「それで?どっちが勝った?」
「『極剣聖』です」
「紙一重?」
「圧勝です」
「そっかぁ」
「はい」
四方を囲む純白の壁。ステンドグラスが嵌め込まれた窓。祭壇であるべき場所に築かれた玉座。
あの日と全く同じ状況下で、あの日と全く同じ二人が言葉を交わす。
「無理もないねえ。やはり『極剣聖』は無自覚ながらも『存在の力』を扱えるようだし、今の『天魔王』じゃあ万に一つも勝ち目はなかったねえ」
「ええ、
「うんうん。それで訊くね?アエリオ君」
「何なりと」
と、返す汚れ一つとしてない
「どうかな?『極剣聖』と『天魔王』の戦いを最後まで目の当たりにした君は、どう思うのかな?」
相も変わらず、その玉座に座する彼の者は。まるで無邪気にも悪戯を楽しむ子供のような、ころころとした声音でそう訊ねる。
「問題ありません」
その問いかけに対して、アエリオは即答した。そのまま、彼が続ける。
「脅威と申しましても、それはあくまでも自分やエマ様に限ってのこと。アクセル様とクロイス様ならば『極剣聖』に対処できるかと」
「うんうん。そうだね。実に的確で模範的な分析ありがとう」
と、頷いて満足げにそう言う彼の者は。更にこうも続ける。
「しかし、ゆめ忘れてはいけないよアエリオ君。何も脅威は『極剣聖』だけじゃない────何なら、彼女
「……『黒き獣』」
「そうだよ。神をも喰らう、終災の化身。具現せし世界の終わり。それ即ち、『黒き獣』。『黒黙示録』に語り記され紡がれる
彼の者はまるで唄うように話す。その話をアエリオは黙って聞いていた。
「さて。これで話はお終い。それじゃあ引き続きよろしくね、アエリオ君。我らが
「御意」
「俺が上でっ!お前が下っ!何度も言わせんなあッ!!」
「そのお言葉そっくりそのまま全部お返しします!私が上に決まっているでしょう!あなた馬鹿ぁ!?」
先程から数分、どちらが上になるかで両者互いに譲らない、熾烈な争いを続けるラグナ先輩とフィーリアさん。最近
「え?僕……ですか?」
その話を持ちかけられた僕は、そんな呆気に取られた声を漏らさずにはいられないでいた。
「ああ。私としては是非受けてほしいと思っているんだが……どうかな?」
と、こんな僕には勿体ない言葉をかけてくれるサクラさん。彼女の提案に対して、僕は即座に返事をすることはできなかった。
──……何を考えているんだ?この人は……。
カップに残っている紅茶に映り込む僕の表情は、浮かない────当然だ。一体どういう理由があって、僕なんかを誘うのか。それが全く以て、わからないのだから。
「……その、すみません」
考えてみたが、駄目だった。
「訊いてもいいですか?サクラさん……わざわざ僕を選んだ、その理由を」
なので、僕は意を決して訊くことにした。するとサクラさんは気を悪くすることもなく、快く答えてくれた。
「構わないよ。三つ程あるが、まずは相応の実力があること。次に人手が欲しいこと。そして……勘」
「……か、勘ですか?」
「ああ。君が居合わせることで何かが起きる気がする。私の勘はよく当たるんだ」
……正直に言ってしまえば、納得はできなかった。
しかし、僕としては断る理由がない。何よりも相手はサクラさん────《SS》
「しゃあああッ!私の勝ちぃいいいッ!」
「こんの……!クソッ!下りろチビッ!」
「さてさてどうしたもんですかねえ?手始めにこの、私とそう変わらないくせに大きく育った、実に生意気なそのおっぱいから遊んであげましょうかぁ?」
「はっ?何気持ち悪いこと言っ……んひゃっ!?」
一進一退の激しい攻防を制したのはフィーリアさんらしい。早速勝者の特権を先輩に対して遠慮なく行使する最中、いよいよ僕は覚悟を決める────とはいえ、選択の余地など最初からあってないようなものだったが。
カップを手に取り、残っていた紅茶を飲み干し。
「わかりました」
そうして、僕はサクラさんに言った。
「『
「
そうして独りとなった玉座の間にて。玉座に腰かけたままに、彼の者は呟く。
「全ては世界を創りし神の為。総ては捨て置かれた神の為」
その呟きは、宙に舞い。宙に流れ、宙に漂い、宙に落ち。
「全ての
そうして宙に────
「その末に、神が終わり神が始まる」
────消え失せた。