地球と呼ぶ星でありふれすぎている職業で世界最強……?   作:Doelman

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漸く召喚されました
つーことでどーぞー( ̄ー ̄)


異世界トータス

 

 

 

強烈な閃光を一瞬浴び一時的に視界が奪われる。馴れるまでには数十秒の時を要したがそれで十分だろう。ようやく回復し状況を確認する。呼吸 良好。五感 正常。衣服 変わり無し。体調 いつも通り。身体の感覚 異常は診られない。周辺 あの店舗にいた旧クラスメイトの安否確認 良し。ただし見たことがない空間にいるという認識があるだけ。ここでようやく南雲ハジメは状況把握をすることができた。

 

この空間は大理石に似た石造りの白い室内で豪奢な彫刻が刻まれた柱によって天井は支えられさながら中世に造られた大聖堂というのが最も相応しいと言えるだろう。背中に薄ら寒さを感じ振り向けば巨大な壁画が全体に描かれていた。よく見れば中性的な人物が両手を広げ背景の自然をまるで自分のものだというように微笑んでいる。これが意味するのは自分達がいる地球で言うところの

という想像上の存在である。

 

勿論否定されれば違うと言えるだろうが人目で見てこれを理解できる人で10人中8人は彼と同じ答えを下せる。残りは投影者か国家等の擬人化と答える可能性はあるが。あまりの気味悪さに視線を戻せば周囲より高い位置に居ることが判る。他の判断材料がないか探してみればこの台座を囲む30人程の法衣を纏った集団がまるで神に祈るような姿勢を取っていた。その格好を端から見れば異世界転移ものの常套である宗教の衣装と酷似していた。つまり自分を含めた元クラスメイトたちは*1によって召喚されたのであると、目の前の集団の中から一人の人物が動くまでの間に結論を出していた。*2

 

目の前の法衣集団の中から一人が進み出た。推定七十代から八十代ほどの老人であった。だがそれにしては纏う覇気が異なり一瞬だけ見れば五十代相当だろうと間違える人がいるだろう。しかし顔の皺と老熟した眼によりそういう判断を下せる。その人物は定番のような豪奢な衣裳を身に纏いそれでいて一見して美しいと言える烏帽子をかぶりそれでいて法王であると断言できた。そして(くだん)の人物は深みはあるが歳不相応な声音で開口一番に定型文を諳じた。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。だがそれは却ってハジメの警戒心を弥が上にも高めるだけの笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

 

 

 

場所は移り現在大広間とおぼしきところに彼らはいた。縦横が十メートル以上ありそうな長机がいくつも並んだ広間に彼らは各々椅子に座った。ただこの場に案内されるまで誰も騒がなかったのは何故自分達が召喚されたのだという疑問とこれから体験しうる恐怖と不安から身を守るために皆口を閉ざしていた。

 

全員が着席したのを見計らい奥からメイドが姿を現した。中世に存在した正真正銘のメイドである。未婚者とこの場に相手がいない既婚者の男はその姿をまじまじと見ていたがこの場に相手がいる既婚者は隣から肘鉄制裁を食らっていた。因みにハジメは飲み物を受け取っていたが警戒レベルを更に引き上げただけで最低限の挨拶をしただけに留まっていた。香織は社交辞令代わりの威圧を放ち八重樫を呆れさせていたが。

 

全員に飲み物が行き渡るのを確認するとイシュタルが話し始めた。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 そう言って始めたイシュタルの話は実にファンタジーでテンプレで、どうしようもないくらい勝手なものであった。

 

簡潔にまとめるとこの世界は人間族と魔人族と亜人族がこのトータスと呼称される世界を支配しておりこの内人間族と魔人族が数百年前より信奉する神の違いにより争っていた。特に魔人族は数的劣性を所持しているが個の力が強いため勢力均衡を維持していたという。だが最近個の均衡が崩れてきたという。その原因は魔人族が魔物と呼称される魔法を取り込んだ野生動物の亜種的存在の使役を始めたことである。加えて種族によっては強力な魔法を使用できるため人間族のアドバンテージである数的優位を覆すことになる。つまり人間の完全敗北を意味していた。

 

「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 イシュタルはどこか恍惚とした表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。人間族は聖教教会という単一宗教しか存在せず、この人間族の内実に九割以上がこの宗教を信奉していると聞く。少なくとも人間である以上数多の考え方がありそれに準じた宗教や価値観の違いが存在する。戦前の日本でさえ神道と仏教を筆頭とした複数の宗教が存在していたのである。外国に目を向ければ最大宗教であるキリスト教でもいくつもの分派が存在していた。つまりこの時点で単一宗教()()を信奉するこの世界の異常さに吐き気を抱いていると上座の方で騒ぎ声が聞こえた。愛子教諭である。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 ぷりぷりと怒る愛子教諭。彼女は今年三十八歳になる社会科の教師で非常に人気がある。百五十センチ程の低身長に童顔、ウェーブのかったセミロングの髪を靡かせながら走り回る姿を見て印象に残る生徒は多い。既に結婚し二人の子供に恵まれてはいるものの、容姿によって幼く見えてしまいしばしば生徒から子供のような扱いを受けることもある。それでも昔よりは威厳がある程度出ている(本人談)。

 

教皇に対して声高に叫ぶ様子を見て、あのときと変わってないなーと和んでいるのが数人いたが次の言葉により凍りつく。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

 場に静寂が満ちる。重く冷えた空気が全身に押しかかる。誰もが何を言われたのか分からないという表情でイシュタルを見やる。

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

 愛子教諭が叫ぶ。

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

「そ、そんな……」

 

 愛子教諭が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。皆一様に押し黙りどうやってこの世界から還れるのかを模索し始めた。そのうちの数人はこの一端を担っていたイシュタルを睨む。この行為は至極当たり前のことであり琴線に触れたなどと人によっては感じてしまうが、そもそも戦争に関係の無い人物を呼ぶだけ呼んでおいて丸投げされしかも還れる保証が現状不明では怒りの感情を持ってしまうのも致し方ないのである。加えて神が創ったであろう人間たち(もの)を信用せず異世界の人間という最高の不確定要素を投入するなどという蛮行は戦前、戦中の軍人でさえそんな大博打なんか打ちはしない。既に多数の旧クラスメイトたちは不信感と異常さを人により大小の差はあるが感じ取っていた。

 

方針さえも決まらずその上話し合いもなくまずは自分が助かる道を探すなか光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する旧クラスメイト。光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 ギュッと握り拳を作りそう宣言する光輝。無駄に歯がキラリと光る。だがそれはあまりにも理想的で中身がない言葉だった。少なくとも戦争を体験しなくとも情報ぐらいは知っている。その上で発言しているのならば明らかに狂った人間であると断言できるが、彼の発言から考えると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これらが最も近いものであると言えるだろう。現実を直視せず理想論を朗々と語りあまつさえようやく眼に見えるほどの希望を持たせる。既に大多数が三十代に踏み入れているのに精神年齢があまりにも幼稚すぎる彼を見て、高校生まで彼を慕っていた者はこの時点で()()()()()()()()()()()()()()()()()()と断定。今まで慕っていたその熱は急速に冷めていったのだった。

 

 

 

 

*1

*2
我々が考える神とは絶対的であり完璧なものである高位的存在と呼称される。しかし日本神話、ギリシャ神話、インド神話、エジプト神話等に代表される神話では神とされる人物らが人間たちが住まう世界に干渉しやりたい放題の限りを尽くしているため人間の負の面または同等以上の存在であるとして、一部の論者と知識人は認識している。つまりこの時点でハジメはこの世界に干渉している神とされる人物は人間の延長線上にいる存在と断定している。よって彼は不完全な存在であるこの世界の神に対して怒りを抱いている。

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