ストーリー・フェイト──巨人も魔獣も悪魔も邪竜も神さえも悉く討ち斃す最強の先輩が、ある日突然女の子になってしまったのですが。一体、後輩の僕はどうすればいいのでしょうか── 作:白糖黒鍵
「…………は、は……ははッ、はははははッ!傑作だ、こいつぁ傑作だあッ!はははっはっはっはッ!!」
先端から白煙を
「しっかし、凄えなこりゃあ……素敵だな、素晴らしいな!?確かに
と、手に持つ
銃────一見すると無骨な鉄の塊にしか見えないそれは、端的に言えば
それもこと対人戦に
そして最後は誤った暴発を防ぐ為の安全機構が解除されているかを確認を終えれば、使用するに当たっての前準備は完了する。
後は対象の急所────人間であれば頭や心臓に狙いを定めて、引き金と呼ばれる場所に指をかけ、そして力を込めてそこを引けば。
刺激を与えられた粉末状の魔石が反応を起こし、爆ぜたその勢いで。弾丸は銃の内部を駆け抜け、その先の銃口という部分から音の速さで以て、外へと射出される。
流石に硬い皮膚や甲殻、鱗を持つ
この撃ち出された銃弾は人体ならば如何なる場所を穿つことが可能で、無論頭や心臓などの急所に命中すれば、大抵の人間は死ぬ。《A》
そしてこの銃の特筆すべき、最も優れた利点は────最初から最後まで、その使用に魔力を
それ故に奇襲をかけ易く、また防御もされ難い。躱そうにも、ただでさえ視認性の悪い小さな鉄の塊が、音の速さで飛来することに加えて。そもそも未知の武器であるが故に、初見での対応が非常に厳しい。
また使用者の魔力に依存せずに使える為、状況次第ではあるが、ロンベルの言う通り────この銃が量産化され、多くの人々の手に渡るようになった暁には。例え戦闘の素人だろうと、格上も格上の《S》冒険者とて、ただの銃弾の一発で。容易く、殺してしまえる。
ただ問題なのは、それが早くて百数年。下手をすれば千年程先に実現するだろう未来の話で。少なくとも、この時代にそれが成されることはないということだ。
そして世界最高峰と謳われ、その手にすること自体が末代まで語られるべき、永年色褪せない名誉と栄誉とまで絶賛され、戦いに身を置く者全てが己の何を差し出しても構わない程に欲する得物を打ちし
その奇々怪々な発想と奔放極まる独創性、それらを形にして実現させる天性の鬼才ぶりは。世の常識、理の
その彼の名こそ────スミス=アンド=ウェッソン。彼こそがこの銃の発案者であり、発明者であり、命名者である。
元々『世界冒険者組合』の長たる
「いいぜ!こっちも丁度面白い新作考えてたからな!」
と、気前の良い。実に快い返事で、スミスは了承するのだった。
元より考えていたこともあって、GDMから預かった人員を有効的に酷使────もとい活用し。
合計十個──後にスミスが数えるのに使う単位を丁に定める──の銃が最初期の試作品として、まずは作られたが。例え彼の才を以てしても、現在の技術力では量産など夢のまた夢である程に、厳しいものがあった。
更にある日突然、その内の三つが
何を隠そう、現にロンベルが手にしている、その銃こそ。紛失したとされる三つの内の、一つである。
「がはははッ!ははッ、ははは……あぁ?」
一
「おいおいおい!死体がいつまで突っ立ってる気だあっ!?死体は死体らしく、その辺の
確かに。ロンベルが言う通り、その顔面に銃弾を受けたクラハは。その首を後ろに倒したままではあるものの、身体は地面に倒れることはなく。微塵たりとて微動だにせず、依然としてその場に立っていた。
最初こそ死んだと確信していたロンベル。否、彼でなくとも、誰だって死んだと思うだろう────そう、
──……い、いや、まさか……いや!あり得ねえ!ある訳がねえッ!完全な不意打ちッ!完璧な奇襲ッ!音速ですっ飛んで来る小っせぇ鉄の塊を、あの
自分が無理ならば、相手も無理なはず────そんな浅はかで短絡的な思い込みをしたが為に、ロンベルがその末路を辿ることは必然となった。
「た、倒れねえってんなら……俺直々にぶっ倒してやるよぉ!!!」
と、ロンベルは言うや否や。地面から身体を起こし、立ち上がろうとした────直前。
「ッ!?」
銃に撃たれてから、今の今に至るまで。まるで時間が止まったかのように、静止していたクラハが。後ろに倒れていたままだった彼の首が、
立ち上がろうとしたことも、上半身を起こすことさえも忘れてしまう程の驚愕に見舞われ、ギョッとするロンベルを他所に。やがて、クラハの首が完全に起こされ、今し方銃撃されたその顔面を、彼に晒す────瞬間、ロンベルの表情が固まる。
クラハは、銃弾を
「…………ば、ばッ」
自分の予想を遥かに超える光景を目にしたロンベルが、堪らず自らの顔を恐怖で歪ませる最中。ペッと噛んでいた銃弾を地面に吐き捨てるクラハ。
直後、ロンベルの起こした行動は迅速かつ的確だった。彼は指をかけたままの、銃の引き金を引こうした。
だが、それでもロンベルは遅く。そして、クラハはただひたすらに
ドゴッ──ロンベルが銃を撃つよりも、ずっと疾く。クラハの蹴撃が、彼の股間に深々と
肉を打ち、骨を砕く鈍いその音に紛れて。
グチャ──という、
「……っッっッ!!!!!」
少し遅れて、ロンベルの顔が。言葉で形容出来ない程、凄惨なまでに壮絶に様変わりし。一瞬にしてその顔色が青
クラハが減り込ませた己の足を引かせ、数歩その場から遠去かった後。不自然に凹んだロンベルの股間から。くぐもった水音が響き出し、彼が履くズボンの生地の色が濃くなるにつれて、地面に水溜まりが広がっていく。
やがてその黄色い水溜まりに、赤い色が混じり出し、その色が止め処なく広がり始めた頃に。男としての
「……次は遠慮も容赦もしないって、自分でもそう言っていましたよね」
言葉など、返されないことも承知の上で。至極淡々と、クラハはそう呟くのだった。