グィンさんと別れ、僕と先輩は『
「……ん?」
なにげなく、ふと
二人——先日、
「おはようございます。サクラさん、フィーリアさん」
僕がそう挨拶しながら近づくと、またも揃って二人はこちらに振り返った。
「ウインドアか。それにラグナ嬢も。おはよう」
「こちらこそおはようございます。ウインドアさん、ブレイズさん」
彼女たち二人は、ただの冒険者ではない。この世界《オヴィーリス》に、僕を含めた星の数ほど無数に存在する冒険者たちの中でも、特別中の特別。異例中の異例。一つにして一つとない、まさに特出した、決して抜かれることのない、一つの個。
僕たち常人では決して到達し得ない、踏み得るのことのない、
Lv100——人の身でありながら、人ならざる存在の境地に至った彼女たちは、《SS》
……なお、余談ではあるのだが、実は二人の他にももう一人の《SS》冒険者がいるのだが、今は入り組んだ複雑な事情で、一時期
つい最近ようやくスライム相手にも辛勝できるようになったので、最弱よりも最弱という不名誉極まりない
「どうしたんですか、お二人共依頼看板なんか眺めて……なにか気になる依頼でもあったんですか?」
僕がそう訊くと、二人は小さく首を振って否定する。
「暇だったのでな、なにか手応えのある依頼はないものかと探していたのだが……」
「ありません、ね。一応まだマシかなってものはいくつか見繕ったんですが」
そう言いながら、僕の方にフィーリアさんが数枚の依頼書を見せてくる。
『〝殲滅級〟シデンワイバーン討伐依頼』
『〝殲滅級〟デッドリーベア討伐依頼』
『〝絶滅級〟『灰燼』フレイソル=クロナガンド討伐依頼』
——……え?
「こ、これ全部がまだマシ……なんですか?」
「ああ」「はい」
さも当然のように頷く二人に、思わず僕は頭を抱えそうになってしまった。
——どんだけ……常識外なんだよ、この人たちは……!!
一応説明すると、先ほどフィーリアさんが見せてきた依頼は、そもそも二人でやるような代物ではない。
僕たち《S》冒険者——それも選りすぐりに選りすぐった冒険者
そもそも、魔物にはそれぞれの『危険度』というものがある。
字を読んでの通り、如何にその魔物が、僕たち人間から見て、どの程度危険なのかを表したものだ。
スライムやゴブリンなどの、大して危険になり得ないだろう魔物は〝微有害級〟
ロアーウルフやバンデッドコボルトなどの、決定的ではないが確かな危険になる魔物は〝有害級〟
まだ年若い
村や小さな街一つ程度ならば、即座に地図上から消せる、優先討伐令が下されるほどの危険を誇る魔物は〝殲滅級〟
そして、その〝殲滅級〟を遥かに超える、放っておけば致命的な被害を齎らすことは確実であろう、悠遠の時を生きた魔物は〝絶滅級〟
というような感じで区分けされているのだ。特に〝撲滅級〟からは基本的に《B》ランク以下の冒険者が遭遇した場合、即時撤退という決まりになっている。
〝撲滅級〟だと、《A》冒険者数十人かがりで挑んでようやく討伐できるほどで、《S》冒険者であれば二人いれば充分だろう。
〝殲滅級〟だともはや《A》冒険者など話にならず、確かな実績と実力を持つ《S》冒険者五人で挑むことが推奨されている。
そして〝絶滅級〟になると《S》冒険者であっても有象無象では歯が立たず、世界でも有数の、それこそ名の知られている《S》冒険者が十数人で挑んで、勝てるかどうか。
その中でも、彼女たちが選んだ依頼は最上の最上に位置する難易度である。
シデンワイバーンは雷を自由自在に操り、凄まじい速度で空を駆け、その姿を捉えるだけも困難。
デッドリーベアはその動きこそ遅いが、その豪腕から繰り出される一撃はまさに必殺で、また身体を覆う毛皮は鉄と比べても遜色ない防御力を誇る。
そして最後の〝絶滅級〟——フレイソル=クロナガンドは二つ名持ちの火竜で、『灰燼』の名の通り、その視界に映る全てを灰に還す。
フレイソル=クロナガンドを討伐できるような《S》冒険者など、恐らく指で数えられるほどしかいないのではなかろうか。
——『
とにかく、僕ではまず相手にならない。
それに、たとえそれら超一流の《S》冒険者がチームとなって挑んだとしても、少なくとも三日三晩を跨ぐ死闘になること間違いなしだろう。
「シデンワイバーンやデッドリーベアはともかく、『灰燼』の方はどうでしょう?」
「ふむ。一秒持つかどうかだな……」
…………間違いなし、だろう。