ストーリー・フェイト   作:白糖黒鍵

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DESIRE————大陸横断列車『Ground』

 ガタンゴトン——全身に伝わる、心地良い振動。

 

 ——……この感じは、良いな。

 

 溶けて流れていく風景を眺めながら、僕はそう思う。こう……上手い具合に眠気を誘ってくるというか、なんというか。

 

 ——大陸横断列車、『Ground(グランド)』……か。

 

 この世界(オヴィーリス)には、四つの大陸が存在する。

 

 一の大陸、『ファース大陸』

 

 二の大陸、『セトニ大陸』

 

 三の大陸、『ザドヴァ大陸』

 

 四の大陸、『フォディナ大陸』

 

 僕と先輩が住むオールティアはファース大陸にある街の一つで、確か記憶通りならば、サクラさんが所属する冒険者組合(ギルド)影顎の巨竜(シウスドラ)』が拠点とする街——アトナルガはザドヴァ大陸にあり、フィーリアさんが所属する冒険者組合『輝牙の獅子(クリアレオ)』が拠点とする街、通称『魔法都市』——マジリカはフォディナ大陸に存在する。

 

 僕はどちらもまだ直接には訪れたことはないが、一冒険者(ランカー)としてその名前と存在する大陸の場所は把握している。……まあ、先輩はたぶんしてないだろうけど。

 

 ともあれ、昨今。この四つの大陸を移動——横断する列車が作られたのだ。これがその列車————四大陸横断列車『Ground』である。

 

 特等級宿泊室十部屋、一等級宿泊室五十部屋、二等級宿泊室百部屋、三等級宿泊室二百部屋、娯楽施設七部屋、倉庫三部屋、計三百七十部屋から成る四十車両編成列車。

 

 素材には主にガンヂア鉄とボルボニクス鉄を使用した合金を使っており、外装には打撃斬撃あらゆる衝撃に耐性を持ち、その上第九位階魔法までを無効化(ディスペル)できる魔石を、特殊な方法によって液体状に変化させ、それを噴射(スプレー)塗装(コーティング)してある。

 

 なので列車としては申し分なさ過ぎるまでの強度を誇り、また列車強盗対策として最後尾にある倉庫車両には〝撲滅級〟魔物(モンスター)を数十体収容しているので安全面(セキュリティ)についても十全だ。

 

 また娯楽施設に関しても妥協が一切なく、一日では遊び切れないほど。料理に関しても、そのどれもがこの列車でしか味わえないもので、超一流の料理人(コック)たちが手がけている。

 

 贅という贅を尽くした豪華大陸横断列車——それこそが『Ground』であり、これこそが『Ground』なのだ。

 

 ……ちなみに、片道だけでも乗車するのに半年は遊んで暮らせるほどの金額はかかるので、《S》冒険者でもない限り乗車できないし、しようとも思わない。

 

「………………」

 

 改めてこの部屋を——特等級宿泊室を僕は見回す。

 

 全体的に落ち着いているが、確かな高級感を感じさせる内装。細部にまでこだわりを散りばめられた数々の調度品。そして最も目立っている、キングサイズの寝台(ベッド)

 

 ——お、落ち着けない……!

 

 落ち着きのあるデザインの部屋なのに、全く落ち着けない。というか広過ぎるこの部屋。

 

 家具に詳しくなくても、一流の職人の手によって作られたのだろうとわかる椅子に座って、窓から景色を眺めていれば、少しくらいは気も紛れるだろうと思っていたが……いやあ、残念ながら効果など皆無だぁ。

 

「…………はあ」

 

 そもそも、こんな豪華な部屋ではなく、普通の二等か三等級の部屋が良かった。確かに僕は《S》冒険者で、稼ぎだってそれなりにあるし貯金も人並み以上はあると自負するが、あくまでもその金銭感覚は庶民的なのである。

 

 ——《S》冒険者になって、一番高い買い物したのは、あの家くらいだしなあ……。

 

 昨日も今日もなにも気にしないではしゃいでいる先輩や、こういうのに慣れているのか、少しも動じていないサクラさんやフィーリアさんが羨ましい。

 

 娯楽施設もあるが、生憎そういうものに僕は関心がない。かといってこの列車の中を散策するのも、気が滅入りそうで……正直、嫌だ。

 

 ——…………そもそも、なんで僕と先輩も選ばれたんだろう。

 

 景色を眺めながら、僕は己の記憶を振り返る。

 

 

 

 事の顛末は、今日から三日前にまで遡る————

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