皆さん感想ありがとうございます・・・しかし本編は駆け足気味・・・場面切りかえ多すぎ・・・さらに長い・・・挙句にペルソナは出てこない・・・済まぬ・・・済まぬ・・・
あと誤字修正ありがとうございます
ガシャンッ!!
「はっ!」
響き渡る扉が閉まる音と共に現実世界で目が覚める。どうやら無事にベルベットルームから帰還出来たらしい。ファーストコンタクトは上々だったなとやや気だるい体をほぐしながら簡易ベットから起き上がり欠伸をひとつ零す。
寝ている間にあそこに行くと寝ながら音楽を聴いたみたいな脳が寝れなかった疲労というのが出てくるのだ。そこが少し不便な所だよなーとテキパキと制服に着替えながら考える蓮。慣れすぎた動作は極限まで動きの無駄をなくしまるで早着替えのようにあっという間に着替え終わった。
「よし」
スマホで時間を確認するとまだ惣治郎が来るまで時間がある。こういった時間にはコーヒーを入れるのが1番だが、しかしこの時期に勝手にコーヒーなどを入れるとどれだけ美味く出来ても怒られて好感度が下がってしまう為、そういったことは機会があったときにやって惣治郎に認められなければならない。だからとりあえず身支度をパパっと済ませてから少しだけ店内を整える程度に抑えておくのだ。
これなら惣治郎も驚きこそすれど怒ることは無い。まぁ最初は余り好感度の変動も起きないので少しづつ真面目で有能な所を見せていけばいいとモップで床を磨きながら考える。そうしてチャチャッと掃除を終えたらそろそろ惣治郎が来る時間なので2階に戻って荷物を持ち伊達眼鏡をかけて再び下に降りると丁度来たらしく心地いい音を立てて店の扉が開く。
ピンクのシャツに白の上着、肌色のズボンに白の帽子と見た目と相まって大変シャレオツな正しくイケおじと言うべきファッションの惣治郎が店の中と降りてきた蓮を見て珍しく目を丸めて驚いていた。
「お、おい・・・どうなってんだこりゃあ・・・店ん中が偉く眩しいんだが・・・」
「今朝早く起きてしまって、居候させてもらってる身なので身支度ついでに軽く掃除しておきました」
「軽く・・・ってお前、これが軽く・・・?」
完全に困惑しながらピッカピカの店の中を改めて見渡す惣治郎は信じられないのか空いた口が塞がらないようだ。それもそうだろう、これだけ綺麗にするには最低でも1時間以上はかかるはずなのだから。これもお掃除スキルと器用さを超魔術まで伸ばした男の力である。そのまま数秒固まっていたのだがどうやら現実を受けいれたようで目元を揉みながら蓮に礼を言った。
「あー、色々言いてぇがまぁありがとよ。正直助かった・・・とりあえず朝飯でも食うか」
「頂きます」
惣治郎はやけに綺麗になったキッチンや冷蔵庫に戸惑いと違和感を覚えながらも残って冷蔵していたルブランカレーを取り出し、上着と帽子を一旦脱いでから鍋で温め炊いていたご飯に慣れた手つきでかけるとカウンターで待っていた蓮の前に水と共に差し出した。
「本当はうちのコーヒーに合わせんのが1番なんだが時間が無いんでな。水で我慢してくれ」
「いえ、充分です。ありがとうございます」
「・・・お前ほんとに問題児かァ?」
朝ご飯を出してくれた惣治郎に礼を言いつつも目線は完全にカレーに行っておりまるで子供のようにキラキラと目を輝かせているのを見て惣治郎は思わずそう呟く。しかし蓮はようやっと出会えたルブランカレーに完全に意識を向けていた為気づかなった。どれだけループしてもこの味に敵うものは無いと鼻を刺激する
危ない危ないと手で口を拭ってから手を拭き、眼鏡を外してから手を合わせ元気よく頂きますをした。そしてカチャリとスプーンで一掬いしてより濃厚な匂いを楽しんでから満を持して記念すべき1口目を口の中へ運んだ。
その瞬間ッッ!!
蓮の口内には今まで何度も味わった、しかし決して飽きることの無い至高の味が満遍なく行き渡り思わず目を見開き、感動に涙すら流しそうになる。みるみるうちに体が幸福で満たされていく。一口食べるごとに脳が歓喜している。咀嚼する事に細胞が狂喜している。あとついでにSPも回復した。
これだ!!これを待っていたのだ!!
蓮の全てがそう告げていた。そしてあっという間に完食し、一切手を付けてなかった水を最後に思いっきり飲みきって満足感が支配すると思わず感想が口から漏れてしまった。
「うっまい!!」
その一部始終を見ていた惣治郎は完全に予想外だった反応にドン引きしつつも本当に美味そうに食い、そして幸せいっぱいと言いたげな満ち満ちた顔に一料理人としての喜びと感謝、そして蓮の見せた年相応の部分にほんの少しの愛おしさが湧き出て汗を垂らしながらも軽い笑みを浮かべた。
「そりゃどうも、それにしても食いっぷりは年相応だな」
「あ“・・・す、すいません・・・」
完全にやっちまったとルブランカレーを食べられた余りの喜びに我を忘れた事を恥じる蓮。珍しく顔を赤く染めて、それを眼鏡をかけることで隠す。昨日今日で真面目に見せかけているだけだと考えていた惣治郎はもうすっかり彼に対するイメージが変わっていた。どこか、蓮の姿が彼女に似てるのがそうさせるのに拍車をかけたのかもしれない。
(んだよ、大人ぶってるが思ってたより可愛いとこあるじゃねぇか・・・
そう考える惣治郎はフッとダンディに笑うと鍋や食器を片付け、上着と帽子を着て店の扉へと歩いていく。その間にステが上がる音が聞こえたような気がしたが気のせいだろう。
「さて、そろそろ行くか。口元も拭いていけよ。秀尽は電車だと割と遠いからな。本当は男は車に乗せたくねぇが特別に乗せてやる。ほら、行くぞ」
「あ、はい!」
蓮に対する好感度が2日目にして割と高くなった惣治郎は優しげにそう声をかけると店の外へと出ていった。そしてその後を追いかけて蓮は口元のカレーを拭った紙を捨てながら扉へと小走りし、ついでに少し赤くなった顔を冷ましながら店の外へと出ていった。
ルブランの中には心地の良い優しい匂いと香ばしいカレーの匂いが残っていた。
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時は飛んで私立秀尽学園。都内の蒼山一丁目にある部活動、特に運動部に力を入れているごく普通の進学校である。その中でもバレー部は教師が元オリンピック選手であり、その手腕で全国レベルまで力をつけたとか何とか。
・・・しかし、その裏に醜悪極まりない事実が隠されていることを多くの人間は知らない。そして、その教師が色欲に塗れたまさに
「おい、何やってんだ。黄昏てる暇はねぇぞ」
「すいません、つい」
「・・・一応警告しとくがな、学校では大人しくしておけ。どれだけお前が真面目でも人の印象ってのは事柄で大きく変わる。お前の場合『前科』がそうだ。クソみてぇな話だが、事実そうなんだよ人間ってのは。集団でいるなら尚更だ」
「・・・はい」
「言いたかねぇが迷惑はゴメンだ。俺の為にも、そしてお前の為にも・・・そこんとこ頼むぞ」
「はい」
真剣な顔をして釘を刺してくる惣治郎の言葉には大きな説得力があった。きっと彼もそういった経験があるのだろう。いや言わないが事実知っている。
内心で謝り倒している蓮はポーカーフェイスで返事をすると「よし」と惣治郎も納得し、校門を抜け校舎内へと入って行った。
そしてこのループでは初めて来る見慣れた校舎内を歩いていき、校長室に入ると中にはそれはどうなんだと思うほど黄色いスーツを着た肥満を超えたダルマみたいな校長とこれから担任になる黄色と白のボーダーの服を着たややボサボサの髪をしたよく知っている女教師がいた。2人の蓮に向ける目はとても冷ややかだ。1発で迷惑がっているのが分かる。
しかしそんな目など最早空気を吸うレベルで慣れている蓮は気にもとめずに惣治郎と共に中へと入る。にしても相変わらず黄色い校長だ。プーさんかダンディ板野の親戚なのだろうか。
まぁ特に意味の無い会話をしてから惣治郎が書類を書き終わると校長がわざとらしくため息を吐いて蓮へと目を向けた。
「改めて伝えるが問題を起こしたら即!退学処分だ。正直君のような人間を受け入れるか迷ったんだがまぁ、色々と都合があってね・・・」
そう言ってからジロリとダルマのような顔を顰めて蓮を睨むように見るが当の本人は何処吹く風と言った感じでまるで表情を崩さない。寧ろ、その顔に威圧された校長が慌てて目を逸らし、誤魔化すように話を続ける。
「ともかく!地元じゃ色々やれたんだろうがここでは大人しくしてもらうぞ!肝に銘じておけ!」
蓮から感じる
「そしてこちらが担任の川上先生だ」
「川上貞代です。これ、君の学生証」
そう言って校長の机に置かれたのは蓮の写真が貼り付けられた正真正銘秀尽の学生証だった。しかし、その下には何やら別のしかもピンク色で絶対に学校には関係ないような物が挟まっていた。蓮はこれを何か知っている。そう、にゃんにゃんなあれだ。言い方が悪い?間違ってないから問題ない。
それに気がついた川上は慌ててそれを回収しようとするが・・・
「ありがとうございます」
気がついていない
「すいません、先生。
「そ、そう!それはごめんなさい!あは、あははは・・・」
九死に一生を得たと言わんばかりに顔に希望が戻る川上に思わずニヤけそうになるが鉄の仮面とまで言われた彼のポーカーフェイスは決して崩れず真面目な顔でそのチラシを校長や惣治郎には見えにくいようにして渡した。我ながらファインプレーだと自画自賛するが、原因はコイツである。
蓮のサディストな部分が垣間見えた後、適任がどーたら責任が何たらというような説明を受けてから説明も手続きも終わったので今日はひとまず帰宅することとなった。
「完全に厄介もんだな。まぁこればっかりは仕方ねぇ、これから真面目にやってりゃ少しはマシになるだろうよ。精進しろよ」
「気をつけます」
「おう、んじゃあ帰るぞ」
「承知」
「お前ホントに分かってんだろうな・・・」
そんなやり取りをしながら帰路についたのだが・・・学校の方で川上と顎が蓮について話をしている頃。2人は事故によって発生した渋滞に完全にハマっていた。
「最悪だな」
「最悪ですね」
全くもって前に進む気のしない渋滞に2人揃って仲良く表情が抜け落ち真顔になっている。蓮は知っていた為演技だが。進んだとしてと数十センチ前に進むだけで直ぐに止まってしまう。都内の渋滞というのは恐ろしいものだ。全く、迷惑極まりない。なぁ名探偵!どこぞの寿司たかる名探偵!
「どうします、退屈しのぎにしりとりでもしますか」
「やらねぇよそんなん。余計気分が落ち込むわ」
キメ顔でしりとりを提案してくる蓮に呆れたようにジト目を向ける惣治郎。退屈しのぎならと車のラジオをいじって局を合わせ音量を上げた。するとそこからは丁度事故の影響についてのニュースが流れていた。
『・・・繰り返しお伝えします。地下鉄ホームで起きた脱線事故の影響で周辺ダイヤに大幅な遅れが・・・』
「事故ねぇ、最近多いな。そういや先月も大事故があったっけな。15歳の子が亡くなったとかよ・・・親御さんさぞかし・・・」
『これに伴い、渋谷駅周辺に交通規制が敷かれ渋滞に拍車が・・・』
「勘弁してくれよ・・・」
「じゃあしりとり・・・」
「やらねっつの!」
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「はぁ・・・やっと帰ってこれたな。今日は店どうすっか・・・まぁいい、それよりもコレ、渡しとくぞ」
まぁそんなこんなでようやっとルブランへと帰宅出来た頃、もう開店するような時間でも無くなってしまい惣治郎が愚痴っていたがそんな彼からある物が蓮に手渡された。
「日記帳だ、付けとけよ。保護観察期間の報告は俺がするんだからな」
重要アイテムである日記帳を手に入れた。これは書くだけでそれまでの行動を記録しその時点での状態をセーブしてくれる素晴らしい代物である。例えゲームをブチ切りしてもデータが残って安心だ!タイミングをミスると取り返しの効かないことになるけどね!
しかしそれはゲーム時空での話でありこの世界においてはただの日記帳なので特に意味は無い。しかしこれを惣治郎が見る機会は殆ど無いので適当にやっててもバレない。なんならメモ帳にしてもいい。
ピロロロ、ピロロロ
蓮が渡された日記帳に真面目に書いてると見せかけてやけに可愛らしい字で「べっきぃ」とだけ書いていると惣治郎のスマホに電話がかかってきた。かけてきた人物の名前を確認した惣治郎はできるだけ会話が聞かれないように玄関近くまで行ってから電話に出る。
「おう、どうした。あぁ分かってる、もうすぐ帰るよ。・・・じゃあ後でな」
普段よりも柔らかい顔で電話をした後、会う約束をすると通話を切った。言い方は悪いがその変わりようと内容は女と会う約束をしてるように聞こえる。しかし彼は独身だったはずだが、この歳にして遊び人なのだろうか。魔性の男もビックリである(すっとぼけ)
そして電話が終わったことでスンと顔を戻し蓮の所まで戻って来ると自分のことをジッと見てくる蓮と顔を合わせると彼はキランと伊達眼鏡を光らせおもむろに手を上げ・・・
スッ・・・(静かに小指を立てる音)
「ぶっ飛ばすぞお前」
電話相手を知っているため、ムカつくやり方でおちょくってきた蓮にこめかみに青筋を立てて惣治郎が拳を握りしめると「冗談です」と冷や汗をかきながらカバンで顔を隠す蓮。さすがにゲンコツは喰らいたくない様だ。そんな彼にらしくなくノッてしまった惣治郎はため息を吐いてから帽子を被り直しくるりと背中を向ける。
「まぁいい、俺は帰るからな。くれぐれも店は荒らすなよ・・・ってもやるとは思わねぇが。明日から学校だからさっさと寝とけ」
「がってんてん」
またよく分からない返事をする蓮にふと軽く笑みを浮かべた後、上着を手で肩にかけてイケおじらしい貫禄のある背中を揺らしながら店を出ていった。
さて、このまま銭湯に行き早めに寝るのも良いがこの後店を出たばかりの惣治郎から店の電話に連絡が来るので上に行く前に黄色い受話器の前にガン待ちして電話がかかるのを待つ。そして電話の音が鳴り始めた瞬間に迷いなく手に取って出る。最速で最短で真っ直ぐに一直線に!
『ジ』
「はいこちらオリエンタルな味と香りの店、ルブランです」
『いや早いな・・・てゆーか、何勝手にキャッチフレーズ作ってんだお前。うちにそーゆーのはいらねンだよ。って、そうじゃねぇ。悪ぃが店の札裏返すの忘れてな。戻るのも面倒だからやっといてくれ』
「分かりました、銭湯行くついでにやっときます」
『おう頼んだ。しかし助かったぜ、俺は携帯に男の番号は登録しない主義でな。お前がこっちの電話に出るようで良かったよ・・・早さは異常だったが』
「たまたま前にいただけです」
『そうかい、じゃあ頼んだぞ。ま、この時間に来る客なんざ居ないだろうがな』
「はい、おやすみなさい佐倉さん」
『・・・・・・あいよ、おやすみ』
やや照れながらそう言って電話をぶち切りした惣治郎に満足気な顔をする蓮は受話器を置いていいものを聞いたとルンルンスキップしながら2階に行く。
普段あまり見る事も聞くことも出来ない惣治郎の照れはやはり気分が上がるなと再びS宮蓮となりながら四次元私物入れから着替えを取ると銭湯に行くために店を出て扉にかかっていた札を裏返してから極楽の湯へと歩いていった。
ちなみにこの後、銭湯に熱湯じじいがいた為魅力に更なる磨きがかかった。この熱湯風呂最初こそ耐えられなかったが今となっては30分は耐えられる。ジジイはその上をいっているが。あのジジイ魅力どんだけ上がってるんだろう。
銭湯から出ると湿った髪に火照った体がやや赤くなっている為色気が半端ないことになっている。ここにラッコ鍋があったら直ぐに相撲が始まっていただろう。この怪盗、スケベすぎる!(ゴールデンカムイ)
この場に新宿のおねぇがいたら即ロックオンされてしまうだろう。ドロン玉必須だ。
湯冷めしないうちにルブランへと戻り、明日の持ち物を一応整えてからベットに入る。明日はとうとう初登校だ。友達100人できるかな、ドキドキして眠れないぜ!とわざとらしく蓮は考える。すでに学校にはあらぬ噂が流されているため友達どころか話し相手すらまともに出来ない状況だ。全く、どこの顎と三島のせいだろうか皆目見当もつかない。しかし蓮は挫けない!初登校頑張るぞ!(遅刻しないとは言ってない)
そしてテンションを戻した蓮は何となくスマホを起動させるとやっぱりあの怪しい目玉のアプリ、異世界ナビがいつの間にか入っていた。わざわざ奴がインストールしてくれていたらしい。ご苦労な事だ。
また消してやろうかと指をナビに合わせるがしかし風呂に入ったあとなのでまた消す気力も無く、スマホを充電器に刺した後は直ぐに眠気に逆らわずにぐっすりと眠りに落ちていった。
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・・・・・・ぃ
・・・お・・・がぃ・・・
お願い・・・
あの子を・・・◼️◼️◼️を助けてあげて・・・
私の大切な・・・◼️を・・・どうか・・・
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時はキング・クリムゾンして朝。
何か妙な夢を見た気がする蓮は朝から頭を捻りながらルブラン1階へと降りていく。するとそこには既に惣治郎がおり、カウンターにはカレーと前には飲めなかったコーヒーが用意されていた。
「ん?どうした朝から難しい顔して」
「いやぁ、何か変な夢を見まして・・・あの子がどうとか・・・」
「なんだそりゃ、よく分かんねぇが今日は初登校なんだからシャキッとしてけよ。朝飯も食ってけ」
「ありがとうございます・・・」
カウンターに座った後もうんうんと唸っていた蓮だがカレーを1口食ったら「ゥんまぁぁーーいッ!」とどこぞのスタンド使いのようなリアクションをしてもりもりとカレーを食い始めた。そして前とは違い水ではなくルブランコーヒーがあるので合間合間にクイッと飲むと程よい酸味と味わいがカレーとベストマッチしてもうモノスゲーイことになっている(余りの美味さに語彙力低下)
そんな感じであっという間に平らげた蓮は夢のことはすっかり頭から抜け幸せそうな顔のままルブランを出てついでに札をOPENにしてから登校して行った。
電車に揺られ、乗り換えをしたりして十数分。異界迷路の渋谷駅すらもスイスイ抜けてなんの問題もなく登校していく蓮。途中で見覚えのありすぎる女性記者を見かけたがあちらはこちらを知らない上に仕事中らしく駅員と話し合ってたので邪魔しないようスルーしてきた。
そんなこんなで着いた蒼山一丁目。ここまで来ると秀尽の生徒が増えてくる。分かりやすい制服なのですぐに分かる。丁度改札近くにも女子生徒が何人か集まっている。しかし妙なのがその女子生徒達から強い視線を感じることだ。まぁ原因はわかりきっている。流された噂だ。
なんでも今度来る転校生は超問題児で恐喝、暴力は当たり前。果ては殺人までやっておりクスリにも関わっている超ヤベー奴だとか何とか。常にナイフを持っており何かあると直ぐにぺろぺろしだして「あは☆殺しちゃうよ〜ん」と脅してくるとか。やー、怖いですね。一体誰のことなんでしょうね(白目)
なんであんなわっかりやすい嘘に引っかかってるのか心底分からないが秀尽の生徒達は皆少なからず転校生、つまり蓮をヤバいやつと認識しているのだ。ヤベー奴なのはあながち間違いでもないが噂はその全てが根も葉もないものばかりで話が広まってくうちに盛られていったりした結果だ。やっぱ秀尽ってやべーわ(震)
て言っても気にしたところで特に意味は無いので無視が安定だ。だってあっちはこっちの話聞かねーし。
そうして駅を出るといつの間にか雨が降り始めており地面を濡らしていた。だがしかしそんなこととうに知っている。なぜなら何度も体験してるから!と胸を張る蓮はカバンから折り畳み傘を取り出して広げようとしたが・・・
バッ(傘が開く音)
ガシュッ!(何故か傘が射出される音)
バチャ(傘が水溜まりに落ちる音)
知ってた─────
悲しいかな、無駄な抵抗であった。実は何度も繰り返すループの中で幾度となくここで傘を差そうとするが失敗。尽く破壊されたりしてきたのだ。今回こそはと僅かな反抗心を持って傘を持ってきていたが・・・あぁ、やっぱり今回もダメだったよ(ルシフェル並感)
仕方がないと傘の残骸をビニール袋に入れてしまい、近くの店の下で少しだけ雨宿りをすることにした。そうなると、そろそろ来る頃かと周りをキョロキョロ見ていると自分の隣に雨の中をかけてきたフードを被った赤タイツの眩しい女子が入ってきた。
その女子は屋根の下に入ると被っていたフードをとってふわりと雲のように柔らかな髪を広げ、突然の雨にげんなりするようにため息をひとつ吐いた。
勿論、蓮は彼女のことを大いに知っている。ある意味、後の怪盗団の仲間としての初めての出会った人物であり天真爛漫な性格と持ち前の明るさで皆を引っ張ってきた怪盗団きっての清涼剤。
燃えるような激しさと、鞭のようなしなやかさ。そして大根のような演技を持つ彼女の名は・・・
『高巻杏』
それが蓮と目を合わせると優しく微笑んだ彼女の名だ。
まるで無垢な子供のような笑みを浮かべた杏に蓮も釣られるように笑うと杏がおもむろに手を蓮に伸ばし、蓮の前髪に触れる。なんだろうと不思議に思っていた蓮だったが杏の手につままれた桜の花弁を見てついていたのを取ってくれたのだと理解した。
「ありがとう」
「ううん、気にしないで。それにしても嫌な雨だよね。折角綺麗に桜が咲いたのに、散らさないで欲しいな・・・」
そう言って雨に濡れることよりも桜が散ってしまうことに嘆く杏に蓮は笑みを深める。やっぱり杏は優しいやつだとホンワカした気持ちで「そうだな」と同意するとどこからかクラクションの音が聞こえてくる。さっきまでの暖かな気持ちがなりを潜め、「ついに来たか」と憎たらしい物を見るような目付きで前の道路に顔を向けるとそこには1台の車が止まっていた。
ウィーンと音を立てながら窓が空くとそこには巨大な顎が・・・失礼ココ〇コ田中のような、あるいは猪木のような長い、それはそれはロングロングアゴーな男がこちらを見ていた。
「遅刻するぞ、乗っていくか高巻」
そう言って笑う男。その顔は何も知らない奴から見れば優しい教師の鏡のような表情をしていたが奴の醜悪な本性を知っている蓮からすればその全てが上っ面だけのゲスを極めたクソ野郎の顔である。例えどれだけ優しく取り繕うが彼が男の、『鴨志田卓』の奥底の本性を忘れるはずが無いのだ。
「おっと君もか」
「いえ、俺は大丈夫です」
「む、そうか・・・じゃあ遅刻するなよ」
杏に向けた笑顔ではなくニヤついた顔で言う鴨志田に真顔でキッパリと断ると面白くなさそうに一瞬眉を下げたがすぐに戻し、また元の笑顔で忠告するとさっさと窓を閉めて発車させて行った。
車の窓が閉まる時、杏の表情を見たがやはりこの時期から相当に追い詰められているらしい。それもそうだ、一年の頃から人知れずにちょっかいを出してこられているのだからそうもなる。しかも唯一無二の友達も巻き込まれているとなると彼女の心労は想像を絶するだろう。
なるべく早く救わなければとスマホを握りしめて去っていく車を眺めると後ろからバシャバシャと忙しい足音が聞こえてきた。
その音を聞いた瞬間、それまでの嫌な気分が全て吹っ飛び逆にドキドキワクワクとした喜びの感情が湧き出てくる。何度経験してもこの出会いには歓喜が出てきてたまらない。
思わず早めに振り向くとそこには短い眉に派手な金髪、ブレザーの下には黄色のシャツに裾上げしたスラックスとどこからどう見てもヤンキーな見た目にどこか安心感すら感じる。
蓮の人生において最も信頼を置く親友と言える存在となる男。彼の名前は『坂本竜司』。蓮と同じく問題児のレッテルを貼られた青年である。
「クソッ、鴨志田の野郎・・・好き勝手やりやがって。城の王様気取りかってんだ。なぁ?」
そう言って顔を向けて来る竜司にしかし初対面であることを思い出した蓮は顔を真顔に戻して何も分かってない演技で頭に「?」を浮かべて首をかしげながら竜司を見つめる。
「いや鴨志田だよ鴨志田。あの変態教師の・・・って見ねぇ顔だな。学年は・・・タメか。何組だ?」
「いや、まだ分からない」
「分からないって、あぁお前噂の転校生か。・・・にしてはどっかで会ったような・・・まぁいいや。大した雨でもねーしさっさと行こーぜ。裏道教えてやっからよ」
ジロジロと蓮を見ていた竜司だったが今の時間を思い出してとりあえず登校しようと目の前の裏道に入ろうとすると突然訪れた謎の頭痛に立ち止まる。蓮は慣れてるのでケロリとしていた。
「うっ・・・あー、頭いてぇー帰りてぇー・・・」
「大丈夫か?」
「あぁ、心配ねーよ。行くぞ」
頭を振って裏路地に入っていく竜司に微笑みを浮かべながらついて行く蓮。パラパラと雨が降り注ぐ裏路地を歩いていると時折壁や地面が歪み、紫に染まったりしたがこれは蓮にしか見えてないし特に害は無いので問題無い。いやこの後のことを考えると害しかないのだがこれが
『・・・・・・Hitしました、ナビゲーションを開始します』
こうして、全ての始まりとなる場所。吐き気催し色欲渦巻く『鴨志田パレス』へと侵入することとなった──────
──────────Part2へと続く
私の中で惣治郎はマスコット的な存在。でもいざと言う時に超頼りになる大人です。
個人的に秀尽学園ってマジでクソだと思ってます。問題児よりも人としての問題を持った奴が多すぎるんだよなぁ。
あと長くなったので分けました。覚醒はまた次回に・・・ごめんなさいでございます