地球と呼ぶ星でありふれすぎている職業で世界最強……? 作:Doelman
ステータスプレートを公開してから二週間、ハジメは錬成方法の極限化を目指していた。何せ自分達がいた世界は科学技術が発達していた。ならばそれを使わない手はないのだが一歩間違えれば戦争の在り方を変え余計にこの世界に長く拘束される危険性も孕んでいた。その一つが今製作している物【
簡単な説明はここまでであるが何故ハジメが銃の製造をしているかを簡潔に説明すればステータスプレートに載っていた技能が深く関係していた。ハジメの技能は悉く戦争向きの物ではあるがここ王国に存在する国宝級の武器では発動しないという強大な欠点があった。つまり戦争では使い勝手が良いのにも関わらず魔法で発展したこの世界では遠距離攻撃が可能で携行できる武器は弓矢しかなく単発威力は高いものの速射・連射性が低い、またはその逆と両極端であり両方の技能を持つものがひとつもなかったということがあった。勿論商店や王国から支給される刀剣類を使って漫画やラノベで出てくるビットのような形で実験したものの数m飛ばしたらそのまま落下してしまう使う、武器の大きさや重さによって使える本数が増減する、投射時に脳に多大な負担が掛かるなど余りにも汎用性が悪すぎるというさんざんな結果に終わってしまった。最後はヤケクソ気味でそこら辺に転がっていた石を弾丸に模して技能を使用したら石が音速で射出されてしまったのである。ハジメはまだ気づいていないものの浮遊魔法か重力魔法で体を浮かせ飛び回れば完全に戦闘機としての運用になる。つまり戦闘機に必要な技術がそのまま技能として使えるという意味で自身が戦闘機であるということである。
現在彼が製作しているのは構造が簡素で高い硬度を必要としない鉱石で大量生産が出来るものの威力・速射・連射性が低く有効射程が短い火縄銃である。何故現代銃に大きく劣るしかも四世紀以上離れている火縄銃を生産しているのかというと現代銃の場合構造やその仕組みが解っていても製造の知識は全くなく、特殊加工が必要であったり部品数の多さから断念したのである。それに加えて毎日錬成の反復練習を行っているとはいえたった二週間で現代科学で造られたものをこの世界で製作するには時間が圧倒的に足りなかった。もっと言えばそれに相応しい鉱石が大量に無かったという側面はあるが。反面火縄銃の方は特殊加工技術は不必要であるが使用鉱石量が多すぎるという難点がある。しかしそれを補ってあまりある大量生産の易さと使える火薬量の大幅減少である。
そもそも錬成は天然物質、人工物質から自分で決めた加工物へと変化させる技能で、派生技能が多ければ多いほど加工自由度は増し一点物を製作できる利点があるが、反面精練されない限り不純物が混ざりあったまま加工されその分、脆弱性が高く錬成のために費やす時間が膨大であるなど一概に良いとは言えず質が量産品と比べて低いという結果が存在している。人によって物品の良し悪しが完全に分かれ一番ひどいのはその日暮らしが限界水準と言う悲惨なものとなる。
で、結局クソ長い説明でこの話の一部を埋めたのだが何が言いたいのかというと
だけである。
「ハジメくん、今どんな感じ?」
「丁度300挺造り終えたところだよ。弾丸を造るのに随分時間が掛かってね、今さっきだったんだ」
「やっぱり扱い辛い?」
「現代銃に慣れてるからね、先込め式だから装填に時間が掛かるけどその分別の銃で置き換えれるから充分リカバリーは可能だね」
「でも移動しながら射撃するには同時展開数が落ちちゃうし完全に置き砲台としての役割だよね」
「技能が技能だし、単発の火力が低くても面制圧能力はあるから活躍は出来るよ」
「進化手順はどんな感じで予定を組んでるの?」
「今は火縄銃だからこの次はフリントロック式、パーカッションロック式、ボルトアクションと続いていって最終的にはセミオート・オートマチックタイプの銃を製作するつもり」
「けどそれじゃ時間が…」
「うん時間が掛かるのはわかってる。けれど銃の特徴も知らずに現代銃を大量生産したら技術の習得や向上ができずに不格好な銃としての役目を果たせない物が大量にできてこの世界の軍事バランスが大きく崩れる。しかも僕たちは一刻も早く帰らなければならないけど、石橋を叩かずに渡って崩れて落ちてしまいました。じゃ今まで培ってきた努力を不意にした挙げ句こっちの世界に大きな迷惑が掛かる。そういうのは出来るだけ避けたいんだ」
「……難しいんだね軍事バランスの均衡って……」
「今、列強と呼ばれている日本、アメリカ、イギリス、中国、ロシア、フランス、ドイツ。加えてインド、イスラエル、イラン、UAE、シンガポール、ブラジル、エジプト…。地域周辺に大なり小なり影響を与える国々はそれ相応の戦力を持たなければ平和が崩れてしまう。
自分の身は自分で護らなきゃ、今の社会の仕組みが絶対的に安全かと言われると違うと言えるからね」
「そのための訓練、でしょ?」
「そういうこと」