ストーリー・フェイト   作:白糖黒鍵

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終焉の始まり(その二十二)

 ぐちゅ、ぬちゃ、ちゅく、にゅり。そんな粘度のある水音が、寝室に響く。静かに、生々しく響き渡り、響き渡る。

 

「ん、んっ……んん、んぅ……っ」

 

 そしてそれに付随する、小さな声。男女問わず、耳にする者を悩ましく色めき立たせる、小鳥の囀りの如き可愛らしい啼き声。淫らでいやらしい、あられもない嬌声(なきごえ)

 

 そんな他者においそれと聴かせてはいけない声を出しているのは、一人の少女だ。十代半ばという年齢(とし)に相応しい、可愛らしい寝衣(パジャマ)にその身を包んだ、一人の少女。

 

 燃え盛る炎をそのまま流し入れたかのような、見事な赤髪を腰に届くまで伸ばした、その少女の名は────ラグナ。『大翼の不死鳥(フェニシオン)』に所属する新人受付嬢、ラグナ=アルティ=ブレイズ。

 

 否、ラグナを少女と表するには(いささ)か、複雑に入り組む深い事情故に正しくはない。何故ならば、今や誰がどこからどう見ても、可憐にして流麗な少女であるラグナはこれでも、元は歴とした()なのだから。

 

 ……けれど、ある意味で。もはや、それすらも間違いなのかもしれない。何せ今のラグナには────()()()()()()()()()

 

 ともあれそんなラグナは今、色香を含む艶かしい呻き声を漏らしている。色素の薄い、仄かに赤みのあるその小さな唇から。辛うじて生じた、極細の僅かな唇の隙間から。

 

「ん、ぅぅ……!」

 

 一体誰がそんな馬鹿げたことをしているのか。一体、どこの誰がラグナの小さく愛らしいその唇を塞いでいるのだろうか。

 

 軽いウェーブがかかった、空色の髪。それによく映える、清涼感を醸し出す薄い水色の瞳。メリハリを利かせた、抜群の体格(スタイル)

 

 彼女の名は、メルネ。『大翼の不死鳥(フェニシオン)』の代表受付嬢、メルネ=クリスタ。

 

 故あって、今はラグナと同居しているメルネ。他の誰でもない彼女が今、己が唇で以てラグナの唇を塞いでいるのだった。

 

 薄らと開かれた、煌めきを灯す紅玉の瞳を潤ませ。今にも涙を零しそうになりながらも、身を捩らせどうにか足掻こうとするラグナ。

 

 けれど底を突きかけている、残り少ない僅かな体力では、もはや抵抗らしい抵抗にもならない。一応、念の為にか最初こそラグナの両腕を片手で掴み拘束していたメルネも、今やその両腕を離し。今度はラグナの手を、五指を絡め合わせるようにして握り締めていた。

 

 依然響いて止まらない水音の勢いが、メルネの深い接吻(ディープキス)の激しさと荒々しさを物語る。まるで喰らうように唇を重ねるのは当然として、彼女は己が舌も用いてラグナの舌を蹂躙(あいぶ)し、弄ぶことを愉しむ。

 

 尖らせた舌先でなぞったり、突いたり、掻いたり、擽ったり。挙げ句の果てには舌を巻きつかせ、締め上げ、器用に扱いたり。

 

 そうして独り善がりの責めを飽きることなく続けて、数分。ようやっとメルネは、ラグナの舌から、その唇から離れた。

 

「ん、はぁ、はっ……ぁ」

 

 少しの休憩すら挟まず、今に至るまで一方的に可愛がられていたラグナ。頬はすっかり熱を帯びて赤く染まり、薄く開かれた口の隙間から漏れ出る吐息は悩ましく。そして何よりも特筆すべきは、とろりと蕩けたその瞳────異性(おとこ)は言うまでもなく、同性(おんな)であっても思わず生唾を飲み込んでしまうような、乱れた濃い色香を放つ表情(かお)

 

 無論、それを仕立て上げた当人たるメルネが。ラグナのそんな表情をこうして、寝台(ベッド)に押し倒している状況下で目の当たりにしてしまえば、黙っていられるはずもなく。

 

 今し方、つい先程まで己が我儘(わがまま)で、好きに勝手に、ただひたすら自分本位に。ラグナの口腔と舌を余すことなく味わい、飽くことなく愉しんだ、その舌で。

 

 ぺろりと唇を舐めずり、メルネは口元を歪める────言うなればそれは、捕食者の笑みであった。

 

「まだまだ、夜はまだこれからよ……」

 

 と、低い声音で呟くや否や、メルネはラグナの手を握り締める自らの手により力を込めて。先程から暇を持て余していた片手を、ゆっくりと動かす。

 

 その手が向かった先は、ラグナの────胸元。まだあどけなさが残る幼なげなその顔立ちと、小柄な体躯には些か不釣り合いな実りを結んだ、母性の象徴(かじつ)。メルネの意識を惹いて仕方がない、魔性の果実(しょうちょう)

 

 ゆっくりと、着実に。そうして初めに触れたのは、指先。爪でなぞり、いよいよ────メルネの手の平が押し当てられる。

 

 瞬間、ラグナの小さく開かれた口から吐息混じりの嬌声が漏れ。華奢な肩が跳ねる。ぎゅう、と太腿も瞳も閉じられる。

 

 そんなラグナの反応を眼下にして眺めるメルネ。無論、彼女が胸にただ手を押し当てるだけに留めるはずもなく。少し遅れて、彼女は手を動かし始める────自らの片手で、ラグナの片胸を服と下着(ブラジャー)の上から揉み始める。

 

 服と下着。その両方に隔てられてもなお、柔い。その柔い感触が、メルネの手に伝わる。そのことに、彼女は否応にも昂りを覚え、欲求を刺激される。

 

 服の上からではなく、下着の上からでもなく────直接。この手で直に触れてみたい、という邪に疚しい欲求を。

 

 今のメルネが、己が欲望に忠実に従う今の彼女が、それを抑制などできるはずもなく。

 

「脱がすわね」

 

 妖しく、そして危うしく瞳を輝かせながら、そう言い終えるや否や。ラグナからの返事も待たず、メルネは指を巧みに動かし、ラグナの寝衣(パジャマ)のボタンを瞬く間に次々と外し。そうして躊躇なく、はだけさせた。

 

 直後、露わになるラグナの、下着(ブラジャー)に覆われた胸元。メルネはその光景を見下ろし、数秒。

 

 

 

 ガッ──先程見せた、指一本による技巧的(テクニカル)であったボタン外しとは真逆な。力に任せた乱暴な手つきでラグナの下着を捲り上げるのだった。

 

 

 

「ぁ……」

 

 と、か細く消え入りそうなその声と共に。ぷるんと柔らかに揺れながら外気に曝け出される、ラグナの二つの、豊かな膨らみ。顔に似合わぬ大きさ、だからといって大き過ぎるという訳でもない、程良い形の整ったそれ。

 

 メルネの視線が流れ伝い、這いずる。そして、辿り着いた────その部分。

 

「……あら」

 

 堪らず、メルネの声に欲望が滲み出す。そしてそれは、口元に現れ、目に見える形で露わとなる。

 

 ラグナの胸の中央。天辺を頂く、その二点。平常時であればきっと、可愛らしい薄桃色で、然程目立つことはないのだろうその部分────それが今や、淫靡に赤く染め上げられて、天を突く勢いで隆起し、尖っている。

 

 ──ああ、もう……!

 

 それを目にした瞬間、目の当たりにしてしまったその瞬間。抑えようもないドス黒い衝動と炎上する情欲がメルネの頭の中で広がり、埋めて、覆い尽くす。

 

「……ぁ、見ないで、ください……っ」

 

 最初こそ呆然とした顔でメルネに見下ろされるラグナであったが。彼女の瞳に映り込む、自らの痴態に気づき、羞恥に震える弱々しい声を上げ。

 

 そしてとっくのとうに解放され、自由となっていた両腕で隠そうとした────

 

「隠しちゃ、駄目」

 

 ────が、言うまでもなく。その一言と共に、メルネの両手が押さえ。そしてラグナが抗議の声を上げる間もなく、彼女はラグナの胸の片方へ顔を近づけ。

 

 

 

 チュプ──そうすることが当然の権利であるかのように、一切の躊躇いもなく、何の迷いもなく。中央に立つその突起に唇で触れて、含んだ。

 

 

 

「ふ、ぁっ、あぁ……っ!?」

 

 瞬間、目を見開き、驚愕と快楽が入り混じった悲鳴をラグナが上げるが。しかし、それでもメルネは構わず、止まらない。止まれるはずがない。

 

 含んだそれを、舌先で。ちろちろと、最初はまるで飴のように舐める。刺激としてはまだ弱い部類だが、それでもラグナには余りあるようで。彼女の舌先が往復する度に、息の詰まったような声を漏らしながら、身体を跳ねさせてしまう。

 

「んれぇ……」

 

 数分、そうしていたメルネだったが。徐に口を大きく開き、含んでいたラグナの淫らな(へた)を解放する。

 

 ぷっくりと、先程よりも一段と大きく、そしてますます硬さを増し、メルネの唾液に塗れてぬらぬらとしているラグナの蒂。未だ何の刺激を受けていないもう片方と比べれば、その違いは一目瞭然である。

 

 そうしてラグナの蒂を解放したメルネだが、無論こんな行為を止める為にそうした訳ではない。(むし)ろその逆────先程よりも更に凶悪な責めを、始める為にだ。

 

 メルネは舌を広げるように伸ばし、その表面をラグナの蒂に押しつけ。直後ラグナが声と共に身体を跳ねさせる────だが、それはほんの序の口のことだった。

 

「ん゛ん゛っ!?あっ、ゔ、ぁぁ……ぁっ」

 

 ざりざり、ざりざり────メルネの舌の、ざらついた表面による(やすり)がけ。先程の舌先を使った刺激とは訳が違う、比較にもならない程の、暴力的な快感。それはラグナの意識を揺さぶり、振り回し、そして薄れさせる。

 

 ──これっ、おかしくな、っちゃう……!

 

 次第に何も考えられなくなるにつれて、視界が徐々に白み。やがて全身をふわふわとした浮遊感に包まれ、だと言うのに下腹部はずんと重く、そして熱くなり始めて。ラグナはもうどうしようもなくなってしまう。どうにかなってしまいそうになる。

 

「だ、め……!もう、だめぇっ……!!」

 

 そして遂に、ラグナに()()()が訪れる──────────

 

 

 

 

 

「あぁッ、あ……は、ぁ……?」

 

 

 

 

 

 ──────────かに思われたが。その直前、寸前でメルネの舌が離れてしまった。刺激が止み、快感が止まり、その所為で達し損ね。今し方全身を包み込んでいた浮遊感はゆっくりと消失し、だが依然として下腹部の重みは残り、熱は燻り。

 

 ──あう、ぅぅぅ……。

 

 それがラグナにもどかしい焦ったさを、否応にも抱かさせた。

 

 止まってくれたという安堵。止まってほしくなかったという失望。相反する矛盾した感情に板挟みにされ、ただ心の中で悶々とした呻き声を漏らすしかできないでいるラグナのことを尻目に。

 

「あぁ……む」

 

 カプ──放っていたもう片方の胸に、正確に言うなら(へた)に顔を近づけ、そして咥えるのだった。

 

「ぁんっ」

 

 と、堪らず声を上げてしまうラグナ。そしてこれから訪れるだろう刺激と、それに伴う快感に備えようと、無意識に身体が強張る────も、束の間のこと。

 

「ふ、ぁ?」

 

 意外にも、大したことはなかった。今度メルネが始めたのは、吸うこと。まるで慈しむかのように、吸いつくこと。

 

 無論刺激が全くないという訳ではなく。だが先程に比べれば、ずっと優しい。優しく、そして甘い。

 

「ん、ん……っ」

 

 けれど逆に、それが却って()()

 

 小さく弱い快楽の波が押し寄せては引き返すことを延々と繰り返し続け、ラグナは熱い息を吐き漏らし、やがて無意識に太腿を擦り合わせ、腰を自ら揺らしてしまう。

 

 当然そのことに気づかないメルネではないが、敢えて彼女は指摘しなかった。

 

 ラグナは耐えていた。決して屈しはしないと、懸命になって、必死に耐えようとしていた。だが、そんなラグナの確固たる固い意思も。

 

 達するかないか、その境界線(ライン)を熟知した、実に巧妙で絶妙なメルネの責め手に。徐々に溶かされ、蕩され。

 

「メルネっ……わ、私……私、もう……っ」

 

 そして数分後、遂にラグナは堪えられなくなった。茹った声音を甘く切なげに震わせ、恥ずかしそうに媚び強請るその表情(かお)は、元の原形を留めていない程にどろどろとした、淫靡な有様を曝け出していた。

 

「……ふふっ。悪い子」

 

 その事実、この現実に。至福、至高の愉悦(よろこび)を感じ、味わいながら。メルネは吸い続けたラグナの蒂から口を離し、己の両手もまたラグナの両腕から離し。そしてすぐさま、ラグナの両胸を掴み、むにゅりと形を歪ませた上で持ち上げ。そうして、互いを互いに押し潰しながら。

 

 ぴとりと、ラグナの二つの蒂をくっつけ合わせた。その瞬間、全身を震わせるラグナ。

 

「ええいいわ。今から遠慮なく、思う存分果てさせてあげるから」

 

 メルネはそう言うと、くっつけ合わせたラグナの蒂を自らの口元にまで運び。外気に晒されるだけでじんわりとした痺れが染みるように広がり、どうしようもない程に堪らず辛そうにしている、いやらしく真っ赤に変色し切ったその両方を────

 

「んやぁっ!は、あぁぁ……っ!!」

 

 ────メルネは口腔に含み入れ。直後、ラグナの口から感極まった悦びの嬌声が迸るのだった。

 

「んんっ、う、ぁっ!める、ねっ、きもち、ぃ……!」

 

 今し方の生殺しめいた刺激はもちろん、先程の舌による刺激も凌駕する、この同時責めは。ラグナに理性を容易く忘れさせ、心から素直に快楽を。ありのまま受け入れさせ、ただひたすらに貪らさせ。

 

 そんなラグナの痴態をメルネは眺めながら──────────

 

 

 

 

 

 カリ────不意に、吸いながら舐めていたラグナの蒂に、彼女は歯を立てた。

 

 

 

 

 

 ──────────声にならない嬌声(ひめい)を上げながら、目を見開き、背中を仰け反らせ。ぶるぶると、全身を小刻みに震えさせ。やがて、ぐったりとラグナは脱力するのだった。

 

「……」

 

 そんなラグナの一連の反応を全て、未だラグナの蒂を口に含んだまま、見届けたメルネは。ゆっくりと口から離し、そうして持ち上げていたラグナの胸を下ろした。

 

 それから寝衣(パジャマ)がはだけ、露出しているラグナの(へそ)に指先を当て、薄らと汗が滲み浮かぶ下腹部へ伝わせるメルネ。彼女の指は止まらず、そのまま更にその下にまで向かわせて────終いには、下着(ショーツ)の中へと、滑り込んでしまうのだった。

 

 ぬちゅ、と。少し粘ついた水音を聴きながら。腰を跳ねさせるラグナを見ながら。誤魔化しようのないその熱気と湿り気を感じながら。ゆっくりと、メルネはラグナの下着から指を引き抜く。

 

「………」

 

 引き抜かれた彼女の人差し指は、やや白く濁った液体に塗れて、濡れそぼっていた。

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