ストーリー・フェイト──巨人も魔獣も悪魔も邪竜も神さえも悉く討ち斃す最強の先輩が、ある日突然女の子になってしまったのですが。一体、後輩の僕はどうすればいいのでしょうか──   作:白糖黒鍵

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崩壊(その三十三)

「おっとおっと、やっぱり若い奴は元気が良いなあ?」

 

 あらん限り、限界の限界まで。背中を仰け反らせ、思い切り腰を突き上げ。ビクンビクンと身体全体を痙攣させている少女を見下ろしながら。まるで他人事(ひとごと)のようにロンベルはそう呟く。

 

「それにしてもヤベェ声出たな嬢ちゃんよ。これで起きてねえってんだから、全く。若さってのは末恐ろしいもんだな」

 

 と、ロンベルが呟き終えるとほぼ同時に。少女の痙攣が次第に弱まり、突き上げていた腰がガクンと崩れ、マットレスに落下した。

 

「ん、ん……ぅ、ぁ……」

 

 まさに精魂尽き果てた、と表するに相応しい様子の少女は。グッタリとしながら、今にも消え入りそうな呻き声を小さく漏らす。

 

「まあ、あれだけド派手だったんだ。もう充分()()()()()()だろ。早速確認確認……って、おいおいマジか」

 

 そんな息絶え絶えな少女の様子を心配するような素振りなど微塵も見せず、ロンベルはそう言うや否や。つい先程酷使した自らの手を休めることなく、またしても少女に伸ばす。が、その途中で彼は手を止め、驚いたように声を上げた。

 

「やっぱり嬢ちゃん……素質持っちまってんなぁ、おい?」

 

 と、何処か嬉しそうに呟くロンベル。今、彼の視線が注がれているのは少女の、下腹部。更に厳密に言うのであれば、股間。

 

 少女のそこは今や恥じらいの欠片もなく、大っぴらに大胆極まりなく広げられており。意識がないとはいえ、とてもではないがこんな花も恥らうような少女がしていいような格好ではない。

 

 その上、履いているショートパンツの股間部は────他と比べて()()()()()()()()。……とはいえ、注意深く観察しなければわからない程度に、ではあるが。

 

 しかし、察しの良い者が目にすれば、それが一体何を意味するのか。容易に見て取れてわかってしまうことだろう。

 

 かく言うロンベルも、その察しの良い者の一人であり。故に彼は若干、後悔したように呟く。

 

「あーぁ、この俺としたことが。子供(ガキ)だ子供だと見縊ってたぜ。こりゃ先に脱がしとくべきだったか。嬢ちゃんの()()、是非とも拝ませてもらいたかったもんだ……まあ、いいや。どうせこの後も見れる。そう気にするこたぁねえな」

 

 ロンベルはそう言いながら、宙で静止させていた己の手を改めて少女へと伸ばす。緩やかに上下を繰り返す少女の下腹部へと伸ばし、這わせ、軽く撫でやり。

 

 そのもちもちとした感触や、こんな僅かな刺激でさえビクビクと震える動きをまずは味わってから、指先を汗ばんだ肌になぞらせ、色濃くなったショートパンツの股間へと向かわせ。

 

 そうして触れる直前────ロンベルの指先は如実に感じ取る。

 

 少女の、年齢(とし)半ばの決して他人に触れさせてはならない聖域。そこから発せられる、むわりとした妖しい熱気と淫らな湿気。

 

 それを嫌らしい程敏感に感じ取ったロンベルは、当然のように把握し、認知する。

 

 他の誰でもない己の手によって。まだ幼気であどけなく、可憐で愛らしい花園(しょうじょ)は。今やその面影を僅かに残しながらも、(おとこ)を至極の快楽へと誘う楽園(おんな)に至ったのだと。

 

「もう受け入れ準備万端ってか、ええ嬢ちゃん?全く……最高じゃねえか」

 

 喜悦と愉悦が入り混じった、もはや形容のし難い醜さで溢れた、満面の笑みを浮かべ。ロンベルは獣欲に塗れた声でそう言いながら、ショートパンツを掴む。

 

「そんじゃあ、とっとと嬢ちゃんの小便(ションベン)臭え()()()()、拝ませてもらおうじゃあねえの」

 

 と、言うや否や。ロンベルは僅かに躊躇うことなく、もう堪えられないという風に。

 

 ズリッ────少女が履くショートパンツを、中身の下着(ショーツ)ごと引き下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪趣味だね。あんな幼気(いたいけ)な少女をああも弄んで、辱めるなんて。ロンベル=シュナイザー、相変わらず男の風上にも置けない奴だ」

 

「おいおいぃ。何自分だけはマトモって面して吐いてやがんだぁお前ぇ?今までやってきたことぉ……忘れんじゃあねぇぞぉ?」

 

 自分がしたいまま、好き勝手に。身勝手極まる傍若無人ぶりで己の(おとこ)の欲望をただただ満たす為だけに、少女を凌辱するロンベルの所業(こうい)を。

 

 クライドは遠目から眺め、彼は侮蔑の言葉を吐き捨てて。そんな彼に対し、批判するようにヴェッチャがそう言う。

 

「お前なぁ。今まで()った女の人数覚えてんのかぁ?」

 

「少なくともその中にあの子のような少女がいないことは確かだね。僕が手をつけるのはたおやかな淑女(レディ)だけさ。これまでも、これからもね」

 

「やっぱお前も大概だなぁ」

 

「僕だって一人の男なんだよ。それに一人の男として、淑女に真摯に向き合うことの何が悪い?」

 

「…………」

 

 何処か自慢げに、何故か誇らしそうに。開き直ってそう宣うクライドに。ヴェッチャが半ば呆れたようにそう言う最中。

 

 ただ一人、今の今まで、依然として沈黙を貫き続けるガローが────徐に、懐から一振りのナイフを取り出した。

 

「どうしたんだいガロー。突然そんな物騒なものを取り出して……」

 

 それに気づいたクライドが声をかけるも、ガローが言葉を返すことはなく。彼はただ一点────路地裏の暗がりを鋭く睨めつける。

 

 そうして、クライドは察知した。

 

 ──ガローが、殺気を……?

 

 その直後、ガローは壁に寄りかかるのを止め。真っ直ぐに立ち、路地裏の暗がりと真正面から向き合い。

 

 ヒュッ──そしてすぐさま、手に持っていたナイフを投擲するのだった。

 

 ガロー────彼のナイフを用いた投擲術は正確無比にして百発百中。それに加えてロンベルら上澄みの《A》冒険者(ランカー)の中でも、彼の気配察知の能力は突き抜けていた。

 

 過去に遥か上空を高速で飛び回る鷹の魔物(モンスター)、エビルホークを。地上からのナイフ一本の投擲で仕留めたこともある。

 

 故にガローの投擲はまさに必殺の一撃で、彼に先に気取られた相手が、投げられた彼のナイフから逃れる術はないも同然であり、それは決して覆しようのない事実であった。

 

 そんなガローの投擲を、彼の行動を目の当たりにしたクライドは。独り、腰に下げた得物の柄を握り締めた。

 

 ──君を殺すよガロー……()()()()しやがって……ッ!

 

 そうしてガローの方に振り向き、クライドは得物を鞘から引き抜く────直前。

 

「………………」

 

 何の前触れもなく、突如としてガローが()()()

 

「……ガロー?」

 

 何も言わず無言のまま、その場に倒れ込んだガロー。仰向けに倒れた彼は、そのまま微動だにせず。起き上がる気配を微塵も見せない。

 

 そんな彼を訝しみ、一応心配する素振りで声をかけたクライドが、ふと気づく。

 

 彼の喉元────そこに深く減り込む、一個の小さな石礫(いしつぶて)に。

 

「……なるほど。まあ、そうだね。こうでなくちゃ、ね……!」

 

 それを目の当たりにし、全てを把握したクライドはより強く、得物の柄を握り込む。また彼の隣に立つヴェッチャも、ゴキゴキと拳を鳴らし、臨戦態勢に入っていることを周囲に告げていた。

 

「流石はこの僕を、『閃瞬』と謳われる剣聖たるこのクライド=シエスタを。『創造主神(オリジン)』の気紛れじみた、その身に余る過度な幸運で。たったの一度、打ち負かしただけのことはあるよ」

 

 と、路地裏の暗がりに顔を向けながら言うクライド。続けて彼はこう言う。

 

「でもね。所詮は気紛れ。幸運。その場その時限りの一瞬さ。そうだということを、他の誰でもないこの僕、『閃瞬』のクライド=シエスタ直々に教えてあげるとしようじゃないか。僕の多大な親切に咽び泣いて喜ぶといい……!」

 

 スッ──そう言い終えて、クライドは満を持して鞘から得物を静かに抜き放つ。彼の得物はまるで針の如く、極限にまで剣身が細められた、刺突剣(レイピア)であった。

 

 少し遅れて、足音が路地裏に響く。それは何処までも静かで、不気味なまでに落ち着いた足音だった。

 

 やがて、暗がりから滲み出るように。浮き上がるようにして、足音の主が。その姿をクライドとヴェッチャの眼前に晒け出す。

 

 大方、二人の予想通りの人物であった。()()()()()、今二人はこの場に集まったのだから。

 

 今し方倒れたガローも。そしてクライドとヴェッチャも。ロンベル=シュナイザーの()()()()()()()()、集まったのだから。

 

「……あの時、言ったなあお前?おい、言ったよなあ?手を出してみろって。手を出したら遠慮も容赦もしねえとか、何とかよぉ?ええ?」

 

 背を向けたまま。ぐちゅぐちゅ、ぐちゅりと粘ついた水音を静かに立てながら。ロンベルはそう言って、宙に手を掲げる。

 

「そら、手ぇ出したぞ?あ?見えっか?なあ、おい」

 

 言って、振り向くロンベル。それから彼はてらてらと濡れて輝く己の指を、舌で舐める。此れ見よがしに(ねぶ)る。

 

「んんーやっぱ若いと違うなぁ味が。この小便(ションベン)臭さと青い風味。それに混じる仄かな雌の味……こりゃ格別の味わいだぜ。がはははッ!」

 

 と、今し方堪能した少女の秘蜜の味を語り、笑い────直後、思い切り目を見開かせ。

 

「やってみろ?なあ、おい……遠慮!容赦なく!やってみせろよ!?なあッ!!おいッ!!クラハ=ウインドアァァァァッ!!!!!」

 

 視線の先に立つ、ガローのナイフをその手に持つクラハに対して、ロンベルは憤怒と狂気の咆哮を上げるのだった。


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