周回プレイヤージョーカー君   作:文明監視官1966

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話としてはペルソナ5Rです

駄文ですが適当に見てください


本編
Prolog Re:Start


多くの人間が住まうこの世界には、数え切れないほどの悪意が蔓延っている

 

 

 

 

色欲のままに他人を汚し、傷つけ、支配する者

 

 

虚飾で己を塗り潰し、金の為に弟子を奴隷の様に扱う者

 

 

暴食に飲まれ、人を自分の餌として骨の髄まで喰らい尽くす者

 

 

憤怒を植え付け、歪ませ、幼き心を引き裂いた者達

 

 

強欲が膨らみ、増幅し、ただ己の為に他者を道具として使い潰す者

 

 

嫉妬で自分を追い詰め、どんな手を使ってでも他を敵と定め蹴落とす者

 

 

傲慢と野望で邪魔者を殺し全ての愚民を掌握して国家支配を図った者

 

 

 

人によってその悪意の種は様々で、どれも筆舌に尽くし難いほどに邪悪に満ちている。

 

我々が思っている以上に、この現代社会には邪で理不尽な現実が広がっているのだ。

 

 

誰もがこの歪な現実に従い、ひれ伏し、従うしか無いのか。

 

声を出す事も許されず、逃げ出すことも出来ず、ただ何も出来ずに地べたを這いずって無い希望に身を寄せ、助けを求め続けるしか無いのか・・・。

 

 

 

──────否。

 

 

 

 

この世界には、『彼ら』がいる。

 

 

 

それは、我欲にまみれた、悪意の化身を討つ者達。

 

 

邪悪な心をその手で奪い、黒き邪念の中枢を清める者達。

 

 

虚を払い、真を照らす。弱きを助け、強きをくじく。

 

 

その姿正しく正義の味方。

 

 

 

理不尽に虐げられ、精一杯の声をあげる人の手を取るために。

 

 

 

 

彼らの名前は──────────『怪盗団』

 

 

 

 

 

反旗の衣を翻し、彼ら彼女らは今日も浮世を離れ、奇っ怪極まる摩訶不思議な異世界を駆ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ』

 

 

 

 

 

 

今こそ汝、己が仮面を引き剥がし───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────反逆の翼を翻せッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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物語を最初から始めますか?

 

 

はい←

 

いいえ

 

 

 

 

 

 

 

ペルソナ全書、人間パラメータ、アナライズ情報、一部アイテム、スキルを引き継ぎます。よろしいですか?

 

 

はい←

 

いいえ

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

─────ペルソナ全書の引き継ぎに失敗しました。一部を除き、ペルソナが初期化されます。

 

 

 

 

 

 

 

データをロードします

 

 

 

 

 

 

─────ロードが完了しました。ゲームを開始します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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貴方は囚われ・・・

 

 

 

 

予め未来を閉ざされた、『運命の囚われ』。

 

 

 

 

これは極めて理不尽なゲーム・・・勝機は、ほぼないに等しい。

 

 

 

 

しかし、この声が届いていると言う事は、まだ可能性は残っているはず・・・

 

 

 

 

・・・お願いです。

 

 

 

 

このゲームに打ち克ち・・・世界を、救って・・・

 

 

 

逆転の鍵は、絆の記憶・・・

 

 

 

仲間と掴んだ・・・起死回生の真実・・・

 

 

 

どうか、思い出して・・・

 

 

 

貴方と世界の、未来の・・・ために・・・

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・あれ?なんか雰囲気違く・・・ない・・・です・・・か・・・

 

 

 

 

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季節は春。

 

暖かな日差しが差し込むが、まだ少し肌寒さが残るそんな冬明けの4月。多くの学生、多くの社会人にとって新たな別れと始まりの季節となる。

 

そしてそんな人々に混ざって望まない始まりとして様々な事情を背負い、新たな学生生活を始めることになってしまった不幸な運命を背負った少年がここにいた。

 

「・・・・・・」

 

ガタゴトと音をたてながら走る電車の中。大人しめな見た目をした1人の少年は電車の速度に反してゆっくりと流れていく外の景色を眺めていた。その表情は暗い・・・訳でもなく、伊達メガネと前髪に隠された慧眼の中に何故かあまり来たことも無いこの都会の景色に()()()()すら感じていた。

 

彼の故郷はここからは遠い田舎町。都会など友達と数える程しか来たことがないというのにまるで、慣れ親しんだ第2の故郷のようにすら思えている。自分の中に生まれてきたその感覚に疑問を抱きながらも、悪くないと窓の外を顔を綻ばせながら眺める。

 

・・・・・・なんて、ループ系主人公のような事を考えるのは止めだ。何故なら少年は寧ろこの景色を何回も見てるから懐かしさどころか『飽き』すら感じ始めているのだから。そう考えると少年の顔が一気にスンッとなり冷める。気持ちの切り替えが早すぎないか。

 

やがて目的の駅に着くと景色を眺めるのを止め自分の荷物を持って人の流れに乗りながら降りる。そして乗り換えの駅へ向かうが、何故か彼は地図をほとんど見ずにしかし迷いもせずすいすいと目的の地下へと向かっていく。

 

当たり前だ。なんせ彼はここの道をよーく知っているから。これまでの繰り返しの中で何度も何度も通った道など複雑といえど嫌でも覚えるわいと文句を垂れながらスタスタと目的地への道を歩く。そして途中のスクランブル交差点で信号に止まっているとポケットのスマホがブルブルと振動したので「来たか」と思いながらスマホを取りだし画面を見る。

 

そこに映っていたのは見覚えのあり過ぎる不気味な目玉のようなアイコンであった。赤と黒で彩られたそれはでかでかと画面いっぱいに表示され相変わらず気味が悪い。だが少年は全く動じずに真顔のままはよ起動しろやと言わんばかりに何度も何度もアイコンをタッチした。害のあるウイルスかもしれないのに度胸のある少年である。まぁその可能性は万に一つも無いのだが。

 

特に何も起きずにただそこに表示されているだけのそれをひたすら叩いてると感じ慣れた感覚が少年の頭の中に過ぎる。『キュリリィン!』とニュータイプのような音を脳内で鳴らしながらパッとスマホから目を離して再び目線を信号へと向けると、そこに映る景色は何か妙であった。

 

違和感を覚えたのも束の間、何故か世界の時間が遅れ始め、どんどんそれが強くなり・・・やがて時計の針を指で阻んで止めたかの如く完全に停止してしまった。

 

「おーきたきた」とその光景に呑気な感想を漏らしながら辺りを見渡す少年。すると彼の反対側、交差点の先からジリジリと蒼い炎が吹き出し始める。少年がそれに気づき目を向ける頃にはその蒼炎は凄まじい勢いで燃え盛り人の高さを優に超える程に成長していた。

 

「お」

 

そんな恐ろしい光景に、しかし少年は何故か強く惹かれ心が鷲掴みにされたかのように目を離さずに、瞬きもせずその轟々と燃える蒼炎に見入っていた。食い入る様に見る少年はやがて蒼炎の中に何か巨大な『何か』を見出し、それに気づいた途端蒼炎は蠢き始め人型を形造る。

 

 

嗤う

 

けたたましく、響き渡る声で。

 

 

俺は知っている。

 

 

この炎を、この溢れ出んばかりの激情を。

 

 

そしてその中で一際目立つまるで少年の昂りと呼応するように現れた凶悪な顔が浮かび上がる炎と目が合い、まるで笑みを深めるかのように炎が弧を描くと一気に燃え上がり・・・

 

 

「む」

 

いつの間にか炎は消え失せ、何事も無かったかのように周りの人々は動き出していた。今度は逆に自分だけが先の空間に取り残されたような感じになり、周りの人はキョロキョロとしている少年を変人を見るような目で見ていた。

 

だが少年はそれに動じず、周りの視線など気にもとめずに「やっぱりこの感覚は最高だな」と悪どい笑みを浮かべながらとっくに青になっていた信号を渡る。そして再びスマホを見てみると大きな表示が無くなった代わりにアプリ欄に先程の目玉が並んでいた。何度見ても入れた覚えのないそれを見た少年は少しの間目玉を見つめるとそのアイコンをタッチし・・・消去せずに選択解除してアプリを消した。

 

どうせ消しても無駄だと知ってるからである。けど消す度にあの野郎がせっせと入れ直してると面白いのでやっぱり消しといた(ゲス)

 

アプリが現れてから見えたあの幻想。恐怖的だったはずなのに少年の胸にあるのは熱い炎のようなほとぼり。久々に感じた高揚感。それを胸の内に感じているとますます笑みが深くなる。チラリと周りを見ると周りは彼に目を合わせまいと目を逸らしまくっていた。そりゃそうだ。しかし流石にあんな悪者顔を浮かべていては犯罪者かと勘違いされかねない。

 

紆余曲折あって全くもって致し方なく、納得いかないが前科者となってしまった手前警察のお世話になるのは色々とまずいのだ。

 

ともかく機会を待って今はこれからお世話になるいつものあの人の下へ行くことを最優先にしようとスマホをポケットへとしまって周りの怪奇そうな目を無視して地下鉄に向けてスキップ気味に歩き出した。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

まるで迷路のような地下通路をなんなく抜けて地下鉄に揺られること数十分。やがて目的地である四軒茶屋へと着き、路地に出る。ずっと座ってたことで少し強ばった体をほぐすついでに大きく息をすると、余り嗅いだことの無い新鮮だが酷く懐かしい香りに実家のような安心感と清々しさを感じた。

 

「よし」

 

体も心もほぐれ緊張もいい感じに緩んだので早速これからお世話になる厄介者の自分を居候させてくれるいい人の『佐倉惣治郎』宅へ向かうことにした。しかし、彼の家を記したメモはとても簡潔に書かれたもので知らない土地に来てたら見てみるとどこにあるのかさっぱり分からない。といってもどうせ知ってるので1度自宅を確認する為に路地を進む・・・はずだったのだが。

 

「!」

 

自分の横を、ふわりと独特な薬品の匂いをさせながら通り過ぎていった白衣の女性に目を奪われた。白い肌、首にパンクなチョーカーを付け、更にネックレスを提げており、白衣の下はギリギリ過ぎる短さの服にブーツとチグハグな格好をした個性的な医者だった。

 

思わず声をかけそうになったが、あっちにとっては初対面であると思い出してすんでのところで超フレンドリーになりそうな声を抑えた。危ない危ない、もう少しで「へーい!ドクター!おっ久しぶり〜!」なんてこっちを知らない状態の彼女にぶちかますところだった。しかしその際に漏れ出た声は聞こえてたようでパンクな女性は止まって振り返ると少年に話しかけた。少年が脳内でやべっと呟く。

 

「・・・なに?」

 

「えぁー、その。佐倉惣治郎さんのお宅ってご存じですか?」

 

思わずキャラに合ってない丁寧過ぎな言葉遣いになったことに苦笑いする。これならフレンドリーに話しかけた方がマシだったなと考えているとパンクな女性は怪奇そうな顔をしながらも答えてくれた。

 

「佐倉さん?あぁー、確かここ真っ直ぐ行って1個先の角曲がった先にあるよ」

 

「ホントですか、ありがとうございますお医者さん!」

 

「?なんで私が医者だって知ってるの?貴方ここの人じゃないでしょ?」

 

「え、そりゃあ白衣着てますし。あと薬の匂いで」

 

少年は自分の鼻を指さしながらそう言った。すると女性はなるほどねと納得しながらそんなに薬品臭いかとさりげなくスンスンと自分の匂いを嗅いでいた。可愛い。まぁ少年の鼻が利くだけなので実際は気になるほど匂ってはいないのだ。

 

「こんな近くにお医者さんがいるなら安心ですね、何かあったら相談しに行きます!」

 

「はァ・・・まぁいいけど。それじゃ、道は教えたから」

 

「はい、ありがとうございました!」

 

少年が笑顔ですっとぼけながら見送ると手を気だるそうに振りながら女性は角を曲がり、そのすぐ先にある自分の診察所へと入っていってしまった。相変わらずクールだ。しかしこれで次に行く時多少スムーズに話を進められるなと考える。ホントはもう少し話したかったがどうせまた後で強制的に会うので今は気持ちを切り替えて佐倉宅に行こうと荷物をしょい直して道を進む。

 

余計な場所に行かずにすいすいと前に進み、スーパーを超えた角の1個先の道で曲がってあっという間に佐倉さんの家の前まで来た少年。これも何回見た事かとやや飽き気味に、しかし緩やかな笑みを浮かべながら堂々とチャイムを押した。

 

「ふむ・・・」

 

・・・しかしいくら待っても玄関から人が出てくる気配がない。どころか人がいる気配すら・・・いや、なんとなく中に()()()()()()()()()()()。具体的には2階の部屋辺りに。居留守だろうか。と言っても無断侵入なんぞしようもんなら1発でしょっぴかれるので入りはしないが。というかここに惣治郎がいないのは知ってるので気にせずに来た道をもどる。じゃあなんで来たかって?確認とイベント回収だよ(メタ)

 

さて、それじゃあ自営業でやっている喫茶店へGOするかとスタスタと歩いていると漂う空気の中鼻腔から感じる仄かな独特の香り。久しく感じる()()()()()()()。何度嗅いでもこれに優るコーヒーの香りは無いなとその匂いをさながら犬のように道しるべとして辿りながら進んでいくと路地中にひっそりあるレトロな感じの喫茶店の前へとたどり着いた。申し訳程度の観葉植物が置いてあり、上にある店名をみると『ルブラン』と書かれている。とてもオシャレな店とは言い難いが()()()の人には人気そうな物静かな雰囲気がある。

 

少年の中に満ち満ちていくのは凄まじい安心感。言うなれば実 家 の よ う な 安 心 感、と言うやつである。ここには何度お世話になったことか。

 

「よし」

 

少年はすぐに取っ手を持って店のドアを開け、鈴がチリンと鳴ると堂々と入っていった。

 

「!」

 

すると、中から感じる1層強い()()に思わず感銘を受けるほど衝撃を受けた少年はおほー!これこれ!この匂い!とめっちゃ興奮したが直ぐに切り替えて1番前のカウンター席、古いダイヤル式の電話がある席の前に立つと今まで手元のクロスワードを見ていた不思議な包容力と色気を感じさせるダンディーな主人が少年に気づき、ゆったりと振り向く。

 

「いらっしゃい・・・あ、そうか。今日って言ってたな」

 

低く、それでいて渋い聞くだけでコロッと女を落とせそうな大人の魅力が詰まった声でそう言ってクロスワードをカウンターに置いて立ち上がると長居していた老夫婦がお代とお礼を置いて帰っていった。それに対して主人は短くまいどと返し、軽く世間話をして見送ると小さく愚痴った後に少年の方へ向き直る。

 

「・・・で、お前が蓮か?」

 

「はい。『雨宮 蓮』です。今日からお世話になります」

 

持っていた荷物を床に置いてからわざわざ伊達メガネを外し、その地味さに隠していた魅力のある顔を晒してしっかりと自己紹介をした後にぺこりと頭を下げる蓮。ここで好印象を抱かせることで関係が早く進展するのだ。得意げに脳内で語る蓮は最初期の自分は酷かったなと思い返す。

 

その予想外の礼儀正しさをみた主人は少し驚いた顔をした後に意外なものを見たかのように軽く笑みを浮かべた。

 

「へぇ・・・どんな悪ガキが来るかと思ったら、意外と礼儀がなってるな。俺は『佐倉惣治郎』だ。1年間、お前を預かることになってる」

 

関心したように言いながら惣治郎が自己紹介を終えると蓮はフッと優しい笑みを零しながら手を前に出した。そう、それは周回によってインフレした度胸『ライオンハート』だからこそなせる技、『初手主人公握手』である。

 

「両親からお話は聞いてます。よろしくお願いします、佐倉さん」

 

「ん?あぁ、おう。よろしくな」

 

いきなりのコミュ力高いフレンドリーな握手に若干困惑しながらも握手を返す惣治郎。普段はドライで基本的に適当な対応をする惣治郎でさえ、早くも蓮のペースに飲まれかけている。

 

「・・・ま、いいか。付いてこい」

 

微妙な顔で握手した手を見ていた惣治郎はため息を吐いたあと親指で階段を指差してそう指示をした。蓮はそれに軽く返事をしながらニッコニコの笑顔で惣治郎の後に続く。ギシギシと軋む階段を登るとそこにはゴチャッと荷物が散らかった埃っぽい屋根裏の物置き場が現れた。というか物置だった。

 

「おぉ・・・広いですね」

 

「お前の部屋だ。寝床のシーツくらいはやるよ」

 

そのあまりにもあんまりな部屋に対し、蓮はキレるわけでも驚く訳でもなく軽く部屋を見渡してたからうんと頷き、惣治郎に向き直ってなんと礼を言った。

 

「ありがとうございます、部屋まで用意してもらって」

 

それに驚愕して目を向いた惣治郎が振り返る。()()()()()でここに住まわせることになり、自分でもこの部屋はどうかと思っていたゆえのリアクションであった。

 

「・・・驚いたな。文句の一つくらい言ってくるかと思ったが」

 

「いえ、部屋を貰えるだけありがたいですし。それに・・・何となく好きです、ここ」

 

「変わってんなお前・・・ま、いい。荷物は自分で片付けてくれよ。店閉めたら俺は引き上げる」

 

思い出にふけながらキョロキョロと部屋を見渡して微笑む蓮を見て軽く笑いながらその素直さと適応力に関心と困惑を覚えながら階段を降りていく惣治郎。しかし降りていく途中で少し戻り頭を軽く出しながら忠告を残す。

 

「夜は一人だが悪さするなよ。騒いだら放り出すぞ」

 

「心得ています」

 

「んん・・・下にある掃除用具は好きに使え。その代わりちゃんと戻せよ。それと、分かってると思うが明日は秀尽に行くからな」

 

「合点承知」

 

「んだその返事、そのノリまるでアイツ・・・っと。何でもねぇ、早いとこ寝ちまえよ。じゃあな」

 

ビシッと指を向けて釘を指した惣治郎に真っ直ぐな目で返事をする蓮に付かず離れずがモットーな惣治郎はやりにくさを感じて微妙な顔をして今度こそ階段を降りていく。そして少ししてドアが閉まる音と共にチリンと鈴の音が響き今度こそ帰宅した事が分かった。

 

(明日は早いが・・・やっぱり少し気になるな)

 

1人屋根裏に残された蓮は部屋の片付けでもしようかと思ったがさっき言われた通り明日は日曜だが秀尽に行くので早めに寝なければならない。しかし流石に気になるので持ち前の超魔術級の器用さで軽く荷物を纏め窓を開け埃を掃き、床を掃除して本を縛りゴミと要らないものを端にまとめてから寝巻きに着替えてベッドに横になった。

 

軽くとは・・・?

 

そして寝転がりながらふと、自分が冤罪の前歴を付けられることとなった事件、酔っ払いのハゲと何故か自分を見て顔を赤くしていた女性、そして警察に捕まりながらも最後までハゲを睨みつけていた自分のことを思い出して眉間にシワを寄せる。どう考えても俺悪くねーよなと。周回前の自分には知る由もなかったが奴は衆院議員でありその権力を以って罪をこっちに擦り付けたのだ。そのせいで転校になるわ変な噂は流されるわで大変な目に遭った。あ、思い出しただけで腹たってきたなと蓮はこめかみに青筋を浮かせる。

 

まぁあのクズカスクソハゲには後々痛い目を見せるので良しとして明日も早いしとりあえずもう寝ようとスマホを充電した後に目を閉じる。しかし、あの死ぬほど聞いた睡眠への誘い文句がないとやはり少し寂しいなと考えながら微睡みの中へと意識を沈めていった。

 

 

 

 

 

これから始まるショータイムに対して胸を躍らせて・・・

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

ポタ・・・ポタ・・・

 

 

 

「ん・・・?」

 

 

ジャララ・・・

 

 

何故か耳に響いてくる聞こえるはずのない水滴の音。その音が意識を少しずつ覚醒させていき、そして身動ぎした時に聞こえた重々しい音によって完全に目が覚めた。

 

パチリと目を開けるとさっきまでいた部屋とは違い無機質なコンクリートの天井が目に入り、感じる空気も冷たいものになっている。この形、雰囲気、まるで独房だ。しかもまるでオペラのような美声が響いておりどこか不気味な感じがする。

 

少しふらつく頭を抱えながらベッドから起きるといつの間にか自分の着ている服が囚人服に変わっているのに気づく。よく見たら手足には鎖が繋がれ、足の鎖の先には大きな鉄球が転がっている。これではまるで本当に囚人のようだ。

 

当の本人はこうなることを知っていた為お!きたきた!と困惑するどころかテンションが上がってるが。そしてウッキウキなまま小さくスキップして牢の柵まで来るとその前でまるでゴミを見るような無機質な瞳、とても人間とは思えぬ雰囲気と黄金のような輝く美しい黄色い目を持つ2人の警備員のような服を着たそっくりの見た目の双子の少女達に片手を上げ挨拶をする。

 

「やっ」

 

「な、なんだ貴様。馴れ馴れしいぞ囚人!」

 

「・・・この状況でなんという図太い精神。恐れ知らずというか礼儀知らずというか」

 

まさか動揺ひとつせずに軽い挨拶をしてくるとは思ってなかったのか右目に眼帯を付けたお団子の髪型をした少女は思わず驚愕して身を弾きながら手に持ってた警棒を突きつけ、左目に眼帯を付けた三つ編みの少女は一瞬目を見開いた後に呆れ気味にジト目で蓮を睨みつける。

 

その相変わらずな態度に蓮は思わず笑みを零すとお団子の少女が馬鹿にされたと勘違いをしてその警棒を牢に叩きつける。

 

「おい貴様!囚人風情が舐めた態度をとるんじゃない!痛い目にあいたいのか!」

 

ギロリと少女とは思えぬ威圧感を出しながら睨む少女に対して蓮は全く動じることなく、寧ろ微笑ましいものを見るかのように目元を緩ませた。流石ライオンハート、意味不明なレベルでメンタルが強い。

 

「ごめんごめん、つい。あ、そうだ飴いる?」

 

「む、飴だと」

 

「・・・カロリーヌ」

 

「は!!い、いらん!飴などいらんぞ!だからそんな目で見るなジュスティーヌ!」

 

飴に釣られそうになったお団子少女を三つ編み少女がジト目で見るとお団子少女は顔を赤くし警棒をブンブンと振り回して必死に誤魔化そうとしているが、ちゃっかり飴を貰っているため説得力が無かった。

 

そんな茶番じみた事をしていると奥の方から咳払いが聞こえ、それを耳にした少女達が表情を直し左右に避ける。そうすると、監獄の外にある部屋の真ん中に光が集まりそこにいた人物が照らし出される。

 

「ようこそ、わたくしのベルベットルームへ・・・」

 

そこに居たのは、剥き出しになっているかのように見えるほど見開かれた目にピノキオのように長い鼻、限界まで吊り上げられたにやけているように見える口、ひょろりと長く細い体に黒いスーツを着た一見人外にすら見えるほど特異な見た目と雰囲気をさらけ出した男の姿であった。

 

「おっほん!さて、ようやくお目覚めだな囚人!」

 

「現実のあなたは今は睡眠中。これは夢としての体験に過ぎません」

 

「さぁ主の御前だ!姿勢を正せ!」

 

目の前の双子に交互にそう言われたにも関わらず、蓮の視線は、意識は長鼻の男に釘付けになっている。その目は興味と言うより観察するような目線、それも僅かに敵意が含まれている。その事に気がついたお団子少女がムッと目を鋭くして手に持った警棒で檻を叩こうとするも、その前に男の声によって静止された。

 

「よい・・・静まれカロリーヌ」

 

「ハッ!」

 

男の言葉に素早く警棒をしまい、姿勢を正すカロリーヌと呼ばれた少女。どうやら彼女、いや彼女達は男の部下か何からしい。先程の対応を見るに男に対しかなり従順なようだ。まぁ知ってたと言うようにお団子少女から再び長鼻へと目を移す。

 

「さて、ようこそ。お初にお目にかかる。ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所・・・何かの形で契約を結んだ者のみが訪れる部屋。名を『ベルベットルーム』。そして私は主を務めている『イゴール』。覚えてくれたまえ」

 

「・・・初めましてイゴール」

 

男が名乗ったその名前に酷く強い嫌悪感を抱きながら噛み締めるように呟く。それを表面上に出さないようポーカーフェイスを保ちながら挨拶を交わす蓮。

 

「お前を呼び出したのは他でもない。お前の命にも関わる大切な話をする為だ」

 

「大切な話だと?」

 

いきなり奇妙な話を切り出し始めたイゴールに眉を寄せながら聞き返す蓮。その不遜な態度に再びカロリーヌが目を鋭くするが主の命もあり、睨むだけに留まっている。だがその威圧感は並の人ならば蛇に睨まれた蛙の如くガタガタと震えが止まらなくなるほどなのだがライオンハートの蓮は意に介さずケロリとしながらイゴールと向き合っていた。寧ろその様子に愛嬌すら感じている始末。

 

イゴールは机の上に指を連なせながらゆっくりと辺りを見渡すとその低く渋い声で内装について、意外そうにしながら話し始めた。

 

「しかしこれは驚いた・・・ベルベットルームは来訪者の心の『ありよう』に合わせて風景が変わるのだが・・・まさか監獄とは」

 

ひとしきり部屋を見たイゴールは再び蓮と若干の哀れみを含ませながらその目を合わせる。

 

「お前は正しく運命の囚われ。近い将来、その身に破滅が待ち受けているに相違ない」

 

「・・・それはどうかな」

 

軽く笑いながらとんでもないことを言うイゴールに対し、蓮は不敵な笑みを浮かべながら反抗の意思を見せる。それを少女達は意外な物を見たと目を丸くするが直ぐに真顔へと戻した。

 

だが身も蓋もないなんの確証もないイゴールの言うことが蓮には近い内に真実になるものだと知っている。

 

そして、選択を誤ればその果てに自分は命を落とすことになると。

 

そんな蓮に対しイゴールはその不気味な笑みを絶やさずに話を続ける。

 

「フフ・・・随分と強気だな、面白い。そんな愚者に抗う術を教えよう」

 

「抗う術?」

 

「『更生』するんだ。自由への更生・・・それがお前が破滅を回避する唯一の道」

 

イゴールがゆっくりと手を上げると指を合わせ、パチンと華麗な音を響かせる。すると、蓮の前に蒼き光が蛍のように舞い降りると一層強く光って1枚のカードへと変貌した。蓮がそれに惹かれるように手を伸ばすとまるで溶けるように手の中へと入り込み、手を握るとその光は完全に消える。

 

「自らの運命に。そして世界の歪みに挑む覚悟はあるかね?トリックスター」

 

煽るように手を広げ、蓮に壮大な質問を投げかける。それに対して何を当たり前なことをと言わんばかりに笑みを深め蓮は力強く手を握り締めながら目の前の驚異を真っ直ぐと見返す。

 

「・・・そんな運命には負けないさ」

 

これから辿ることになる数奇な運命と、そして世の中に蔓延る悪意と。そんなものと何度戦ってきたか。今更何を怖気づくことがあるというのか。そして目の前のコイツも・・・。

 

「・・・ククク、何とも威勢がいいものだ。お前の更生の軌跡、拝見させてもらうとしよう」

 

そんな蓮を見下すような態度を取るイゴールは思い出した様に声を漏らすと少女達に目を向け指を差す。

 

「あぁ、紹介が遅れたな。右がカロリーヌ、左がジュスティーヌ。共に看守を務めている」

 

「ふんっ、精々無駄に足掻くがいい!」

 

「よろしく、カロリーヌ」

 

最初に指を差されたお団子少女、『カロリーヌ』は警棒を肩に置き、フフン!と凄まじいドヤ顔をしながら見下すように胸を張っている。しかし幼く小さい体でやっているため大変可愛らしいとしか感じられない。蓮もまるで孫を見るような顔をしていた。

 

「看守とは元来、囚人を守る職務。私達もまた協力者です・・・ただし貴方が従順なら」

 

そして次に指を差された三つ編み少女、カロリーヌとは対象的な落ち着いた雰囲気の『ジュスティーヌ』はペラペラとクリップボードに挟まれた紙を捲りながら蓮に冷ややかな目を向けている。

 

「あぁよろしく、ジュスティーヌ」

 

「・・・・・・えぇ」

 

しかしそんなクールな彼女もメガネで隠していない蓮の眩しい魅力溢れる笑みの前では少し動揺したようで氷が溶けるようにほんのりと頬を赤らめて目を逸らす。可愛い。

 

「この者らの役割についてはいずれの機会でいいだろう。さて、夜も更けてきたようだ・・・じき刻限。このことは少しずつ理解していけばいい。いずれまた会うだろうからな・・・」

 

「さぁ時間だ。大人しく眠りに戻るがいい!」

 

 

イゴールとカロリーヌの声を聞くと蓮は凄まじい眠気が襲いかかり、現実世界で目覚める直前であることを知ると手を振って別れの挨拶をする。

 

「じゃあ、また。カロリーヌ、ジュスティーヌ。・・・あとイゴール」

 

「お、おぉ。またな・・・じゃない!馴れ馴れしくするな囚人の癖に!」

 

「・・・・・・」

 

「フッ・・・またの機会に、トリックスターよ」

 

 

眠りに落ちる前に警棒を振り回しながら抗議するカロリーヌ、無言で小さく手を振るジュスティーヌ、そして未だ怪しげな笑みを浮かべるイゴールを見届けてから今度こそ蓮は現実世界へと意識を浮上させていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────今ここに力は宿された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────約束の刻は近い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────今度()愚者として終わらぬよう、そしてこの輪廻から抜け出せるよう共に足掻こうではないか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────楽しみだぞ、()()()

 




主人公 『雨宮 蓮』

アルカナ:愚者

人間パラメータ

・知識MAX 知恵の泉

・度胸MAX ライオンハート

・器用さMAX 超魔術

・優しさMAX 慈母神

・魅力MAX 魔性の男


設定:

ペルソナ5の話を何度も何度も繰り返しループしている。今回のループで何らかの要因によって突然ペルソナ5Rの世界線に入った為、このループを終わらせるチャンスではないかと考えている。数多くのハッピーエンド、バッドエンドを経験しておりコープなどありとあらゆるルートを試している為最善の選択をする事が出来る。メンタルが鬼強。

料理や家事がプロレベルであり、珈琲の味は惣治郎も認めるほど。怪盗団の母的な存在になってる。女性陣完全敗北。特に祐介の腹を掴んで離さない。

戦闘スキルも磨かれ過ぎており、ペルソナ無しでも並のシャドウを倒せるほど。現実世界ですらパルクールで駆け回り身についた第六感はあらゆる敵意を逃さない。トリックスターの名は伊達では無いのだ。



こんな感じのジョーカーが割と好き勝手やる作品です。
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