ストーリー・フェイト   作:白糖黒鍵

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終焉の始まり(その七)

『その……何だ。ひ、久しぶりだな。元気してたか?────クラハ』

 

 瞬間、それを皮切りに。クラハの脳裏を、幾つもの光景が。

 

『クラハ。お前、俺のこと……どう思ってんだ?』

 

『こんな()()俺にでも、クラハの為にできることをしたかった。何でも、どんな些細なことでもいいから、お前の先輩として、お前の為になることをして、やりたかった。それは、本当、だから……!』

 

『この格好どうだっ!?……お、俺、似合ってる…………か……?』

 

『……じゃあもう勝手にしろ。この馬鹿』

 

 横切る。クラハ=ウインドアの意思など蔑ろに無視して、好き勝手に。横切って浮かび上がって通り過ぎていく。

 

 紅蓮に燃え盛る赤い髪。煌めく紅い瞳。まだ幼なげで、それでいて何処か大人びた、可憐さと美麗さの境目に在る顔立ち────否応なく、無理矢理にクラハは想起させられてしまう。

 

 そして追い打ちをかけるように。

 

 

 

「ライザーさんの手を煩わせるまでもねえ!今ッ!ブッ殺してやんぜぇえええッ!!」

 

「やはりお前は疫病神だ。不幸を呼び寄せ、そして撒き散らす。そんな、人の(なり)を真似た害意そのものだ。お前は災いなんだ……クラハ=ウインドア」

 

「殺すッ!死ねッ!!クラハァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!!」

 

「ヒョアアアアアアアオオオオオオオオッ!!!」

 

塵芥(ゴミ)が!掃いて捨てる塵芥の中で少しは上等(マシ)な塵芥野郎がッ!!受け取れ、俺の敬意をなぁぁぁああああああああッッッ!!!」

 

 

 

 そして駄目押しをするように。

 

 

 

 

 

「『大翼の不死鳥』所属、《S》冒険者──クラハ=ウインドア。君にGMとして命ずる────ラグナ=アルティ=ブレイズを一から鍛え直し、そして『炎鬼神』としての強さを取り戻せ」

 

「それとも……君にとってのラグナ=アルティ=ブレイズとは、所詮その程度のことだった。そういうことなのかい?」

 

「いい加減にしろクラハ=ウインドアッ!!」

 

 

 

「どうして、こんな奴になっちまったんだ」

 

「てか死にてえ死にてえじゃあねえんだよコラ!!なあ、お前!クラハッ!!忘れたのか?なあおい忘れちまったのかよォ!!『大翼の不死鳥(フェニシオン)』にはお前の!クラハの帰りを────」

 

「お前は()()()()()()()()。そのつもりなら勘違いも甚だしいこと極まりねえ。お前は()()()()()()。……そこんとこ、忘れんじゃねえぞ。クラハ=ウインドア」

 

 

 

「……………クラハ=ウインドアッ!!!!」

 

「お前が壊した!お前が壊したのよ、クラハ!クラハ=ウインドアッ!全部全部全部!何もかも!ラグナもぉッ!お前と、私がぁ!だから、もう!壊すしかないじゃないッ!壊れるしかないじゃないッ!お前も!!私も!!」

 

「…………貴方はどうして、ラグナを助けてくれなかったの?貴方はどうして、ラグナを救ってくれなかったの?ねえ、クラハ……どうしてなの……?」

 

 

 

 

 

 そして、止めを刺すように──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ。俺はライザー……一年前、『大翼の不死鳥(フェニシオン)』から抜けた元《S》冒険者(ランカー)のライザー=アシュヴァツグフだ」

 

「さあ、お楽しみはこれからだぜぇッ!?クラハよぉおッ!!」

 

「死ね。死ねよ。……もう、どうでもいい。だから死んでくれよ、クラハ」

 

「おいおいだんまりとはつれねえな、寂しいなあ。……これから俺とお前は()()になるってのに、なあッ!?」

 

「俺は何度でも言ってやる。お前は俺と同じだ。同じ穴の狢さ。……お互いに、己のかけがえのない大切で大事な夢と憧れを否定して汚した、全くもって救い難く救いようもない、最低最悪の同類になるんだよ」

 

「クラハァァァアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!」

 

「ハハ、ヒャハ……これで、お前も……俺と、同じ。俺と同類、だ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────それらの光景が、脳裏にて弾けて爆ぜて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クラハ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声が、残響した。

 

「………………」

 

 側から見れば、他人からすれば。特におかしいなどとは思われない。クラハの無表情は微動だにせず、何の変化もなかった。故に今、彼が大いに、これ以上になく乱れてしまっていることに、誰もが気づけない。

 

「ねえ君、顔ヤバいよ。どうしたの?平気?大丈夫?」

 

 今クラハの目の前に座る、ユアという一人の少女を除いては。

 

「……すみません。座り通しで、少し」

 

 ユアに明確な警戒心を抱きながら、あくまでもその無表情を崩すことなくそう答えるクラハ。彼の返事を聞き、彼女は一先ず安心するような笑みを浮かべ、そして話を続ける。

 

「ならいいや。それでね、まあその時は知らなかったから仕方ないと思うし、君にもそう思ってほしいんだけど。私は自分のことをラグナだーって言い張る頭がアレな子だと思ってて。それで色々あってその子をオールティアに連れて行くことになって────」

 

 まるで独り言かの如く勝手に話を続けるユアを他所に、クラハは無表情でいることを貫く。

 

 

 

 

 

 ────いい加減素直になりなよ。苦しいでしょ、辛いでしょ?だから、ほら────

 

 

 

 

 

 すぐ耳元で囁かれる、そんな声と言葉を。頑なに、無視し続けながら。

 

 ──僕にはもう関係ないことだ。僕は、関係ない……。

 

 己に言い聞かせるように、そう心の中で呟き続けながら。

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