最初、視界に映ったのは空だった。それはもう清々しい程に青く澄み渡った、何処までも広がる快晴の大空であった。
その光景を以て、フィーリアは今自分が仰向けになって、地面に倒れているのだと理解して。
──……負けた。
と、少し遅れて、フィーリアは心の中で呟く────そう、自分は今日、負けた。
「む、起きたか」
他の誰でもない、地面に倒れている自分のすぐ隣で
──この人に、私は負けたんだ……。
二十年という人生における、初めての敗北────しかし、意外なことにそう悪い気はしなかった。
「……私、どれくらいの間、気を失って……」
失神から回復した直後で頭は上手く回らず、また意識もはっきりとしていなかった。それ故に、今ようやっとフィーリアは認識できた。
もはや衣服と呼んで扱うには憚れる、まだ辛うじてその面影を残せている布を纏うサクラの────自分の顔の三倍、いや四倍はあろうかという、まさに弩級の双丘を。
そんなものを、少なくともフィーリアにとっては常識の範疇から大きく逸脱したそれを目の当たりにしてしまって。
「……おっぱいお化け……?」
と、フィーリアは無意識の内に、堪らずそう呟いてしまうのだった。
「流石の私でもそれは傷つくぞ」
「あ、すみません。つい」
と、口で謝りつつも、フィーリアはサクラの胸元から目を離せない。少しして、彼女が訊ねる。
「その、どうしたんですかそれ。さっきより明らかに、ずっと大きくなってますよね?一体どういうことなんです?」
それが今訊ねるべきではないことは、フィーリアとて重々承知している。が、それでも訊ねずにはいられなかった。
「元に戻っただけだよ。サラシ……まあ布で押さえつけていたんだが、君の最後の攻撃でそれが破れた」
不躾な問いかけではあったが、それでもサクラは嫌な顔一つせず、平然と答えるのだった。
──押さえつけて、あの大きさ……?いやまあ、元の大きさからすれば、それも当然か。
と、心の中で戦慄の呟きを漏らしながら、フィーリアは言葉を返す。
「それは申し訳ありませんでした」
「別に気にしなくていいさ。……さて。次はこちらの質問に答えてもらいたいな」
「構いませんよ。何です?」
「君、ラグナ嬢をどうするつもりだったんだ?」
という、サクラの問いかけに対して。フィーリアがすぐに答えることはなく。少しして、サクラが更に続ける。
「私と違って、ラグナ嬢に執着する理由など君にはないのだろう?」
「……」
サクラの質問────否、指摘に。フィーリアは最初こそ沈黙を保っていたが。
「ブレイズさんに親近感を覚えました。私が《SS》
「ほう。親近感」
「はい。ですから一度、顔を突き合わせて話をしてみたかった。ただそれだけです」
「ふむ。なるほど」
そうしてサクラとフィーリアの間で、静寂が流れる────が、それは長く続かなかった。
「これで納得して頂けましたか?」
「ああ」
「……差し支えなければでいいんですけど、もう一つ訊いてもいいですか?」
「構わないが」
「貴女って今までにこういう勝負で負けたこととか、あるんです?」
「あるよ。今までで二回」
「そうですよね。そんなに強いんですし……って、あるんですかっ?二回も?」
驚きを隠せないでいるフィーリアに、サクラはまるで諭すかのような口調と声音で言う。
「別に私は無敵ではないんだ。負ける時は負けるさ。今日の君のように、ね」
「……それは、そうですね。確かに私の魔法も最後には通じた訳ですし」
「全くだ。おかげさまで私の一張羅が台無しだよ」
そこで少しの間を挟んでから、再びフィーリアが口を開く。
「こんなところで長話も、手持ち無沙汰なブレイズさんとウインドアさんを待たせるのもアレですし。そろそろ戻りましょうか」
「……」
が、その提案にサクラはすぐに頷こうとはしなかった。先程までの会話が嘘だったかのように、黙り込んだ彼女を。フィーリアは訝しげに呼びかける。
「サクラさん?」
「……そうだな。宴も
と、そうは言ったサクラであったが。後ろ髪を引かれるようなものが、彼女の表情にはあった。