まだ万策尽きたという訳ではない。
「大盤振る舞いっ!」
バッ──手を振ると同時に、【
頭上を舞う魔石を見上げるサクラ────瞬間、その場から彼女の姿が
「むっ」
少し遅れて、今自分が上空にいることをサクラは理解し────直後、彼女の周囲にあった魔石が爆ぜる。
──さて、どうしたもんですかね。
炸裂した閃光に呑まれるサクラの姿を遠目から見やり、フィーリアは僅かに思案を巡らす。
魔力自体はまだ十二分に残っている────けれど、余力が残されていない。フィーリアといえど、
一時とはいえ酷使した魔力回路が著しく乱れ、消耗している今、ちゃんとした形での魔法の行使は不可能────それ故にできることは。
発動に複雑な操作を必要としない、至って
そうして閃光に呑まれたサクラが危うげなく着地を果たすと同時に、フィーリアの頭上に十数の魔法陣が展開され。
バガンッ──地面を踏み砕き、その場からサクラが駆け出し。
ドォンッ──フィーリアが展開した陣の全てから、真白の光線が放たれる。
光線が地を這う。光線が空を貫く。そしてサクラの元に、光線が伸びる。
迫る光線を躱すサクラ。迫り続ける光線を、紙一重で躱し続けるサクラ。そうしながら、彼女は離されたフィーリアとの距離を詰めていく。
──考えてた。
瞬く間に迫るサクラの顔を────否。
──どんな魔法も通用しない貴女に、どうやったら魔法を通せるのか。
いつの間にか、恐らくサクラ本人でさえも気がつかない内に。薄く小さく、頬に刻まれたその
──そこで思ったんですよね、私。
そうしてとうとう、サクラが己の間合いにフィーリアを捉える────その時。
ゴォッ──突如として空から伸びた光の柱に、サクラは呑み込まれた。
「……あーぁ」
意識の外からによる攻撃であれば、通じるのではないか────どんな魔法に対しても無傷で済んでいた筈のサクラが、頬に擦り傷を負っていた。そのことから咄嗟に立てられたフィーリアの推察は、的を得ていた。
最初に宙へとばら撒いた魔石────その内の一個を、フィーリアは魔力の操作によって上空に留めていた。ちょっとした感知でも気づかれる程に杜撰でお粗末な操作だったが、そこは相手が他の誰でもないサクラだったから、フィーリアは賭けに出た────結果、その賭けには勝った。
魔法、というより魔力自体に疎いサクラが、最後までその魔石の存在に気づくことはなく、そのまま距離を詰め。
そうしてフィーリアの思惑通りに、魔石から解放された魔力の砲撃に晒され、サクラは呆気なく呑み込まれた────そして。
簡単な話である。確かに、意識の外からによる攻撃であれば、サクラにも通用した────が、
濡羽の黒髪が散々に乱れ、衣服の大半が消し飛び。また決して軽くはないだろう怪我も全身に負いながら。腰に下げた刀の柄に手をやったまま、フィーリアに迫るサクラ。
そんなサクラの姿を、フィーリアは呆然と眺めながら、呟く。
「強過ぎますよ、貴女」
「ああ。よく言われる」
チン──そうして、戦いは終わった。