駄に壮大なポーズでゆっくりと見せびらかすように現れたのはこのパレスの主、斑目であった。しかもその姿は非常に成金めいており、金の浴衣に金の草履、金の扇子、etc・・・そして何より白塗りの顔に偉そうなちょんまげ。
その姿はまさに城の殿様である。
「誰!?って、うっそ・・・」
「こんの・・・巫山戯た格好しやがって・・・!王様の次は殿様かよ!あの銅像のまんまじゃねぇか!」
まさかの登場に絶句するパンサーに斑目の趣味の悪い格好に舌打ちを零すスカル。そんな彼らを見下しながら斑目は無限の泉の前へ降り立ち、ふんぞり返って両腕を大きく広げた。
「ようこそ、斑目画伯の美術館へ。」
「斑目・・・!?な、んだその姿は・・・!」
斑目の普段の質素な格好からは想像も出来ない程に金を塗りたくった風情も何も無い様な姿を見て目を見開く祐介。それを見てシワの多い顔を更に笑みで歪めて楽しげに話し始める。
「んん?あぁ、これか?これが本来の正装なのだ。あんなみすぼらしい格好は『演出』だ。有名になってもあばら家暮し?そんな訳あるまい、別宅があるのだよ・・・女名義だがな。」
「なん・・・だと・・・!?」
あまりにも低俗な本性を見せた斑目に大きなショックを受ける祐介。ワナワナと怒りと失望に震えながら自身を見る彼に斑目は楽しげに髭を弄ってニヤついていた。
「随分と汚れた名義だ、巨匠の名が泣くな」
「ふん、現実も知らぬ青臭いガキめ。気に食わん、今すぐ消してやろうか。」
しかし墨を浴びながらも唯一自分に対抗出来そうなジョーカーが皮肉を飛ばしてきたのを見て笑みを消し、彼を睨みつける。目障りだと感じたのか警備員でもけしかけようと手を僅かに上げたが、祐介が奴に語りかける事でそれは中断された。
「・・・聞かせてくれ。何故、サユリを隠していた。どうしてあんなにもサユリを書き置いていた。お前が本人だと言うのなら、その本心を・・・。」
力が入らない体に鞭を打ち、無理矢理起き上がってそう聞いた。その顔は、項垂れているので表情は見えない。そんな状態の彼にまた愉悦の笑みを出した斑目はまた語り始めた。
「ふむ、まぁいいだろう。例えばこんなのはどうだ?『本物が見つかったが公にできない事情がある、特別価格で譲りたい』・・・どうだこの特別感!俗人共は大枚はたいて食いついてくる!『盗まれた』という演出!デマから産まれた特別という『ブランド』!最高のビジネスだと思わんか!」
大口開けて笑う斑目。そこから語られたのはあまりにも汚く、あまりにも欲深い人の醜さの極地。人を騙し、芸術すらコケにした最低の亡者。その醜さは彼らに前パレスの主鴨志田を思い起こさせる。
「サイテー過ぎるでしょ!!」
「絵の価値など所詮は思い込み、ならばこれも正当な『経済行為』だ!ガキには想像出来んだろうがな。」
「さっきから聞いてりゃ、金、金、金・・・道理でこんな気持ち悪ぃ美術館が出来る訳だぜ!」
「あんた芸術家なんでしょ!盗作とか恥ずかしくないわけ!?」
「ふん!芸術など道具に過ぎんわ!金と名声の為のな!」
パンサーとスカルの糾弾を聞いても鼻で笑い、相手にもしようとしない。ただの雑音として聞き流した斑目はまた祐介へと向き直る。
「お前にも稼がせて貰ったぞ?祐介。」
「・・・あなたの才能を信じている者は。天才画家と信じてきた人々は。今までの弟子達は・・・。」
最早言葉に力が入らず、小さくそう呟いた祐介に斑目はまたつまらないことを、とため息を吐きながら答える。
「これだけは言っておいてやる祐介。この世界でやっていきたいのなら私に歯向かわぬ事だ。私に異を挟まれて出世など出来ると思うか?ハハハハハ!!」
「テメェェェ!!ぶん殴って・・・ぐぅ!?クソ、力がでねぇ・・・!」
あれほど尊敬していた師の口から吐き出された下衆な思考。これまでの思い出も、投げかけてくれた優しさも、暖かさもその全てが打算の上でのものだったのか。嘘に塗れたものだったのか。
祐介は心を染める絶望に膝を折って床を力強く殴りつける。
「こんな・・・こんな我欲に塗れた男に世話になっていたとは・・・!!」
「ただの善意で引き取ったとでも思っていたのか?有能な弟子を集め、着想を吸い上げれば才能ある目障りな新芽も摘み取れる。着想を頂くなら大人より言い返せん子供の将来を奪った方が楽だ。家畜は毛皮も肉も剥ぎ取って殺すだろう、それと同じだ。」
「なんて野郎だ・・・正気の発想じゃねぇ」
「ッ・・・・・・!」
「喋り疲れたわい、そろそろ・・・」
外道も外道。最早人の形をした悪魔とも言えるほどの醜悪な心を隠そうともせず教え子であり育て子の祐介の前で無遠慮にベラベラと喋り倒した斑目は項垂れたまま動かない彼に全く興味を見せずに手を上げて周囲に無数のシャドウを呼び出してジョーカー達を消そうと囲い込む。
そして1番斑目に近い場所にいる祐介が最初にその脅威にさらされてしまい、彼の前に
「喜多川くん!!」
「おい喜多川!下がれ!そこに居たら!」
「待て2人共」
「え!?」
「何すんだよジョーカー!このままじゃッ!?」
スカルは必死にそう叫ぶが、ジョーカーが彼らの前に庇うように立ち逆に彼から離れるようにジリジリと後退していく。それに抗議の声をあげようとしたスカル達だったが、ジョーカーの冷静な返答に口を噤んだ。
「いや大丈夫だ、寧ろ・・・」
バキッ・・・
ジョーカーは感じ取っていたのだ。彼の中で目覚めた凍えるほどの激情と強大な力の目覚めを。
「下がるのは俺たちの方だ」
しかもその覚醒は恐らく従来のものを遥かに超えた・・・
「・・・許せん」
「んん?」
「・・・・・・そんなはずは無いと、俺は長い間目を曇らせてきた。人の真贋すら見抜けぬ節穴とは・・・まさに俺の
「貴様を親と慕った子供達・・・将来を預けた弟子達・・・一体何人踏みにじってきた・・・?一体どれほどの夢を金で売った!?」
「決して・・・決して許すものかッ!!斑目一流斎!!」
凄まじい爆発力を発揮すると。
『ようやっと目が覚めたかい?』
ドクンッ
そして、氷の蕾が花開く
「ぐあぁ!?」
頭が割れそうな程の痛みに祐介は頭を抑え、悶え苦しむ。体の芯から冷え込むような痛みは、やがて心の奥底に眠る氷塊にヒビを入れ封じ込めていた
『真実から目を背ける貴様こそ、何より無様なまがい物・・・』
長い長い冬を超え、降り積もられた分厚い雪下を超えて、今まさに百花繚乱が姿を現し、目覚めた怒りが産声を上げる。
『たった今、決別するのだな・・・!』
痛みに倒れ、血が滲むほどに力強く爪を床に這わせる。血の盟約を果たすようにその血痕は青い炎と蒼き氷に包まれて周囲を渦巻く嵐となる。イッポンダタラを巻き込み、凍らせ、打ち砕く嵐はやがて祐介の姿が見えなくなる程に激しさを増していく。
『いざや契約、ここに結ばん』
『我は汝、汝は我・・・』
『我は汝の心の氷獄より出でし者・・・!』
「こいつは凄いぞ・・・!にゃにゃにゃ・・・!?」
「すげぇ、けどこれ俺らも巻き込まれてブブブ!?」
「凄まじい気の流れ・・・」*6
シャドウも、斑目も、ジョーカー達すらも見境無く、周囲の全てを凍てつかせ氷の壁を形成しながら吹雪いていた嵐は突如としてその姿を消し蕾のような形となった氷の中で、祐介がその顔に狐の仮面を付けて姿を現した。
『人世の美醜の誠のいろは・・・今度は貴様が教えてやるがいいッ!!』
「よかろう・・・」
心の声に従って、体を大きく動かして仮面にゆっくりと手をかけると・・・
「来たれよ・・・
五右衛門ッ!!」
呼び声と共に勢いよく剥ぎ取った!
バキィィィンッ!!!
踊り舞う鮮血、花と散る仮面、そして溢れ出る力の奔流。
飾られた徒花の姿はもうそこには無い、そこに立つは己が道を行く雄々しき一本晚花。絶許を誓う美しき黒百合。
その身を和モダンな印象のゆったりとした白黒スーツの怪盗服へと包み、水色の手袋を着け、腰には狐の尻尾のような装着品を下げている。
そしてその後ろには巨大なキセルを咥えた歌舞伎役者のような粋な偉丈夫、地獄の大釜より鎖と共に現れた世紀の大盗賊『ゴエモン』が出現していた。
その言葉とどこからが響いてくる柝の音と共に2人は全く同じ動きで見得を切り、斑目達を鋭く睨みつける。今にも襲い掛かりそうだったシャドウ達もその圧力には動きを止めざるを得ない。
「まがい物とて、こうも集まれば壮観至極・・・悪の華は栄えども、醜悪、俗悪は滅びる定め・・・!今この場で、成敗してくれよう!」
「お、おのれいきがりおって!者共!出合え出合えぇー!!」
祐介の見得の迫力に僅かに後ずさっていた斑目だったが、直ぐに立て直すと無数のシャドウを呼び出す。無限の泉の中から溢れ出すように湧いてくるシャドウ達を前にして祐介は手を大きく振るうと飛びかかってきたシャドウを凍てつく風によってなぎ飛ばし、同時にジョーカー達を苦しめていた墨を凍らせ、砕く事でデバフから解放した。
弱体化が無くなって自由に動けるようになった彼らはすぐさま祐介の隣に並ぶように立ち、シャドウの軍勢の前に立ちはだかる。
「すまない、助かった」
「気にするな、もののついでだ。それよりも手を貸してくれ、奴をたたっ切る。」
「ハッ、言うじゃねぇの。お手並み拝見ってやつだな!」
「望むところだッ!」
祐介がそう叫びながらシャドウ達に単身突っ込む事で戦いの火蓋は切って落とされた。いつの間にか出現した日本刀を向上した身体能力で抜き取り目にも止まらぬ居合切りでコッパテングを両断すると流れるように次々と切り伏せていく。
『こ、このっ!』
「邪魔だ!」
『おぐっ!?』
持ち前の素早さでどんどんシャドウを切り倒していく祐介にハンマーを振りかぶるイッポンダタラだが、彼の後ろに立つゴエモンがその手に持つ巨大なキセルでがら空きの胴体をぶん殴り吹き飛ばした。多数のシャドウを巻き込み壁をぶち抜いて消滅したイッポンダタラに目も向けずすぐさま後ろから襲い来る敵へターゲットを移す。
「凍りつけ!」
『ギャッ!?』
『つ、冷っ!?』
「切り捨て御免!」
『グアアアア!?』
振り向きざまにブフを放ち、襲ってきたシャドウ達を纏めて凍らせてそのまま切り砕く祐介。同時にゴエモンもそのキセルでシャドウ共をなぎ倒していく。その暴れっぷりは凄まじく、ジョーカー達も下手に近づけもしない程であった。
「すっげーなアイツ、俺んときより暴れてね?」
「そんだけ怒りが凄いって事だろ、こっちも負けてらんねーぜ」
「そうだね、いくよ『カルメン』!」
「しゃあっ!俺も!ぶっぱなせ『キッド』!!」
「おいおい、はしゃぎすぎんなよ。怪盗はクールにかつスマートにだぜ?そうだろ、『ゾロ』!」
祐介の戦いを見て負けていられないと奮起した3人はそれぞれのペルソナを呼び出し、シャドウ達を蹂躙していく。
「チェンジ『アメノウズメ』、『メディア』『闇夜の閃光』『マハラクンダ』」
『ふふっ』
もちろんジョーカーもそれに合わせて攻撃し、更に戦況を優勢に運んで行く為にバフデバフを振りまいて回復までこなしていた。流石怪盗団の過労死枠。クソギミックぶりにシャドウ達はブチ切れ状態だ。
『ぐぁ!?急に防御が!?』
『くそ!まずアイツを何とかギャッ!?』
「オラオラァ!ジョーカーの邪魔はさせねぇぞ!」
「ジョーカーのおかげでかなりやりやすくなってる!今が好機だ!畳み掛けるぞ!」
『ヌオォォ!!サセルカ!!』
「む」
進撃が止まらない怪盗団に向かって持ち前のタフネスで突っ込んでくるヌエ。ジョーカーとスカルの2人が戦った個体よりかは弱いがそれでもその巨体は脅威だ。特にまだ相性の有無も知らない祐介にとっては。
「ゴエモンッ!」
『馬鹿メ!コノ程度!!』
「何っ!?」
覚醒補正のあるブフですら耐え切るヌエ。反撃の爪を突き立てようとするが、しかし奴が戦っているのは祐介だけでは無い。フルメンバーの彼らに死角はないのだ。
「パンサー、頼む『タルカジャ』」
「うん!任せて!踊れカルメンッ!」
『ハ!?ヌギャァァァー!?』
氷結の向こうから舞うように現れたカルメンが投げキッスを投げるとたちまち情熱的な業火となり、ヌエの体を焼き尽くす。その隙に斬撃を浴びせ、確実にトドメを刺す祐介。
「すまん、助かった」
「気にしない気にしない!さ、ドンドン暴れちゃお!」
「ああ、俺も筆が乗ってきたところだ・・・!」
その言葉通り、先程よりも速度が増した斬撃で次々とシャドウを切り刻んでいく祐介。そしてそれに続くようにジョーカー達も暴れ回り、斑目の兵が押され始めている。それを見て斑目は顔を歪ませて更にシャドウを湧かせ始めた。
『おのれ〜・・・!図に乗るなぁぁぁぁ!!!』
「チッ、やっぱり無限湧きかよ!お前ら!一気にぶっぱなして隙を作るぞ!」
「おう!んならぁ・・・総攻撃だァッ!!」
ブチィッ!!
斑目を守る為に無限の泉から次々と溢れ出るシャドウ達。それを前にしてもジョーカー達は揺るがない。シャドウの群れを吹き飛ばし、総攻撃で一気に数を減らして堅牢な守りを剥がして撤退の隙を作ったが、その際に斑目の守りが手薄になったのを見て祐介が単身突っ込んでしまう。
「よし今だ!撤退・・・ってにゃあ!?」
「バっ!?喜多川!?」
制止をする暇も無く、祐介は抜き身の刀を構えながら即座に接近し、奴を斬ろうと振りかぶる。その激しい怒りに身を任せてかつて恩師であった外道を討つ為に。
「この期は逃さん!斑目、覚悟!!」
「待って!今斬っちゃったら!!」
パレスの主を殺してしまえば現実の斑目も廃人となり死亡してしまうかもしれない。例えどんな大悪党だろうと殺すのはマズいと止めようとしたパンサーだったが、その言葉が届く前にその事実を知らない祐介は迷いなく刀を振り抜いた。
・・・・・・しかし。
「ふぅ、危ない危ない。もう少しで斬られるとこだったわい。」
「なに・・・!?」
幸いと言うべきか、斑目は斬られることは無かった。奴の足元から現れた巨大なシャドウ『シキオウジ』が祐介の攻撃を弾いたのだ。
「残念だったのう・・・では、さらばだ」
「ッ!待てぇ!!斑目ぇぇえぇぇ!!!」
『貴様の相手は私だ!』
「邪魔をするなぁッ!!!」
シキオウジに阻まれている間に斑目は無限の泉の中へ解けるように消えていく。それを見た祐介はシキオウジを弾き飛ばして後を追おうとするも、相手は物理無効を持つ厄介なシャドウ。怒りと焦りに任せた攻撃を尽く無効化され、標的を目の前でみすみす逃す羽目になってしまった。
「斑目・・・!!斑目ぇぇぇ!!!」
『ふん、愚かな賊め。偉大なる館長様に歯向かうとは・・・許さん!今まで授けられた大いなる愛に背いた罪、死を持って償え!』
「・・・なんだと?」
怒りに燃える祐介はシキオウジの『挑発』にまんまと乗ってしまい、行き場のなくなったその刃を容易く向けてしまう。
「貴様、今なんと言った。愛、愛だと・・・巫山戯るな!!あんなものが愛な訳があるか!!」
『大人しく道具に成り下がっていればこれからも無償の愛を与えられたものを・・・救えん奴らだ。貴様も、今までのガラクタ共も!!』
「もういい、黙れ・・・!貴様は鯰切りにしてやる・・・!」
『ハッ、馬鹿め!返り討ちにしてやろう!』
「バカ!無闇に突っ込むな!クソ、邪魔だシャドウ共!」
頭に血が上りシキオウジに向かって無策に突っ込んでいく祐介。彼を止めようとするがモナ達は新たに湧いてきたシャドウ達に邪魔されて援護に迎えない。対するシキオウジは祐介の攻撃を無効にした後、確実に仕留める為に『ダブルシュート』を構える。
流石にこれは見過ごせないとジョーカーは目にも止まらぬ速さでミセリコルデを振り、周囲のシャドウを切り裂いて僅かな隙を作る。その間にスカルに向かって走り寄りながら手でサインを送る。
「スカル、頼む」
「は?・・・ああ、そういうことか!任せろ!!」
サインがしっかり伝わり、スカルは手に持つ地味に新装備の重鋼管を斜め下に構える。それにサムズアップをした後、重鋼管に向けてジャンプし飛び乗った。
「シャアッ!行ってこい!!」
当然スカルの腕に大分負荷がかかるがそこは元運動部の脳筋マン、ギチギチと音が鳴るほど力を込めて上空へジョーカーを打ち上げる。シャドウの群れを飛び越えてシキオウジの真上まで飛んでいく。それを阻もうとしたイヌガミを呼び出した『彼女』のスキルカードで追加した『目眩し』で眩暈状態にした後、足場にしてシキオウジに狙いを定める。
「『ピクシー』、『ジオ』」
『はぁい、ダーリン♡』
ジョーカーにひっつきながら指先に溜めた電撃を真下のシキオウジに向けて放つ。祐介が接敵するよりも速くシキオウジに届き、その体を貫く。
『グオォ!?な、なんだ・・・!?体が、痺れ!?』
「これは・・・」
麻痺状態になったシキオウジを見て目を丸めた祐介の隣にイヌガミを撃ち消したジョーカーが顔にピクシーを貼り付けた状態で降り立つ。
「祐介、コイツには物理攻撃は効かない。氷結をぶつけろ。」
「む、そういう相性もあるのか・・・ならば!」
それを聞いた祐介はすぐさまゴエモンの拳にブフを固め、動けないシキオウジに向けて思い切り殴り付けた!
「こうしてくれる!!」
『ウゴベェ!?』
ぶん殴られたシキオウジはあまりの威力に体をくの字に曲げて吹っ飛んでいき、他のシャドウを巻き込みながら無限の泉にぶつかり、墨になって溶け消滅した。しかもその衝撃でシャドウの湧きが止まり無限クソゲーもストップとする。
「ナイスだ!シャドウの湧きが止まったぞ!」
「じゃあちゃっちゃとコイツら倒しちゃお!」
「オラァ!ぶっ倒れろこの野郎!」
残るシャドウ達も一網打尽した彼らはジョーカー達に駆け寄る。
「大丈夫か2人共!」
「ああ、問題ない」
「俺も・・・うぐ」
ジョーカーと同じように平気だと返そうとした祐介だったが、シャドウがいなくなったことで張り詰めていた緊張が緩んだのかガクリッと膝をついてしまう。初覚醒の反動が来たのだろう、極度の疲労により体が震え脂汗が溢れだしている。
そんな彼にジョーカーは肩を貸し、体を持ち上げる。その足元でパレスの気配を感じ取っていたモナは舌打ちを零し、先導して出口への道へ駆け出す。
「一息つきたいとこだが、まだ警戒度は高いままだ。さっさと外に出よう。」
「待ってくれ!奴を、斑目をまだ・・・!」
「いい加減にして!!」
満身創痍の状態でも斑目を追いかけようとする祐介にパンサーが声を張り上げて叱咤する。急な大声に目を白黒させてパンサーを見る祐介。彼女の鋭い視線が彼を射抜く。思わずジョーカーも身震いしてしまった。
「な・・・。」
「気持ちは痛いほど分かる!でももう限界でしょ!そんな状態でアイツと戦っても逆にやられるだけ!今は私達の言う通りにして!いい!?」
「あ、あぁ・・・分かった」
きっと祐介の姿に自分が覚醒した時の事を重ねているのだろう。気持ちが分かるからこそ、自分の時以上に激しいその暴走を止めるのも自分の役目だと判断し厳しく当たっているのだ。そしてその威圧感にみるみるうちに戦意が萎んでいく祐介。大人しく彼女の言う事を聞いてくれた。
見ていたスカルとモナも抱き合って縮こまっている。仲良いね。
「怖ぇ〜・・・」
「逞しいな」
「パンサー、凄まじい迫力だ・・・そこがまたいい・・・」
「アンタらもうっさい!さっさと脱出!はい走って!!」
「「「イ、イエスマム!!」」」
あれ?リーダー枠取られた?
そう思いながら祐介を抱えてえっちらおっちらと美術館を抜け出すのであった。
ペルソナ3Rがもうすぐ発売しますね。自分3は序盤の覚醒と主人公がキタローって呼ばれてる事と結末以外ミリしらなのでめっちゃ楽しみです。アルセーヌも出るっぽいしやるっきゃないぜ!心が持つかは知らん!
あとペルソナ5D、実はやった事がなかったので買ってみました。セールで安かったし。リズムゲーが苦手なのでやらなかったけど、ファンとして、二次創作作ってる身としてやってみようと思いまして。Q2?3DS持ってないし・・・(震え声)