それから程なくして、サクラさんとフィーリアさんの二人はこの場へと戻って来た。
戻って来た、のだが……。
「待たせてすまなかった。二人とも」
と、僕と先輩に声をかけるサクラの姿は────僕、というか男が見てはいけないものだった。
「おう。んで、どっちが勝ったんだ?」
「私だ」
「……うへぇ、マジ?」
嬉しそうなサクラさんの報告に対し、心底嫌そうな声音と表情と言葉で返す先輩。そんな最中、僕はただ明後日の方向を見ることしかできないでいる。
──何でこんなにも堂々としていられるんだ、この人は……?
と、僕が疑問を抱く側で二人は更に会話を続ける。
「てか胸デカくなってね?お前」
「これは元に戻っただけさ、ラグナ嬢。それに私から言わせてもらえば君の方がよく成長していると思うよ。私は一般的な女性の体躯をしていないが、君はその逆。精神はさておき肉体は十代後半に差し迫った頃に見えるが……それでその大きさは驚きを禁じ得ない。是非この手で直に触れたいものだ。いいかな?」
「
「本当にその通りですよね。お胸もお尻も……
と、フィーリアさんも加わった三人の会話は繰り広がっていく。
……しかし。いい加減、僕もこうして黙っている訳にはいかないだろう。
「……あ、あの、サクラさん」
「む?どうした、青年」
無礼であることは承知の上で、未だ顔を逸らしながら。僕は脱いだ
「その、こちらを羽織って頂けると助かります……」
「む……?ああ、なるほど。すまない、配慮が欠けていた」
こちらの頼みに対して、サクラさんは少しも嫌がることなく、差し出された外套を受け取ってくれるのだった。
それから少しして、サクラさんが僕に声をかける。
「羽織らせてもらったよ、君の外套」
そうしてようやっと、僕はサクラさんの方に顔を向けることができた。
……一応、男物の外套ではあるが。本人も言っていた通り、女性の一般的な身長を遥かに越すサクラさんでは。それを羽織ってもなお、まだ目のやり場には困ってしまう。
けれど、こちらの頼みを聞いてもらった以上、確と顔を合わして話をしなければならないだろう。
──サクラさんが勝った、ということは……。
『私はラグナ嬢……否、ラグナ=アルティ=ブレイズを『
サクラさんから持ちかけられた、ラグナ先輩に対する『影顎の巨竜』への
「サクラさん。貴女の考えは依然変わりない……ですよね?」
それは断固として拒否したい。したいが、サクラさんとて決して譲らないだろう。今後フィーリアさんの横槍が入らなくなった以上、今回みたいに有耶無耶にすることもできない。
故にこの話を終わらせるには、サクラさんとの話し合いによる完全決着しか方法はない。
無論、僕としてはどうにか阻止したい。が、その想いの強さはきっと、サクラさんだって負けていない筈である。
それを確認する為の問いかけだったのだが……。
「考え?……ああ、引き抜きのことだな。それなら気が変わったよ」
「やはりそうで……えっ?き、気が変わった?」
予期していたものとは真逆の言葉を返され、僕は堪らず呆けた声を出さずにはいられなかった。
「そうなのか。まあ俺としては面倒な話が終わって助かるけどさ」
「その代わりと言ってはなんだが……後日、私に付き合ってほしい。私も頑張ったというのにご褒美なしというのは、流石に堪えるからね」
「はあ?褒美も何も、今日の喧嘩はお前と
「まあまあ、ラグナ嬢。そう言わずに」
サクラさんはそう言いながら、ゆっくりと先輩に顔を迫らせ、耳元に唇を近づける。
「……ふん。いいぜ、お前に付き合ってやるよ」
「ありがとう、ラグナ嬢」
一体サクラさんがどのようなことを耳打ちしたのか、僕には知る由もない。しかし、それが先輩を乗り気にさせたことだけは確かだった。
先輩からの了承を得たサクラさんはそのまま、今度は僕の方にその顔を向ける。
「という訳だ青年。日を改めて、ラグナ嬢を借りるよ」
「……はい」
先輩が了承した以上、僕がそのことに対して異を唱えることはない────サクラさんとて、それはわかっている筈。
それでも僕にそう言ってきたのは、律儀さによるものか。それとも、一時とはいえ先輩を独占できる事実の誇示なのか。
まあどちらにせよ、もはや僕が口を挟むべきことではない。真意についてはさておき、サクラさんが先輩の
「ああ、それとフィーリア。君も一緒に付き合ってほしいのだが」
対岸の火事を眺めるが如く、無関心でいたフィーリアさんだったが、そんな彼女にも当然だと言わんばかり声をかけるサクラさん。
「え、私もですか?何故……?」
「両手に花というものを楽しみたい。ただそれだけさ」
当惑の様子で理由を訊ねるフィーリアさんに、サクラさんがそう返す。依然として困惑した表情を浮かべていたものの、仕方なさそうにため息を吐いてから、フィーリアさんは口を開く。
「はあ……別に構いませんが」
「恩に着るよ」
どうやらそれで話は終わったらしい。まるで雲一つない晴々とした青天を彷彿とさせるような、爽やかな微笑を携えながらに、サクラさんが言う。
「ではこれで、街に戻るとしようじゃないか」
……そうして。何の前触れもなく、些細なことから決まり、始められた。二人の《SS》
「どうにか大陸一つ消し飛ぶことなく、終わって良かったなぁ?まあ幾らかの土地は駄目にされちまったみてえだし、環境や生態系への影響は免れないようだが。
だがそれを差し引いても余りあるモンは無事手に入れられたんだから、言うことなしってか。ハハハ!
……そうだな。お互い実に多忙な身、アンタの言う通り無駄話はここらで終いにしてと。
んじゃあこれで奴らは切り捨てるってことでいいんだな?……了解了解。ならパアッとド派手に散ってもらうとするかぁ。大盤振る舞いだ、金に糸目はつけねえ。思う存分、やってもらおうじゃねえの。
で、これでまた一つ、計画が進む訳だが?そこんとこどういう気分だ?そりゃ
ハハ、わかってるわかってるそこもお互い様ってな。言っとくが、オレの腹の黒さもアンタに劣ってないぜ?
とまぁ、ここいらでお開きとするか。この話を聞いているのがオレらだけっていう保証はないしよ。
それじゃまた今度……あぁ、そういや耳にしたことあるか?アンタ。
『
別に?ただのつまんねえ興味本位さ。そんじゃあ