METAL GEAR × Arknights 作:安曇野わさび
ジョンは炸薬が燃焼し、煙を吐き出し続けるフレアガンを捨てる。
重装オペレーター、レユニオン兵士を挟んでジョンとメフィストの視線が交錯する。
「メフィスト様…」
レユニオンの兵士がメフィストに駆け寄り、耳打ちをする。
「…へえ、随分と派手なことをしてくれたみたいじゃないか、なるほど素敵な花火だ」
「残念ながら、あの花火はあれっきりだぞ」
「…それは残念だ、でもいいのかなあ…今頃、トラックの運転手は僕の兵士のおもちゃだ。
ああ、そうか…意外だよ!君も捨て駒とか使うんだね!それは素敵だ!」
「…ドクター、あいつ…狂ってます」
前衛オペレーターが身を震わせながら呟く。
「覚えておけ、ああいう目をした奴にろくな人間はいない、どうやらここでもそれは変わらないようだ」
「…目、ですか」
「あれは君達とは違うところを見ている、常に最悪の景色を追い求めてな」
「僕の目がどうかしたって?」
メフィストがその目を目一杯に見開く。
オペレーターは潜在的な恐怖を、紙やすりで削られるような感覚に身を震わせる。
「なあ、メフィスト。
君の用兵は実に興味深いな」
「へえ、今度はおしゃべりかい?
いいよ、付き合ってあげよう」
「君の兵士は暴徒達とも、あの霧の兵士とも違う、まるで自己を失っているような、虚な動きをするな」
「…わかっているくせに…そうさ。僕の兵士は特別製だ。
…知ってる?
人はあまりに怒りや恨みに支配されると、自分のことなんてどうでも良くなるんだ。
なぜ怒りを覚えたのか、誰を恨んでいたのか、何に苛まれていたのか。
…これは、チェルノボーグ人どもが作り上げた、僕の特別な兵士たちだよ」
「違うな、お前達は崖っぷちにいた彼らを深淵の底に突き落としただけだ」
「…知ったような口をきくなっ!!ファウスト!!」
直後、重装オペレーター達の足元にアーツを纏った矢が突き刺さる。
それはまるで炸薬の詰まった砲弾のように弾けると、重装オペレーターの数人を吹き飛ばした。
「ぐああああッ!!」
「があッ!」
吹き飛んだ重装オペレーターはすぐ背後にいた前衛オペレーターを巻き込んで停止する。
「おしゃべりはおしまいだ、このままお前の兵士を少しづつ痛ぶってから殺してやる。
最後にお前を使って愉快な球技大会をしてやるよ、爺…!」
「…」
ジョンはただメフィストを睨め付ける。
メフィストが更なる一撃をオペレーター達に与えようと、高く手を振り上げた瞬間。
「撃て…ファウス…」
高く掲げられたその腕を、ボウガンの矢が貫いた。
「………は…?」
メフィストは矢が貫通し、穴のあいた腕を見つめる。
「メフィスト様…!」
レユニオンの兵士たちが、即座にメフィストを取り囲む。
『な、なんだ!』
『俺たちは撃ってないぞ!』
狙撃オペレーター達の声が無線に鳴り響く。
「…どこからだ!…どこから……ファウスト…!?」
…
ジョン達のいる広場から程近い高いビルの中程に、重厚なボウガンを構える少年がいた。
「…メフィスト…!?」
即座に少年は照準器のクロスヘアを周囲に走らせる。
ボウガンに発砲炎はない、しかし、あの位置にいるメフィストを射抜ける場所はどこか。
その答えを即座に見つけ出し、照準を向けた先。
「…!?」
少年は複数のアーツの光をみた。
…
ジョン達のいる広場を見下ろすビルで、複数の爆発が起こった。
「…そんな…ファウスト!」
メフィストは明らかに取り乱した様子でビルを見て叫ぶ。
「…一体何が…」
重装オペレーターの肩を担ぐアーミヤがジョンの方を見る。
ジョンの頬には一筋の汗が垂れていた。
「…来てくれたか」
…
『こちらレンジャー、こちらはちょうど一発くれてやったところじゃ。
…頭を狙ったんじゃがのう、まあ当たってよかったわい。
オーキッドそちらの隊は?』
レンジャーの無線を受けて、建物屋上にいるオーキッドは、少し離れたところにいる術師の集団に目を向ける。
『オーキッド隊長、アーツは当該ビルに全弾命中した。
まったく…指揮の真似事なんて柄じゃないんだが…』
「ナイスタイミングだったみたいよレンジャー。
いい腕ね、さすがだわ。
術師隊、ラヴァの指示に従って断続的にアーツの法擊を続けなさい。
あいつにもう撃たせてはダメ。
狙撃隊、広場入り口の敵集団に狙いを定めて」
『りょーかい、みんな行くよー!」
「…カタパルト、講習を受けたときを思い出して、しっかりね」
『はーい!わーかってるって!
やっこさんびっくりしてるぜー!』
『オレもいますから、大丈夫ですよオーキッドさん』
「頼んだわよアドナキエル…。
行動予備隊A6、初仕事よ。みんなと連携をとってしっかりこなしてやりましょう」
…
「…ここー…ですッ!」
アルファ部隊の狙撃オペレーターが潜む半壊した商店の裏口が勢いよく開け放たれる。
「うわあ!なんだ!?」
「あ、どうも!…フェン隊長!ビーグル、現場に到着…したみたいです!
お疲れ様です!…助けに来ましたよ!」
「…スポットだ、なんとか合流したぞ隊長。
A1と連携を…まあ、やってみる」
…
「さーてと、こっちが連携をとるA1の子はどこかなーっと…」
『…おーい、こーこーだーよー!
カーターパールートー!』
「お、みっけた!
オーキッド隊長、クルース、見つけましたよぉ!!」
『そんな大声で喚かない、無線機が壊れる!』
…
「たーいちょ、こっちはみんなと一緒にドーベルマン教官と合流したよ。
ただいま、敵部隊と交戦中さ」
『ミッドナイト!足を引っ張らないようにするのよ!』
「信用ないなあ…あ、ドーベルマン教官、うちの隊長と代わります?」
「全く、お前という奴は…訓練生の時から何も変わらんな。
…だが、助かった、礼を言う」
「そーんなそんな!教官の笑顔のためならどこへでも出張しますよ」
「…こちらヤトウ、行動隊E2の隊長、ドーベルマンと合流した。戦闘行動に入る」
「A1隊長も同様です…行動予備隊A1、慌てず騒がずしっかりと任務をこなすのよ」
…
「ドーン!」
「おわあ!こっちも!?」
狙撃オペレーターは勢いよく開け放たれた扉に腰を抜かしながらも、その姿を見て笑う。
「…助かった、来てくれたんだな」
「もちろん!みんなを守る!それが…私達のお仕事ですから!」
「おうともさ!
さあて隊長、ノイルホーンとカーディは救出隊の狙撃オペレーターと合流したぜ。行動開始だ」
…
ジョン達の周囲に大勢のオペレーター達が集結する。
それぞれが異なる風貌、個性、装備を身に帯びて、だがひとつ。
彼らの中で共通することがある。
それは彼らの装備の中で、きらりと輝く大小のエンブレム。
そこには守護の象徴であるルークとともにこう刻まれていた。
「…ドクター…ドクター!
ロドスが…ロドスが来てくれました!」
アーミヤが瞳を潤ませながら叫ぶ。
…
「…あ、ははは…形勢逆転…そう言いたげな顔だな」
「…いっただろう、あの花火はあれっきりしかないんだ。
賭けだったが、どうやらジャックポットを引き当てたようだな」
「…なんだよ、どうして思い通りにならないんだ…どうしてお前らは死んでくれない…!」
「…」
「…いやだ…たすけて…痛い…」
「…それが「お前」か、メフィスト」
「…ファウスト…!」
…
アーツによる爆撃で揺れるビルの中に、身を潜める少年がいる。
少年のそれではないギラついた視線を照準器に送りながら、少年はひたりと引き金に指を添える。
「…お前…だけでも…」
クロスヘアの中心には老人の姿が映る。
だが、容赦の心はない。
「…お前は…お前らは…メフィストを傷つけた」
引き金にかかる指の力が増していく。
眼球に触る土埃を意にも介さずに、少年は引き金を引き絞る。
「…ここで…殺す…!」
…
空気を切り裂く轟音が響き渡る。
およそ矢の速度ではないそれが、一つの目標にピタリと合わせて飛来する。
『…まずい、オーキッド!あれが…あれを撃たれちまった!!』
ラヴァの叫びがオーキッドの無線から響き渡る。
「なんですって!?」
オーキッドは狙撃手がいるビルをみる。
そこからはすでにそれは放たれ、紫電のようなオーラを纏って宙を切り裂いていた。
「まず…!?」
オーキッドが指示を飛ばす前に、それはすでに広場の中央に差し掛かっていた。
矢は真っ直ぐに老人に、ジョンの眉間目掛けて迫る。
ジョンだけではない、直撃すればその周囲にいるオペレーターも壊滅的な打撃を受けることは誰の目にも明らかだった。
その時だ。
ジョン達の後ろの瓦礫の山から、1人飛翔する影があった。
得物を地面に投げ捨て、ただ盾のみを手にしてそこにいた。
直後、ジョン達の数メートル上でそれが炸裂する。
とてつもない爆風がオペレーター達を地面へと押し付ける。
…だが、そこには死者はおろか、負傷者すらいない奇跡が起きた。
アーツとアーツのぶつかり合い。
強力な力同士が相殺し、ジョン達に危害を加えんとする力は消え失せた。
反動によって弾かれるその騎士の体を、ジョンとアーミヤ、数人のオペレーターが受け止める。
「ニアール!」
「ニアールさん!」
ジョン、アーミヤ、オペレーター達の声がニアールの鼓膜を震わせる。
「…ケホッ!…はは、なんとか、間に合ったようだ」
「…ニアール、ありがとう…よく仲間達を連れてきてくれた」
「…無我夢中で走ったさ、必死にな。
避難民に怒られたよ、あれは恨まれたかもしれない…ケホっ!」
「ニアールさん…」
「ドクター…カジミエーシュの騎士、二度目の遅参だ…ただいま助けに戻ったぞ」