転生艦足柄と提督の秘密   作:D1198

1 / 16
このSSは艦娘を独自解釈をしています。

埠頭に立って足柄を見ると、彼女は人間サイズの人型です。つまり艦これ方式です。
ですが、彼女らに乗り込む事ができ、乗り込むと船型に変わります。つまりアルペジオ方式です。

切り替えではなくどちらも同時に成立します。
艤装を持つ人型の艦娘と登場しても、同時に船型でもありますのでクルーとして働く妖精さん達が存在します。
艦娘は、船型世界・人型世界という二つの世界を跨ぐ橋様な存在だと思ってください。

え? 意味が分からない?
感じろ!


遭遇編
転生でトライ


『第一戦速、砲雷撃、用意!撃ぇー!』

 

 俺の指に従って、タブレットPC上の艦娘達が、動き出した。

 艦隊これくしょん、通称艦これ。

 このゲームをやり始めたのは最近だ。

 歴史を題材にしていると聞いたので、興味本位で手を出したら、いつの間にかハマってしまっている。

 

『きゃ! 痛いじゃない! ……んにゃ!? んにゃー!!』

 

 秘書艦にこの艦娘を選んだのは、ブログなどで何かと目にするからだ。

 それには冷やかしも多分に含まれていたが、ならばと使い始め、実際に使っているウチに愛着が湧いた。

 胸の大きさも、多少はある。

 

『ちっくしょう……この私が、ここまでやられるなんて……』

 

 俺の旗艦が妙に輝くと思えば、月光だった。

 時計の針を見て、納得した。

 随分とやりこんでしまったらしい。

 カーテンの隙間から見える月も、時間をもてあましていそうだ。

 だが、あと少しでレベル九九になるなら、気合いも入る。

 

『ちっくしょう……この私が、ここまでやられるなんて……』

 

 我ながら締まらないと思いつつ、そのシーンを思い浮かべたら口元が緩んだ。

 

『我、夜戦に突入す!』

 

 夜戦? 何の事だ? 川内は、編成していない……俺は、自分の指先が画面のどこを突いてしまったのか、漸く気がついた。

 

「……しまったーっ!」

 

 もう夜遅いというのに、つい大声を出してしまった事を悔やんだが、かと言って焦りは収まらなかった。

 

「ちょ、まった。 大丈夫か?! 大丈夫だよな!? あーーーっ!」

『艦娘轟沈〈Lost〉』

 

 俺の彼女は、深海棲艦の集中攻撃を喰らったのである。

 

「……もう少しでケッコンカッコカリだったのに」

 

 喪失感が半端ないので、俺は暫くぶりに自室を出た。

 

 

 ギシリ。

 廊下にはきしむ音だけがあった。

 身内が寝て居るであろう部屋を静かに通り過ぎ、向かう先は台所だ。

 飲料水なら自室に備えてあるが、轟沈のショックは思いの外大きかったらしい。

 

「――。」

 

 だからだろう。

 書斎から零れる人の気配に気がつかなかったのは。

 

「調子はどうだ」

 

 扉の隙間から見える俺の父親は、部屋の壁や床に積み上げられた本の隙間で、キーを叩いていた。

 いつものペースならもう推敲は終わっている筈だが、今作っている本は少し遅れているらしい。

 俺は、言う事を思い付かず思う事も浮かばなかったので、そのまま部屋に戻ろうとした。

 それを引き留めたのは、父親の言葉だった。

 

「お前、彼女たちに、堂々と会えるか?」

 

 ばかばかしい。

 現実との区別がついてないのは親父の方だ。

 俺はそのまま家の外に出た。

 

 父親の仕事の都合、家には歴史系の本が多く在った。

 小さい頃から読みふけっていたので、歴史には少々詳しかった。

 艦これで遊び始めたのは、必然だったのかも知れない。

 ただ、わだかまりが有ったのも事実だ。

 今から約七〇年前。

 この国は、世界史に記される程の大敗北を喫した。

 それはつまり、彼女たちの事でもある。

 

 歴史という過去を知って、この世界には正義など無いのだと絶望して、部屋に引きこもって、彼女たちの事を考えた。

 別に、英雄になりたいとか世界を良くしたいとか、そんな大それた事は考えていない。

 ただどうにかしたい。

 だが何ともならない。

 

「寒っ……?」

 

 妙な声がしたが、前を見てもただ路地が続いているだけだった。

 ただ、この夜は家々の灯火が消える程に深い。

 

 ――選択せよ――

 

 この声は音では無く、直接頭に響いていた。

 まるで魂を鷲掴みされているかの様な感覚だ。

 得体の知れないヤバさを感じたが、逃げ出す事が出来なかったのは、振り返ったその先に誰かが立っていたからだ。

 

 いや、この表現は間違いだ。

 手も足も有する人型だったがそれは仮初めだ。

 事実俺は、時を止められたかの様に動けなかった。

 

 ――選択せよ。自身の望みに応じるか否か――

 

 声すら出なかったが、思うだけで良かったらしい。

 アスファルトの上に、飛び散った俺の身体がその証だ。

 

 

◆◆◆

 

 

 最後の魚雷が、私の体を破壊した。

 船体がきしみ、悲鳴を上げる。

 傾き冷たい海水が、怒濤の様に入り込んでくる。

 鋼の体も、流石に五発も受ければ、無残な物だ。

 直に、暗くて冷たい底に沈むだろう。

 このバンカ海峡が私の終着点だ。

 

 何を間違えたんだろう。

 どこで間違えたんだろう。

 頼もしい仲間が居たのに。

 強い心があれば何でもできるって思ったのに。

 まだ足りなかったの? ちっくしょう……誰?

 

『――。』

 

 それは子供だった。

 その人間の子供 ――違うか。

 子供では無い、大人でも無い、そういう境目の男の子だ。

 

 どうしてだろう、その子はうずくまったまま呻いていた。

 顔はよく見えないが、怒り・悲しみ・憤り……そう言った諸々を滲ませていた。

 そうだ、これは悔しさだ。

 どうにかしたい事を見つけたのに、どうにもならなくて嘆いている。

 両膝を突いて、硬い床を何度も殴りつけている。

 

 よく分る。

 だって私も負けたから。

 でも、なにがそんなに、悔しいの?

 その手の本は、なに?

 

『足柄や』

 

 突然のその声は、老いていた。

 低くて掠れているが、妙にハリがあった。

 その子は、俯いたままだった。

 

「……意外と老けた声なのね。というか、呼んだなら顔ぐらい見せるべきじゃない?」

 

 気がついたら、男の子は消えて、老人が目の前に立っていた。

 亀の甲羅を背負いサングラス……何というか、南国風の出で立ちだ。

 

「どなたさま?」

 

 我ながら間の抜けた質問だ。

 

「ワシは神じゃ」

 

 神様? と言うか、状況が読めない。

 魚雷は? 轟沈は? 男の子は?

 

 ……ひょっとして、あれは夢?

 そっかー、そうよねー♪

 私たちが負ける筈なんてあり得ないから!

 

 そうなら話は早い。

 あの少年=神様なのかとか、細かい事にいちいち悩む事なんて無いわ。

 だって夢なんだもの。

 

「神様が何のご用でしょうか」

「盛大に勘違いしておるようじゃな。ワシは本物じゃぞ?」

「はい。存じておりますわ」

「まったく信じておらんではないか」

「夢ならどうとでも言えますから」

「まったく。自分の身体を見てみい」

 

 体じゃ無くて船体って言って欲しいわ ――あら?

 手がある・足がある。

 胸に二つのおおきな膨らみがある。

 これは、アレだ。

 人間の女の人に付いているアレだ。

 

「おっぱいじゃ」

 

 そう、それ。

 これは裸だ。

 これは裸の人体だ…… 私の体が人間になってる!

 夢万歳!

 

「頑固じゃのぅ。そこまで言うならもんでみぃ」

 

 ふにゅふにゅ。

 大きくて・柔らかくて、すこしひんやりしてる。

 へー人間の胸ってこんなんなのね。

 ふにゅふにゅ。

 あら、変な感じなってきた。

 

「その辺にしとかんかい。というか、恥じらいがないとつまらんのー」

「艦艇ですから」

 

 ガガーンと雷が鳴ったら、後頭部が痛み出した。

 突然の事でひっくり返ってしまっていたらしい。

 

「突然何をするのよ!」

「お主の願いを叶えてやろう」

 

 突然何を言い出すのだ、この神は。

 

「特にありませんけれど、しいて言うなら、こんな夢を見てる理由が知りたい」

「お主らは負けるのじゃ」

「は?」

「だから負けるのじゃ。それもひっどい負け方じゃ。やり直したいじゃろ?」

 

 負ける? 私たちが?

 やだもぅ。神様ったら意外とバカなのね。

 私たちが負けるなら、私と今こうして話せる訳ないじゃ無い。

 いくら夢だからって、バカにも限度があるのよ。

 

「何の為におっぱいモミモミしたとおもっとるんじゃ。触った感覚あったろーが」

 

 ええ。

 少し気持ちが良か……

 え?

 感覚があったって事は夢じゃ無い?

 いやだって、でも、まさか。

 

「ワシは神じゃぞ? 撃沈したお主を生き返らせて、人間にして、時間を巻き戻すぐらい造作も無いわい。というか、会話に不可解さを感じとらんのか」

「他心通?」

「うむ」

「……ホンモノ? 神?」

「分ったか。分ったら崇め奉るがよいぞ」

 

 え、えーーーっ!

 

「む、むむむ! 難しい事を言っても無駄なんですから!」

「どこも難しくはないわい。お主、残念な娘じゃのう」

「失礼な! と言うか! 負けるって嘘よね?! アレは夢よね! 夢に違いないわ! 夢って言って!」

「話聞かせても納得せんようだから、直に体験せい」

 

 パチンと指音がしたと思ったら、突然私の体が落下し始めた。

 眼下に在るのは日本列島だ。

 ふぅん、海図の通りなんだ……じゃなくって!

 

「待った! 話はまだ終わってないわ! 神様なら勝利に出来るんでしょ?! どうしてそっちを叶えてくれないの!?」

 

 雲の上のその神が陽気に杖を振る様は、出航を見送られる様で腹立たしい。

 

「神の試練を見事越えてみせよぉぉぉぉ」

「ふざけないで! これじゃ悪魔じゃない!」

『神とは理不尽な物なのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

「自分で言うな! このファッキンゴッド!」

『二人三脚でがんばるのじゃぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』

「ぜっったい! 負けないんだからねーーーっ!」

 

 "二人三脚" この意味を私が知ったのは、全てが終わった後の事である。

 

 

 

 

 

転生艦足柄と提督の秘密

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。