ストーリー・フェイト   作:白糖黒鍵

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『極剣聖』VS『天魔王』(その終)

「それで?どっちが勝った?」

 

「『極剣聖』です」

 

「紙一重?」

 

「圧勝です」

 

「そっかぁ」

 

「はい」

 

 四方を囲む純白の壁。ステンドグラスが嵌め込まれた窓。祭壇であるべき場所に築かれた玉座。

 

 あの日と全く同じ状況下で、あの日と全く同じ二人が言葉を交わす。

 

「無理もないねえ。やはり『極剣聖』は無自覚ながらも『存在の力』を扱えるようだし、今の『天魔王』じゃあ万に一つも勝ち目はなかったねえ」

 

「ええ、猊下(げいか)の見立て通り、目下の脅威は『極剣聖』に相違ありません」

 

「うんうん。それで訊くね?アエリオ君」

 

「何なりと」

 

 と、返す汚れ一つとしてない白金鎧(プラチナメイル)を着込む、銀髪の青年────アエリオ=ルオットに。

 

「どうかな?『極剣聖』と『天魔王』の戦いを最後まで目の当たりにした君は、どう思うのかな?」

 

 相も変わらず、その玉座に座する彼の者は。まるで無邪気にも悪戯を楽しむ子供のような、ころころとした声音でそう訊ねる。

 

「問題ありません」

 

 その問いかけに対して、アエリオは即答した。そのまま、彼が続ける。

 

「脅威と申しましても、それはあくまでも自分やエマ様に限ってのこと。アクセル様とクロイス様ならば『極剣聖』に対処できるかと」

 

「うんうん。そうだね。実に的確で模範的な分析ありがとう」

 

 と、頷いて満足げにそう言う彼の者は。更にこうも続ける。

 

「しかし、ゆめ忘れてはいけないよアエリオ君。何も脅威は『極剣聖』だけじゃない────何なら、彼女()()()脅威に成り得ないよ?アレと比べてしまえば、ね」

 

「……『黒き獣』」

 

「そうだよ。神をも喰らう、終災の化身。具現せし世界の終わり。それ即ち、『黒き獣』。『黒黙示録』に語り記され紡がれる存在(モノ)

 

 彼の者はまるで唄うように話す。その話をアエリオは黙って聞いていた。

 

「さて。これで話はお終い。それじゃあ引き続きよろしくね、アエリオ君。我らが世杯(せいはい)の君のこと」

 

「御意」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が上でっ!お前が下っ!何度も言わせんなあッ!!」

 

「そのお言葉そっくりそのまま全部お返しします!私が上に決まっているでしょう!あなた馬鹿ぁ!?」

 

 先程から数分、どちらが上になるかで両者互いに譲らない、熾烈な争いを続けるラグナ先輩とフィーリアさん。最近第二(セトニ)大陸の中央都市《セントリア》で流行っているらしい、伝統から大胆にも外れた……少々、過激な意匠の侍女(メイド)服で身を包む二人の傍らで。

 

「え?僕……ですか?」

 

 その話を持ちかけられた僕は、そんな呆気に取られた声を漏らさずにはいられないでいた。

 

「ああ。私としては是非受けてほしいと思っているんだが……どうかな?」

 

 と、こんな僕には勿体ない言葉をかけてくれるサクラさん。彼女の提案に対して、僕は即座に返事をすることはできなかった。

 

 ──……何を考えているんだ?この人は……。

 

 カップに残っている紅茶に映り込む僕の表情は、浮かない────当然だ。一体どういう理由があって、僕なんかを誘うのか。それが全く以て、わからないのだから。

 

「……その、すみません」

 

 考えてみたが、駄目だった。

 

「訊いてもいいですか?サクラさん……わざわざ僕を選んだ、その理由を」

 

 なので、僕は意を決して訊くことにした。するとサクラさんは気を悪くすることもなく、快く答えてくれた。

 

「構わないよ。三つ程あるが、まずは相応の実力があること。次に人手が欲しいこと。そして……勘」

 

「……か、勘ですか?」

 

「ああ。君が居合わせることで何かが起きる気がする。私の勘はよく当たるんだ」

 

 ……正直に言ってしまえば、納得はできなかった。

 

 しかし、僕としては断る理由がない。何よりも相手はサクラさん────《SS》冒険者(ランカー)の『極剣聖』。彼女の提案を、僕なんかが無下に扱うことは許されない。

 

「しゃあああッ!私の勝ちぃいいいッ!」

 

「こんの……!クソッ!下りろチビッ!」

 

「さてさてどうしたもんですかねえ?手始めにこの、私とそう変わらないくせに大きく育った、実に生意気なそのおっぱいから遊んであげましょうかぁ?」

 

「はっ?何気持ち悪いこと言っ……んひゃっ!?」

 

 一進一退の激しい攻防を制したのはフィーリアさんらしい。早速勝者の特権を先輩に対して遠慮なく行使する最中、いよいよ僕は覚悟を決める────とはいえ、選択の余地など最初からあってないようなものだったが。

 

カップを手に取り、残っていた紅茶を飲み干し。

 

「わかりました」

 

 そうして、僕はサクラさんに言った。

 

「『蒼海の救世(ブルーノア)』の一斉捕縛、僕も協力します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()くして運命の物語(ストーリー・フェイト)は進み、廻り、巡る」

 

 そうして独りとなった玉座の間にて。玉座に腰かけたままに、彼の者は呟く。

 

「全ては世界を創りし神の為。総ては捨て置かれた神の為」

 

 その呟きは、宙に舞い。宙に流れ、宙に漂い、宙に落ち。

 

「全ての存在(モノ)は総てを以て、進ませ、廻らせ、巡らせ」

 

 そうして宙に────

 

 

 

 

 

「その末に、神が終わり神が始まる」

 

 

 

 

 

 ────消え失せた。

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