ストーリー・フェイト──巨人も魔獣も悪魔も邪竜も神さえも悉く討ち斃す最強の先輩が、ある日突然女の子になってしまったのですが。一体、後輩の僕はどうすればいいのでしょうか──   作:白糖黒鍵

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DESIRE————『世界冒険者組合』からの依頼

「急に呼び出したりしてすまなかったね。ウインドア君、ブレイズ君」

 

 開口一番。執務室にてグィンさんは僕と先輩にそう言ってきた。

 

 対し、僕は慌ててその謝罪に返事をする。

 

「あ、謝らなくても大丈夫ですよグィンさん。GM(ギルドマスター)の呼びかけに応じるのは、冒険者(ランカー)として当然のことなんですから」

 

「クラハの言う通りだぜ、GM(ギルマス)

 

 僕と先輩の言葉に、申し訳なさそうにしながらもグィンさんは微笑んだ。

 

「そう言ってくれるとありがたいよ、二人共。……そうだねぇ、どこから話せばいいのかなぁ……」

 

 顎に手を当て、僕と先輩に向けたその微笑を困ったようにして、そう続けるグィンさん。

 

 早朝。もはや日課と化した先輩のLv上げに出かけようとしたところ、突然グィンさんに至急『大翼の不死鳥(フェニシオン)』にまで来てほしいと頼まれ、現在このような状況となっている。

 

 ——一体、どうしたんだろう……なにかしたかな?僕。

 

 それか先輩に関してのことか——そう思い、こうして『大翼の不死鳥』に来たのだが……どうやらそれも違うらしい。

 

 と、そこで。

 

 

 

 ガチャ——不意に、背後の扉が開かれた。

 

 

 

「お邪魔しまーす」

 

「失礼。……遅くなってすまない」

 

 そんな言葉と共に、執務室に入ってきたのは——サクラさんとフィーリアさんだった。

 

「あれ、ウインドアさん?それにブレイズさんも……おはようございます」

 

「む、君たちも呼ばれていたのか。おはよう、ウインドア。そしてラグナ嬢、君は今日も可憐だね」

 

 予期せぬ二人の登場に、僕は驚きながらもなんとか言葉を返す。

 

「お、おはようございます。サクラさん、フィーリアさん。……えっと、なんでお二人共ここに?」

 

「それについては私が答えるよ。ウインドア君」

 

 挨拶を返しつつ、それと同時に何故二人共ここに来たのか、その理由を尋ねると、すかさずそこでグィンさんが割り込んできた。

 

「実は君たち二人以外にも、彼女たちにも声をかけたんだよ」

 

「そうだったんですか……」

 

 まさか僕と先輩の他に、サクラさんとフィーリアさんも呼びかけていたとは。……本当に、なにがあったのだろうか?

 

「…………よし。ここは変に言葉を選ばず、正直(ストレート)に話すよ」

 

 僕がそう思っている最中、グィンさんはそう言って、そしてその『話』とやらを、こう切り出した。

 

 

 

「君たち全員に、依頼(クエスト)を受けてもらいたい」

 

 

 

 一瞬だけ、執務室を沈黙が包み込んだ。それから最初に口を開いたのは————

 

「依頼、ですか?」

 

 ————やはりというか、僕だった。

 

「そう、依頼だよ。それも緊急のね」

 

 僕の声に、何処か困っているようないつもの笑顔を見せながら、グィンさんはそう返す。するとそこで今まで黙っていたサクラさんが不意にその口を開かせる。

 

「GM。それは、私とフィーリアが出張るほどの依頼なのか?それにもしそうであるなら、ウインドアやラグナ嬢を呼ぶ必要はないと思うが」

 

 確かに、その通りだった。今の先輩……はともかく、僕だけならまだしも、わざわざ《SS》冒険者であるこの二人にも受けてほしい依頼など、たかだか《S》冒険者である僕にこなせるとは、とてもじゃないが思えない。

 

 するとグィンさんは少し顔を俯かせたかと思うと、すぐに上げた——だが、そこにもう、いつも浮かべているあの困ったような笑顔はなかった。

 

「そういう、指示だからね」

 

 いつになく真剣な表情で、グィンさんが続ける。

 

「……この依頼は、『世界冒険者組合(ギルド)』の長——『GND=M(グランドマスター)』直々に『大翼の不死鳥』(ここ)に発注されたものなんだ」

 

 ……それを聞いて、僕は思わず耳を疑ってしまった。グィンさんのその言葉は、それほどまでに衝撃的なものだったのだ。

 

「…………それはまた、凄いですね」

 

 恐らく僕と同じ心境で、フィーリアさんがそう言う。彼女といえど、動じずにはいられなかったようだ。

 

「ぐ、ぐらんど……ますたー……?」

 

 …………まあ、先輩はたぶん知らないだろうなとは思っていた。ただでさえ他人に関しての興味がないのだし。

 

「簡単に言うと、凄く偉い人ですよ。先輩」

 

「へえ」

 

 小声でそっと教えると、やはり先輩は興味なさそうに返す。……流石は先輩、Lv1になろうが女の子になってしまおうが、その大物っぷりはいつまでも変わらない。そこに痺れて憧れてしまう。

 

 まあそれはともかく——そこで一旦グィンさんは僕たちを眺めて、それからゆっくりと、こう訊くのだった。

 

 

 

「ギルザ=ヴェディス……という名を知っているかい?」


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