それは、俺が予想だにしない言葉であった。
「……残念ながら、それはできない。何故なら今、ラグナは……
グィンさんの返事に、俺の反応は一瞬遅れた。一瞬遅れて、動揺で震える声を絞り出すので精一杯だった。
「ゆ、行方不明……ですか?」
不甲斐なく、そして情けない俺の言葉に。グィンさんはその首を重々しく縦に振り、それから申し訳なさで満ちた声で話し始めた。
「一年と少しにもうなるかな。我々の前から、『
──二年……!?
グィンさんの言葉に、俺は堪らず絶句してしまう。硬直し、その場に立ち尽くすしか他ないでいる俺へ、グィンさんが困ったように、依然申し訳なさそうに言葉を続ける。
「ラグナには昔から放浪癖があってね。こうして行方を晦ますのは、実はしょっちゅうの事なんだ。……ただ、それでも数日、長くとも一週間くらいでいつもはちゃんと帰って来てくれるんだけどもね。『世界
「……な、なるほど。そう、だったんですね……」
……まあそもそもの話、《SS》冒険者について『世界冒険者組合』から公開されている情報はごく僅かで、それも最低限のものしかないので、知らないのも無理はないのだが。
しかし、今それは重要な事ではない。今重要なのは、現在この街には、この『
そして……憧れはいないという事。
その事実と現実が、俺の頭の中に染み込み、溶け込んで。どうしようもなく、俺の意識を呆然とさせてしまう。
「野良猫並みに気紛れな気分屋だからな、ラグナの奴は。にしても、やっぱり目当ては最強
俺が呆然としていると、横に立つジョニィさんがそう呟いて、その雰囲気を暗く重く変化させていた。
俺はハッとし、慌てて弁明の言葉を繰り出す。
「すっ、すみませんっ!勿論ジョニィさんの事だって尊敬しています!……ただ、その……俺が一番最初に凄いって思えたのは……」
「ハハッ!別に構いやしねえよ。だって俺も凄えなって、敵わねえなって思っちまってんだからよ。そうさ、ラグナの奴は凄えんだ。アイツは『大翼の不死鳥』の誇りさ!」
流石はジョニィさんというべきか。俺の言葉を聞き、彼は豪快に笑い飛ばしていた。
そしてそこには、一切の偽りなどなく、それが本当の、心の底からの言葉なのだと思わせた。
「……という訳で、今君にラグナを会わせる事はできない。彼がいつ『
「……」
俺の夢は、俺の目標は、俺の憧れは。《SS》冒険者、『炎鬼神』──ラグナ=アルティ=ブレイズさんだ。それは変わらないし、変わる事もない。
……けれど、だからといって。
「受けます。受けさせてください。だって俺は、その為に
この選択を、拒否する理由にはなり得ないのだ。
俺は待つ事にした。『
だから、待つ事にした。
「『大翼の不死鳥』の
ほんの僅かでもいい。たったの一言二言でも構わない。だからせめて、それに見合うだけの実力を。それに叶う実績を。待っている間に、俺は身に付ける事にしたのだ。
「名はライザー、ライザー=アシュヴァツグフ!『大翼の不死鳥』の新しき────《S》冒険者だ!」
俺は待つ。俺の夢が、俺の目標が、そして俺の憧れが。いつか帰って来る、その日まで。