ストーリー・フェイト   作:白糖黒鍵

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ARKADIA────『魔法都市』マジリカ

 オヴィーリス四大陸の一つ──フォディナ大陸。この大陸は他の大陸と比べて大気中に流れる自然由来の魔力が豊富であり、この大陸特有の珍しい魔石も数多く存在する。またそれもあってどの大陸よりも魔法に関する文明が進歩しているのだ。

 

 魔法を極めるのならフォディナとまで言われており、事実この世界(オヴィーリス)でその名を轟かせる魔道士(ウィザード)は、その殆どがフォディナ大陸出身だったりする。そしてかの『大魔道士』──レリウもこの大陸の生まれだったと言われている。

 

 そんな魔法に所縁(ゆかり)あるフォディナ大陸であるが、当然数多くの国があり、街がある。そしてこの大陸において最も有名であろう場所は────『魔法都市』マジリカだろう。

 

 フォディナの魔は此処に在り──という謳い文句の通り、マジリカはこの世界に生きる全ての魔道士にとって他に何処とない聖地で、魔法文明が進んでいるフォディナ大陸の中でも、随一だ。

 

 世界最先端の魔法に、魔道士専門育成機関『魔道院』に、冒険者組合(ギルド)輝牙の獅子(クリアレオ)』の存在。魔道士にとって重要な知識や施設が、この街に集まっているのだ。

 

 魔道士ならば生涯に百度は訪れるべし、とまで言われるマジリカ。この『魔法都市』に──今、僕ことクラハ=ウインドアは、ひょんなことから訪れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが、『魔法都市』マジリカ……」

 

 門を抜けた先で広がっていた光景を目の当たりにして、僕は呆然と呟く。マジリカについては数多くの噂を聞いてはいたのだが、こうして実際に足を踏み入れ訪れたのは、今回が初めてである。

 

『金色の街』ラディウスに訪れた時と同じような感覚が、僕の中で広がる。あの街はあの街で、僕を驚かせてくれたが──ここ、マジリカもまたそれとは別の驚きがあった。

 

 街の様子こそ、僕が住うオールティアとそう変わりはしない。ラディウスのように観光客で溢れ返っている訳でもないし、発展度合いで比べればこの街も田舎と言わざるを得ないだろう。

 

 ……しかし、それはあくまでも一般的な観点から見た話である。周囲を軽く見渡すだけでも、まずこの街でしか目にすることができないような要素がふんだんに見られた。

 

 街灯には他の街と同様に魔石が使われているが、明らかに種類が違う。少なくとも僕の知らない魔石であることは確かだ。

 

 そして至るところに見られる店には、まるで見たことのないような魔石や魔道具(マジックアイテム)が並んでいる。中には魔法で浮遊させているのだろう家具らしきものを並べている店や、色鮮やかな魔石から噴き出す多色の火で肉や果物を焼いている店、魔道士がその身に纏うようなローブや帽子、装飾品を売っている店、無数の杖や鞭、刃渡りの小さいナイフなども売っている店もあった。

 

 目にする景色のどれもが初めてで、僕は否応にも興奮を覚えてしまう。そしてそれは──

 

「うっはぁ!なんか面白そうなもんがいっぱいあんな!」

 

 ──僕の隣に立つ先輩も同じことだった。

 

「なあなあ、早く見に行こうぜクラハ!」

 

「そうですね。けど見るのに夢中になって、逸れないでくださいよ?」

 

「んなことわぁってるっての!」

 

 琥珀色の瞳をキラキラと輝かせて、売店の一つに向かう先輩の背中を、僕は苦笑しながらも追う。その道中、心の底から安堵していた。

 

 ──良かった。先輩が立ち直ってくれて、本当に良かった……!

 

 一週間前にあったとある事件のせいで、その心に深い傷を先輩は追ってしまい、今や普段からは想像もできないほどに落ち込み自室に閉じ籠もっていたのだが、とある人物からの贈りものによって、無事この通り先輩は元通りに、元気になってくれた。

 

 ──うん、うん。やっぱり先輩はこうでいてもらわなければ。

 

 頷きながら進む僕。しかし、突如背中越しに声をかけられた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいお二人共」

 

 声をかけたのは、僕と先輩、そしてサクラさんの三人を連れて来てくれた人物──フィーリアさんだった。

 

「えっ、あ、はい」

 

 彼女に呼び止められ、僕はその場で止まる。先輩も向かおうとした売店からその踵を返し、こちらに戻って来た。

 

「いや、まあ街に着いたら自由に行動していいと言ったんですけど、その前に私からちょっと紹介したい人がいるというか、案内したい場所があるというか……」

 

「紹介と案内か」

 

 フィーリアさんの言葉に、サクラさんがそう返す。フィーリアさんが頷きまたその口を開く──その直前だった。

 

 

 

「おーっほっほっほ!」

 

 

 

 ……というような、実に自信に満ち溢れた高笑いが広場に響き渡った。

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