ストーリー・フェイト──最強の《SS》冒険者(ランカー)な僕の先輩がただのクソ雑魚美少女になった話── 作:白糖黒鍵
『ログバード荒野』——オールティアからだいぶ遠く離れたその場所にて、その者たちは互いに向き合っていた。
世界全ての剣士にとっての生ける伝説————《SS》冒険者、『極剣聖』サクラ=アザミヤ。
世界全ての魔道士にとって決して到達することはできはしないだろう頂点————《SS》冒険者、『天魔王』フィーリア=レリウ=クロミア。
現時点で、名実共に最強と謳われるその二人が、今ここで、互いに向き合っている。
——まさか、こんなことになるなんて……。
そして、そんな人生に一回見れるかないかという光景を、僕——クラハ=ウインドアは遠くから眺めていた。
「あいつら勝手に全部進めて……決めやがって……ちくしょう」
隣の先輩が堪ったものではないとそう呟く。まあ、そう言いたくなる気持ちはわかる。
なにせ、今からあの二人は————
「時間無制限、決着はどちらかが参ったと言うまで——それで異論はないな?『天魔王』殿」
「はい。それで構いませんよ『極剣聖』様。そして、勝った方がブレイズさんを好きにできる————で、いいですよね?」
「異議なし」
————先輩の意思などそっちのけで、先輩を賭けて戦うのだから。
「うぅ……俺どうなるの……?」
「……………………」
「なんか言えよくらはぁ!」
助けを求める先輩の眼差しが痛い。辛い。
僕だって、どうにかしたい。もしこのままどちらか勝っても、先輩には弄ばれる運命しか待っていない。
そんな運命容認できる訳がない。…………訳が、ない、のだが。
——………………すみません先輩。無力な僕を許してください…………
今僕にできるのは、これから始まるであろう、
そして、その『時』は——唐突に訪れる。
「では、始めるとしようか」
「はい。始めるとしましょうか」
そう言って、
そして丁度一分が経って、再びフィーリアが口を開く。
「なにぼうっと突っ立ってるんです?さっさと動いたらどうですか?『極剣聖』」
「それはこちらの台詞さ、『天魔王』」
然とした雰囲気で、さも当然かのようにサクラはフィーリアに——
「先に攻撃してくるがいい。『れでぃーふぁーすと』というやつだ、『天魔王』——私からは、動かんよ」
——そう、言い放った。
「…………へえ。随分と親切なんですね、『極剣聖』様は」
その声音こそ変わりなかったが、フィーリアは僅かばかり憤っていた。
サクラのその発言は、見事にフィーリアの神経を逆撫でた。恐らく本人にはそのつもりはないのだろうが、そんなことは関係ない。
——気に入らない。
心の中でそう呟いて、フィーリアは片腕をゆっくりと広げる。
「じゃあお言葉に甘えて」
瞬間、彼女の周囲すべてに——色鮮やかな無数の
それは、魔力。ただの魔力の塊——だが、その量が異常であった。
かつてオールティアに襲来した魔神エンディニグル。かの魔神もまた同じような攻撃をしようとしたが、フィーリアのこれと比べると——あれは
エンディニグルのを爆弾と表するのなら、フィーリアのこれは————
「ほう……」
視界を覆い尽くす、一個一個が壊滅的な威力を秘めるその球体を見て、サクラが吐息を漏らす。
そんな彼女に、フィーリアが言う。
「言っておきますけど、この程度で終わらないでくださいよ?」
そして————それら全てをただ一人の標的に向かって、撃ち放った。