君になりたい仔羊いっぱい
最強の存在の手から大切なものが零れ落ちていくのがトラウマで癖です。
へ、へへ・・・エタりかけてたぜ・・・。消える一歩手前まで行って耳元から「お前が始めた物語だろ」と何者かに囁かれたのでがんばりました。
注意!今回約一名のキャラ崩壊が激しいです。こんなの俺の知ってるマイ・ディア・ジョーカー(ネタバレ)じゃない!という方はお気を付け下さい。ま、今更やろ(鼻ほじ)
吉祥寺で竜司とダーツを楽しんだり、雨の中芳澤と相合傘をしながら色々聞いたり、岩井の所で有益な情報を収集して信頼を深めたり、空いた時間で治験をしたりと多忙ながら充実した日々を送っている蓮。
銃のカスタムの腕を岩井に褒められた事で上機嫌な彼はルンルン気分で廊下を歩いているととある貼り紙を見つけた。
それは鴨志田の改心などについて怪しい人物がいないか探りたい校長が勝手に貼った物。ご丁寧に生徒会長、新島の名前を使って生徒へ情報を求めているが実はこれ彼女に無断で行っており、当の本人は今頃困惑して校長へ話を聞きに行ってるだろう。
やーねー全く、汚い手しか使えない大人っていうのは。まぁ徹頭徹尾小物である校長が何をしてようとどうでもいいんだが。それで新島の負担が増えるのは何とも腹立たしい。しかも姉の話すら持ち出して本来学校が対応すべき事を押し付けてるんだから怒りボルテージ爆増である。この時期は敵対視フルMAXされてるからどうにも出来ないんだけどね。
いっそ校長を改心してしまえばいいのではと考えただろうが、それが出来ない明確な理由があるのだ。それは・・・
「おっと」
「あ、ごめんなさい・・・って貴方は」
曲がり角から現れ、あわやぶつかりそうになった相手は丁度説明していた新島生徒会長であった。どうやら校長から仕事を押し付けられた後らしい、やや雰囲気がピリついている。
しかも目の前にその悩みの種の筆頭が出てきたとなればみるみる機嫌が落下し逆に目はつり上がっていく。
対して蓮のご機嫌メーターはグンと上昇していく。まるでシーソーのように相反した両者は全く真反対の気分で眼前の相手と見つめ合っていた。
「どうも、生徒会長。大丈夫ですか?何やらお疲れの様子。」
「誰の・・・いえ、なんでもないわ。ええ、見ての通り忙しいから、これで。」
浮ついていたからか聞き方によっては煽りにも聞こえかねない質問をしてしまう蓮。これに対して新島は思わずカッなって怒鳴りそうになったが、すんでのところで耐えていた。
目の前の彼が怪しく、殆ど黒と言っても過言では無いとはいえ現状証拠も無く推定無罪の相手を責めるのは良くない事である理解していたからだ。流石の理性、その他大勢の秀尽学生とは天と地の差である。
とはいえストレスの原因とこれ以上話す事も無いとスタスタと足早に去って・・・行く前に途中で振り返って鋭い眼光を向けて忠告してきた。
「社会科見学、粗相のないようにね」
「ええ、勿論」
蓮の返事に小さく鼻息を鳴らして今度こそ去っていく新島。冷たい、悲しい。しかし仕方ない。何度と言うようにこの時点では彼女にとって自分は問題児筆頭の目の上のたんこぶ、出過ぎて目障りな杭でしか無い。
上機嫌だったのが反転、ちょっと落ち込みながら竜司達の元へ行き、しなしなに凹んで帰ってきた彼をよしよしと励まして元気づけられ、何とか回復に成功したとさ。
そして迎える
社会科見学当日─────
「えー、これからテレビ局を見学させて貰う訳ですが。いい?くれぐれも問題を起こさないようにー!起こした人は補習に呼び出すことになるから。そうなってもらっては困るので各自気を付けるように。分かった?」
なんかこっちを見ながら言ってる気がするが気の所為だろう。目が合ったのではにゃ?と首を傾げてみると質量を持った殺意を飛ばせそうなくらい物凄い剣幕で睨み返されたのでそそくさと後方へ退散して竜司達と合流する。
「どした蓮、叱られた犬みたいな顔して」
「何もしてないのに睨まれちゃった・・・」
「そっか・・・(普段の行いかな)」
「可哀想に・・・(普段の行いだね)」
ぐすぐすと泣き真似をする彼に薄い同情の声をかけて辺りを見渡している竜司達。これ以上引っ張れないなと判断するとケロッと泣きやみポケットイン通常スタイルへ即座に戻る蓮。こいつマジで。
「つーか俳優とかタレントとかいねーかな!もしいたらサイン貰おうぜ!」
「エガちゃ○とかか」
「この時間帯の番組出れねーだろあの人」
そんな演技派な蓮の肩にもたれ掛かるように腕を置いてキョロキョロとスタジオを見渡す竜司。この男、あんだけ渋っていた癖に割とノリノリである。当然杏から蓮同様に呆れた目を向けられた。
「行きたくねーってぐずってた癖に乗り気過ぎでしょ」
「るせー、せっかく来たんだらそれぐらい期待してもいーだろ。ていうかそれぐらいしか楽しみがねェ」
呆れる杏に開き直って胸を張ってそう返す竜司。まぁ後でとっておきのゲストに会えるよ。それはもうビッグネームな王子様にね。
そう考えながら頭の中でニヨニヨしていた蓮だったが、見学が進むにつれてその顔から表情が消えていく。担当スタッフの方には悪いがクッッッソつまらない話を聞きながらごちゃついたスタジオの中を歩いていると顔が死んでいくのも仕方ないというものである。
「ひほー」
「おい、蓮の顔がやべぇぞ!溶けた雪だるまみたいな顔になってやがる!」
「ひほー」
「気持ちはわかるけどしっかりして!戻れなくなるよ!」
「志帆、そんな圧縮したら顔が中心に寄っちゃうよ!」
溶け落ちそうな蓮の顔をぎゅうぎゅうと力強く元に戻す為に圧縮する。お陰で目が覚め、顔も元に、元に・・・まぁ大体元に戻った蓮。しかしその時、背後からスタッフの男が迫りわざと彼にぶつかってきた!
「ちょっと、邪魔だよぉおぁッ!?」
「ん?」
が、体幹鉄筋コンクリートである蓮にぶつかるということはその力がそのまま自分に返ってくるという事。当然、男は逆に吹っ飛び生徒達と他関係者に醜態を晒す事になった。
「こ、このガキ・・・うっ!?」
プライドだけで構成されている人間性欠落型の男は蓮へ掴みかかろうとしたが、その瞬間交差する視線にギクリと動きを止めた。
刺さる。刺さる。熱を一切感じさせない無機質な瞳が(無意識)
(養豚場のブタでも見るかのような冷たい目だ!残酷な目だ!かわいそうだけど明日の朝にはお肉屋さんの店先に並ぶ運命なのね、ってかんじの!)
絶対零度の視線、自分よりも一回りは年下そうな青年の瞳に、男は恐怖した!畏敬も、尊敬も何も感じさせない見下すその目が男の逃走のスイッチを深々と押し込んだのだ!
「ふ、ふん!子、子供が騒がしくて堪らないよ!さ、さっさとどこかへやってくれ!」
ぶっるんぶるんに脚を震えさせながら最後のプライドでそう吠えた男は言い終えた後、バイブレーションを利用して高速移動でその場を離脱していった。すげー、どっかの部族みたい。
「なんだったんだ今の」
「さぁ」
そうしていると今度は別のスタッフが杏に向けて声を掛けてきた。良くこの空気の中話しかけに行けたな。
「君、テレビ出てみたくな・・・ヒィッ!?」
スタッフの男が見たのは・・・阿修羅。杏の向かい側、そこに立ち深淵の底から覗き込む鬼神の如き怒気怒気する目で睨み付ける志帆が下心満載の男の心を一瞬にしてベコベコに潰し尽くした。
”失せろ”
無言の圧。それだけで十分だった。
杏が?を浮かべながら振り返るとニコニコと笑顔を見せる志帆。もう一度男の方を見ると阿修羅すら凌駕するオーラで男を威圧し始める。
「なななんでもないです!すすすすみま、すみませんでしたー!!」
「?なんだったんだろ」
「さぁー?」
二度と来るな軟派野郎がと言わんばかりにジロリと逃げていく男の背を睨んでから杏へ小首を傾げる志帆。あ、悪魔たん・・・
うちの女子陣が強すぎる件について。こりゃどう足掻いても頭が上がんねぇな、と二人と一匹は肩を竦めてコメディチックに笑い合う男性陣。完全に牙を抜かれている。
まぁそんなこんなで珍事が起こったりしたが、見学は続行。今度は職場体験ということでカメラアシスタントをすることになった竜司と蓮。
竜司の顔が明らかに面倒くさいで埋め尽くされていくのを横目に蓮は無い手袋を直す仕草を見せた。つまり、何故か本気モードに入ったという事である。
「え、なんでそんなにやる気漲ってんだ蓮。ただの雑用だろこれ。」
「ああ、その通りだ。だが振られたからには完壁にこなすさ。プロとして────」
「なんの!?」
竜司のツッコミを流してプロの仮面を被る。ニットに穴を開けた仮面・・・はまずいので被った気になって職場体験に臨んだ。
「じゃあまずは・・・」
「説明は必要ない────、プロの仕事見せたる────」
「本職こっちなんだけど!?」
そこからというものまさに蓮の独壇場。ケーブルの移動、カンペ、果てはカメラに至るまで。本職と変わらぬ程に精錬された技術で完全にこなしていった。なんなら竜司の仕事すら奪っていた。棒立ち坊ちゃんである。そして金貰えるレベルの仕事をこなして見せた蓮。
君!本格的にうちで働かないか!?と誘われたがこんな所で収まる器じゃないのさ、と背を向けてかっこよく断っていた。雨宮蓮はクールに去るぜ・・・。ピュウッ☆
ここまではお決まりの流れである。頼むから大人しくしててくれと胃を痛めている川上を無視して竜司達と共にその場を離れ人気の無い所へ移動する。
「大活躍だったね、蓮」
「偉い偉い」
「フッ」
ドヤ顔を決める蓮。最早突っ込まない竜司達。どころかヨシヨシと撫で回し甘やかしていた。その人目立たない事完全に忘れてますけど大丈夫ですか。
ビリケン像の如く撫でられ、モルガナにいいなーと羨ましがられていると見学客なのに働かさられた*1事に憤りを感じた竜司は苛立ちを隠せず愚痴を零し始める。
「ったくよ、頭に来るぜ。俺ら客だろ?なんで雑用やらされるわけ?モヤモヤして全然スッキリしねぇー!」
「声デカいっての。てかあんた何もしてなかったでしょ、全部蓮がやってたじゃん。」
「うぐっ、いややらされたのは変わんねぇじゃん。ともかく!なんかこう、ストレス発散してーんだよ!」
「あはは、気持ちは分かるけどね・・・なんかずっとこっちを見下してきてる感じがしてモヤモヤしたし・・・。」
苛立ちを表立って出しているのは竜司だけだが、学生であり見学客のこちらをうつすら邪魔そうに、鼻につく態度でこちらを下に見てくる大人達に嫌な気分を持っていたのは杏も志帆も同じだった。なんなら彼女達には下心マシマシの目線が向けてられていたのでその心労もあって余計に疲弊してた。
「とはいえ、これ以上目立つ行為は禁止だからな。なぁ、禁止だからな。」
「イエッサー」
カバンから上半身を出して問題児の頬にべちベチと猫パンチをかますモルガナ。上官、そいつ猫パンチ堪能してるだけで反省してないっす。まぁ問題は起こしてないしセーフセーフとか考えてます、爪たててやってください。
「はぁ〜あ、優等生演じるのも楽じゃねーぜ・・・」
両手を後頭部に組んで呟く。言うほど演じていたか?とするとなにか思いついたのかピコンと跳ねて杏が提案を出した。
「そうだ、そういえば今日現地解散なんだっけ。あんま来ないとこ来たし終わったら気晴らしにどっか寄って帰んない?」
何とも気が利くことに終わったらそのまま解散していいらしい。まぁぶっちゃけまた学校までこの人数を引っ連れて帰るのが面倒臭いからだろうが、それはこちらも同じなので正直助かる。
「いいね、どこ行こっか?」
「折角なら普段行かねー様なとこ寄らね?」
「あり寄りのあり」
そうしてノリノリになった蓮達は蓮のスマホを囲って周辺を調べ始める。やいのやいのと話しているとピョコンとカバンから身を乗り出したモルガナが意見をあげた。
「なら吾輩、あそこ行きたい!来る時に見たでかいパンケーキみたいな場所!なんだか美味しそうだったし!なんなんだあれ?」
「あー、ドームタウンな。丸いのは野球場で、周りは遊園地。」
「ビル群の真ん中なのに結構ガチな絶叫マシーンあるよね」
「いいね、面白そう!」
「よっしゃ!行ってみっかドームタウン!」
そうしてあっという間に話が纏まった彼らがいざ、遊び場へ!と盛り上がってきた所で蓮の第六感がその
キュリリリィ〜ンッ!!(NT並感)
瞬間、蓮に電流走る────
(来、来る!!奴が来る!!)
ざわ・・
音を立てながら歩いてくる奴を見逃さないよう福本先生作品のような作画になりながら廊下の先を見つめる。
コツ・・・
コツ・・・
聞こえる・・・奴の足音が・・・腹黒ド鬼畜名探偵もどき将来ハゲ確定マンの足音が・・・!!
そして待望の瞬間、廊下の先から姿を現したのは───────
「失礼。その制服、秀尽の学生さんですよね?」
いたぞぉぉぉぉぉ!!!!
いたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!!
この世界では既に一度出会っている成績優秀、品行方正、容姿端麗と全てが揃った正にパーフェクト王子様と言った感じの青年。
甘いマスクと言えるほど端正な顔付きだがうっっっさんくさくて薄っぺらい笑顔を貼り付けており、清潔感のある姿見はある種
そう例えるのならば、『鴉』のような。
探偵王子こと『明智吾郎』様のお出ましじゃァァァーー!!
心の中をフェス並みに大盛り上がりさせながら現れた明智の顔をポーカーフェイスで眺める蓮。この盛り上がりはあのハゲ以来だろうか。DJ★AMAMIYAの腕も鳴ると言うもの。そんなテンションぶち上げ状態の蓮以外は突然現れた彼に警戒心を高め、ジロリと睨むように彼を見つめていた。
そんな態度からいきなり話しかけて警戒させてしまったと理解した明智はああ、と声に出して軽く手を挙げて非礼を詫びるように目を伏せた。
「いきなり声をかけてごめんね。たまたま近くを通ったんで挨拶でもって。明日、一緒に出演するから。」
「出演って・・・てかお前誰よ」
確かに明日の予定ではテレビ番組の観客としてスタジオに入れて貰えることになっているが、それが目の前の男となんの関係があるのか。竜司には全くこれっぽっちも繋がりを見いだせなかった。
そこまで来て彼は自分が自己紹介もしていなかった事に気が付き、明るい笑顔を作り蓮達へ自身の名を明かす。
「ああ僕、明智吾郎っていいます。よろしくね?」
「アケチ・・・?明智吾郎!?」
彼の口から飛び出てきた割と時の人である人名に杏と志帆は驚きに目を剥く。しかし、やはり竜司だけはさっぱりピンと来ておらず興味なさげに蓮の伊達メガネをカチャカチャと上下させて遊びながらまた聞き返す。
「ふーん?お前有名人なの?」
「何回かテレビに出させてもらっただけだよ」
そんな失礼な態度をサラッと流しながら遊ばれてる蓮に目を向ける明智。そこではたと動きを止めぱちくりと目を瞬かせる。
「あれ、君は」
「お久しぶり」
止まらない伊達メガネを気にせずに手を挙げて返す。どうやら明智もこちらを覚えていたようだ。
「驚いたな、こんな所で再会するなんて」
「その件はどうも。あの時サインもらっとけばよかったかな。」
「ハハハ!その位なら何時でも。君こそ本は大丈夫だった?今でも補償するけど。なんならサイン付きだよ。」
「ああ、読むのに全く支障はなかったさ。それよりサインって別途で貰える?」
「勿論、いくらでも」
やったぜ、と喜びながらどこからか取り出した色紙にサインを貰う蓮。名声が落ちるのが確定してる奴のサインを貰うのキモティー!と内心気持ち悪い反応をしている蓮。そして若干懸念してた彼が記憶を持っているかどうかについてもこの反応を見て否と確信していた。良かった良かったとバレないよう胸を撫で下ろしていていると竜司がその対応に反応する。
「んー?そんな有名な奴なん?」
「いやぁ、そんな事は無いよ。僕はただ事件解決のお零れを貰ってるに過ぎないからね。」
「事件?おこぼれ?」
「竜司、ほんとに知らないの!?『高校生探偵の再来』!明智吾郎!結構有名だよ!?」
「こうこうせいたんてい〜?何処の幼児化探偵だっての。ドラマの設定って言われた方が納得するね。」
ケッ、と顔のいい明智に塩対応な竜司。イケメンでチヤホヤされてる奴はみんな敵。竜司、心の俳句。
「ごめん、ほんとに通りかかっただけなんだ。もう行かないと。明日の打ち合わせなんだ。」
場を引っ掻き回すだけ引っ掻き回して去ろうとする明智。だが、彼の最大の見せ場はこの後にある・・・!刮目するがいい・・・!さぁ!Harry!Harry!!
鉄仮面の裏でくるりと背を向ける明智に気高きヒューマン大好き吸血鬼おじさんのようになっている蓮。目だけ血走りガンギマリ状態であのワードが飛び出るのを今か今かと待ち侘びているとついにその瞬間がやってきた。
あ、そうだ。と言って振り返る明智。
「これからケーキ食べに行くのかい?ボクもお腹すいたよ、お昼食べ損ねてさ。」
『これからケーキ食べに行くのかい?』
『ケーキ食べに行くのかい?』
『ケーキ』
キタ━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━!!!!!
これには思わずマイパレス内のジョーカー達が一斉にスタンディングオベーション!!ありがとう!これで重要なフラグが一つ回収出来た!
何もかもを瓦解させた
フィーバーァァァァ!!
パンケパンケパンパパパンケーキ♪パパパパパパパパンパンパンパパパンケーキ♪パ↓パ↓パ↓↓パ↓パ↓♪屋 屋 屋根ゴミ☆♪屋屋屋屋根ゴミ☆♪(最終鬼畜パンケーキ王子s)
君はパンケーキをエロい目で見てる*2
こんだけ大はしゃぎしてる癖にリアルではシレーっとした真顔を保っているのだから驚きだ。お前おかしいよ・・・。
「あぁ?ケーキ?何の話だ?」
「あれ、違ったかな。美味しそうなパンケーキ、とか聞こえたから。まぁいいや、じゃあ明日スタジオで。」
そんな狂人が隣にいるとはつゆ知らず、竜司が首を傾げながら聞き返す。話が噛み合わなかった事に明智も首を傾けたが本格的に時間が押してきているらしく、少し焦り気味に腕時計を確認しながら足早に立ち去って行った。
「・・・・・・駆け出しの芸人とかじゃねぇの?」
「どんだけ敵対視してんのよ・・・そんな事より早く行こ?時間無くなっちゃうよ。」
「そうだね、ほら竜司も。」
「わーってるって、そんな押すなよ志帆。」
爆発するかのように現れ、嵐のように立ち去った明智を気にせずに遊び行こうと急かす杏に明智から興味を逸らそうとする志帆が竜司の背中をグイグイと押して行く。
そんな三人の背中を追いかけ───────
ピタリ、と歩みを止める。
先程までとは違い、耳が痛いような静寂に包まれる廊下。
「・・・・・・。」
わちゃわちゃして先に行く三人を尻目に明智が消えて行った廊下の先を眺めながら目を鋭くした怪盗モードのモルガナと話し始める。
「・・・・・・おい、気がついたか」
「ああ、間違い無い。確かに『パンケーキ』と言った。」
「普通なら有り得ねぇ、あの場でそのワードを出したのは
そう、明智は本来異世界で聞かなければ聞き取れない筈のモルガナの声を彼は会話に汲み取っていたのだ。まぁあんだけ盛り上がってたから既にお分かりだろうが。
そしてその事に気が付いた二人は静かに認識を合わせ、去っていった推定敵対存在となった相手を睨み付けるように廊下の先を見つめていた。
「・・・・・・奴は異世界のどこかで俺達の会話を聞いている。」
「怪しさ満点だぜあのヤロー。最低でも異世界に行けるのは確定してるって事だからな・・・その上身を晒さずに会話が聞こえる距離まで近づかれていた。寒気がするぜ・・・。」
「・・・・・・黒い仮面の男」
「可能性はあるぜ。蓮、奴の事は最大限警戒しとけ。」
「おーい、どしたー。早く行こうぜー。」
シリアスに話し込んで中々来ないでいた二人を心配して戻ってきた三人。彼らを見て蓮とモルガナは一旦この話は自分達だけの中に留めておこうと頷き合う。
「これは吾輩達の中に潜めとこう。アイツらに話しても混乱するだろうし・・・今後、奴と接触した時にボロを出しかねない。特に一名。」
「了解」
ボソボソ声で話し合う二人に不思議そうにする三人。そんな彼らに何でもないと誤魔化して早く遊びに行こうと話題を切り替えた。
釈然としない三人だったが、二人への信頼からまぁいいかと気にせずに遊びに赴くのであった。
「うぉー!たけー!あれ、ちょっと待て思ったより角度が・・・ま、まままま!アアァァーァーー!!(汚い高音)」
「やっほー!!気持ちいいー!!」
「結構スリリングだね」
「うむ」
「なんでそんな余裕!?アアァァーァーー!!(汚い高音)」
─────この後、めちゃくちゃ遊んだ
という訳で後日。
見学二日目、テレビ収録の日。観客席に座って待っていると番組始まり、昨日匂わせていた通りゲストである明智が姿を現した。キャーキャーと飛び交う黄色い声援。それとは真反対に蓮とカバンに潜むモルガナは冷たい視線を向けて彼を注視していた。
「CM開けまーす!7、6、5秒前、4、3・・・・・・ッ!」
途中でカウントダウンを止め、0のタイミングで合図を送るAD。その瞬間、番組が開始され局アナが話を回し始めた。
「さて!続きまして『今会いたい人』のコーナーなんですが、前回の大好評を受けまして本日も彼に来て貰ってます!現役高校生探偵、『明智吾郎』君です!」
「どうも」
彼がニコリと営業スマイルを浮かべるとさっきよりも大きな声援が湧く。思わず耳を塞ぐ竜司。あいつマジで人気者なのかよ・・・と痛そうに耳を擦りながら呆然としていた。あの甘いルックスやからな、そらもうメロメロメロウよ。
でもあれで結構頑張ってんのよ、SNSとか駆使したり、話題の為に好きでも無い流行りモノとか食べたり見たり聞いたり、人脈作りとか印象操作とか。いやホント、そういう所は尊敬できるんだけどね。
そうこうしている間にドンドン進行していく話題をぬぼーっとしながら眺めていると『怪盗団が実在するかどうか』のアンケートが始まった。当然、『いる』に回答する。隣で竜司も躍起になりながら回答していた。
そして出た結果は『いる』が三割と少数派という結果に。当然、竜司はご立腹である。しかも明智の意外と多い発言に更にお怒りである。どうどう。
「では、こちらの学生さんに聞いてみましょう!」
「ん」
そうして彼を落ち着けているといつの間にか局アナが蓮の前までやって来て質問と共にマイクを向けて来ていた。
「もし仮に怪盗団がいるとして、彼らの事どう思いますか?」
「ふむ」
質問に対してわざと顎に手をやって考える振りをする。チラリと竜司達を見れば「言ってやれ!」と言わんばかりの力強い視線が、三島に視線をやれば同じく熱い視線が、そしてべっき・・・川上先生に視線をやれば「絶対に変な事は言うな!!!」と軽く、しかし必死な身振り手振りが。最後のは見なかったことにしてマイクに向かって自身の答えを話す。
「『正義を担う者』、でしょうか。」
当然ながら、堂々と怪盗団の存在に肯定を示し、彼らの正しさを信じる言葉を使う。本人の口からそう言うのは恥ずかしくも思うがもう慣れた。
蓮の答えに竜司達はナイス!と反応し、川上は顔を抑えて乱心ゲージを貯めた。次回の指名が怖いぜ。
「怪盗は法で裁かれるべきだと主張した明智君とは反対の意見だねぇ」
そして、その回答に一番興味を示したのは勿論、怪盗団否定派筆頭の明智である。スッと僅かに目を細めてから営業スマイルに戻し、彼の方から蓮に問い掛けてくる。
「・・・へぇ、『正義そのもの』とは言い切らないんだね。どうしてか聞いてもいいかな?」
興味深そうに、値踏みするようにこちらを見る明智の目を見て明らかに場馴れしてなくて緊張してますという学生を装って意見を続ける。
「ええ、まぁ。なんと言うか、彼らは正義の為に怪盗行為を行っている訳ではないと感じたからです。虐げられて、追い詰められた人を助ける行動が結果的に正義に繋がっているだけで、根本は『人助け』だと今までの行動を見て思いました。」
辿たどしく伝えたい事を必死に紡ぐ演技をしてそう言い終えると、どうやら彼の琴線に触れた明智はふむ、とひとつ頷くと蓮の言葉から汲み取った意を語り始める。
「ふむ、だからこそ正義そのものを掲げるものではなく。助けを求める人達をすくい上げ光を灯す担い手であると、そう言いたい訳だね。ハハ、これでは勧善懲悪のヒーロー物だ。」
「では、僕から彼にもうひとつ聞いてみたい事が。もし君の身近な人・・・例えば、君の隣に座っている友達。ある日突然彼らが心を変えられたとしたらどうする?怪盗の仕業だとは考えない?」
「・・・考えません、彼らが狙うのは悪人だけです。」
「ふふ、言い切るね。でもそこに大きな穴がある。」
蓮の回答から話を広げ、ペラペラと語り始める明智。こりゃ完全にダシにされたなといった具合に肩をすくめる。
「僕は彼らの行いの善悪よりもっと大きな問題があると思うんです。」
「ん?どういう事かな?」
「人の心をどうやって変えたのかって事です。心を操作する・・・そんな力があるなら、自白だけに使われるとは限らないですよ。もしかしたら僕達が普通の犯罪だと思っている事も実は既にそうやって起きてるのかもしれない・・・」
自己紹介どうも
「私達が気がついてないだけで、そうやって心を操って犯罪を起こさせているかもしれないと・・・確かにその通りだ。」
「いや、誤解しないでください。もしもそんな力を使える輩がいれば・・・仮定の話です。・・・・・・でも、決して無視は出来ない。」
どの面名探偵明智はここでセリフを区切るとカメラを意識したキメ顔を作って続きを話し始めた。
「実はもう、警察とも足並みを揃えていくつもりで動いているんですけどね。またお話出来るようになったら改めてお話しますよ。」
そうして最後はニコッとイケメン営業スマイルで締めくくると客席から黄色い声援が再び飛び交う。中には事件性を帯びた悲鳴ともとれる声も混ざっている。感情が昂りすぎて訳わかんなくなってるのだろう。
キィーッ!と悔しげな声にもお猿にもショッ○ー戦闘員にも聞こえる声も聞こえてきた。隣から。
それにしても場馴れしすぎていてまるで台本でもあったかのような饒舌さだった。現状、奴らのシナリオの上って意味じゃその通りかも。俺達も明智も滑稽に踊る
まぁそんなどうでもいいことは放っておいて今は竜司達のメンタルケアだ。
好き勝手言われて憤慨している竜司とは反対に落ち込んでシュン、となっている杏と志帆。前者は自身らの行動を真っ向から否定された事に、後者は明智の意見に少なからず同意してしまったことへの罪悪感に。
「くそっ、腹立つぜ!俺達が悪党みてぇな言い方しやがって!気に食わねぇ!」
「・・・・・・私はあいつの言ってる事ちょっとそうかもって思っちゃった。動機はどうあれ、心を弄ってるのはそうだし・・・。」
そう言ってしょもっとする杏に優しく語りかける。
「でも俺達は『黒い仮面の男』とは違う。」
「ああ、結果俺達は誰にも救えなかった人達を救ってるんだ。それが間違いなんて思わねぇ。言わせときゃいいのさ。」
そう励ますと「うん・・・そうだよね!」と元気を取り戻してくれた。いがっだいがっだ。なんてほっこりうふふとしていると唐突に後ろから誰かに話しかけられる。
「やぁ、さっきはどうも」
にこやかに手を挙げて立っていたのはやはり、画面映え王子の明智きゅんであった。言っててなんだが鳥肌が立ったのでもうきゅん付けで言わないようにしよう。
「・・・・・・俺になにか?」
「そう警戒しないでよ、お礼が言いたくてね。」
「礼?」と首を傾げると明智はニコリと爽やかスマイルを貼り付けて睨んでくる竜司達の事など気にもせずに言葉を続けた。
「やっぱりアンチテーゼが無ければアウフヘーベンは起こらない」
「ア、アウフ、へ?」
「皮肉か?」
聞き慣れない英単語に混乱する竜司を横に蓮は不機嫌ですと表すように鼻を鳴らしてそう聞き返す。そこでようやく馬鹿にされてるのかと考えついた竜司は同じ様にして睨み付けた。
「いやいや、君との議論はとても有意義だったよ。これは本音さ。あんなにハッキリと意見をぶつけてくれる人、僕の周りには少なくてね。皆、利用しようとするか全肯定で首を縦に振るばかり・・・無責任な人が余りに多い時代だ。君が怪盗を望むのも分かるよ。」
やれやれ、と辟易したように首を振りながら呟く。割と本気でうんざりしてそうなリアクションを見せてしまった事に気付き、「おっと」と声に出して切り替えると話を戻した。
「怪盗は君の言う通り本当に善意の存在なのかもしれない。特別な力を持った彼らは今きっと正義感や使命感に燃えているんだろう。でもその正義は言わば、万能間の裏返し・・・だからもし、彼らを追い詰める強力な存在が現れたら、その時は呆気なく逃げ出すと思うよ。」
「随分と知った様な口を叩くんだな。」
「事実、君よりも知ってる方だと思うよ?ほら、僕警察関係者だし。」
煽るように、というか事実煽りながら肩をすくめる何故か少し距離感の近い明智にちょっとイラッときた蓮はまたフンッと鼻を鳴らして逆に煽り返してやる事にした。
「いや、お前は彼らを知ってるだけで何も理解していない。」
「へぇ、その心は?」
「彼らは牙無き人々の味方だ。誰もが見て見ぬふりをした悪に立ち向かった人達だ。それが立ちはだかるのなら、彼らは逃げない。」
「正義の担い手だから?」
「そうだ」
強気に、自信満々と断言する。言葉の節々に「お前と違ってなぁ!」という意志が感じられるほどの宣言に明智は一瞬、呆気にとられた様にポカンとしてから一つ吹き出すと耐え切れないとお腹を抱えて笑い始めた。
「ふ、ふふ、あはははははは!!い、いやすまない、バカにしてる訳じゃないんだ。本当に。思ってた以上に面白い人だなって、思ってね、あはは!」
おうなんだこの野郎、ちょっとシリアスモードに入ったのに台無しにスる気かいな。なんて形だけの不機嫌を顔に貼り付けて安堵する。良かった、上手く気を引けたようだ。ここで引かない姿勢と反抗心を見せる事で明智との関係が深まりやすくなるのだ(微増程度)
なお、煽り過ぎると黒い仮面モードに入って即コロコロルートに入るので、気を付けよう!(2敗)
あくまでも負けず嫌いを装う、若しくは捨て台詞っぽくして煽ろう。じゃないとナイフが返ってるから。言葉じゃなくて物理の。
煽り耐性・無効くらい積んどけよなー、全く。ほんとに積まれたら詰むんだけどね、初見さん。慢心と煽り耐性は若干マイナス補正で丁度いいぞ。
「君とは良い議論が出来ると思うんだ。またどこかで話さないかい?」
「はァ?お前何言って・・・」
「まぁいいぞ」
「いいの!?」
変に距離感の近い明智に警戒心高めに対応するここまで空気だった竜司だったが傍から見たら警戒心がカカポ並みに低い蓮がOKを出してしまい、もっと疑うということを知れ!とケツを叩くが鋼鉄のケツなので逆に竜司の手がダメージを負っていた。おしりは鉄で心はタングステン。
「ふふ、面白いね君達。おっと、そろそろ時間だ。最後に連絡先だけ交換して貰ってもいいかな。」
「あい」
茶番を見ながら笑顔でスマホを差し出してくる明智にガス生命体のように返事をしてこちらもスマホを出して友達登録をする。するとそれと同時に何時もの縁が繋がる感覚が蓮の中に広がった。
汝、ここに新たなる契りを得たり
契りは即ち
囚われを破らんとする反逆の翼なり
我、「正義」のペルソナの生誕に
祝福の風を得たり
自由へと至る、
更なる力とならん・・・
COOPEARTION:『明智吾郎』
ARCANA:『正義』 RANK.1☆
皮肉マシマシコープゲットだぜ!
「ありがとう。それじゃ、また会えるのを楽しみにしてるよ。」
「ああ、また」
そうして胡散臭い笑顔のまま最後に差し出された
コッコッと音を立てながら去っていく彼の背中を見ながら握手をした自身の手を少し眺める。
(左手、ね)
思えばこの頃から彼はこちらを最大限警戒していたのだろう。まぁそれも全部先のやらかしで無駄になってんだけどね!
「ケッ、キザったらしい野郎だぜ。てか、連絡先交換して良かったのかよ。言っちゃえば敵だぜアイツ。」
終始明智を威嚇していた竜司がブーたれながらそう聞いてくるとスマホを振りながらニヒルに笑いながら答える。
「逆に言えば敵の手の内を何時でもさぐれるって事だ。リスクリターンはトントンだな。」
「本当か〜?本当にトントンか〜?」
ケッケッケッと笑う蓮の頬に拳を当ててムニムニと圧する。そう遊んでいるとカバンにいるモルガナが呆れたように声を上げた。
「にしてもまた変なのに気に入られたな。ま、さっき蓮が言った通り上手く使えば良い情報源になりそうだ。」
「ああ、上手くやるさ。怪盗としても、友人としても・・・な。」
自分達とは正反対の探偵・・・・・・そして自身と同質の力を持つ者。
相反してるのに、どこか似通った男。
彼との因縁はかくしてここに始まったのだった。
雨宮蓮 | 明智が回らない寿司を食べに行くという情報を聞きつけ、寿司屋に潜入。見事キャラメル(ジンギスカン味)を仕込んだ寿司を食わせる事に成功した事がある。
明智吾郎 | バチ切れ。寿司の味がわからなくなった。
「あ、あの・・・自分ファンなんすよ。寿司握るんで食べて貰ってもいいスか?」
「しょうがないな、プライベートで食べてる時に・・・」
「あざーす」
ガシッ(寿司にキャラメル(ジンギスカン味)を仕込む音)
「なにっ」
「しゃあっ」(問答無用で口にぶち込む)