ストーリー・フェイト   作:白糖黒鍵

331 / 481
DESIRE────Battle party(その一)

 一拍置いて、宙に留まっていた全ての銃弾が床に落ちる。硬質で甲高い音が次々と鳴り響く中、内心フィーリアは苦々しく呻いていた。

 

 ──燻り出された……!

 

 だが迅速に、かつ躊躇なく彼女は動いた。

 

「【氷棘(アイスニードル)】!」

 

 瞬間、フィーリアの眼前に魔力によって発生した冷気が集中し、瞬く間に切っ先鋭い氷の棘となる。そして間髪を容れず凄まじい速度で放たれた。

 

 氷の棘は大気を貫きながら、ただ真っ直ぐに、そして正確に──ギルザの額にへと飛来する。

 

 そしてそのまま彼の額を────通り抜けた(・・・・・)

 

「…………チッ」

 

 その様子を見て、行儀悪くフィーリアは舌を打つ。そんな彼女に、依然口元を歪めてギルザが言う。

 

「残念だったなあ冒険者(ランカー)。上手い具合にここまで入り込めたみたいだが、その頑張りは無駄に終わる」

 

「話には聞いてましたけど、本当にどうしようもないクズ野郎みたいですね。ギルザ=ヴェディス……あなたこんなことして、一体なにを考えているんですか!?」

 

 激昂するフィーリアだが、それに対してギルザがどう思うこともない。彼はただ、まるで人を馬鹿にしたような薄ら笑みを浮かべて、彼女を挑発する。

 

「なにを考えているって、これからを考えているのさ俺は。だからその馬鹿をぶっ殺して、そいつらもぶっ殺そうとした。ただそれだけだ」

 

 言いながら、足元に横たわるフォルネの死体を踏みつけ、蹴り飛ばす。飛び散った血が、床に前衛的な模様(アート)を描いた。

 

「まあお前らはここで無様に足止め食らっとけ。その間に、俺はさっさとトンズラさせてもらうぜ──ヒャハハハ!」

 

 汚らしく笑うギルザの姿が、徐々に薄れて、掠れていく。やがて、完全に消えた。

 

 カラン、と。彼が立っていた場所に魔石が落下し、すぐさま砕けて霧散してしまう。そんな光景を目にして、フィーリアが呟く。

 

「幻影の魔石……この舞踏会(パーティー)は囮だったって訳ですか」

 

 彼女がそうぼやくと、大広間の扉が乱暴に開け放たれ、そこから大人数の武装した男たちが雪崩れ込んでくる。ギルザの部下たちだ。

 

「ぞろぞろと……」

 

 軽く周囲を見渡せば、壁際に立っていた警備員やら案内人やらも皆ギルザの部下らしく、同じ形状の銃を構えている。参加者全員を取り囲んでいるような形になっており、このままではギルザが言っていた通り、全員死ぬことになるだろう。

 

 フィーリアは嘆息し、そして気怠げに口を開いた。

 

「邪魔です」

 

 シュン──彼女がそう吐き捨てると同時に、彼女の周囲にいた参加者たちは、一人も残さずその姿を消してしまった。その光景を目の当たりにしたギルザの部下たちが、大いにどよめく。

 

「な、なんだ?客が全員消えちまったぞ?」

 

「まさか、あのガキが殺ったのか?」

 

「あんな見た目で惨いことしやがるぜ……」

 

 口々に勝手なことをほざく部下たちに、フィーリアが怒鳴りつける。

 

「人聞きの悪いこと言わないでください!全員外に転移させただけですから!」

 

 それから再度うんざりと嘆息。そんな彼女の様子を眺めながら、ギルザの部下たちは下衆な笑いを漏らす。

 

「んなことはどうだっていい」

 

「お前を殺せば百万Ors(オリス)が手に入るんだ」

 

「むしろ余計な壁がなくなって、撃ち殺しやすくなったぜぇ」

 

 銃を構え、自分を取り囲む男たちを、フィーリアは今一度睥睨する。そして──やはりうんざりと、嘆息した。

 

「上等です。身のほど弁えさせてやりますよ、この有象無象共が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふむ」

 

 クラハに例の情報を渡し終え、悲鳴と銃声が響いた大広間にへと駆けていたサクラ。だが、彼女は今、大広間にへと続く廊下にて立ち止まっていた。

 

 理由は単純明快──己の前に、大勢の武装したギルザの部下たちが立ち塞がっているからである。

 

 困ったような表情を送る彼女に、部下たちが各々言う。

 

「お前がボスの言っていた標的(ターゲット)の一人だな」

 

「お前を殺せば百万が手に入る……こりゃあぶっ殺すしかねえよなあ!?」

 

「ヒャッハー!ぶっ殺TIMEだぜえええ!」

 

 部下たちの言葉を受け、困ったような表情のまま、サクラは眉を顰める。そんな彼女の様子に全く気づくことなく、部下の内三人が前に出た。

 

 ──……なんだ?

 

 その三人に対して、サクラは疑問を抱く。何故ならその三人は他の者とは違い、まるで小型化した大砲のような形状をした銃を構えていたからだ。

 

 一体それがなんなのか、考えている時だった。

 

「これでも喰らいやがれ!」

 

 ボンッ──一人が叫ぶと同時に、その謎の銃から一斉に球体のようなものが射出された。それはあっという間にサクラの眼前にまで迫ってくる。

 

「?」

 

 疑問に思いながらも、とりあえずその場から跳び退こうとしたが──突如として、その球体が鎖に変わった。

 

「!?」

 

 球体から鎖に変わったそれが、サクラの身体に巻きつく。そうして瞬く間に拘束されてしまった。

 

 その様を見た三人が、歓喜の声を上げる。

 

「やったぜ引っかかりやがったぞこいつ!」

 

「その鎖はなぁ、一本であのバーサクドラゴンですら完全に拘束しちまう強度を持つ。人間じゃあ絶対に引き千切れねえ!」

 

「それが三本!三本大出血サービスだ!」

 

 廊下にて、男たちの下卑た笑い声がこだまする。男たちは、自分たちの勝利を確信していた。

 

 だが、彼らは知らされていなかった。五人の標的が、ただの冒険者だとしか。それ以外の素性など、全く知らされていなかったのだ。

 

「………………」

 

 己の身体を縛る鎖を、サクラは無言で見つめる。そんな彼女の様子に構うことなく、男たちは手に持つ銃を構えた。

 

「とっととおっ()ね、キザ野郎!」

 

 そして引き金を引く────直前だった。

 

「ふッ」

 

 サクラが息を吸い込み、鋭く吐き捨て、そしてほんの少し腕に力を込めた。

 

 

 

 バギンッ──たったそれだけで、彼女を縛りつけていた鎖が、三本とも全て引き千切れてしまった。

 

 

 

「「「………………は?」」」

 

 男たちが愕然とする中、服に付いた鎖の破片を軽く払いながら、サクラが言う。

 

「一応言っておくが、私は歴とした人間だからな」

 

 彼女のその言葉に対して、返されたのは恐慌と怒号であった。

 

「バケモンだぁぁぁっ!」

 

「う、撃て!撃て撃て撃てぇえッ!!」

 

「うわああああああああ!!!」

 

 阿鼻叫喚の中、それでも男たちは銃の引き金を引こうとする。だが先に結果を述べさせてもらうなら、それは叶わぬ行動となってしまった。

 

 

 

 キンッ──唐突に、甲高い金属音が廊下に響き渡った。

 

 

 

「……あ?なんだ今のお……と……」

 

 男たちの顔が、青ざめていく。無理もない。何故なら────構えていたはずの銃が、両断されていたのだから。

 

「君たちの武器は無力化させてもらった。先を通らせてもらうよ。こう見えても急いでいる身なんで、ね」

 

 呆然と立ち尽くしている男たちの背後で、いつの間にか腰に刀を差したサクラがそう言いながら、先を進む──瞬間、

 

 

 

 

「素晴らしいな。流石は『極剣聖』──我ら剣士の頂に座する存在(モノ)だ」

 

 

 

 

 突如として、彼女の歩みを一人の男が遮った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。