「えー、このデカ乳痴女が紹介したかった人その一でーす」
突如としてこのマジリカの広場に現れた、金髪の女性と不毛な口喧嘩を数分間繰り広げた後、すこぶる不機嫌そうになって、凄まじくぶっきら棒にフィーリアさんが僕たち三人に向かってそう言う。が、彼女の言葉に透かさず金髪の女性が怒鳴り声を上げる。
「だから誰が痴女よ!……コホン」
怒鳴った後、女性は息を整え、改めて僕たちの方に身体を向けると、先ほどの様子からは想像し難い優雅な所作で、ようやくその名を口にしてくれた。
「名乗りが遅れて申し訳ございませんわ。
金髪の女性──ナヴィアさんはそう言って、ドレスの裾を軽くたくし上げてこちらに会釈する。
それに対し僕も咄嗟に自己紹介をしようとして────
──ナヴィア=ネェル=ニベルン……
────そこに、引っかかった。……確か、僕の記憶が正しければ、それは。
「……あの、ナヴィアさん。失礼を承知で一つ、お訊きしたいんですが」
「ええ、別に構いませんわ。なんでしょう?」
その豪奢絢爛なドレスや、先ほどの……まあ、フィーリアさんとのやり取りを除き、優雅と気品に溢れた言動と立ち振る舞いからして、僕のような一般人ではなく貴族なのだろうとは、少なからず察してはいたのだが。
全身から冷や汗が僅かに滲み出すのを実感しながら、恐る恐る僕は彼女に訊ねた。
「ニ、ニベルンって……もしかして、あのニベルンですか?」
すると彼女は数秒の沈黙を挟んで、こちらを
「はい。『四大』が一家──ニベルン家のことでしてよ」
その言葉を訊いて、僕は思わず身体が蹌踉めき、その場で卒倒しそうになった。なったが、なんとか気力を振り絞って堪える。
──マジか……。
言葉が出ないとはまさにこのこと。いや、無理もないだろう。この
そもそも本来ならば、僕のような一般庶民がこうして直に会っていること自体がおかしいのだ。そう思いつつ、頭を押さえて視線を目の前に改めて向ける。
「いやあ、さっきの蹴り凄かったな!もしかしてお前喧嘩やれんのか?」
「私から見ても先ほどの跳び蹴りは実に見事だった。ナヴィア嬢、貴女は武術の心得でも?」
「一応嗜む程度には」
……いつの間にか先輩とサクラさんはナヴィアさんの近くにまで歩み寄っており、そんな他愛もない会話を交わしていた。彼女がかの『四大』ニベルンの一族であることなど、まるで関係ないかのように。
流石は《SS》
……そろそろ、僕も慣れるべきなのかもしれない。
「ウインドアさん?ぼうっと突っ立って、なにか考え事でも?」
「え?……あ、いや、そういう訳では」
気がつくと、僕のすぐ隣にフィーリアさんが立っていた。彼女は怪訝そうに僕の顔を覗き込んでおり、僕が慌てて言葉を返すと、さほど興味もなさそうに相槌を打つ。
「……あの、フィーリアさん」
ふとした疑問を抱いて、僕はフィーリアさんに訊ねる。
「ナヴィアさんとは、一体どういった関係で……?」
先ほどのやり取りを見て、少なくともそう浅い関係性ではないことは間違いなくわかる。僕のその質問に対してフィーリアさんはすぐには答えず、少し考えるように黙って、それから微かにうんざりとした表情を浮かべながら答えた。
「別に。ただの腐れ縁ですよ」
そしてすぐさま先輩とサクラさんの二人と談笑するナヴィアさんの元に、フィーリアさんも向かう。ナヴィアさんの背中を指で突っついて、フィーリアさんは彼女を振り向かせた。
「ナヴィア。後で話があるんだけど」
「あら、もしかしてどうしたら背が伸びるかの相談?それともその絶壁を双丘に変える方法でも知りたいの?」
もはや煽ることしか考えていない言葉をナヴィアさんはぶつけたが、それに対して先ほどのようにフィーリアさんが憤慨することはなかった。ただ、上手く感情を読み取ることができない、無表情とはまた違った表情でナヴィアさんを見つめる。
そんな彼女の様子に、ナヴィアさんも流石にふざけることを止めた。
「……わかったわ。時間は取ってあげる。場所は
「いい」
そうして、二人の会話は終わった。フィーリアさんは踵を返し、ナヴィアさんは先輩、サクラさん、そして僕と順番に視線をやって、それからまた口を開いた。
「話はそこの幼女から聞いていますわ。可愛らしいお嬢さんと、『極剣聖』様……そして『